皆さんが普段何気なく通っている道には、どのような歴史があるでしょうか?
日常風景に溶け込んでいてあまり考えたことがないかもしれない「身近な道のいま・むかし」にスポットを当てたいと思います。
ということで、本日1月7日(日)は、博物館の近くにも通っている相模緑道緑地に行ってきました。
「相模緑道緑地」は、市内の中央区と南区を通る総延長10.5kmの緑道で、歩行者・自転車専用道路のほか、所々にベンチやルーフ付きの休憩スポットなどが整備されています。また、ツツジ・アジサイ・キンモクセイなどの植栽により、四季折々の表情を楽しむことができる憩いの場所として親しまれています。天気の良い日は絶好のお散歩コースで、この日もジョギングや散策をしている姿を何度も見かけました。
ところが、相模緑道緑地は元々こうした用途のために設置されたものではありませんでした。
相模緑道緑地の前身は畑に水を引くための用水路等の施設で、1949(昭和24)年の着工から1963(昭和38)年の完成まで実に15年間を費やした「相模原開発畑地灌漑(かんがい)事業」のためのものでした。この事業は、相模川から引いた水を相模原台地へ送り、水の便が悪い土地にも畑を開くことができるように神奈川県が計画したもので、戦後の食料増産の期待も担っていました。
アメリカ東南部のテネシー川流域で行われた総合開発事業になぞらえて「日本版TVA計画」として脚光を浴びたものの、1958(昭和33)年頃をピークに送水量が減少し、都市化の影響などで1970(昭和45)年には利用者による組合が解散しました。
水路に水が流れたのはわずか数年のことでした。
畑地灌漑に使用しなくなった水路は、のちに相模緑道緑地などに姿を変えるのですが、次の写真は水路跡が緑道に生まれ変わって間もない1973(昭和48)年と現在の南区御園(みその)の様子を比較したものです。
写真中央の大きな滑り台と右側にあった鉄棒は現在は撤去されているようですが、左側に写っている動物をモチーフにした遊具は健在です。一部塗装も直されて、しっかり残っていました。これらの遊具が50年以上変わらず設置されていることには驚きました。
その後、御園5丁目付近を通ると「ヨイショー!」という元気な掛け声とともに、何やら賑やかな音が…。自治会主催の餅つき大会を行っていたようです。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したため、ようやくコロナ禍前と同様に実施できるようになったそうです。ご家族で参加されている方が多く見受けられ、もしかすると、小さなお子さんは人生初の餅つきになったかもしれません。
年中行事としての餅つきやお正月については、以前のブログでも紹介していますので、よろしければご覧ください。
1月7日は「七草粥(ななくさがゆ)」をいただく日でもあります。1年の無病息災を願うとともに、お正月の御馳走で疲れた胃腸をいたわり、栄養補給する意味もあるそうです。社会人の方は今週が仕事始めの方も多かったと思いますので、七草粥でほっと一息ついてはいかがでしょうか?
(歴史担当学芸員)
※餅つき大会の写真は御園五丁目自治会の了承を得て掲載しています。
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