仕事始めにお年玉

令和3年1月5日、博物館は仕事始めとなりました。
新型コロナウイルスの感染拡大の状況が続く中ですが、新年も博物館では感染防止対策を行いつつ開館しています。
さて、市民の皆様から、年末年始休館の間にたまっていたお問い合わせや相談などが寄せられるということもあり、毎年仕事始めの日にはそうした対応が多くなります。その中には耳寄りな情報や興味深い資料のお持ち込みなどがあり、職員の間では“お年玉”と呼んでいます。今年もありました。

形や模様のわかりやすいものを選んで並べたところ

市内南区にお住まいの方が、庭に大量の鳥の羽根が落ちていたと持ち込んでこられました。上の写真はその一部で、実際はビニール袋にいっぱいありました。
これは、ヤマシギという鳥の羽根です。上の写真は翼の風切羽(かざきりばね)や尾羽、体羽の一部を並べたものですが、決め手は下の尾羽です。

尾羽(左が上面、右が下面)

左が上面側、右がその裏の下面側です。先端に真っ白な部分があり、とても特徴的です。
これだけ大量に羽根が落ちているということは、これはタカ(おそらくオオタカ)が捕らえたヤマシギの羽根をそこでむしり取り、運びやすくして食事場所へ持ち去ったのでしょう。
ヤマシギは相模原市内では、樹木の多い場所で越冬する冬鳥ですが、基本的に夜行性で目につきにくく、なかなか生息状況をつかめません。下の写真は横浜市内で撮影した個体です。シギの仲間だけに嘴(くちばし)は長いのですが、これは落ち葉や土の中を探るためで、水辺ではなく森の中で生活します。

ヤマシギ(以前撮影したもの)

残念ながら、タカの餌食になってしまいましたが、羽根は南区のその場所に飛来していたことを示す貴重な資料です。採集データと共に、博物館へのお年玉としてご提供いただきました。
今年もこうした資料をどんどんと集めていこうと思います。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No40・仕事始め)

 明けましておめでとうございます。今年もこの職員ブログともども博物館をよろしくお願い申し上げます。

 正月三が日が過ぎると、さまざまな仕事が始まっていきます。市内でかつて広く見られたのが4日のヤマイリ(ヤマハジメ)で、その年初めてヤマ(平地林の雑木林)に入り、堆肥用の落ち葉を取ったり、薪を伐って囲炉裏で燃やしたりしました。
 写真は南区古淵で、お神酒を入れた竹筒と紙垂(しで)を供えています(昭和60年[1985]1月4日撮影)。

                  

                  

 11日も仕事始めとして、縄ないをする日でした。これも南区古淵の同じ家で撮影させていただいたもので、大きな臼の上で藁を柔らかくするために槌(つち)で叩いています。
 縄ないはなるべく朝早く行い、養蚕に用いる桑の木の枝を束ねるスゲーと呼ばれる縄を作りました(同年1月11日。以下の四枚の写真はすべて同日撮影)。なお、早く正月2日に縄ないをすることもありました。

                  

                  

 同じく11日に行われたのが、その年に初めて畑を耕すウナイゾメ(ウナイハジメ)です。その年の良いといわれる方向に向かって畑を鍬で少し耕し、酒や米などを供えて五穀豊穣を祈ります。
 次の写真の上は緑区相原で、ここでは順に三鍬ずつ三回耕し、下は古淵のヤマイリなどを紹介したのと同じ家で、耕したところで拝礼しています。

                  

                  

 そして、使った鍬を洗って酒や米をお供えすることがあり、写真は緑区大島です(昭和61年[1986]1月11日)が、大晦日にこうした鍬や鎌などの農具をきれいにして供え物をする地区もありました。

                  

 正月は日を追ってさまざまな行事があり、これからしばらく紹介していきたいと思います。

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お知らせ プラネタリウム寄席の中止について

来年1月17日(日)に予定しておりましたプラネタリウム寄席「ほしぞら亭」は、新型コロナウイルス感染拡大状況を考慮し、中止といたします。楽しみにしていた皆様には大変申し訳ありませんが、ご理解いただきますようよろしくお願いします。

通常のプラネタリウム番組につきましては、当面は予定どおり上映いたします。
そのほかの博物館のイベント等の予定につきましては、博物館ホームページに随時掲載して参りますのでそちらもぜひご覧ください。

※相模原市立博物館は12月28日(月)~1月4日(月)、年末年始休館となります。

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冬のシジミチョウ

12月23日、お昼休みに博物館お隣の樹林地を歩いていると、ネズミモチの葉の上に何か青いものが止まっているのが見えました。

ムラサキシジミ

ムラサキシジミです。日向ぼっこをしています。
このシジミチョウは、真冬も晴れていればこうして日向ぼっこをします。さすがにこの寒さでは動きも鈍いだろうと近づくと、パッと飛び去ってしまいました。太陽のパワーで元気に飛べたようです。上の写真は1枚だけ撮れたものをトリミング(切り抜き)してあります。

ムラサキシジミは樹木の多い場所ならどこにでも見られます。春から秋に見られる幼虫はアリを手なずけて防衛隊を作るという、ちょっと変わった習性を持っています。身近なところにも自然の不思議がいろいろとありますね!

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介 25 ゐ

今もなお 絹の道たどる 横浜線

 東京都八王子駅と神奈川県東神奈川駅間を走るJR横浜線の歴史は古く、明治41年(1908)に私鉄の横浜鉄道として開通しました(その後、大正6年[1917]に国鉄に編入)。

ちなみに開業当初から市内にあったのは橋本駅と淵野辺駅で、このほかの相模原駅は昭和16年(1941)、同25年(1950)に矢部駅、同63年(1988)には古淵駅が開業しました。

次の写真は、上が開業当初の淵野辺駅、下が昭和初期の橋本駅です。

読み札に「絹の道」とあるように、横浜鉄道は織物をはじめ養蚕・製糸の集積地であった八王子と開港地横浜を結び、生糸を輸送することを大きな目的として敷設されました。

ちなみに「絹の道」と言うと、現在では八王子市鑓水(やりみず)地区に残る道筋が有名ですが、これは近年の通称で特定の道があったわけではなく、鉄道開通以前は多くの道を通って横浜まで生糸や繭が運ばれました。

写真は、現在でもかつての様相を残す「絹の道」です(八王子市鑓水。道の名称は神奈川往還あるいは浜街道とも呼ばれました)。

 

そして、下の地図は、相模原地域の以前の主要な道を記したものですが、横浜線は「八王子道」「神奈川往還」と呼ばれた道に沿うように走っており、まさに八王子と横浜をつなぐ「絹の道たどる」路線であったことが分かります(出典・博物館特別展図録『“道”再発見―道の役割とその移りかわり―』)。

 

このように市内及び周辺地域の歴史や文化は、養蚕や製糸等を抜きにして捉えることはできません。博物館にも養蚕の展示や本などの資料がたくさんあり、見学したり調べたりできます。興味のある方は是非ご来館ください(写真は、上・製糸の道具、下・養蚕の信仰等)。

 

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No39・年神様の棚)

前回は、文化財記録映画「続・相模原の年中行事」に収録された正月準備としてしめ縄作りも紹介しましたが、もちろん映画以外にも正月飾りの写真を各地で撮影しています。

次の五枚の写真は昭和60年(1985)12月30日に中央区田名で、さまざまな形のしめ縄を作って実際に取り付けるまでを撮影させていただきました。まず神棚用のものを作り、それを飾ったところです。

お飾りは多くの神仏に供え、写真では玄関や井戸に取り付けています。

家の中の神棚とは別に、正月を迎えるに当たり年神を祀るための臨時の棚が作られることがあり、その年の縁起の良い方向である恵方(えほう)の方向に作ったり、その方向に年神の棚を向けたりしました。次の写真も、やはり田名の同じ家の年神棚です。

そして、市内では叺(かます)を年神棚に敷くことがあり、叺は藁むしろを二つに折り左右両端を縄でつづったもので、米麦などの穀物や肥料などを入れるのに使いました。年神棚に叺を使うことは、特に津久井地域から相模原地域にかけて見られ、県内の他の地域からの報告はあまりないことが知られています。

次の写真は年神棚を飾っているところで、叺が敷かれているのがよく分かります(昭和60年[1985]12月12日・緑区大島)。また、下の写真の緑区相原では、神棚の前側に年神棚を吊るしていますが、太いしめ縄とともに叺があるのが分かります(昭和60年[1985]12月26日・緑区相原)。

こうして正月飾りや餅つきも終わり、来るべき新たな年を迎える準備が整いました。この職員ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」も今年は本欄が最後となります。お読みいただき、まことにありがとうございました。来年もさまざまな内容の写真を取り上げますので、よろしくお願い申し上げます。

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介㉔ ㋒

美しい 四季折々の花 北公園

(うつくしい しきおりおりのはな きたこうえん)

相模原北公園は、緑区下九沢にある広さ10.5ヘクタールの広大な都市公園です。

敷地内の雑木林を含めて、公園全体に植物園のような雰囲気が感じられるように造られています。

静かな冬の雑木林(相模原北公園)

四季折々の花や野草・樹木などが数多く植栽され、例えば和・洋種あわせて200種・10,000株のアジサイ、紅梅、白梅入り交じりながら咲く約100本のウメ、他にもバラやラベンダーなど四季折々に楽しむことができます。今の季節はちょうど、紅白のウメが咲き始めたところです。

見どころがたくさんある相模原北公園ですが、今回は雑木林の地面を彩る春の野草をご紹介します。

キクザキイチゲ

ミスミソウ

ミミガタテンナンショウ

カタクリ

3月下旬から4月になると、明るい林内のあちらこちらでこんな花が咲いています。鳥たちのさえずりをBGMに散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。

相模原北公園について、交通アクセスなど詳しくは相模原市のホームページをご覧ください。

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生きものミニサロン「自然の素材だけでクリスマス・リースを作ろう!」

12月19日、今年最後の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは「自然の素材だけでクリスマス・リースを作ろう!」です。

今回も12時からスタートしたミニサロン

事前にスタッフが用意したクズやアケビのつるを、参加者のみなさんご自身で輪にしていきます。

つるを巻いてリースの台を作ります

これを台にして、博物館を拠点に活動するボランティアグループである相模原植物調査会のみなさんが用意した植物素材をデコレーションしていきます。

たくさんの素材がずらり!

マンリョウ、センリョウ、トキリマメ、サネカズラ、ハリギリ、リュウキュウハゼ、ジャノヒゲなどたくさんの赤い実、白い実、青い実のほかに、アカマツやヒマラヤスギの松ぼっくりなど、多種多様な植物が揃っていて、素材選びに迷うほどです。

どれにしようかな?

上手に作ってくれるかな?

完成したリースです!

豪華なリースができました!

二つの違う雰囲気のリースを作ってくれた参加者も!

参加者のみなさんは、完成したオリジナルのリースを大事そうに持ち帰りました。
次回の生きものミニサロンは、1月23日(土)です。お楽しみに!

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霜の輝き

氷点下まで冷え込んだ12月17日の朝、博物館お隣の樹林地の地面は、銀白色に輝いていました。

イネ科の葉の上に降りた霜

落ち葉に霜が降り、朝日に輝いていたのです。見る見る融けていく霜は、瞬間の芸術品と言えます。まだ朝日が当たらず、光る前の落葉と霜です。

紅葉と霜の組み合わせは絶妙です

よく見ると、水晶のような氷の結晶がたくさんついています。

立体的な氷の結晶

土の地面に霜柱が立つ日も近そうです。

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小さな白いクモ

博物館敷地内で見つけた小さなクモ。

小さな白いクモをみつけました

体長2mmほどで、垂直円網を張っています。
最初はギンメッキゴミグモか何かだろうと思ったのですが、それにしては網の目が粗すぎます。気になったので採集しました。

1cm角の目盛りがついたカッターマットの上で。なんだかダニみたいですね。

拡大してみると、意外にずんぐりしています。白くてずんぐりしたクモなんてこの辺りにいただろうか?と疑問は深まるばかりです。

ふと、これは水平の網を張る種ではないか?と思いつきました。たまたま垂直に張っていたとうのは、よくある事です。
そこで、飼育用のセットをつくり、網を張らせてみました。

飼育用のセット。基本部分は筒状にした紙です。左手前のにあるのは保湿用のティッシュです。

見事、水平円網を張りました。

網の上にいる幼体

が、よく見るとクモが網の上にいます。
水平円網を張るクモは、通常、網の下側にぶら下がります。
この辺にいるクモで、水平円網の上にとまるクモといったら、マルゴミグモしかいません。

マルゴミグモ成体(2019年6月撮影)。右側のゴミのようなものは卵のうです


マルゴミグモは、場所によって水平の網も垂直の網も張ります。
博物館敷地内ではあまり見かけませんが、周辺にはたくさんいる種です。
幼体だと、なかなかわからないものです。
このクモの成体は初夏と秋に現れます。この個体は秋に卵からかえったものでしょう。
このまま幼体で越冬するのでしょうか。こんな小さな体でよく寒さに耐えられるものだと思います。

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