6月30日、給桑開始から31日目、ほぼすべてのカイコの上蔟(じょうぞく:カイコを繭をつくる場所である蔟(まぶし)へ移すこと)を終えました。昨日のブログでもその様子をお伝えしましたが、もう少し詳しく、蔟へ入ってからの様子を写真で紹介します。
カイコに限らず、多くの蛾の仲間は蛹(さなぎ)になる際に、蛹化の場所を求めて上へ上へと這っていく性質があります。そのため、カイコも最初のうち、蔟へ入れても、すぐにそこから出て蔟の枠の上を歩いたりして落ち着きません。しかしそのうち観念して(?)、蔟へ入って繭をつくりだします。外側から足場を確保するかのように糸を渡していきます。
糸(繊維)は、カイコの体内では液状です。それが空気に触れて固まります。糸を吐くというよりも、たとえるなら、納豆の糸を引くように出して、それが出るそばから固まっていくイメージです。
蔟に落ち着いて半日ほどすると、だんだん内側の形が見えてきます。
朝作り始めて、その日の夜にはほぼ繭の形ができます。
翌日は若干透けて見るものの、昨日のブログにも掲載したこの写真のようになり、しっかり繭の形ができています。
しかしまだ工程は半分ほど。そこからさらに1日糸を吐き続けて、繭が完成します。下の写真は作り始めて丸2日経ったもので、すでに完成した繭です。
この後さらに2日経つと、中で蛹になります。
同じように育てて、しかも途中の脱皮の際などに成長が揃うように給桑のタイミングを調整したりしても、成長のスピードはやはり多少の幅が生じます。今回も、最初に繭を作り始めてから最後に作り始めたカイコには、2日ほどの差が出ました。カイコにも個性があるようで、それもまた生きものを飼育する面白さでもあります。
(生物担当学芸員)