9月下旬から10月上旬になると、市内緑区の高台には、20人以上のバードウォッチャーが集まります(休日には50人前後になることも!)。目的は、タカの渡りの観察です。毎年秋、タカの仲間のサシバという鳥が、集団で南方へ渡る様子が観察できるポイントなのです。ただし、「いつ飛ぶか」は、天候や風向きなど様々な要素が絡み合うため、渡りを狙うには、周辺の観察地の状況をネットで見たり、週間天気予報を随時チェックしたりと、株のトレーダーさながらの「読み」が必要とされます。
そんな10月2日は、一つのピークと言える数のサシバが飛びました。
この日は午前中の早めの時間から断続的に群が旋回して上昇し、西へ流れていく様子を観察できました。大きな群れは、11時台の約40羽と、13時台の約50羽、合計で200羽近い渡りを記録しました。
どこからともなく現れたサシバの群が、数十羽で旋回しながら上昇する様子は「タカ柱(ばしら)」と表現されます。悠然と旋回していたかと思うと、上の方の個体から順次西へ猛スピードで滑空していくのを見ていると、大自然の営みの中に身を置いている感動を覚えます。
たまたま、単独で低空を飛んで行った個体もいましたが、基本的には群で上昇気流に乗って高空へ旋回、上昇し、東風に乗って西へ滑空するという動きを繰り返しながら渡ります。
この日はサシバだけでなく、少し大型のハチクマも少数ですが渡りました。
さらに、ハヤブサも!
タカやハヤブサだけでなく、ヒヨドリも小群で渡ります。
タカの渡りは全国的な情報網が確立され、特に今世紀に入ってからはネット上で随時、全国の速報を見ることができます。今年は、特に太平洋側の観察ポイントはやや遅めに渡りが進んでいるようです。9月中はなかなか飛ばなくてやきもきしましたが、この1日でそんなことをすっかり忘れさせてくれる、ダイナミックな渡りを見せてくれました。
(生物担当学芸員)