ふしぎなツバメの巣

ツバメの巣ときいて高級食材を使ったスープを思い出したら、とんでもない食通です。しかし、あのツバメはジャワアナツバメという岩礁などに巣をつくるアマツバメに近いなかまの鳥です。唾液を成分としたタンパク質の塊がその食材なので、私たちがふだん目にする軒先のツバメの巣とはまるで違うものです。あのツバメの巣をスープにしても・・・枯れ草の浮いた泥水にしかなりません。

そんな話はいいとして、今日は午後、環境情報センターの自然環境観察員制度によるツバメの巣分布調査に関連して、調査方法の実地講習がありました。場所は、博物館にも近いサーティーフォー相模原球場。なぜここかと言うと・・。

イワツバメの巣が間近で見られるからです。ツバメの巣はふだんから見慣れている方が多いので、今回はちょっと間違えやすいこちらの巣をしっかり見ていただこうということで、集団繁殖しているこの球場を訪れました。ツバメとのちがいは、天井にぴったりとくっついていることです。出入り口は穴状で1カ所です。

そして、管理者の許可を得て特別に球場内へ入れていただき、こちらの巣も観察。

ふしぎな巣です。巣の上側に鳥の羽根がいっぱいくっついています。じつはこれ、ヒメアマツバメの巣なのです。ツバメと名につくものの、分類上はツバメとはかけ離れていて、先ほどのジャワアナツバメに近い種類です。このヒメアマツバメが、イワツバメの巣を横どりして自分の巣にしてしまうのですが、その時、穴がぽっかり空いているのが嫌なのでしょう。穴をふさぐように自分の羽根をむしったりして、入り口に貼り付けます。入り口の穴が大きかったり、使い古しの巣で大きく崩れたりしていると、こんなふうに羽根をたくさん貼り付けることになります。ヒメアマツバメは地面に下りないため、泥を持ち込むことができないのでしょう。それにしても、こんなに羽根をむしって丸裸にならないのか心配ですが・・。

そんなことを話ながら、観察員のみなさんと楽しく巣を観察しました。ちなみに、ヒメアマツバメの巣についている羽根をよく見てみると、違う種類の鳥の羽根も若干混じっています。空中をふわふわ飛んでいる羽根も採取しているのかもしれませんね。

(生物担当学芸員 秋山)

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