博物館前庭正面に、大きなクヌギの木があります。12月にこのブログに、その根もとにナラタケが発生したため、枯死しかけている可能性が高いことを紹介しました。末枝の状態なども見極めて、2本に分かれた太い幹の建物側の方が落枝の危険が高いと判断し、伐採することになりました。残雪の残る2月7日、いよいよ伐採が始まりました。
樹木の伐採というと、チェーンソーで根もとから切れ込みを入れ、バリバリドーンと倒すイメージがありますが・・それは山林での方法です。施設内では、高所の枝を少しずつ落としていき、最後に幹を上から少しずつ切っていきます。先に切り落とす部分をロープで止めておき、ドサッと落下しないよう、慎重に下ろします。
数時間の作業で、無事に切り落とされました。下の写真は伐採前の12月の写真です。
こちらは、伐採完了後の写真です。
そして、伐採後の恒例、年輪の計測です。判読できない部分もあったのでおおよそですが、切り口部分の年輪は少なくとも75本まで数えることができました。
このクヌギは、この場所が雑木林として利用されていたころから炭の原料として伐採を繰り返され、このようにひこばえ(株の根もとから数本が束になって幹を伸ばす状態)のまま高木に成長したと考えられます。ということは、このクヌギは第二次世界大戦中の陸軍機甲整備学校か、その後に在日米軍キャンプ淵野辺として利用されて以降、伐採されずに成長したことがわかります。向かいのJAXA相模原キャンパス沿いのクヌギも同じような幹の太さであることから、歴史的な経過とだいたい一致します。
このクヌギが、土地利用の変遷を見守ってきた木だと考えると、改めて畏敬の念を抱きます。
(生物担当学芸員)
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