「ネットで楽しむ博物館」の「星空さんぽ 2023年12月ミニテーマ『クリスマス』」はご覧いただきましたでしょうか。
イエス・キリストが誕生した「ベツレヘム」は、現在のパレスチナ自治区にある町です。聖書に記された「ベツレヘムの星」以外にも、イエス・キリストと星を結ぶ天文現象があります。
キリスト教のシンボルといいますと、すぐに思いつくのは「十字架」ですが、十字架がシンボルとして定着したのは、紀元4世紀頃と考えられています。それ以前は広く「魚」が使用されていました。それでは、なぜ魚だったのでしょうか。
天球(※)上の太陽の通り道である「黄道」と、地球の赤道を天球まで延長した「天の赤道」は2箇所で交わります。そのうち、天体の位置を表す際の原点であるのが「春分点」です。(※天球:空をプラネタリウムの天井のように球状に表したもの)
また、地球の自転軸は止まりそうなコマのように首を振っています。それを「歳差運動」といいます。この「歳差運動」によって、昔と現在では星空の見え方が違っていました。
時代が紀元元年をまたぐ頃、つまり、キリストが誕生した頃に、それまで「おひつじ座」にあった「春分点」が「うお座」に移っていったのです。また、「イエス、キリスト、神の子、救世主」のギリシャ語の頭文字を繋げると“ΙΧΘΥΣ(イクテュス)”となり、ギリシャ語で「魚」の意味があるからとされています。また、聖書の中には魚にまつわるエピソードが多いことも理由の一つです。
その「歳差運動」によって起こる、もう一つ興味深い星空の変化があります。現在のパレスチナからでは一部分しか見えない有名な星の並びが、かつては見えていました。キリストが活躍していた頃、春になると、宵の空に「南十字星」が南の地平線上にはっきりと昇っていたのです。なんだか神秘的ですね。
満天の星の下で暮らしていた昔の人は、星空の中の変化にとても敏感だったのかもしれません。
時は流れ現在、街にはクリスマスツリーのベツレヘムの星が輝いています。たまにはどこかで足を止めて、本物の星空も眺めてみてください。
(当館プラネタリウム解説員)
※相模原市立博物館は来年2月29日まで、エレベーターの修繕など館内工事のため臨時休館中です。ご理解とご協力をいただきますようよろしくお願いします。休館中のお問い合わせなど、詳しくは博物館ホームページをご覧ください。