3月2日、座間市ゼロカーボン推進課主催の自然観察会のお手伝いをしてきました。
これは、生物多様性の理解を深めるための普及事業で、春先の県立座間谷戸山公園を歩きながら、生物多様性の大切さを実感する自然観察プログラムを用意しました。当初、園内に自生するカントウタンポポ(自生種)と、外来種や雑種のタンポポも観察しようと考えたのですが、今年はまだタンポポが咲いていません。そこで、花壇に咲いている小さな花を見つけてもらいました。
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ミチタネツケバナ
咲いていたのはミチタネツケバナ、オオイヌノフグリ、ホトケノザです。ホトケノザ以外は外来種です。身近なところに外来種はふつうに存在し、しかも人が手を加えた場所ほど外来種が多いことを確認して頂きました。カントウタンポポは、まだロゼット(冬越しの根生葉)と固いつぼみの状態を自生地で観察しました。
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カントウタンポポのロゼットを観察
続いて、園路からちょっと入った林内に入り、4人一組で、食品カップと割りばしを使って落ち葉を拾ってもらいました。順次下の層の落ち葉を別のカップへ拾って観察します。
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落ち葉を丁寧に拾います
すると、下の層ほど落ち葉が粉々になっていき、しっとりと湿り気があります。さらににおいをかいでもらうと、下の層は「カブトムシのにおい!」などと声が上がりました。
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下の層の変化を観察
また、落ち葉をめくると、この季節でも生きものが出てきます。ダンゴムシや小さなゴキブリの仲間、ダニのような小さな動物、ヤスデなどを見つけてくれました。こうした生きものたちが落ち葉を粉々にして、さらにキノコのような菌類が分解することで、森の植物が養分を吸収できるようになる・・つまり、これが森の生態系で、生物多様性が大切な証拠です。
途中、樹木の切り株や伐採木にキノコがたくさんとりついているところや、ボロボロに分解されつつある現場も観察しました。
最後に、花は見られなかったものの、タンポポの雑種のお話をして、生物多様性は遺伝子の多様性も大切なことや、外来種の問題、そして地域の特色を例に、景観や生態系の多様性も大切であることも説明してまとめとしました。
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9組のご家族が参加してくれました
生物多様性の概念は、言葉だけではなかなか理解が難しいのですが、自然観察をとおして考えると意外とわかりやすくなります。参加者は小学校低学年のお子さんとそのご家族が多かったのですが、言葉以上に、自然の生態系の奥深さを感じ取っていただけたようです。ウグイスが「ケキョッ」とさえずりを始めていたり、ニワトコの冬芽が崩芽していたりして、春の訪れも実感できる観察会となりました。
(生物担当学芸員)