博物館の前庭では、ハエドクソウが咲いています。
小さくて可憐な花ですが、その名のとおり、かつてこの植物の根から抽出した成分を蝿とり紙に染みこませて利用していました。また、汲み取り式の便所の便槽へ全草丸ごと投げ入れていた、という話も伝わっています。
写真を撮っていたら、ヒラタアブの仲間が近寄ってきました。
小さな花に狙いを付けて、ピタッと止まりました。すると、口をペタペタと当てて、花の中の蜜をなめ始めました。
ヒラタアブの仲間は分類が難しく、種類まではわかりません。ハチに似た色と形ですが、これはハチに似せて身を守るための擬態です。この仲間は人や動物などを刺すことはなく、花の蜜を主食にする平和的な昆虫です。時々人の皮膚にも止まってペタペタやるのですが、ハチに止まられたと勘違いして大騒ぎされてしまうこともしばしばです。落ち着いてみると、大きな複眼と静かにホバリングする様子がとてもかわいらしい昆虫です。
(生物担当学芸員)