昨年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」。先日、初期機能確認を終え、巡航フェーズに移行したという発表がありましたが、
表題は、その「はやぶさ2」をテーマにした全天周映画、当館でも7月から上映を続けています。上映開始からもう半年以上になるので、ここでちょっと内容を紹介したいと思います。
この作品は「はやぶさ」のミッションと帰還を描き、その成果と偉業を世に広めるのに大きな役割を果たした「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」と同じ上坂浩光監督によるCG映像です。
前半は「はやぶさ」帰還によりもたらされたもの、そこに込められた人々の想い、そしてその「想い」によって一度頓挫しかけた「はやぶさ2」ミッションが復活する様を描きます。見どころは計画に実質上のゴーサインが出て「はやぶさ」がよみがえる、という設定で「はやぶさ2」のミッション内容と、メカニズムを説明するシーン。頭上いっぱいに「はやぶさ2」の内部構造が広がり、説明とともに徐々に組み上がっていきます。イメージ的には某掃除機のCFのような感じですが、何せテーマが小惑星探査機です。ワクワク感が半端でありません。
個人的に大好きなのは、切り離しカメラや地上探査機のところ。サブ画面には切り離されたカメラ屋地上探査機の視点で見た映像が描かれ、ゆっくりと回転したり、跳ねたり、振動したりしています。ディテール好きの私にはたまらない場面です(マニアック過ぎ?)。
後半は、ロケットの説明です。なぜ宇宙に行くにはロケットが必要なのか、探査機を宇宙に送り出すためにはどれだけ膨大なパワーが求められるのか、感覚的にも非常にわかりやすい映像で説明されます。
そして、圧巻は「はやぶさ2」打ち上げシーン。轟音を上げて空を駆け上がるロケットを間近で空撮したかのような映像は、まさに「見たことがない」CGでしか体験することができない映像です。おまけに「リベットの位置まで再現した」というロケットはは本物としか思えません。
やがて、宇宙空間の静寂につつまれ、切り離される「はやぶさ2」。その先に見えるものは…と、ここはあまりにも作品のテーマに関わるシーンなので、描写は控えましょう。
観終わった後、「はやぶさ」が皆の想いに押されて宇宙に旅立った…そんな感情が、余韻のように残ります。作品中ではしばしば「はやぶさ2」を「はやぶさ」と呼ぶのですが、見ているうちにそれも自然な事に思えるから不思議です。
ところで皆さんは、宇宙に行きたいですか?
私は宇宙空間から地球を見る機会があるなら、ぜひそうしたい、と思いますが、地球を離れて暮らしたいかというと、そうは思いません。
この作品の中では「私達の先祖が小舟で大洋に漕ぎだしたように、人類が宇宙に向かうことは自然なこと」という趣旨のナレーションがあるのですが、確かに好奇心が人類を突き動かしている事には賛成です。しかし、その向かう先は宇宙だけではない、と思っているからです。
地球上にも、まだ知られていない事がたくさんあります。高い山や深い海の底もそうですし、ごく身近な場所でも、ちょっと見方を変えるだけでとてつもなく豊かな世界に変わると思っているからです。そんな場所を捨ててまでどこかに行きたいと思わない、という気持ちが強いのだと思います。
話が大げさになりましたが、この作品を観ると、ちょっぴりそんな事も考えたくなります。
さて現実の「はやぶさ2」は、地球から約3,700万kmの場所にいて、11-12月に実施する「地球スイングバイ」で目的地への軌道に入るための加速を続けています。みなさんもぜひ「HAYABUSA2 RETURN TO THE UNIVERSE」を観て、一緒に応援しましょう。
当館では4月以降も上映を続ける予定です。「相模原に行くのは遠い!」という方もぜひお近くの上映館を探してご覧になることをおすすめします。(学芸班 木村)
ポスターには3月31日まで、とありますが、まだまだやります!