博物館内の壁を、黒い小さなものがスススッと動きました。そっと近づいて見ると、アダンソンハエトリでした。
このクモは、ハイカラな種名ですが、ごくごく普通に家の中などに生息しています。そして、その名のとおり、ハエや蚊などの昆虫を主食とする、人間にはとてもありがたい存在なのです。タイトルに「走る」と書きましたが、その動きはピョンピョンと跳ね飛ぶイメージです。ハエトリグモの仲間を、英語で「Jumping spider(ジャンプするクモ)」と呼ぶのも頷けます。
白黒のツートンカラーがオシャレで、なんとも愛らしい顔つきをしています。
もちろん、クモの仲間は見るのもイヤ、という人も多いと思います。しかし、アダンソンハエトリは、ゴキブリを食べてくれるアシダカグモと並び、人間にとって良い面しか持っていないと言えるクモです。このクモを室内で見つけたら、どうか叩いたりせず「ハエや蚊をたくさん食べてね」と声をかけながら、そっと隅へ追いやってあげてください。
(生物担当学芸員)