キノコ好きにとって心ときめく憧れの存在と言えるものがいくつかあります。その代表格が、キヌガサタケです。レースのマントをまとうような立ち姿と、それが朝から広がり始め、午後にはしぼみ始めてしまうはかなさも、憧れを掻き立てる要因です。
6月19日朝、そんなキヌガサタケが緑区のある場所で発生していると連絡をいただき、いてもたってもいられずに現場へ写真を撮りに行きました。
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キヌガサタケ
本種の発生場所は主に竹林で、果たして斜面のマダケの群落の中にたくさん発生していました。思いのほか日当りの良い場所で、付近には異様な臭いが漂っています。
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マダケの切り株に寄り添うように発生していました
それは傘にあたる部分の「グレバ」と呼ばれる粘液が、強い悪臭を放っているからです。これでハエを集め、胞子の分散をハエに担ってもらっているのです。妖艶な姿に悪臭・・なんともアンバランスなキノコです。
発見者から承諾をいただき、標本用に採集しました。
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卵から発生するような独特の姿です
さて、どうやって乾燥させるか・・熱風乾燥機に入れると室内にとんでもない臭いがたちこめそうです。かといって天日干しでは、大量のハエを呼びこんでしまいます。
とりあえず、チャック袋にシリカゲルとともに入れておきました。果たして期待どおりに乾燥してくれるか・・見守りたいと思います。
(生物担当学芸員)