10日ほど前の博物館中庭で、こんな奇妙なものが地面から突き出ていました。
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ミミガタテンナンショウの芽生え(3月18日)
その正体は、ミミガタテンナンショウの芽生えです。3月28日現在、中庭で4株ほどが元気よく開花しました。
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同じ株の、10日後の開花の様子(3月28日)
ミミガタテンナンショウはマムシグサ(サトイモ科)の仲間で、神奈川県では西部(相模川より西側)の里地や山地に広く分布する植物です。相模川を隔てて東側では非常に珍しい植物なのですが、相模原市内では相模川東側の中央区や南区の雑木林内などでも見られます。博物館お隣の樹林地でもあちらこちらで咲いています。実は中庭の株も、樹林地から1株移植したところ、勝手に増えたものです。
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お隣の樹林地で咲いていた株。仏炎苞が前に垂れていて、その中にこん棒状の花がある)
ミミガタとは、先端が前側に垂れて目立つ仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる苞葉(ほうよう:花を包む葉)の両側が耳のように張り出しているからです。テンナンショウ(天南星)という美しい漢字の名は、球茎(地下茎の肥大した部分)を漢方の生薬(しょうやく)として利用する場合の呼び名です。
このミミガタテンナンショウ、中庭をよく探すと見つかりますが、残念ながら館内側を向いて咲いている株が少ないので、見えるとしたらこんな後ろ姿かもしれません。
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ミミガタテンナンショウの後ろ姿
でも、ちょっとこの後ろ姿もなまめかしい雰囲気がありますね。ご来館の際にはぜひ中庭にも注目してみてください。これから順次、いろいろな花が咲きます。
(生物担当学芸員)