先日、市内南区の川沿いに立つケヤキに着生した、大きなヤドリギの株を見ました。ヤドリギは自ら光合成も行いますが、こうして大木の枝と根元を融合させ、水分や養分を吸収する「半寄生植物」です。
写真を拡大してみると、まだ果実がたくさんついていました。「まだ」というのも、例年、この時期には果実がヒレンジャクという野鳥に食べられてほとんどなくなるです。
ヒレンジャクは関東地方では年によって飛来数が大きく異なり、より北の地方の雪や食料の状況によって(つまり、北方の食料事情が良いと)、まったく飛来しない年もあるのです。今年はまだ近隣の地域からヒレンジャクの情報が聞かれません。ここ数年はヒレンジャクの当たり年が続いていたのですが、今年はどうでしょうか。
ヒレンジャクを含むレンジャク類とヤドリギは、じつは深い関係があります。ヤドリギの果実はこのように明るい色をした美しい果実です。
この果実をつぶしてみると・・
果肉に強い粘り気があります。
レンジャク類はこのヤドリギの果実を食べると、納豆のような粘り気のあるフンをします。そのフンに交じった種子が枝に粘着し、芽生えて新たにヤドリギの株を増やしていくという生態です。
ヤドリギの果実は、レンジャク類以外ではヒヨドリが少し食べる程度で、他の鳥にはあまり好まれません。今年はヤドリギもちょっと寂しそうです。果たしてこれからやってくるのか、バードウォッチャーも少し気をもんでいます。
(生物担当学芸員)