令和6年度歴史分野実習~1日目~

皆さんこんにちは。歴史分野実習生です。分野別実習初日の8月13日に、相模原市内の甲州道中の宿を4か所訪れました!
最初に私たちは、小原宿本陣を訪れました。本陣とは、参勤交代の際に、大名や役人が宿泊のために訪れ、利用した建物です。小原宿本陣は、神奈川県内で唯一現存するものとなっています。
ただ、訪れた当日はあいにくの休館日で、外から見ることしかできませんでした。しかし、周りを見渡してみると、屋号を掲げている家が多く、昔の町並みを感じることが出来ました。家々は、全て入口が甲州道中の方を向いて建てられていました。

 

小原宿本陣

 

次に訪れたのは、JR相模湖駅の近くにある与瀬宿です。与瀬宿本陣は建物が現存していませんが、近くには明治13年の巡幸の際に、明治天皇が休まれたことを示す石碑がありました。

明治天皇與御跡小休阯碑

 

3番目に訪れたのは、吉野宿ふじやです。ふじやは、市登録有形文化財の建物で、かつては旅籠「藤屋」として栄えました。

吉野宿本陣はふじやのむかいにあり、五層楼(五階建て)の立派な建物でしたが、明治29年の大火で焼失し、現在は土蔵のみが残っています。吉野宿ふじやの建物内には、当時の吉野宿の町並みの模型や、周辺の遺跡で発掘された土器などの考古資料、養蚕や炭焼きの際に使った道具などの民俗資料を見学することが出来ました。

吉野宿ふじやの外観

ふじや建物内見学の様子

 

最後に訪れたのは関野宿です。関野宿の本陣跡は少し見つけにくい場所にありますが、相模原市内にある宿場のなかで最西端に位置しており、甲斐国に通じる最後の宿場として重要視されていました。残念ながら、関野宿も明治21年以降の度重なる火災によって本陣および宿場が焼失してしまいました。

関野宿本陣跡

 

今回はこの4か所を車を利用しながら回りましたが、当時は歩いて移動していたことを考えると、昔の人々の苦労が窺えました。皆さんもこの夏休みに一度、甲州道中を訪れてみてはいかがでしょうか。

(令和6年度歴史分野実習生)

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【令和6年度博物館実習】3日間の共通実習が終了しました。

記録的な暑さが続いているこの夏、県内では8月に入ってからの半分以上が最高気温35℃を超える猛暑日となっています。
相模原市立博物館は8月25日(日)までの期間、暑さに負けず、毎日休まず開館しています。期間中はプラネタリウムの夏休み特別上映も実施中!楽しい夏のお出かけに、ちょっと涼みに、ぜひ当館へお越しください!

さて、夏恒例の行事と言えば色々思い浮かびますが、博物館の夏の風物詩の一つが「博物館実習」です。この実習は、各大学から学芸員の資格取得を志す学生を受け入れ、博物館活動や学芸員業務に必要な素養を身につける、いわば実地訓練です。令和6年度は全6分野で19名の学生を受け入れています。

実習生総勢19名で3日間の共通実習がスタートしました!

当館の博物館実習は、全9日間のうち3日間を全分野共通で、残り6日間を分野ごとに実施するという特徴があります。専門性を活かすだけでなく、専攻が異なる学生が一堂に会する共通実習は、地域の総合博物館である当館ならではのプログラムと言えるでしょう。

これから一緒に実習を頑張る仲間として、自己紹介タイムで打ち解けます。

8月6日(火)の共通実習1日目は、座学と館内見学に始まりました。当館職員が講師となって館の管理運営業務や学芸員業務について講義をした後、午後からはバックヤードから展示室まで館内を見学し尽くします。
一般には開放していない空調機械室やコントロール室、イベント以外では訪れる機会が少ない天体観測室などが印象的だったようです。また、幼少期から当館を訪れていたという学生は、実習で改めて常設展示を観覧したことが新鮮だったとのこと。

収蔵庫の中までじっくりと見学。

8月7日(水)に実施した共通実習2日目では、3班に分かれて自然系資料の取り扱い(植物標本の固定作業)、人文系資料の取り扱い(掛軸の取り付け、取り外し)、資料の梱包(本物の土器を使用します!)を行いました。
前日までとはうって変わり、たくさん手を動かす内容が中心でしたが、皆さん熱心に取り組んでいました。自身の専攻と異なる分野の資料の扱いに苦慮したり、実物資料にドキドキしながら接したり、とても忙しい1日になったことでしょう。

掛軸の取り扱いでは「矢筈(やはず)」という専用の道具を使います。

タケノコ状に巻かないように、巻緒(まきお)は正しい手順で結ぶように…、考えることがいっぱい!

8月8日(木)、共通実習ラストの実習内容は展示解説です。常設展示の中から自分で資料を選び、シナリオを考え、実際に展示解説を行います。資料について調べたことを持ち時間の5分間でどれだけ伝えられるか、観覧者は理解できる内容かを考え、資料と向き合った結果を言葉にします。緊張する姿も見られましたが、皆それぞれ良かった点や反省点などが見つかりました。
当館の実習における展示解説の本番は、自分たちで作り上げる分野別の実習生展示を、来館者の方に向けて解説することです。共通実習をとおして課題が明確になったことで、本番ではより良い展示解説ができることを期待しています。

2羽のカラスの違いは…?

立体的な文様が特徴的な勝坂式土器について解説しています。

同じ「クワ」でも、形状が違う…!?

3日間の共通実習が終了し、いよいよこの後は分野別実習が始まります。今月末頃からは実習の集大成である実習生展示(※)も館内各所でご覧いただける予定です。タイミング次第では、実習生による展示解説にもご参加いただけるかもしれません!
令和6年度博物館実習生の今後の成長をお楽しみに!

(歴史分野学芸員)

※実習生展示の展示期間は分野によって異なります。告知なく開始・終了することがありますので、ご了承ください。

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勝坂遺跡史跡指定50周年の記念講演会を開催しました!

令和6年7月2日に勝坂遺跡は史跡指定50周年を迎えました。
以前、当ブログでも紹介しました。
https://www.sagami-portal.com/city/scmblog/archives/35729

8月3日、大貫英明さんを講師にお招きし、これまでの勝坂遺跡の調査の歴史、史跡指定の経緯などを講演いただきました。
大貫さんは勝坂遺跡以外にも、市内の発掘調査を多く主導されるとともに、相模原市史や城山町史、津久井町史の編さんにも携わっており、遺跡や文化財に精通された方です。

会場には約70名の方にお越しいただき、盛況でした。

会場の様子

また、今回の記念講演会では、エントランスで開催中の勝坂遺跡ミニ展示について、大貫さんに解説していただきました。これは講演会の内容を検討している中で、考古担当学芸員から提案したもので、出土品の特徴や写真パネル、地図から説明することで、参加者の理解をより深めることを目的としました。

展示解説の様子

展示解説の様子

今回の記念講演会では、地域の重要な遺跡である勝坂遺跡がなぜ史跡指定を受けるに至ったのか、しっかりとお伝えすることができました。これからも市内の遺跡の重要性をわかりやすく、発信していきます。
勝坂遺跡ミニ展示は9月1日まで開催していますので、ぜひご覧ください!
(考古担当学芸員)

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ホソオチョウの調査

前回のブログの調査の主たる目的は、アゲハチョウのなかまの外来種、ホソオチョウの観察でした。
このチョウは県内での記録があまり多くなく、「神奈川県昆虫誌III」によると、相模原市では緑区を中心にぽつぽつと報告されているようです。
なかなか実物を見る機会がないチョウだったのですが、佐野川でいつもお世話になっている方から発見の情報を教えていただき、現地に急行しました。
結論から言ってしまうと、一頭の成虫がひらひらと飛んでいるのは確認できたものの、写真に収めることはできませんでした。
しかし、今回は成虫よりももっと面白い(!?)ものを観察することができました。

ホソオチョウの幼虫

ホソオチョウの幼虫です!
頭に近い部分の二本のツノ状の突起や、体のイボイボや黄色の模様など、とても面白い形をしています。

ウマノスズクサ

幼虫がいたのはウマノスズクサという植物です。
在来種のジャコウアゲハというアゲハチョウの幼虫もこの植物を食べるので、競合が心配されています。

茎を歩いています

こちらではお食事中

あまりの面白さに、何枚も写真を撮ってしまいました。
成虫を写真に収められたら、またブログで紹介したいと思います。

さて、調査地の周辺ではもう一種、面白い昆虫が観察できました。
ススキにとまっていた、アカハネナガウンカです。
濃いオレンジの体に長い翅(はね)。その名のとおりの体をしています。

アカハネナガウンカ

近づくとちょこちょこと動き回り、とてもユーモラスです。

白い複眼(ふくがん)が目立ちます

白い複眼(ふくがん)と、黒目のようにも見える偽瞳孔(ぎどうこう)のおかげで、まるでこちらを見ているかのような顔立ちをしていますね。
(動物担当学芸員)

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赤とんぼの季節へ

8月9日、緑区の佐野川地区へ外来昆虫の調査に行きました。猛暑の中で汗だくになりながらの調査だったのですが、たくさん飛び回っているトンボを見ていると、季節が着実に進んでいることがわかります。それは、「赤とんぼ」と呼ばれるトンボの体がだいぶ色づいてきているからです。
こちらはマユタテアカネ。顔にチョビひげのような黒斑があるのが特徴です。

マユタテアカネ

真っ赤になって成熟しています。

マユタテアカネ

こちらは、ミヤマアカネ。翅(はね)の先端付近に茶色の帯があるのが特徴です。

ミヤマアカネ

こちらは同じミヤマアカネですが、真っ赤にはなっていない個体です。この写真では、未成熟のオスか、メス(メスは真っ赤にはなりません)かわかりません。

ミヤマアカネ

真っ赤なトンボの割合が増えてくるころ、本格的に秋を感じられるでしょうか。まだまだ続きそうな猛暑も、そんなことを考えながら耐えて過ごしたいと思います。
(生物担当学芸員)

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真夏の花

8月7日は二十四節気の立秋でしたが、気温からは一向に秋の気配は感じられません。しかし、立秋あたりを境に、初夏に咲いていた花から、真夏や初秋に咲く花へと移り変わります。すでに少し前から咲き始めていますが、こちらはヘクソカズラです。

ヘクソカズラの花

全草に湛えた強めのにおいに由来しますが、それにしてもずいぶんとひどい名前です。見てのとおり、花はとても可憐です。
こちらはヤブランです。

ヤブラン

博物館の前庭に特に多く、もう少しすると一面、この薄紫色に染まりそうです。
そして、写真を撮ろうと待ち構えていたのに、うっかり忘れて花期を逃してしまったものもあります。オオウバユリです。梅雨の間が見ごろの花なので、もう花が散ってしまっていました。

咲き終わったオオバギボウシ

ここ数年、博物館の裏手(一般の方が入れない場所です)で株が増えてきました。わずかに咲き残っていた1輪が下の写真ですが、典型的な咲き姿ではないので、また来年に持ち越しです。

1つだけ咲き残っていたオオバギボウシ

これから、キク科など秋の花が咲き始めます。樹林の中もまた賑やかになりそうです。
(生物担当学芸員)

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アカボシゴマダラのウラ側

先日のブログでも紹介した外来種のチョウ、アカボシゴマダラが博物館の中庭のガラスにとまっていました。

ガラスにとまっています

チョウのなかまでは、翅(はね)を開いたときに見える面(背中側)を「表面」と呼び、反対に、翅を閉じたときに見える面(おなか側)を「裏面」と呼びます。
つまり、この個体でいま見えているのは翅の「裏面」です。
表面と裏面は先日のブログの写真で見比べることができます。アカボシゴマダラについては表と裏で模様にほとんど違いがありませんが、シジミチョウのなかまなどでは模様が大きく異なる場合もあります。

さて、この個体はガラス面にとまっていたので、普段なかなか見ることのできない、チョウのもうひとつの「ウラ側」も見ることができました。

アカボシゴマダラのおなか側。下が頭です。

頭の黄色の部分がよく目立ちます。これは、アカボシゴマダラの口、「口吻(こうふん)」です。なぜ黄色なのか、とても不思議です。
ところで、脚(あし)の数は何本にみえるでしょうか?通常、昆虫の脚の数は6本ですが…。
実は、アカボシゴマダラを含むタテハチョウ科のほとんどの種では、前脚がとても小さく、体に沿ってたたまれています。そのため、見かけ上は脚が4本に見えるのです。
体をウラ側からみると、普段とは違う視点で体のつくりを観察できるので面白いですね。
(動物担当学芸員)

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気になる外来種

博物館周辺には様々な外来生物が生育、生息しています。これは都市部に限らず、今や全国の、人が住んでいる地域では一般的な状況です。環境が改変され、人や物の移動の距離、量とも大きな現代では避けがたいことです。
そんな中でも、近年目立ってきている外来種はやはり気になります。今の季節、植物ならシンテッポウユリです。もともと園芸種として入ってきているので、花が咲く前からなんとなくありがたいものが成長してきている雰囲気があります。

花が咲く前のシンテッポウユリ

そして、花も、目くじらを立てるのもどうかと思うくらい見栄えが良く、観賞用に残しておきたくなる気持ちもわかります。

シンテッポウユリの花

ただ、これを放っておくと大繁殖してしまいます。高速道路の法面などがこの大きな白い花で覆われているのをよく見ます。博物館の敷地に生えたものは、見つけ次第抜き取っています。
そして、チョウの仲間のアカボシゴマダラです。

アカボシゴマダラ

こちらは人為的に放蝶されたものが元で、野外で広がってしまったと言われています。こちらも大きくて美しいチョウですが、幼虫は在来のゴマダラチョウと同じくエノキを食べるので、その関係がちょっと気になります。

アカボシゴマダラ ひらひらとゆっくり飛び、葉の上にもよくとまります

何より、今現在、博物館周辺で最も目立つのがこのチョウです。大きいからという理由もありますが、晴れていれば必ずといってよいほど複数が飛んでいるのを見かけます。
外来種がすべて在来の生態系に対して大きな影響を及ぼすとは限りませんが、これだけ目立つと、やはり気になって仕方ありません。
(生物担当学芸員)

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真夏の昆虫レストラン

8月5日、月曜日ですが、博物館は夏休み期間中無休で開館しています。

さて、猛暑の毎日です。気のせいか、セミ以外の昆虫はあまり元気がないように感じられますが、いるところにはいます。そんな場所の一つが、ヤブカラシの花です。別名、昆虫レストラン。オレンジ色の花が蜜をたくさん出していて、ピンク色の花は営業終了のサインです。

ヤブカラシの花と葉

四枚の緑色の花弁と、四本のおしべがついています

人家周辺では、無節操につるをのばすやっかいな雑草ですが、虫たちにとっては甘い蜜を安定供給してくれる大切な食事場所です。

夢中で蜜をなめるアリ

こんな昆虫も訪れていました。ヨツスジトラカミキリです。

ヨツスジトラカミキリ

花の蜜を吸うイメージはあまりないのですが、拡大してみると、しっかり蜜をなめていました。
さらに、別の日に撮影した写真ですが、ナミテントウです。

ナミテントウ

ナミテントウは、成虫も幼虫もアブラムシを食べることで知られています。糖分の栄養価は肉食の昆虫も引き寄せるのですね。じつは、ヤブカラシの花の蜜は、人間が舌先でなめても甘さを感じるくらい、糖分がちゃんと含まれています。
炎天下の昆虫レストラン、確実になにかしらの昆虫がいるので、熱中症に気を付けながらまた観察しようと思います。
(生物担当学芸員)

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相模大野でセミの羽化観察

8月3日、大野南公民館の青少年委員会主催のセミの羽化の観察会が行われました。
当館からは学芸員2名が参加し、セミのおはなしや羽化の様子の解説をしました。

公民館でセミについてのかんたんなお話からスタート!

セミの種類や一生についての説明を聞きつつ、セミの抜け殻を観察してもらいました。

抜け殻からセミの種類を見分けることができます

空がすこし暗くなり始めたのを見計らい、羽化の様子の観察のため相模大野中央公園に移動します。
公園につくとさっそく、参加者のお子さんが木を登るセミの幼虫を見つけてくれました。

幼虫発見!

みなさん、だんだんと目が慣れてきて次々にセミが見つかります。
羽化している最中のもの、もう翅(はね)が伸びきっているものなど、様々です。

みんなでセミ探し

こちらでは、見やすいところで羽化しているセミがいました!

観察できたセミのほとんどはアブラゼミでしたが、ニイニイゼミとミンミンゼミも見つかりました。

羽化途中のアブラゼミ。水色の翅がきれいです。

天候にも恵まれ、たくさんのセミを観察することができた一夜でした!
(動物担当学芸員)

★明日は月曜日ですが、博物館は開館しています!★
夏休み期間(8月25日まで)は休館日はありません。
酷暑の中ですが、涼しい博物館へぜひお越しください!

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