11月10日、雨の合間を縫って緑区小倉の山道へ調査に出かけました。尾根沿いの道にはカントウカンアオイがたくさんありました。
今がちょうど花期なのですが、この仲間の花は不思議なことに、いくら上から探しても見つかりません。それもそのはずで、株の根本の落ち葉の下で咲くからです。落ち葉をどかしてみると・・
花?と言いたくなるような地味な色合いです。カントウカンアオイは、チョウなどの飛翔する昆虫に花粉を媒介してもらうことはないため、上向きに咲くことも、目立つ色もありません。では誰に花粉を媒介してもらうのかというと、おそらく、ヤスデやナメクジのような落ち葉の下で生活する小動物だと言われていますが・・そうした観察例があまりなくて、確定できていません。
さて、尾根を歩いていると、フジのつるが低木に巻き付いていました。
地面から引っ張られるように巻き付いていて、そのうちフジの張力に負けて、台になった木は折れてしまうでしょう。もし対抗してぐんぐん大きくなったとしても・・こんなふうになるのだろうという見本がそばにありました。
春、美しい花を楽しめるフジですが、自然界では藤棚ではなく、こんなふうに他の樹木を台にして成長しています。遠からず、台になった木はフジに負けて枯れるでしょう。そのため、こうしたつる植物を「絞め殺し植物」と物騒な名で呼ぶことがあります。
近くで、少し意外な花が咲いていました。コクランです。
本来、梅雨の時期に咲く花です。サクラなどでもよく見られますが、本来は春から初夏に咲く花が、季節を間違えたのか、秋の終わりに咲いていることがあります。このコクランも心地よい気温になって思わず咲いてしまったのでしょうか。
尾根を下りると、ヌルデが絶妙な色合いに紅葉してきました。
美しさも厳しさも、自然の姿ですね。
(生物担当学芸員)
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