博物館の正面入り口へのアプローチ脇に、小さな花をたくさん咲かせている植物があります。
とても小さな花なので、拡大してみると・・
ピンクと白のツートンカラーが美しい花ですが、名前はちょっと物々しく、ヌスビトハギ。その理由は、こちらの果実にあります。
代表的な「ひっつきむし」の一つです。表面の細かい鈎(かぎ)状の毛で、ピッタリと衣類に密着する、マジックテープ式のひっつきむしです。落としたつもりでも、室内に入ってから膝の裏側など手で探るとたいてい幾つかひっついたままだったりします。名前の由来は、盗人(ぬすびと)が気づかぬうちに果実がひっつくから、あるいは、果実の形が盗人の足跡に似ているから、といった説があります。いずれにしても、この可憐な花をまったく無視した命名がちょっと気の毒ですね。
“ハギ”と名が付くとおり、また、葉を見てもマメ科であることがわかります。
お隣の樹林地では、ナラ枯れなどで日差しが届くようになった林内を中心に、ヌスビトハギが増えています。来月あたりから、樹林内をうかつに歩くと着ている服にびっしりとヌスビトハギがひっついてしまう季節になります。
(生物担当学芸員)