今日午後、大会議室で行われたミニシンポジウム「絶滅危惧種カザグルマの保全に向けて」のようすをご報告します。
昨年設立された相模原のカザグルマを守る会会長で、今日のパネラーのお一人でもある西さんが、春の花であるカザグルマをなんと鉢で咲かせて持ってきてくださいました。
シンポジウムに来られた方もきっと驚かれたはずです。花芽形成のタイミングや春の平均気温を調べ、その温度に近い場所に鉢を置いて管理して今日のシンポジウムに合わせて咲かせたとのこと、お見事です。会場の鉢を囲んで質問攻めの西さんでした。
さて、シンポジウムはカザグルマ研究の第一人者である飯島眞さんの基調講演から始まりました。各地の自生地の現状から「気むずかしい自生種のカザグルマ」の保全の難しさを実感し、同時に、たくさんの写真から、多様で変化に富んだ花の美しさを堪能できました。
その後の事例報告では、西さんによる市内自生地の現状と保全の課題、県立中央農業高校草花部からは系統保存に不可欠な組織培養の研究成果と保全計画の検討、陣ヶ下自然愛好会の角南会長からは、横浜市の帷子川沿いにある県内最大の自生地の現状について報告がありました。
地域の自然を愛し、根気よく保全を進められているみなさんの活動に頭が下がり、高校生の清々しくも科学的にハイレベルな発表に希望の光を見ました。そして、締めくくりの総合討論では、パネラー、講師のみなさんと会場との質疑応答に。
そこで思わぬ大成果がありました。市内のある自生地は、株数が非常に少なく、ヤブに飲み込まれてしまいそうな状況で、消滅が最も危惧されている場所です。地主さんのご理解とご協力を得ようといくつかのルートから探していたのですが、行き当たらず困っていました。なんと今日、会場に地主さんのご親戚の方が来られていたのです。その方自ら発言してくださり、地主さんが市外におられること、自生株をご自宅でも育てておられることなど伺い、今後もご協力いただけることになりました。なんという成果!
このシンポジウムは、県内自生地の現状について情報交換し、市民のみなさんにカザグルマをもっと知っていただこうと考えて企画しました。そして、これをきっかけにさらに情報が集まってくれば・・と期待はしていたのですが。こんなに即座に、というか、その場で大成果があがるとは関係者一同驚嘆しました。
相模原、そして神奈川のカザグルマの将来は明るいかな、と思える幸せな時間となりました。お集まりいただいたみなさま、大変ありがとうございました。
(生物担当学芸員 秋山)