市内中央区のある公園に最近、ツミという小さな猛禽類がいついている、と情報がありました。早速行ってみると、10分も探さないうちにオスが現れました。
ツミはかつて、「幻のタカ」と呼ばれるほど珍しい鳥でしたが、21世紀に入る頃から都市公園などへ分布を広げ、現在では市内の公園や緑地の至るところで繁殖しています。
情報があった場所で繁殖しているかどうかは定かではありませんが、その可能性はあります。なぜかというと、ツミが繁殖していると、たいてい、そばでオナガが繁殖します。この場所でも、すぐそばでオナガが鳴き交わしていました。
オナガはカラスの仲間ですが、カラスよりずっと小さく、姿の美しい鳥です(声はカラスの仲間らしくゲーイ、などと鳴きますが)。おそらくオナガは、ツミのそばで繁殖することで、カラスなどの天敵から守ってもらうことを期待しているのでしょう。
オナガとツミは、体の大きさはさほど変わりません。ツミなどのタカは、自分と同じくらいの大きさの鳥を捕食することもあるのですが、どちらかと言うとツミはスズメくらいの大きさの鳥をよく捕らえます。一方でカラスに対してはかなり激しく追い払い行動を取るので、オナガは捕食の恐怖よりも、そちらの効果を優先しているのでしょう。「タカの威を借るオナガ」とでも言いましょうか。
ただし、タカの仲間の巣がカラスに襲われることもよくあるので、果たしてどれほどの効果があるのかわかりません。ツミとオナガの関係性にこれからも注目していきたいと思います。
(生物担当学芸員)