「食育」とは、様々な経験を通じて“食”に関する知識と選択する力を身につけることです。このブログをご覧の皆さまは、日頃の食事についてどのくらい意識されているでしょうか?
毎月19日は「食育の日」として、国・地方公共団体・関係団体などが協力して食育の普及に取り組むことが食育推進基本計画で定められています。
ちなみに、諸説ある食育の日の由来はなんと語呂合わせで、食育の「食(しょく)」がそれぞれ「しょ→初→1」「く→9」と読めるから、また「育(いく)」が「19」を連想させるからとのことです。語呂合わせ以外だと、「食育推進会議」の第1回目が2005(平成17)年10月19日に開催されたことにも由来します。
本日1月19日は今月の食育の日ということで、当館の所蔵資料紹介を交えて“食育”のお話をしたいと思います。
相模原市のホームページでは食育に関するページが設けられており、本市の取り組みや相模原市食育推進マスコットキャラクターの“サガピー”が紹介されています。その中で、行事食や郷土料理を知ることで、食に関する興味を深め、食に関わる人への感謝の心を育むことが期待できるとあることから、本市の郷土料理・酒まんじゅうの関連資料を紹介します。
これは、市域(当時は津久井郡相模湖町)の和菓子屋さんの包み紙です。中央の「酒まんじゅう」という文字とともに縁起の良いモチーフが印字されています。お店で買った酒まんじゅうなどがこの袋に入れて手渡されていたのでしょう。いつ頃のものか正確な年代はわかりませんが、記載されている電話番号などから、少なくとも全国的に自動電話交換機に移行する1979(昭和54)年より前のものと思われます。
なお、酒まんじゅう作りについては以前のブログで紹介しており、市ホームページにもレシピが公開されているので、ご興味がある方はぜひ挑戦してみてください。「まんじゅう笊(ざる)」などの酒まんじゅう作りに関係する道具もこちらで紹介しています。
続いて、本市の特産品を知ることも食育につながるため、相模川の名物・鮎(あゆ)にちなんだ「鮎せんべい」の掛け紙を紹介します。
こちらは津久井地域の和菓子屋さんのもので、デザイン違いが2種類あります。鮎といえば、例年6月になると漁が解禁される相模川の夏の風物詩です。泳いでいる鮎の姿が涼し気ですね。この「鮎せんべい」は、鮎をかたどったものなのか、鮎を原材料に用いたのか、掛け紙からだけでは定かではありませんが、現在でも市内で鮎せんべいを取り扱う別のお店があるようです。
この掛け紙と酒まんじゅうの包み紙は、昨年開催した市史ミニ展示でお馴染みの本市出身の郷土史家・鈴木重光氏コレクションから紹介しました。
最後はちょっと強引かもしれませんが、食料保存の歴史を知ることも食育の一環ということで、こちらの資料を紹介します。
当館自然・歴史展示室「地域の変貌」コーナーにある昭和前期の氷冷蔵庫です。今や現役で使われていたところを見たことがある方もかなり少ないのではないでしょうか。
せっかくなので、特別に扉を開けてみましょう!
中に入っているのは美味しそうな本物のスイカ…ではなく、食品サンプルです。また、上段に入っている透明な塊が氷を再現したものです。電気冷蔵庫が普及する前は氷の力で食べ物を新鮮に保存していたことを伝えるため、小学校の来館学習などではこうして特別に中を開けて見せることがあります。そうすると、開けた瞬間は決まって児童の皆さんの元気な歓声が上がる、当館の人気資料のひとつです。
現代では技術の進歩や交通網の発達によって、氷冷蔵庫の時代よりも長く食材の鮮度を保つことができるようになりました。また、食に対する様々な研究が進み、わたしたちをとりまく環境の中で食事の選択肢も増えました。
「食育の日」をきっかけに“食”への関心を高め、美味しく健康的に日々の食事をいただきましょう。
(歴史担当学芸員)
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