「火口」は、ここでは(かこう)とは読みません。(ほくち)と読みます。
火口は、かつて日常的に持ち入れられていた火起こし道具の一つで、火打石の火花から点火して火種(ひだね)にするもので、つまり、とても燃えやすく、火持ちの良い素材ということになります。火口の素材はいろいろあり、身近なものではおがくずやガマ、ススキなど植物の穂が用いられていました。
じつは、火口が名につく植物もあります。今ちょうど花盛りのオヤマボクチです。
この写真は、11月4日に緑区川尻で撮影しました。大きなアザミという雰囲気で、広い意味でのアザミの仲間で、秋に咲くアザミの代表であるノハラアザミなどとは分類上、異なるグループに属します。
さて、火口となるのはどの部分かというと、葉裏の毛茸(もうじょう)と呼ばれる繊維状のものです。写真ではわかりにくいのですが・・
触ってみると、感触でわかります。柔らかい繊維の感触が心地よいからです。
それにしても、この毛茸を火口にするといっても、相当集めないといけません。葉は面積的に大きめであるものの、そこから毛茸を何か道具でこそぎ落したとしても、かなりの枚数の葉が必要になりそうです。想像でしかありませんが、そうしてまで集めても使いたくなるくらい、優秀な素材だということでしょうか。
近くでは、コウヤボウキが咲いていました。
夏日がいつまで続くのか・・という気温でしたが、野道でも着実に秋が進んでいます。
(生物担当学芸員)