1月18日、職員の一人から、駐車場に鳥の羽が散乱していると連絡がありました。早速見に行くと、まだ事件発生からあまり時間が経っていないと思われる現場がありました。
被害者はキジバトです。加害者は、おそらくオオタカなどのタカ類と推測できます。
時間があまり経っていないことは、乾燥してフワフワの状態の羽が、まとまって落ちていることからわかります。夜露に濡れた様子は無いので本日の日中であり、極めて軽い羽(体羽)がまとまっていることから、風に飛ばされておらず、事件から間もないことがわかります。
とりあえず目立つ羽を拾い集めました。
タカの仲間は、狩りで仕留めた獲物をその場で食べることはあまりありません。お気に入りの食事場所があり、そこまで運びます。その際、運ぶのに邪魔になる、翼に付いた大きな羽や、尾羽を抜き取ってから運びます。そのために、こうした羽が一カ所に散らばることになるのです。一方、ネコなどの哺乳類は羽だけ抜き取るようなことはせず、丸ごと運ぶか、場合によって翼ごと引きちぎったりするため、血痕が残ります。そうしたことから、今回はそのような痕跡が無いため、タカ類の食痕(しょっこん)だと判断できるのです。
館内に持ち帰り、翼の羽と尾羽だけ抜き出して並べてみました(並べ方はかなり適当で、必ずしも順番に並んではいません)。
尾羽はすべて(12枚)ありましたが、翼の方は、特に初列風切(しょれつかざきり)の一番外側の大きな羽が両翼ともありませんでした。尾羽はあっさり抜ける構造になっている一方、風切羽は筋肉に埋め込まれるように付いているため抜くのにそれなりに力が必要です。外側の大きな羽は抜きにくかったのかもしれません。
野生動物のこうした痕跡をフィールドサインと呼びます。いろいろなことを想像しながらフィールドサインを観察するのはとても楽しいですね。
(生物担当学芸員)
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