2013年3月6日に採集して、いつか展示したいと飼育していたキシノウエトタテグモ。
未だに手がまわらず、展示してお見せするに至っていません。
今日、「あ、しばらくエサやってなかった」と様子を見に行くと、2頭のうち1頭の容器に変なものが…
「あー!クモタケ出たー!!」と、思わず叫んでしまいました。
実はこれ、一種の「冬虫夏草」で、「クモタケ」といいます。
それほど珍しいものではありませんが、たぶん、見たことがある人はそう多くないと思います。
今までキシノウエトタテ以外の種から生えたという報告がなく、寄主に対する選好性が強い種ですので、キシノウエトタテがいなければ、当然生えません。
写真に写っているのは「子実体(しじつたい)」と言って胞子をつけ、分散するための構造物です。キノコの傘みたいなものですね。
これが出てくる前段階で菌糸が宿主(クモ)の体内で成長し、すっかり体中に菌糸をはり巡らした後、子実体を伸ばしクモの住居の扉を押し上げて、巣の外に胞子をまき散らします。
しかし、その胞子がどのような経路で他のクモに感染するのかはよくわかっていません。さらに子実体が出てくるのはクモの成体のみと考えらえており、いろいろと謎の多い生き物です。
本来、関東地方であれば7月の初旬ごろが発生のピークなのですが、飼育下の環境で早く出てきてしまったようです。昨年、採集した場所ではクモタケは見つからなかったのですが、今年はシーズンになったら、採集場所にいてよーく確認してみようと思います。
皆さんもご自宅の近くで、植込みの下や畑のへりなどを注意して観察してみてはいかがでしょうか。これがあればキシノウエトタテがいるという事になりますので、トタテグモ探しもできて一石二鳥ですよ。(学芸班 木村)
大きさはこれくらい。野外ではまっすぐ伸びるのですが、容器の中でひねてしまったようです。
住居の扉を押し上げて出てきているのがよくわかります。
子実体をアップで。
https://www.sagami-portal.com/city/scmblog/archives/2191