シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介① ㋑

いにしえの 暮らし伝える 勝坂遺跡

南区磯部にある勝坂遺跡は、約5,000年前の縄文時代中期に栄えた集落の跡で、我が国を代表する縄文時代遺跡として、国の史跡に指定されています。鳩川沿いの台地上には、谷に隔てられた4つの集落が確認されており、その周囲には、食用や建築資材などとして利用するために管理されていたクリ林があったと推定されています。

勝坂遺跡(南上空から)

勝坂遺跡で最初に発掘調査が行われたのは1926(大正15)年で、その際出土した土器にちなんで名づけられた「勝坂式土器」は、縄文土器の中でも、人の顔や動物の姿を取り入れた立体的な装飾をもつ特徴的な土器として広く知られ、かるたにも土器の一部である顔面把手(がんめんとって)が描かれています。

勝坂式土器(下原遺跡出土)

土器を装飾した顔面把手(下溝大正坂出土)

現在、勝坂遺跡の一部は公園として整備され、広々とした園内には復元された竪穴住居や発掘された住居跡のレプリカなどがあり、縄文時代の生活とともに勝坂遺跡の価値や魅力について知ることができます。また、鳩川沿いの段丘崖は市登録天然記念物でもある樹林帯で覆われており、園内を散策することで森林資源と強く関わり築きあげられた縄文文化を偲ぶことができます。

史跡勝坂遺跡公園(相模原市ホームページ)

史跡勝坂遺跡公園

*このかるたは当館のボランティア「市民学芸員」が2017年に制作したものです。
*このかるたは相模原市立博物館にて貸出し可能です(8/31まで休館の予定)
*貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせください(042-750-8030)
*貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってください。

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チリグモ

畳の部屋をホウキがけしていたらチョロチョロと走り出てきたクモ。体長2mm程度なので「何かの幼体だろう」と思っていたのですが、独特のせわしない走り方が気になって採集してみたら、正体はチリグモでした。

チリグモ。薄い天幕状の住居の中にいます(手前の白いのはティッシュペーパーです)。

屋内の壁と床の境目などに天幕状の住居を作り、近くを通りかかった獲物を捕らえます。

体長1mm程の幼体。透明感があります。小さいのでチョロチョロ走っていても、ちりが風に飛ばされているようにしか見えません。

糸をかける時に、獲物の周りをくるくると回るのがとても面白いので、住居を見つけたら注目してみましょう。部屋の中でもできる生き物観察です。

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玄関から20歩の自然 その16 美しすぎる昼間の蛾

5月20日、住宅地の中の公園で、ちょっと早めにこんな美しい蛾が羽化していました。

オオスカシバ

オオスカシバという、真夏を象徴するスズメガの仲間です。幼虫はクチナシを食草とするため、住宅地の小さな公園などでもよく見られます。スズメガの仲間の成虫はチョウのようにストロー状の長い口吻(こうふん)を使って花の蜜を吸います。しかも、オオスカシバは日中活動するのでよく目立ち、名前のとおり透き通った翅(はね)を高速ではばたかせ、ホバリングしながら訪花します。体の色合いからも、ハチに擬態していると言われています。
さて、オオスカシバの写真を撮っていると、近くにこんな植物がニョキニョキ。

ヤセウツボ

ヤセウツボです。茶色いところしかない不思議な姿で、これは寄生植物だからです。キク科やマメ科などいろいろな植物に寄生します。乾いた場所を好み、幹線道路沿いの街路樹の植え込みなどにいつの間にか増えていることがあります。

ヤセウツボの花

姿も生態もちょっとおもしろいのですが、畑や牧草地などに広まると被害を及ぼす可能性があることから、かつては外来生物法で要注意外来生物に挙げられていました(現在はこのカテゴリーは解消されています)。

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介 プロローグ

当館には、博物館ボランティア「市民学芸員」のみなさんが制作した「相模原 ふるさと いろは かるた」があります。これは、市内47か所の名所・旧跡などを紹介している「いろはかるた」です。

今回からこのかるたで紹介している47か所の名所・旧跡をシリーズで紹介していきます。
最初に、「相模原 ふるさと いろは かるた」の全体概要について説明します。

このかるたは、市民学芸員のみなさんが苦心の末、約7年の歳月をかけ手作りで完成したかるたです。市民学芸員全員から募った数百の読み札候補から47か所の読み札(名所・旧跡など)を決め、原画を絵画を趣味にされている瀧光さんに描いていただきました。

そして、印刷から制作までの全工程を全て手作りで完成させ、2017年の博物館企画展「学習資料展」でお披露目しました。学習資料展では展示の他、イベントでかるた大会も行いました。

学習資料展でのかるた大会

 

かるた大会の動画はこちら
(YouTube上にアップしています)

このかるたには、読み札、絵札のほか、市民学芸員の手による紹介した47か所の日本語、英語の解説文や紹介地マップもついています。このかるたを通して、多くのみなさまに市内の名所・旧跡などを知っていただきたいと思います。

かるた解説文(日・英) 4ページ

いろはかるたマップ

2018年からこのかるたの貸出しをはじめ(10組貸出し可。現在は休館中のため不可)、これまで学校、保育園、高齢者施設などで活用いただいております。
また、2019年の若葉まつりでは市青年会議所のみなさんがこのかるたをもとに「大型カルタ合戦」を開催し、たくさんの子どもたちが楽しんでおりました。

若葉まつり 大型かるた合戦

カルタ合戦動画の動画はこちら
(YouTube上にアップしています)

これから、この「相模原 ふるさと いろは かるた」の47か所を順次紹介していきます。かるたの読み札、絵札だけでなく、担当する学芸員ならではプチ情報なども紹介する予定ですので、楽しみにしてください。

*このかるたは当館のボランティア「市民学芸員」が2017年に制作したものです。
*このかるたは相模原市立博物館にて貸出し可能です(8/31まで休館の予定)
*貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせください(042-750-8030)
*貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってください。

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玄関から20歩の自然 その15 踏まれても踏まれても

道端、というより路上のわだちにも生えていて、雑草の王者と言えるのがオオバコです。

オオバコ

オオバコというと、このシリーズのその4でツタバウンランがオオバコ科と紹介しました。そして、その11ではハルジオンを「雑草の中の雑草」と書きました。でも、このオオバコをまだ紹介していないことが少々気になっていました。
地面に這うように生え、余分なものを削ぎ落としたスタイルで、もちろん花には花弁がありません。

オオバコの花穂(かすい)

踏みつけられてもさほど傷まない頑強な葉と茎を持ちます。低地から高標高地まで、人が歩くところならどこにでも生えています。オオバコこそが「雑草の王者」と言えるでしょう。
ところで、オオバコに似ているけれど、スラッと背が高い植物を見かけます。こちらは街路樹の植え込みなどに多く、花はオオバコより少し目立ちます。

ヘラオオバコの花

ヘラオオバコです。雄しべの葯(やく)が土星の輪のように花穂を取り囲んでいます。
葉はオオバコにそっくりで、やはりちょっとスリムです。

ヘラオオバコの葉

涼しげでちょっとかわいらしい感じの植物ですが、放っておくと大きく育ち、いざ抜こうと思っても手では抜けないくらい地面にしっかり根をはっています。オオバコの仲間を甘く見てはいけません。

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玄関から20歩の自然 その14 朝鳴いている野鳥

玄関から20歩の自然シリーズはこれまで植物を中心に紹介してきましたが、前回から動物も扱っています。今回は野鳥、そして、玄関から20歩どころか、家の中から窓越しにできる自然観察です。
5月20日、二十四節の小満(しょうまん)です。「陽気盛んにして万物しだいに長じて満つる」。野鳥たちも繁殖期真っ盛りでますます元気です。朝、まだ薄暗いうちに目を覚ますと、外から野鳥の声が聞こえてきます。「カァ、カァ」と鳴くのはハシブトガラス。ねぐらを飛び立ち、昼間の活動場所に着くとまずはひと鳴き、というところでしょうか。

ハシブトガラス(写真は昼間飛んでいるところ)

この時期、「ピィ、ピィ、ピィ、ピークチュルル」などとけたたましく鳴くのはヒヨドリ。さえずりというには普段の声とあまり変わらないし、図鑑などにも特にさえずりについては書かれていませんが、繁殖期に同じ場所でよく鳴いているので、やはりさえずりの意味合いがあるのでしょう。

ヒヨドリ

ヒヨドリの声にかき消されそうですが、耳を澄ますとシジュウカラも「ツーピーツーピーツーピー」と鳴いています。

シジュウカラ

控えめながら朝、よく鳴いているのはキジバト「デーデーッポポー」。

キジバト

最近、マンションなどの壁沿いをヒラヒラ飛びながら「ピュルリーキュリー」などと美しく鳴くのは、イソヒヨドリ。もともと沿岸部に多い鳥でしたが、この十数年くらいの間に内陸の相模原市内にも進出してきました。ビルやマンションのような高層建築物が好きなようです。

イソヒヨドリ(オス)

住宅地に自動車の音などが多くなってくると、鳥たちの声も埋もれていきます。早朝、ちょっと早めに起きた時には、窓に耳を近づけてみてください。家の周りに意外とたくさんの鳥たちが生息していることに気付くことでしょう。

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玄関から20歩の自然 その13 ワルっぽいけど怖くないハチ

この季節、ちょっと開けた芝生や草地の上空を、ブーンという羽音を立てながら大きな昆虫が飛んでいます。

クマバチのうしろ姿

黒くてぷっくりしたお尻がかわいいですね。この昆虫は、クマバチ(別名クマンバチ、キムネクマバチ)です。大きさといい、羽音といい、何よりハチということでどう猛、危険な昆虫と思われがちですが・・少なくともこうして飛んでいるクマバチに危険はありません。というのも、飛んでいるのはオスで、オスに毒針は無いからです。オスはなわばりを張り、交尾相手のメスが近づくのを待っているのです。見張り中なので、よく見ているとあちこち向きを変えています。

右見て、左見て、後ろ見て、また前を見て・・

そして、メスばかりでなく、ほかの昆虫が飛んで近づいてくるとすごい速さで近づいてメスかどうか、あるいはライバルのオスかどうか確かめます。子どもの頃、この習性を利用した遊びで、小石を近くに投げてはクマバチが追いかけるのを見るということを繰り返していました。今思うと真剣なオスには可哀想なことをしていましたが、おかげでクマバチの習性を知ることができました。
クマバチは人間には無害で、スズメバチやアシナガバチのような攻撃性はありません。メスは毒針を持っていますが、よほどつかんでいじめたりしなければ刺すことはありません。そんなクマバチが正面を向くと・・

オレ、ワルなんだよ!と言っているようです

マンガの悪キャラ(しかも見た目のわりにおっちょこちょい)そのものです。憎めない顔つきです。
ちなみに、5月初め頃に咲くフジの花は、クマバチに花粉を運んでもらうように特化しているそうです。クマバチ媒花と言えます。

フジの花

フジにとって、クマバチはなくてはならない昆虫なのです。生きもの同士のつながりを感じますね。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.8・オシャモジサマ)

地域の中を歩いていると、神社や寺院をはじめ、いろいろな祠(ほこら)や堂があるのに気が付きます。今回紹介するのはオシャモジサマと呼ばれるものです。

南区当麻には、オシャモジ・オシャクシなどと呼ばれる石の祠が祀られています。地域の区画整理で場所が移動していますが、江戸時代に水田の測量をした際に使った縄を埋めたところを祀ったものとされています。咳(せき)や疱瘡(ほうそう)の神で、お供えしてある杓文字(しゃもじ)でご飯をよそって食べると咳が治り、治ると新しい杓文字を供えたと言います。写真は、平成14年(2002)2月の撮影で、新しい杓文字が供えられているのが分かります。

南区上鶴間には、「石上社」と書かれた祠があり、オシャモジサマと言われています。風邪をひいた時などにお茶を上げるとよくなるといい、やはり病気が治ると新しい杓文字を買ってきて奉納しました(平成13年[2001]5月撮影)。

以上の二つは祠ですが、緑区上九沢には、オシャモジサマとされる石仏があります。子どもの神様で、病気になったら杓文字を借りてご飯を盛り、病気が治るまでは毎日お参りして杓文字を使い、治ったら新しいものをお供えしました。かつては大量の杓文字が供えられていたと言います(平成12年[2000]6月撮影)。

オシャモジサマは、もちろん相模原だけではなく各地にあります。例えば、平成21年(2009)1月撮影の横浜市港北区の八杉神社境内にある羽黒大明神には、扉の上に杓文字が並べられています。博物館で実施した市内を中心とした各地のフィールドワーク講座として訪れた際に、たまたま発見しました。

 

そして、祠などではなく、普通の住宅にも杓文字が見られることもありました。写真は昭和59年(1984)5月に南区下溝の個人宅の玄関の上に打ち付けられていたもので、昭和5年(1930)に、この家の長男の百日咳(ひゃくにちぜき。子どもの急性伝染病で、特有の咳発作がある)避けのまじないとして付けたということです。

 

オシャモジサマと呼ばれる神をまつり、あるいは杓文字を供えたりそれを使ったりする風習は各地にあり、その学問的な理由もいろいろな説があります。いずれにしても、こうしたさまざまな伝承は興味深く、地域の歴史や文化を考える上でも重要なものと言えるでしょう。

 

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玄関から20歩の自然 その12 あの野菜に近い仲間

道端でこんな花が咲き始めました。

アメリカイヌホオズキ

アメリカイヌホオズキという外来種です。小さくて白い星形の花は、中央の雄しべの黄色い葯(やく)が飛び出ていて、ある野菜の花を思い出します。

ナスの花

ナスです。ナス科の野菜は、トマトをはじめ、たくさんあります。トマトの花は黄色ですが、形はやはり星形で葯が飛び出ています。

トマトの花

ほかにもやっぱり、あるいは意外な!というナス科の野菜がありますが、それはまた機会を改めてご紹介します。
道端の植物に話を戻しましょう。もう1種、ナス科の雑草(外来種)です。その名もワルナスビ。

ワルナスビ

花色は白と紫と違いがありますが、まさしくナス!名前も悪茄子(わるなすび)とは・・その名の由来はこちらのトゲにあります。

ワルナスビの葉裏のトゲ

葉裏や茎にびっしりとトゲがあり、抜こうとつかむと怪我をします。
このシリーズの「その2」でご紹介したアメリカオニアザミと並ぶやっかいな雑草です。実はこの植物、花だけでなく果実が実るとそれがまたナス科らしい姿なので、それはせっかくなのでまた改めてご紹介します。

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玄関から20歩の自然 その11 ハルジオンが満開だけど・・

雑草の中の雑草、と言うとちょっと植物には可哀想な呼び方かもしれませんが、ハルジオンは思わずそう言いたくなるくらい、雑草のイメージが強い植物です。

ハルジオン

花をよく見ればかわいらしくて繊細です。でも、本当に「どこにでも」生えています。
そして、もう少し季節が進むと、ハルジオンから別のそっくりな植物へ入れ替わることを意識している人は少ないでしょう。
その交替選手は、ヒメジョオンです。花だけ見るとそっくり!

ヒメジョオン

名前も似ていて、「ハルジオン」と「ヒメジョオン」と微妙に違います。これは漢字をあてるとわかりやすいでしょう。「春紫菀」と「姫女菀」となります。さて、花はよく似ていますが、識別は慣れれば簡単です。葉の付き方が違います。ハルジオンの葉の付け根は茎に巻き付くように見えます。このような葉の付き方を図鑑などでは「葉の付け根は茎を抱く」と表現します。

ハルジオン 葉の付け根が茎を取り巻くように付いています

ヒメジョオンの葉は茎を抱きません。

ヒメジョオンの葉の付け根は茎を抱かない

他には、ハルジオンはつぼみがお辞儀をするように下を向くことや、白い花弁が少しヒメジョオンの方が幅広いといった違いもあります。

ハルジオンの花の拡大 花弁が細い

ヒメジョオンの花の拡大 花弁が少し幅広い

ヒメジョオンは夏草だけに、真夏に咲く株は茎も太くがっしりしています。識別ははじめちょっとわかりにくいかもしれませんが、どこでも見られる2種類の草なので、ぜひチャレンジしてみてください。

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