人吉植物標本レスキュー 洗浄作業開始

7月の豪雨災害で被災した人吉城歴史館所蔵の植物標本レスキュー作業を、7月31日から本格的に始めました。
フェイスシールド、マスク、ニトリル手袋で防備した相模原植物調査会のみなさんが、慎重に標本の束を開封します。

慎重に開梱

まずは泥のかぶり方が一番ひどい状態のものを仮洗浄します。

泥のかぶりかたがひどいものを洗浄

比較的泥が少ないものも、水をたっぷり含んでいるので、大切な標本ラベルがはがれていたりします。これが標本と離ればなれになってしまうことは絶対に避けなくてはいけないので、一番神経を使うところです。

泥をかぶっていなくても水のダメージが甚大です

絵筆を使って慎重に泥を洗い落とします。

集中力のいる作業です

こうして洗った標本を一つずつ水を切り、温風乾燥機に入れて乾燥します。これでとりあえずはカビの増殖を防げますが、まだ泥を含んでいるため、状態が悪いものはさらに洗浄と乾燥を行います。くるまれた新聞紙を含めて、届いているもの全てを完全に人吉市へお返しするため、標本のカケラ一つも見落とさないように集中して作業しています。
相模原植物調査会のみなさんは、2011年の東日本大震災の時にも陸前高田市立博物館の津波被災標本のレスキューを行いました。その時の作業を思い出しつつ、お互いに作業手順を確認しながら進めています。半世紀以上前の貴重な学術資料を後世に残すための作業、これからしばらく続きます。

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かいこごっこ

7月1日のブログで、博物館の近くにある、大野村いつきの保育園の年長さんたちがお散歩の途中いつも来館して、カイコを観察してくれている様子をお伝えしました。そして、お散歩から帰ってカイコのお絵かきをしたり、かいこごっこをしているので、その作品などを見せていただくお約束をしていたところ、今日、持参してくれました。

よく観察したことがわかる作品です!

上の写真はカラーコピーされたものですが、お一人ずつ自分の作品(実物)を紹介しながら見せてくれました。
そしてこちらは、かいこごっこで、カイコに変身した様子!あまりのかわいらしさに感激してしまいました。

カイコになりきり!(画像を一部加工しています)

今日も羽化の動画をたっぷりと見たり、自然・歴史展示室の養蚕の道具を見たりして、博物館を楽しんでくれていました。

今日もいろいろと観察!

せっかくのみなさんの作品を、できれば展示したいと先生にも相談しているところなので、もしかしたら来館された皆様にご披露できるかもしれません。お楽しみに!

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ヤマシロオニグモ

博物館周辺で見つけたクモ。比較的大きく、色彩は地味。いかにも「クモ」という見かけです。

ヤマシロオニグモ

ヤマシロオニグモのメス。体長15mmほどで、平地の樹林などで見られます。この個体は、茶褐色に黒い斑紋がありますが、中には大きな白い斑紋を背負っているものなどもいて、模様の変異が多い事で知られています。
このあたりでは、同じ位のサイズのオニグモ類としてヤエンオニグモを良く見かけるのですが、腹部前端の形状が異なるので、見分けがつきます。

ヤエンオニグモ。腹部前端の「肩」の部分が尖っている。オニグモなどと共通の特徴。ヤマシロオニグモは「肩」が丸く、似た種にイエオニグ、コゲチャオニグモなどがある。

ヤマシロオニグモは特段珍しい種ではなく、博物館周辺の環境であれば普通にいるだろうと常々思っていたのですが、ようやく出会う事ができました。

次の写真はヤマシロオニグモを正面からアップで撮ったものです。長い毛がたくさん生えていること、8個ある目のうち正面にある4個の位置が良く分かります。クモが苦手な人はクリックしない方が良いと思いますが、興味のある方は大きい画像でお楽しみください。

正面から見たところ。クリックすると拡大します。

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玄関から20歩の自然 その28 メタリック!

昆虫の中には時々、妙に鮮やかな金属光沢を持つものがいます。身近な昆虫の中で代表格は、キンバエでしょう。
ただ、あまりにもイメージがよろしくないので、今回はこんな昆虫を紹介します。

アカガネサルハムシ

アカガネサルハムシです。庭に植えられたブドウの葉や、フェンスにからみつくエビヅルの葉の上などにいることがあります。小さいのでちょっと見つけにくいのですが、遠目に見てもキラリと光るので、目が慣れてくると結構見つけられます。

葉の上でおとなしくとまっていることが多い

こちらもメタリックな輝きでは一歩も引かない、アシナガキンバエ。冒頭に紹介したキンバエと名前は似ていますが、分類上はまったく別のグループに属するハエです。

アシナガキンバエ

樹木の多い公園などでも見られますが、アシナガキンバエも小さくて、よく飛び回るので見つけるのはちょっと難しいかもしれません。
メタリックではありませんが、博物館のまわりのミズキ林ではこんな昆虫も見られています。

エサキモンキツノカメムシ

ハートマークを背負う虫、エサキモンキツノカメムシです。
雨模様が続きますが、それだけに雨がやんでいる日中は昆虫の動きが活発になり、こんな虫たちを探しやすくなります。

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玄関から20歩の自然 その27 蒸し蒸しの梅雨空もムシたちには快適

今日(7月28日)も梅雨空が続いています。湿度が高くて人間には不快ですが、昆虫たちにはとっても快適な気候のようです。7月に入ってから急に大きく成長してきたオオブタクサをよく見ると・・

オオブタクサ

アオバハゴロモが羽化してとまっていました。左の白いモジャモジャは幼虫です。

アオバハゴロモ 左が幼虫、右が成虫

こちらは、近い仲間のベッコウハゴロモ。翅(はね)の模様がなかなか渋いですね。

渋い模様のベッコウハゴロモ

どちらも蛾と間違えられることが多いのですが、大きな分類ではカメムシ目(もく)に属し、セミに近いグループです。
アオバハゴロモのモジャモジャな幼虫も不思議な姿ですが、ベッコウハゴロモの幼虫はさらに奇抜です。

お尻に白い飾りをつけたベッコウハゴロモの幼虫

お尻に白い飾りをつけたようで、なんともユーモラス。おまけに、ぐるぐるお目々。

目がぐるぐる・・

アオバハゴロモやベッコウハゴロモの幼虫が付けている白いものは、お尻付近から出すロウ状の物質だそうです。なぜこんなものを付けているのか・・おそらくカムフラージュの一種なのでしょうが、詳しいことはわかりません。
庭木や街路樹、フェンス沿いなどに普通に見られる昆虫なので、探してみて下さい。顔をよく見ると、セミに近いということがよくわかるはずです。

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ヒルガオ

二十四節気の大暑に入っているというのに、まだまだ梅雨空が続きそうです。
5月のこのブログで、コヒルガオを紹介しました。その時に、ごく近い仲間のヒルガオも過去の写真を使って紹介しましたが、その写真と同じ場所でヒルガオが咲き始めました。「コ(小)」と付かないだけに、花も少し大きめです。それにしても、雨粒がちょっとおしゃれですね。

ヒルガオの花

博物館近くのフェンスにからみついていて、ここの株は真夏に咲きます。春の終わり頃から咲くものもありますが、コヒルガオよりも少し花期が遅く始まるのも特徴のようです。
コヒルガオとヒルガオは、実は識別がとても難しいということを前回のブログでも書きました。一番のポイントとなるのは、花のすぐ下の柄がつるっとしているのがヒルガオです。

ヒルガオの花の柄。ひだが無くつるっとしている

下の写真はコヒルガオで、柄にヒダがついています。

コヒルガオ 柄にひだが見える

葉や、花を支えている2枚の苞葉(ほうよう)という部分が比較的大きくて、先が丸いというのもヒルガオの特徴なのですが、コヒルガオと共に個体差が大きくて、それだけでは識別できません。

ヒルガオの葉 この株はあまり典型的な形ではない

今、コヒルガオもヒルガオもあちらこちらのフェンス沿いや、街路樹の植え込みなどで花を咲かせています。歩道でついつい立ち止まり「どっちかな?」と見比べてしまうのですが、あまり熱中していると通行の邪魔になるし、不審者になってしまうので気をつけています。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.19・うどん作り)

前回は夏場のごちそうとして「酒まんじゅう」を取り上げましたが、相模原は畑作地帯として、冬場に非常に多くの大麦や小麦を作っていたことを紹介してきました。このうち、大麦は米と混ぜて麦飯として食べ、小麦は粉にして「酒まんじゅう」のほかにも、うどんなどとしてたくさん食べられました。

市域では、そば粉で打ったものではないうどんのことも「そば」と呼び、日常的に食べるほか、自宅で行われた結婚式でも「そばぶるまい」などと言って来客にうどんをたくさん振る舞いました。このように、うどんは普段の生活から結婚式などのハレの場でも欠かせないもので、特に、かつての毎日の夕食はほとんどうどんが食べられていました。

次の写真は、昭和63年(1988)7月に緑区下九沢で、文化財記録映画「相模原の祭礼行事」撮影時のものです。前回の酒まんじゅう作りとともに撮影され、小麦粉に水や湯を入れてこね、麺棒で伸ばして包丁で切ったものを釜で茹でています。

上の写真ではうどんを伸ばし、切るのに手で行っていますが、次第にうどん作りの機械(製麺機)を使うようになり、ある家では昭和4年(1929)頃に買ったと言います。この機械では生地を薄く伸ばして切ることができ、機械で作ったうどんを初めて出したところ、手打ちと違って太さが均一な麺なので何かおかしい、と言われたという話も残っています。

写真(平成8年[1996]11月・南区下溝)では製麺機で麺を切り、小麦粉をこねるのに使うコネバチの回りに掛けています。こうすれば麺がくっついたりせずに茹でる際によく、台所に持っていくのも運びやすくなります。

最初にかつては日常的にうどんを食べていたことを紹介しましたが、暑い夏場には茹でた麺を、水でさらして冷たくして汁に付けて食べる「あげそば」、反対に冬は野菜などと一緒に麺を煮込んで温かくした「にこみ(にごみ)」が作られました。
両者の麺の作り方としては同じですが、あげそばは、茹でた後に水でさらすというようにひと手間かかる上に、野菜と煮ることもなく小麦粉だけで作るため、にこみに比べてどうしても一食分の粉を多く使い、少しぜいたくという感じもあったと言います。

写真は上がにこみ、下があげそばです。上は製麺機でのうどん作りと同じ時の平成8年[1996]11月、下は同年4月の撮影で、両方とも南区下溝の同じ家で作っていただきました。

こんなにうどんをたくさん食べていたと聞いて少し驚かれましたか。このほかにも、例えば、あげそばの上から暖かい汁を掛ける「ぶっかけ」や、野菜と煮込むのでなく茹でた麺をそのまま椀に取って食べる釜揚げうどんのような「ひきずり(だし)」と呼ばれる食べ方があり、麺ではなく、小麦粉をお好み焼きのように焼いた「やきもち」もありました。
こうしたいろいろな食べ物の作り方や食べる機会、また、それにまつわるさまざまな伝承や話の中にも、地域の興味深い歴史や文化を伺うことができます。

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令和2年の標本レスキュー開始

7月23日、博物館にずっしりと重い段ボール箱が2箱届きました。
これは、7月4日に熊本県の球磨川の水害によって被災した、人吉城歴史館所蔵の前原勘次郎植物標本の一部です。

被災標本が入ったダンボール箱

収蔵庫が2メートル以上浸水し、納められていた資料のほとんどが水没してしまいました。
当館では平成23年にも、東日本大震災の津波被害に遭った陸前高田市立博物館の植物標本のレスキュー(洗浄と乾燥など)を行いました。作業にあたった相模原植物調査会のみなさんと、そのノウハウと技術を生かそうと、今回もレスキューに参画することにしました。
箱を開けてみると、完全に水没していたようで、たっぷり水を含んだ上に泥がかなりかぶっています。

中には水をたっぷり含んだ植物標本が

現地の報告によると、被災した標本は約33,000点、ダンボール箱にして数百箱になるようです。全国各地の博物館や大学、植物園などがレスキューに名乗りを上げ、分散して作業を進めています。

標本をはさんだ新聞紙が歴史的な資料であることを物語ります

標本の多くが70年以上前に採集され、学術的に極めて重要な標本です。カビ対策など作業者の安全をはかりながら、慎重に洗浄作業を進めていこうと思います。

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おかいこさま飼育中(48日目 最後の羽化)

6月3日の掃き立てから48日目の7月20日、乾燥せずにとっておいた繭の中で残りの1つが羽化しました。
羽化は夜中に始まることが多いのですが、この繭は午後明るい時間帯に羽化したようです。繭の中は見えないのですが、カタカタと繭が動き始めたのです。
すると繭の片側が濡れてきて、あっという間に茶色く変色しました。

酵素で茶色いしみができた繭

これは、成虫が口から酵素を出して、繭をかためている「のり」成分を溶かしているのです。そうして、繭をほぐして穴をあけます。繭には穴があきますが、繊維自体は切れていません。また、成虫の酵素を出す口は、食べるためのものではないので、成虫は飲まず食わずで最後の時間を過ごすことになります。
モゾモゾと頭から出てきます。このときに繭からうまく出られない成虫もいるので、少し穴をひろげてあげました。

頭が見えてきました

前脚(まえあし)が出て、翅(はね)が抜けると後は早くなります。

翅が抜けたら、あと少し!

全身が出てきたので、繭につかまりやすいように支えてあげて・・ポーズ!

無事に繭から出られました

この様子は、タイムラプス映像(コマ撮りの早送り動画)に編集しましたので、カイコ展示で放映中です。

現在、この映像を展示中です

もう生きたカイコは展示していませんが、ぜひ羽化の様子の映像をご覧下さい。

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アナグマが3頭

7月16日のブログで、博物館お隣の樹林地に仕掛けたセンサーカメラにアナグマの親子が写ったことを紹介しました(撮影日は7月11日~14日)。
7月17日には、3頭が写りました!

3頭のアナグマ

背中を向けていますが、動画を丁寧にチェックすると、尾の形や顔つきから3頭ともアナグマでした。ちなみに、争うこともなくこれだけ接近して写っているのは、3頭とも同じ種類の哺乳類と考えるのが自然です。
さらに、違う角度で写った画像で確認したところ、上の写真の一番左が母親で、右の2頭は子どものようです。アナグマは1回に4頭前後を産むことも多いのですが、子どもはまだ他にいるのでしょうか。
先日から夜のモノクロ写真ばかりなので、春に写った昼間のアナグマの写真も紹介します。

昼間写ったアナグマ(2020年5月25日撮影)

アナグマは主に夜活動していますが、時々真昼も活動します。上の写真は午後2時頃に写ったものです。
これからの暑い季節は、夜もたくさんの小動物が活動しているため、アナグマもどちらかというと夜の食べ物探しの方が活発になるかもしれません。

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