玄関から20歩の自然 その21 イネ科も楽しい

このシリーズ「玄関から20歩の自然」のその1で、コバンソウを紹介しました。今もたくさん咲いていて、時間が経ったものは小判を膨らませるように実ってきています。

コバンソウとは大きさがまったく違うこちら、ヒメコバンソウも咲いていたりします。

ヒメコバンソウ

三角形の小穂(しょうすい)は大きさが5ミリメートルほどしかないので、よく探さないと見つけられません。
さらに、イネ科の植物がたくさん咲いています。こちらはイヌムギ。

イヌムギ

扁平(へんぺい)で大きめの小穂が特徴です。
植物の名前にイヌが付くのは「役に立たない」という意味で、麦と違って食用に適さないということなのでしょう。
そしてこちらはカラスムギ。鳥の嘴(くちばし)のような小穂が下向きに開いていて、ちょっとユーモラスな形です。

カラスムギ

植物の名でカラスの名が付くのも、「食用にならない」あるいは「大きい」という意味を含むことが多いのですが、カラスムギは食べられるそうです。何しろ、食用のエンバク(オートムギ)にとても近い仲間ですから。名前はカラスの嘴にちなんでいるのでしょうか。
さて、このカラスムギには、さらにおもしろい性質があります。でも、ここでは紹介しきれませんので、次回、じっくりと写真付きで解説いたします。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: | 玄関から20歩の自然 その21 イネ科も楽しい はコメントを受け付けていません

シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介③ ㋩

はるかなる 大山の雄姿 心安らぐ

丹沢山地の南東部に位置する大山は東から見ても、南から見ても三角形をした美しい山です。
かるたの絵札には、夕刻に市内南区から見た、はるか先に大山が映る姿が描かれています。

相模原市南区の相模川から見た大山

秦野市の渋沢丘陵から見た大山

大山は別名「あめふり山」とも呼ばれ、古くから雨乞い信仰の山として親しまれてきました。中腹には大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)の下社、山頂には本社などがあります。

大山阿夫利神社下社

登山道や山頂からは相模野台地や相模湾を見下ろすことができます。

大山阿夫利神社下社から見た湘南海岸。藤沢・江の島方面。

大山山頂

山頂から見た大磯丘陵、相模湾。

山頂から見た相模野台地。

大山が含まれる丹沢山地は海底火山の噴火によってできた岩石が隆起してできたものです。その海底火山は日本のはるか南方、赤道付近からフィリピン海プレートの移動にともなってやってきたものです。
丹沢山地をつくっている岩石は緑色をした岩石が多く「グリーンタフ」と呼ばれています。タフとは凝灰岩の英語で、凝灰岩は火山灰がかたまった岩石です。大山の登山道にも、「グリーンタフ」のなかまが露出しています。

大山阿夫利神社下社から山頂に向かう登山道沿いの「グリーンタフ」。玉ねぎ状風化が見られる。

今度、大山に登る機会があれば、岩石にも目を向けていただければと思います。

*このかるたは当館のボランティア「市民学芸員」が2017年に制作したものです。
*このかるたは相模原市立博物館にて貸出し可能です(8/31まで休館の予定)
*貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせください(042-750-8030)
*貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってください。

カテゴリー: おしらせ, ふるさといろはかるた | タグ: | シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介③ ㋩ はコメントを受け付けていません

今年のキアシドクガ

博物館周辺で2014(平成26)年から大発生が始まったキアシドクガは、2017~2018年のピークを越えて、数もだいぶ減りました。今年は現在、成虫がたくさん飛んでいますが、ピークの時の1~2割程度です。2017年には駐車場のフェンスにあふれるようにぶら下がっていた蛹(さなぎ)やその脱皮殻も、ミズキの近くに少し見られる程度です。

キアシドクガの蛹

博物館周辺から木もれびの森にかけてが大発生の中心と見られ、その後、1~2年遅れて市の北部や南部へと大発生が広がっていきました。5月27日、市内南区磯部の相模川段丘崖へ行くと、ミズキの葉が丸坊主になり、新しい葉の休眠芽が再び大きくなりつつありました。博物館周辺の2年前の様子と似ています。キアシドクガもたくさん飛んでいました。しかし、栄養不良のためか成虫のサイズが小さめで、これも博物館の2年前と同様です。

飛翔するキアシドクガの成虫(南区磯部)

磯部付近では、博物館周辺のようにミズキ林と言えるほどミズキばかりがたくさんある樹林ではないため、大発生も局地的であるように見えました。

成虫には口が無く、1週間から10日ほどの間に交尾、産卵すると死んでしまいます

ここでも来年以降は急激に数が減っていくことと思われます。
一般にキアシドクガの大発生に周期性は無いものの、5年程度で終息すると言われています。どれくらいの量をもって終息と言うかにもよりますが、今回の経験では大発生の4年から5年目にピークを迎え、その後急激に数は減りながら徐々に終息すると考えられます。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , | 今年のキアシドクガ はコメントを受け付けていません

シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介 ② ㋺六地蔵

六地蔵 いつの時代も   道しるべ

相模原北公園の東側から園外に出て、地元ではハケ坂と呼ばれるゆるやかな坂を下ったところにこの絵札の六地蔵が並んでいます。ここは緑区橋本や大島、あるいは中央区上溝など、四方に通じる旧道で、六地蔵があることからこの付近のことは「ロクジゾウ」と呼ばれ、近くのバス停や交差点の名称も「六地蔵」です。

市内には多くの石仏が見られますが、その中でも地蔵菩薩はもっとも馴染みのあるものの一つです。特に地蔵は、亡くなった人が死後に赴く六つの世界(六道[ロクドウ])で受ける苦しみから救うという信仰から寺院や墓地に多くあるほか、路傍など各地に建てられています。この六地蔵は、明和2年(1765)の造立です。

 

六地蔵は、絵札や写真のように一体ずつ別々で六体あるほかに、市内では一つの石の一面に二体ずつ彫り、三面で六地蔵となる形式のものがあります。こうした一石に彫られた六地蔵は津久井地域にも多く、反対に例えば平塚などの県南部にはほとんど分布していないと言われています。写真は同じく下九沢地区のものです。

 

ところで、この六地蔵のところには他にもいくつかの石仏が建てられています。そのうちの一つが、絵札の左側に見える「徳本念仏塔(トクホンネンブツトウ)で、特徴的な書体で「南無阿弥陀仏」と記されています。徳本は、江戸時代後期に各地に念仏を広めた僧侶で、相模原にも文化14年(1817)に訪れています。徳本念仏塔は市内各地にあり、24基が市の登録有形民俗文化財となっています。

こうした石仏はさまざまな地域の歴史や文化を示しており、かるたが地域に関心を持つきっかけになれば幸いです。

今回紹介した六地蔵の場所はこちらです。

*このかるたは当館のボランティア「市民学芸員」が2017年に制作したものです。

*このかるたは相模原市立博物館にて貸出し可能です(8/31まで休館の予定)    *貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせくださ   い(042-750-8030)                                                                                                                       *貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってくだ さい。

カテゴリー: ふるさといろはかるた, 未分類 | タグ: | シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介 ② ㋺六地蔵 はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その20 サツキのふるさとは

街路樹の植込みや垣根、公園などの植栽木としてあまりにも有名なサツキツツジ(サツキ)が花盛りです。

街路樹の植え込みで咲くサツキ

小さくて濃い緑色の葉の上に、朱色やピンク色の花が目立ちます。

サツキの花

街中で見られるサツキはすべて植栽されたものですが、もともとの自生地の環境は意外と知られていません。それは、こんな環境です。

サツキの自生地(市内緑区の道志渓谷)

渓谷です。断崖絶壁の最下部、渓流の波しぶきがかかるような場所で、岩にへばりつくように咲くのが本来の姿なのです。

岩場にへばりつくように咲きます

岩の割れ目や隙間に根を張り、厳しい環境に生育する性質のおかげで、コンクリートに囲まれた都市の環境でもたくましく開花するということなのでしょう。

自生地に咲くサツキ

上の写真は、相模原市緑区の道志渓谷の自生地で撮影したものです。実は、この場所が、地球上におけるサツキの自生地の東限(最も東側に位置する分布の境界)なのです。かつては相模川の小倉橋上流や、宮ヶ瀬渓谷にも自生していたそうですが、現在ではダム湖に水没して現存しません。県内で残る自生地はほぼ道志渓谷のみとなるため、サツキは神奈川県のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生動植物のリスト)では絶滅危惧1A類と最も絶滅危険性の高いものとしてランクされています。どれだけ植栽のものが街中にたくさんあっても、レッドリストにおいて自生はまた別扱いとなるのです。
本来のサツキの姿を見ると、街中に咲くサツキを見る目が少し変わりそうですね。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: | 玄関から20歩の自然 その20 サツキのふるさとは はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その19 ヘビイチゴの果実

公園の片隅や垣根の下などで、真っ赤な果実が目立ち始めました。

ヘビイチゴの果実

ヘビイチゴです。名前がちょっと怖い感じですが、毒はありません。かといって美味しくもありません。私たちが普段食べるイチゴは、オランダイチゴという種類で、花は白ですが、ヘビイチゴの花は黄色です。

ヘビイチゴの花

さて、このヘビイチゴ、じつは2種類あります。上の写真はヘビイチゴで、比較的陽当たりの良い場所に自生します。
一方、少し陽当たりの悪い木陰などには、ヤブヘビイチゴという種類が自生します。花はこちらです。

ヤブヘビイチゴの花

ヘビイチゴとそっくりです。花弁の1枚だけ見ると、ヘビイチゴよりもほっそりしていて、これは識別点の一つですが、いろいろなヤブヘビイチゴを見ていると、花弁が幅広でヘビイチゴそっくりなものもかなりあり、花だけ見てもよくわかりません。葉はどちらも3枚の小葉(しょうよう)が1セットになった葉で、ヤブヘビイチゴの方が大きくなる傾向はありますが、これも比べないとわからない程度の差です。
では何が一番確実かというと、果実です。こちらはヤブヘビイチゴです。

ヤブヘビイチゴの果実

外側の赤いツブツブが痩果(そうか)と呼ばれる果実の一つです。その土台となっている部分は果床(かしょう)と言って花の時は花弁や雄しべ、雌しべが付いていた花床(かしょう)です。ヤブヘビイチゴは果床も赤いのですが、ヘビイチゴは白っぽいのです。さらに、痩果がシワシワなのもヘビイチゴの特徴です。ヤブヘビイチゴの痩果はシワが無くツルっとしています。

ヘビイチゴの痩果(シワシワ)果床は白っぽい

遠目に見ても果床が白っぽく見えるのがヘビイチゴ、全体が赤くてツヤがあるのがヤブヘビイチゴです。
ちなみに、この果床と痩果の構造はオランダイチゴも同じで、外側についているごまのようなツブツブが痩果で、食べて甘い部分は果床です。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | 玄関から20歩の自然 その19 ヘビイチゴの果実 はコメントを受け付けていません

「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.10・川漁②)

前回は、平成4年(1992)度の文化財記録映画「相模原の川漁」製作の際に撮影された写真を紹介しました。実は博物館の建設準備の一環として、昭和62年(1987)~平成元年(1989)度にかけて川漁に関する調査を行っており、その成果を生かして映画が撮影されました。

今回は、この調査の際に撮影された写真のうち、漁の道具を自ら作ったり、修理している様子を紹介します。魚を取ることばかり目が行きがちですが、こうしたこまごまとした作業があって、川漁全体が成り立っていたことが分かります。なお、文化財記録映画「相模原の川漁」の中にも、一部の作業が収録されています。

釣りの竿(さお)は、地元の漁師は一本の真竹から作った手製の竿を使っていました。本体の部分をノベザオといい、竿先にやはり竹のウラザオを取り付けて使いました。写真は昭和63年(1988)11月に緑区大島での撮影で、上では竹を火であぶってノベザオの油抜きをしており、また、竹の曲がった部分を直しています。

                                                        

釣りと並んで、川漁として一般的な投網(とあみ)は、現在はナイロン製の網となっていますが、以前は絹糸などを自分で編んでいました。この糸は撚って強くする必要があり、業者に頼むほかに、円筒形の木に金棒を通したコマと呼ばれるものを使って、自家で糸をよることもありました。写真はコマを吊り下げたところで、金棒を回して糸をよっています。昭和62年(1987)10月・大島の撮影です。

                                                           

 

投網は、竹製のメイタで網目の大きさを揃えながら、同じく竹製のアバリ(アミバリ)で糸を編んでいきます。投網の使用後には、傷んだところをアバリなどで直すほか、網をよく水洗いして乾かすなど、手入れが大事でした。写真は、メイタで網目を揃え、アバリで編んでいるところで、昭和63年(1988)3月の南区磯部の撮影です。

                                                               

こうしたアバリやメイタは、網目の大きさに合わせて違う大きさのものがありました。さらに、網の下部につけるおもりも自分で作り、鉛を流し込むおもりの型などもありました。

                                                             

 

元々、相模原では川漁が生計の中心となることは少なく、他の仕事をしながら夏場を中心に漁をしていた人がいましたが、昭和30年(1965)代には、流域の都市化や開発等によって魚も減り、成り立たなくなりました。それでも漁の道具を自ら作ったことなど、漁を巡る生活があったことは、地域を知る上でも忘れてはならないことの一つと言えましょう。

カテゴリー: 民俗むかしの写真, 考古・歴史・民俗 | タグ: | 「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.10・川漁②) はコメントを受け付けていません

「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.9・川漁①)

6月1日は、釣り好きの人々がまちに待った鮎漁の解禁の日です。毎年この時期には、多くの釣り人が川を訪れ、釣り糸を垂れる様子が新聞やテレビで伝えられます。

この欄でたびたび取り上げている文化財記録映画では、第11作として平成4年(1992)度に「相模原の川漁」を製作しています。この映画では、相模川で古くから行われ、当時すでに見られなくなっていた多くの漁の方法を含めて撮影しています。これまでの文化財記録映画での撮影と同様に、今回もモノクロ写真の紹介で、撮影は平成4年度です。

相模川での漁の中心は鮎で、鮎漁には大きく分けて釣りと網によるものがあります。釣りは、竿(さお)を流れに沿って動かすコロガシやおとりの鮎を使うトモヅリなどがあります。写真は、市内で広く行われていたコロガシで、川上から川下に竿を動かします。

 

網漁では、川に投げ入れる投網(とあみ)がよく見られ、川の中に入って行うコシブチと船の上から投げるフナウチがあります。写真の上側がコシブチ、下がフナウチですが、ニタンブチで船に乗った二人が順に投網を打っています。

               

 

網漁には、投網のほかにもいくつかのものがあり、鮎に限らずさまざまな魚を取りました。これらの網漁は、撮影当時はすでにほとんど行われておらず、映画製作に際して再現されました。写真は、上から鮎を狙うマチビキ、雑魚を取るヨドスクイ、ヨツデアミを使ったザッコスクイです。

                                

 

川漁では、鮎のほかにウナギも売れるものとして重要でした。ウナギは、川の水の中に鈎(はり)をしかけておくこともありましたが、ウナギド(ウナギドウ・モジリ)と呼ばれる竹を編んだもので取ることも行われました。上の写真の籠の前にあるのがウナギドで、下が川に仕掛けているところです。

                

 

映画では撮影が難しく実現できなかったものもありますが、それでも地域の伝統的な漁の方法などを記録したものとして貴重です。文化財記録映画は、博物館でビデオテープの視聴が、また、視聴覚ライブラリーでDVDでの視聴・貸し出しができます(現在、休館中)。

カテゴリー: 民俗むかしの写真, 考古・歴史・民俗 | タグ: | 「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.9・川漁①) はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その18 あの野草と似た外来植物

垣根の下や歩道の脇などに、よく見るとなかなかかわいらしい植物が咲いています。キキョウソウと言います。

キキョウソウ

色といい、形といい、秋の七草の一つ、キキョウと似ています。実際、キキョウソウはキキョウと同じ仲間です。

キキョウ(夏に撮影したもの)

今や絶滅危惧種となり、自生のものはほとんど見られなくなってしまったキキョウに対して、キキョウソウは道端のどこにでも咲く外来種です。
そして、こちらも花が目立ってきました。ノハカタカラクサです。

ノハカタカラクサ

こちらは、色こそ違いますが、葉をよく見ると、そろそろ花盛りを迎えるこの野草に似ています。

ツユクサ(在来の野草)

ツユクサです。梅雨の曇り空が似合う美しい花です。ノハカタカラクサは、花弁が3枚です。これはツユクサ科に共通の特徴です。上の写真のツユクサも、ネズミの耳のような形の青い2枚の花弁と、雄しべを支えるように1枚の花弁がついているので、合計3枚となります。
ノハカタカラクサは近年、陽当たりの悪い垣根の下などに急激に増えています。花がかわいいからと放っておくと、数年で地面が埋め尽くされてしまうので注意が必要です。
それにしても、ノハカタカラクサ・・・どこで切って良いのか、わかりにくい名前です。漢字にすると「野博多唐草」となります。それでも言いにくいので、最近は「トキワツユクサ」という別名の方がよく使われています。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | 玄関から20歩の自然 その18 あの野草と似た外来植物 はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その17 雨粒が似合う路傍の花

道端でドクダミが咲き始めました。

ドクダミの花

なんとなく、この植物には雨が似合います。二十四節気の小満(しょうまん:5月20日~)に入ったとたんにぐずついたお天気と低温が続いていますが、そんなぐずついたお天気に、むしろドクダミの花の白は映えます。ドクダミは名前が毒々しいのですが、毒はありません。むしろ、毒を出す、という意味の言葉が転訛(てんか)したとのことで、薬草として昔から用いられてきました。
ところで、ドクダミの花の白い部分は総苞片(そうほうへん)で、花の本体は中央の黄色い部分なのですが、その4枚の総苞片の大きさをよく見て下さい。

真上から見たドクダミの花

1枚が小さくて、反対側にある1枚が大きくなっています。それと直角につく2枚はほぼ同じ大きさです。たまたまこの花がそうということではなく、ドクダミの花はすべてそうなっています。どうしてこういう大きさの組み合わせになっているのかはわかりません。でも、そんな法則を見つけるとちょっと嬉しいですね。
また、ドクダミの花がたくさん咲いているところをよく探すと、黄色い部分の雄しべが総苞と同じように花弁状に変化しているものがあります。小さいのであまり目立ちませんが、かなりの頻度で見られるので、ぜひ探してみて下さい。花弁への変化が花全体にわたって起きているものは、八重咲きのドクダミとして、園芸利用されています。

ドクダミの八重咲き品(園芸品種)

もう1種、雨が似合う花は・・スイカズラです。

スイカズラ(咲き始め)

咲き始めは白く、時間が経つとクリーム色になります。

時間が経ったスイカズラの花

花の根元を舌で舐めるように吸うと甘く、昔は子どもがそうして遊んだと言います。名前はそこから「吸い葛(かずら)」。この花を見ると、梅雨が近づいていることを感じます。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , | 玄関から20歩の自然 その17 雨粒が似合う路傍の花 はコメントを受け付けていません