11月23日、当館初の試みとなる朗読プラネタリウムを実施しました。
‟朗読プラネタリウム”とは、当館の目玉のひとつでもあるプラネタリウムのドーム内で、素敵な朗読と楽器の調(しらべ)、そして星空の協演をお楽しみいただけるイベントです。
本ブログでは、休館前のラストイベントでもあった朗読プラネタリウムの様子をお伝えしたいと思います。
朗読を務めてくださったのは、癒しの「アルファボイス」の持ち主で、本市が地元でもあるナレーター・俳優の渡辺克己さんです。さらに、渡辺さんの美声を彩る演奏は、テルミン奏者の大西ようこさん、現役の東京藝術大学生のサウンド・パフォーマー 伊藤明日奈さんにご担当いただきました。
今回は、薄井ゆうじ氏の小説『12の星の物語』から、ちょうどこの時期の誕生月の星座である蠍(さそり)にまつわる「蠍座カレンダー」を題材に朗読いただきました。物語の詳細と結末はぜひ小説をご覧いただければと思いますが、かつて国語の教科書にも採用された「蠍座カレンダー」は、もしも意図せず相手を傷つけてしまったときや、自分の望みを達成するには別の誰かの敵とならなければいけないときに私たちはどうすべきか、とても考えさせられるお話です。
プラネタリウムでの開催ということで、まずは当館プラネタリウム解説員による蠍座を含めた星空の生解説から始まりました。本来であれば今の時期は太陽に隠れてしまっている蠍座も、スクリーンに映し出すことで本物さながらに観察できるのはプラネタリウムの醍醐味ですね。
そして、星空解説が終わると、いよいよ朗読の始まりです。
テルミンの音色に包まれた暗いドーム内を、荒野を旅する物語の主人公のように、ゆったりとした歩調で朗読しながら渡辺さんが登場します。声のお仕事だけでなく、舞台を中心に俳優としても活躍されている渡辺さんの演技に、ドーム内はまるで物語の舞台である荒野のような空気へと様変わりしました。大西さんによるテルミンの演奏と、伊藤さんが表現する効果音の協演によって、さらに物語への没入感が深まります。客席の皆さまは、旅人と蠍の物語の行く末を静かに聞き入っていました。
朗読終了後は、手をかざすだけで奏でることができる不思議な楽器「テルミン」や、砂を踏む足音から蠍の声まで(!)様々な音を演じ分けた道具に、皆さま興味津々の様子で退場されていました。
また、お越しいただいた皆さまのため、演者のお三方には終演後のファンサービスにも丁寧に応じていただきました。
現在、当館は臨時休館期間中ではありますが、再開後にも様々なイベントを開催し、皆さまのご来館をお待ちしております。どうぞ、その時を楽しみにお待ちください。
(歴史担当学芸員)