博物館実習日誌 生物分野 8/24

こんにちは!
生物分野の博物館実習生(青山、藤村、水野、村田)です!
今日から生物分野の専門実習が始まりました。午前中は野外にて植物採集を行い、採った植物を押し葉標本にしました。

野外での植物採集


 
博物館の周辺で花や果実のついた植物を採集しました。
初めての作業で悪戦苦闘しました。

その場で押し葉にします

標本の完成が楽しみです。

午後からは人吉城歴史館水害被災標本のレスキュー作業に参加しました。

慎重に被災標本を扱います

被災した資料を、博物館の専門ボランティアグループである相模原植物調査会の方々と協力して少しずつきれいにしていきます。
今回は本村賢太郎相模原市長がこのレスキュー作業の様子を視察に来られました。

本村市長(右)が視察に来られました

被災標本がまだまだたくさんあるので頑張ります。 
新型コロナウイルス感染症対策と熱中症対策を徹底して、残りの五日間の実習を楽しく有意義に過ごしながら学んでいきます!

※博物館実習は、学芸員資格取得のための大学のカリキュラムの一つで、様々な大学の学生が9日間の実習に臨んでいます。8月初旬に各分野共通実習を終えて、中旬から分野別に分かれて専門実習が始まっています。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.22・盆行事③・盆の砂盛り~地域差がある行事~)

 お盆は、期間中に帰ってくる先祖をお祀りする行事ですが、盆棚を作り、迎え火や送り火を焚いたりするほかにさまざまなことが行われます。

 次の写真(昭和61年[1986]8月13日・南区磯部)では、家の入口の場所に何かを作っています。水で練った砂を積んで板で四角の形に整え、上には竹筒を立てています。これは「盆の砂盛り」と呼ばれ、神奈川県を代表する盆行事の一つとされるものを作っているところです。かつては子どもが作ることが多かったものの、当時すでに各家の大人が作りました。

                    

 完成したものを見ると、上側の竹筒のほかに前面にも竹筒が立てられています。これらの竹筒は、迎え火や送り火の際に火を灯した線香を入れるものです。

                    
 
 盆の間に地域を歩いていると、各家の前に砂盛りが作られ、家によっても材料や形に違いがあるのが分かります。また、名称もいろいろで、特に名前はないというものから、線香を立てることから「線香立て」、あるいはツジやツカなどと言うこともあります。

 下の写真は、いずれも昭和61年[1986]8月の撮影です。最初のもの(磯部)は泥を固めており、前側に階段が付けられています。二枚目(磯部)のものもやはり階段があり、箱の中に土を詰めています。三枚目(磯部)の砂盛りには線香が見えています。
 最後の写真(南区下溝)は隣り合う二軒で作り、線香は前に置いた缶に詰めた砂に立てます。そして、土の上には前回紹介したアライアゲ(里芋の葉に米と刻んだナスを入れる)が置かれ、ろうそくも立てられています。

                    

                    

                    

                    

 もちろん砂盛りは県内各地で作られており、特に秦野市付近では大きくて立派なものが見られ、秦野市上大槻(昭和62年[1987]8月)では、竹で枠を作り、長い階段が付けられています。その下は伊勢原市上平間(昭和62年[1987]8月)で、やはり階段はあるものの形は山型です。

                    

                    

 先ほど砂盛りは「神奈川県を代表する盆行事」と記しましたが、実は分布に特徴があり、三浦半島と津久井地域、相模原市の北~中部では作らず、県内の中央部を帯状に分布することが分かっています。市内では、南区磯部と新戸では濃厚にあり、当麻・下溝・上鶴間は場所によって作り、中央区田名や上溝は希薄ながら家によっては行い、それ以外の北部に当たる中央区の区域と緑区では見られません(『相模原市史民俗編』)。

 このような、県内の分布に特徴がある盆行事として、ほかにも「仏の買い物」があります。盆の間の15日に仏さまが買い物に行くとして、その弁当に赤飯などを作るもので、県内ではやはり中央部を帯状に分布していて、三浦半島や県北部をはじめ、市内では全く行われていません。

 写真は、綾瀬市寺尾(平成4年[1992]8月)の撮影で、盆棚にさまざまなものがある中に、弁当として赤飯のおにぎりが供えられています。仏が買い物に行く先はいろいろで、綾瀬市では町田の市(いち)に行くという家が多く、買い物に出かけて留守になるので15日の昼は食事を供えないと言います(『綾瀬市史 八(下)別編民俗』)。

                     

                     

 
 盆行事として最後となる次回は、もう少し砂盛りとそれ以外の内容について記したいと思います。

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濃色の光沢をもつ幼虫

博物館お隣の樹林地に張られているロープの上を、こんな虫が歩いていました。

濃色の光沢が美しい幼虫

黒い部分がなんとも言えない光沢、あえて言えば、濃色(こきいろ:深い紫色)でしょうか。渋めの美しさを持つアカスジキンカメムシの5齢幼虫です。
この幼虫、真上から見ると印象がぜんぜん違います。

背中に笑顔!

大きな口を開けて笑っている顔に見えます。この背中のせいもあり、動きもゆるやかで、なんとなくおっとりとした雰囲気の虫です。カメムシのわりにはそれほど臭いにおいを出さないため、虫好きには人気があります。おまけに、その名が示すとおり、成虫になるとその姿はまるで宝石です。

まるで宝石!アカスジキンカメムシの成虫

春から秋まで見られる雑木林のカメムシで、博物館周辺でもよく探すと見つけることができます。

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「特別公開 相州津久井城図」を開催中!

現在、当館では「特別公開 相州津久井城図」を開催中です。

津久井城は市内緑区にある戦国時代の山城で、小田原北条氏の支城として、甲斐武田氏との境目に位置する重要な拠点でした。
この津久井城図には、堀(ほり)や土塁(どるい)などで区画された曲輪(くるわ)の配置、名称、大きさ、また周辺の河川名、地名などが細かく記されています。

津久井城図

また、「立ホリ」(竪堀(たてぼり)、「ホリ切」(堀切(ほりきり))など城の防御施設の遺構も描かれています。特に、津久井城の特徴の一つである山城の斜面に上下方向に設けられた「立ホリ」が強調的に記されています。

曲輪や立ホリなどの遺構が詳細に描かれている

さらに、今回は山城をイメージしやすくできるよう、㈱学研パブリッシングに承諾をいただき、同社刊行『歴史群像』127号(初出:2014年10月号)掲載の「津久井城の想定イラスト」(監修:西股総生氏、イラストレーション:香川元太郎氏)も展示しました。津久井城図と想定イラストをご覧いただくと、よりリアルに典型的な山城 津久井城を実感していただけると思います。

津久井城図の奥に多くの城郭イラストを手がける香川元太郎氏のイラストを展示

今回は、常設展示の自然・歴史展示室の戦国時代のコーナーを展示替えしました。そのため、展示作業は閉館後に行いました。

閉館後の作業風景
(バイトさんによる現場合わせでのパネルの微修正)

また、展示場所のわきには令和2年3月から5月に開催予定だったものの中止になってしまった「真・津久井城展」の展示解説書も持ち帰りできるよう配架しております。

「真・津久井城展」展示解説書もご自由にどうぞ

展示期間は、9/22までです。残念ながら、新型コロナウィルス感染拡大予防のため展示解説はできませんが、ぜひこの特別公開をご覧いただき、戦国ロマンを感じていただけるとと幸いです。

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美しいけど・・ひっつきむし

博物館周辺では今、こんな花が咲いています。とても小さくて大きさは5ミリメートルほどですが、美しい花です。

ヌスビトハギの花

これは、ヌスビトハギの花です。形も色も、ハギと名に付くのがよくわかります。林内の薄暗いところに静かに咲く姿は、小さな灯火(ともしび)のようです。
ただし、この花は風流なだけでは済みません。よく見ると、花が終わりかけの株にはこんなものが付いています。

緑色の半円形の部分が若い果実

実り始めの果実です。これが秋になって実ると、ちょっと触っただけでもポロリとはずれ、しかも、衣服などにぴったりとくっつきます。動物の毛などにひっついて種子を散布する動物散布型の植物、いわゆる「ひっつきむし」の一つです。考えてみると、種名も「盗人萩(ぬすびとはぎ)」とはちょっと物騒ですね。名の由来は、人が気付かぬうちに取りついているからなど、諸説あります。

実った果実

微細なため肉眼で見えませんが、表面に鈎(かぎ)状の細かい毛がびっしりと生えていて、それがマジックテープのような作用でくっつきます。肉眼で見えるほどの大きな刺でひっかかるようにつくものなどと違い、面でひっついているため、ちょっと手で払ったくらいでは取れません。洗濯をしてもなおひっついていることがあるくらいです。
粘着性の液でひっつくものに比べるとまだ良いかもしれませんが、やっかいなひっつきむしです。花の可憐さに惑わされてはいけませんね。

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ヤブランが見ごろです

博物館の前庭では今、ヤブランが淡い紫色の花をたくさん咲かせています。

博物館前庭のヤブラン

ヤブランは、「ラン」と名前に付きますが、ラン科ではありません。
最近の図鑑では、キジカクシ科というちょっと耳慣れないグループに属します。かつてはユリ科でひとくくりだったものが、進化の過程に沿って系統分類を見直した結果そうなりました。キジカクシという種名よりも、学名のアスパラガスの方が馴染みがあるかもしれません。
いずれにしても、ヤブランは今、ランでもユリでもなくなったわけです。でも、ユリとの共通点はちゃんとあって、それは花びら(正確には花被片=かひへん)の数です。

6枚の花びらで構成されるヤブランの花

6枚に見えますが、よく見ると、内側に3枚、外側に3枚あります。
今、街路や幹線道路の路肩などで激増している外来植物のシンテッポウユリをよく見かけるので、比べてみて下さい。内側の3枚を外側の3枚の花被片が包み込むようにしてラッパ状の花を作っています。

シンテッポウユリ やはり内側に3枚、外側に3枚の花弁

ラッパ状でわかりにくいかと思いきや、かえって内側外側の区別がよくわかります。シンテッポウユリは放っておくとどんどん増えてしまうので、花を摘み取って解剖してみてもよいでしょう。
さて、ヤブランは小さな6枚の花被片が、放射状に広がっています。このような花の形はランにはありません。おそらく、穂状に小さな花が並ぶ様子からランとついたのでしょう。
ミツバチやクマバチが花を訪れては体に花粉をたくさんつけていました。

ヤブランの花にとりつくミツバチ

秋には黒紫色の果実がたくさん実りそうです。

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クワコの擬態

博物館のクワの木にクワコがいると、守衛さんが教えてくれました。
クワコは、カイコに最も近い仲間とされる野生の蛾です。幼虫も成虫も形がよく似ていて、何千年か昔、クワコの祖先を人間が飼育し始めて、改良を重ねてカイコになったのではないかと推定されています。

クワコの4齢幼虫(8月8日)

クワコの幼虫は、小さいうちはアゲハなどと同じように、小鳥のフンに擬態します。上の写真は先週8月8日に撮影したものです。すでに4齢になり、小鳥のフンというには少々大きくなっていますが、1齢から3齢までは、葉の上にいると、大きさも模様も本当に鳥のフンに見える見事な擬態です。
そして8月14日、クワコは5齢になっていました。

クワコの5齢幼虫

この大きさになるとさすがに小鳥のフンには見えないので、今度は枝に擬態しています。ちょっと枝の方が細くて擬態は不十分ですが、模様の似せ方は見事です。
そして、こんな風に頭を上に伸ばしてまっすぐになり、クワの枝になりすましているクワコですが・・

枝になりすましているクワコの幼虫

頭を少しつついたりすると、頭を下げて眼状紋(がんじょうもん)を見せます。

頭を下げて眼状紋を目立たせる

おお!怖い顔!
目玉模様で外敵を驚かすのも、昆虫や鳥などの擬態にはよくあるパターンです。しかし、人間から見るとちょっとかわいくも見えてしまいますね。これが外敵(特に鳥)に、どれほどの効果があるのかわかりません。でも、このように進化してきたからには、それなりの効果があるのでしょう。そしてカイコに残る眼状紋も、野生だったときの遺伝子の名残なのですね。
さて、同じ木には、すでに繭もありました。葉を丸めてその中に作られています。

葉を丸めた中に作られたクワコの繭

2週間ほどすると成虫が出てくるはずです。もしタイミング良く見つけられたら紹介したいと思います。

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探してみよう!博物館のクモ

博物館の敷地にこんなクモがいます。

コガタコガネグモ

名前はコガタコガネグモ。
住宅地などにもいますが、茶色と黄色の縞模様がきれいなクモです。
まだ見たことがない人は、今なら博物館の前で見られます。
場所のヒントは駐輪場の近く。
何日間かはここにいると思うので、ご来館の際にはぜひ。
ただしお留守の事もありますので、あしからず。

お留守の時。白い帯があるのでわかります。

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夏の夕立の後は、虹

猛暑が続いています。
でも今日(8月12日)は、気圧の谷の影響でお昼頃から風が強くなり、積乱雲の発達が見込まれました。
そして、午後になると雷鳴がとどろき、土砂降りに。視界が遮られるほどの雨でしたが、午後3時45分頃に空が明るくなり、雨脚が弱まりました。
この時間、こんなお天気の時は、虹が出ます。博物館の屋上へ上がると・・

博物館の天体観測室の上に出た虹

天体観測室を覆うように低めの虹が出ていました。
虹は、必ず見ている人(自分)の真後ろに太陽が来る方向の正面に出ます。太陽を背にして、前方に降る雨がプリズムの作用をしているのです。ということは、ある人が見ている虹は、その人だけのもの、とも言えますね。見ている人が動けば、虹も動きます。上の写真を撮影した位置からほんの少し場所を変えても、ちょっと違った位置に見えます。

数十メートル動いただけで違う位置に見えます

虹は、太陽と自分を結ぶ線の延長上から42度の高さに出るため、太陽の位置が低ければ大きく、高ければ小さくなります。8月の午後4時前の太陽はまだ十分に高いので、小さめの虹になりました。
そして今日の虹には、副虹(ふくにじ、またはふくこう)も出ていました。副虹は主虹(しゅにじ、またはしゅこう)と比べて薄いので、拡大して少し画像を調整しました。

主虹の上に薄く副虹が見えます

虹の色の順番は決まっていて、主虹は一番外側(上)が赤で内側(下)が紫になりますが、副虹は逆で、一番内側が赤です。
虹は刻々と濃さを変えながら、雨が遠ざかるのと同時に消えていきました。その美しさは、はかなさと同調していっそう際立つものと言えるでしょう。

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ミニチュアのツボのようにも玉ねぎ型のようにも見えるクモの卵のう

ちょっとツボのようにも、玉ねぎ型のようにも見える卵のう(直径5mmほど)

ちょっと長いタイトルになりましたが、写真は、コクサグモの網につけられたシロカネイソウロウグモの卵のうです。

手前に写っているのがコクサグモ 奥にシロカネイソウロウグモの卵のうが見えます

クモそのものは、近くのジョロウグモの網にいました。

ジョロウグモの網にとりついたシロカネイソウロウグモ

宿主の網についた餌を盗み取って暮らしているクモですが、時々複数個体が同じ餌にとりついている事もあります。

同じ餌にとりつくシロカネイソウロウグモ

右側の個体が餌を放してしまいました。

片方が餌を放してしまいました

ジョロウグモの網の捕獲面から離れた位置に命綱をつけてあるので、脚を放すと、自動的に網の面から離れるようになっています。無防備に宿主の網を歩き回っているわけではなく、ちゃんと逃亡手段が用意してあるのですね。

ところで、この時期、ほかにも似たような卵のうを見かけます。

チリイソウロウグモの卵のう

これはヒメグモ(ニホンヒメグモ)の網で見つけました。チリイソウログモです。やはり宿主の網から餌を盗む習性があります。卵のうの形もどことなく似ていますね。

卵のうの下にいるのがチリイソウロウグモです

分類も習性も近い仲間が、卵のうも似た形をしているというのはちょっと面白いです。

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