「見慣れない真っ赤な虫がいました!」と、時々問い合わせをいただく昆虫「ヨコヅナサシガメ」。
冬場のミニ観察会では、樹名板の裏に集団でいるところを見せて、参加者を驚かせるネタとして重宝しています。
この虫、脚の付け根等に赤い斑紋がありますが、背面から見ると、基本的には白と黒のモノトーン。幼虫の時には背面にも赤い斑がありますが、決して「真っ赤」ではありません。ところが、脱皮して成虫になった直後だけ、鮮やかな朱色になります。
朝、出勤途中にこの色の個体を見かけたので写真を撮り、始業後に追加の写真を撮るために同じ場所に来てみると、なんと、今まさに脱皮しようとしている個体がいました。
手前が脱皮殼。頭を下にした姿勢で脱皮しました。複眼、口吻、気門の表皮だった糸状のものが見えます。
この間約40分間ほど。
脱皮というのは、無脊椎動物にとって、最も無防備になる時間です。こんなオープンな場所で、明るい時間帯に、よくやるなあ、と思います。
何か、外敵を避けるしくみがあるのかも知れませんね。
などという事を考えたのはその後の事。観察中は脱皮の瞬間の瑞々しい色彩に、ひたすら見とれてしまいました。
ところで、周囲の脱皮殻の数を数えたら12個。成虫は9個体いました。どうやらこの場所で次々に脱皮をしているようです。(学芸班 木村)