玄関から20歩の自然 その14 朝鳴いている野鳥

玄関から20歩の自然シリーズはこれまで植物を中心に紹介してきましたが、前回から動物も扱っています。今回は野鳥、そして、玄関から20歩どころか、家の中から窓越しにできる自然観察です。
5月20日、二十四節の小満(しょうまん)です。「陽気盛んにして万物しだいに長じて満つる」。野鳥たちも繁殖期真っ盛りでますます元気です。朝、まだ薄暗いうちに目を覚ますと、外から野鳥の声が聞こえてきます。「カァ、カァ」と鳴くのはハシブトガラス。ねぐらを飛び立ち、昼間の活動場所に着くとまずはひと鳴き、というところでしょうか。

ハシブトガラス(写真は昼間飛んでいるところ)

この時期、「ピィ、ピィ、ピィ、ピークチュルル」などとけたたましく鳴くのはヒヨドリ。さえずりというには普段の声とあまり変わらないし、図鑑などにも特にさえずりについては書かれていませんが、繁殖期に同じ場所でよく鳴いているので、やはりさえずりの意味合いがあるのでしょう。

ヒヨドリ

ヒヨドリの声にかき消されそうですが、耳を澄ますとシジュウカラも「ツーピーツーピーツーピー」と鳴いています。

シジュウカラ

控えめながら朝、よく鳴いているのはキジバト「デーデーッポポー」。

キジバト

最近、マンションなどの壁沿いをヒラヒラ飛びながら「ピュルリーキュリー」などと美しく鳴くのは、イソヒヨドリ。もともと沿岸部に多い鳥でしたが、この十数年くらいの間に内陸の相模原市内にも進出してきました。ビルやマンションのような高層建築物が好きなようです。

イソヒヨドリ(オス)

住宅地に自動車の音などが多くなってくると、鳥たちの声も埋もれていきます。早朝、ちょっと早めに起きた時には、窓に耳を近づけてみてください。家の周りに意外とたくさんの鳥たちが生息していることに気付くことでしょう。

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玄関から20歩の自然 その13 ワルっぽいけど怖くないハチ

この季節、ちょっと開けた芝生や草地の上空を、ブーンという羽音を立てながら大きな昆虫が飛んでいます。

クマバチのうしろ姿

黒くてぷっくりしたお尻がかわいいですね。この昆虫は、クマバチ(別名クマンバチ、キムネクマバチ)です。大きさといい、羽音といい、何よりハチということでどう猛、危険な昆虫と思われがちですが・・少なくともこうして飛んでいるクマバチに危険はありません。というのも、飛んでいるのはオスで、オスに毒針は無いからです。オスはなわばりを張り、交尾相手のメスが近づくのを待っているのです。見張り中なので、よく見ているとあちこち向きを変えています。

右見て、左見て、後ろ見て、また前を見て・・

そして、メスばかりでなく、ほかの昆虫が飛んで近づいてくるとすごい速さで近づいてメスかどうか、あるいはライバルのオスかどうか確かめます。子どもの頃、この習性を利用した遊びで、小石を近くに投げてはクマバチが追いかけるのを見るということを繰り返していました。今思うと真剣なオスには可哀想なことをしていましたが、おかげでクマバチの習性を知ることができました。
クマバチは人間には無害で、スズメバチやアシナガバチのような攻撃性はありません。メスは毒針を持っていますが、よほどつかんでいじめたりしなければ刺すことはありません。そんなクマバチが正面を向くと・・

オレ、ワルなんだよ!と言っているようです

マンガの悪キャラ(しかも見た目のわりにおっちょこちょい)そのものです。憎めない顔つきです。
ちなみに、5月初め頃に咲くフジの花は、クマバチに花粉を運んでもらうように特化しているそうです。クマバチ媒花と言えます。

フジの花

フジにとって、クマバチはなくてはならない昆虫なのです。生きもの同士のつながりを感じますね。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.8・オシャモジサマ)

地域の中を歩いていると、神社や寺院をはじめ、いろいろな祠(ほこら)や堂があるのに気が付きます。今回紹介するのはオシャモジサマと呼ばれるものです。

南区当麻には、オシャモジ・オシャクシなどと呼ばれる石の祠が祀られています。地域の区画整理で場所が移動していますが、江戸時代に水田の測量をした際に使った縄を埋めたところを祀ったものとされています。咳(せき)や疱瘡(ほうそう)の神で、お供えしてある杓文字(しゃもじ)でご飯をよそって食べると咳が治り、治ると新しい杓文字を供えたと言います。写真は、平成14年(2002)2月の撮影で、新しい杓文字が供えられているのが分かります。

南区上鶴間には、「石上社」と書かれた祠があり、オシャモジサマと言われています。風邪をひいた時などにお茶を上げるとよくなるといい、やはり病気が治ると新しい杓文字を買ってきて奉納しました(平成13年[2001]5月撮影)。

以上の二つは祠ですが、緑区上九沢には、オシャモジサマとされる石仏があります。子どもの神様で、病気になったら杓文字を借りてご飯を盛り、病気が治るまでは毎日お参りして杓文字を使い、治ったら新しいものをお供えしました。かつては大量の杓文字が供えられていたと言います(平成12年[2000]6月撮影)。

オシャモジサマは、もちろん相模原だけではなく各地にあります。例えば、平成21年(2009)1月撮影の横浜市港北区の八杉神社境内にある羽黒大明神には、扉の上に杓文字が並べられています。博物館で実施した市内を中心とした各地のフィールドワーク講座として訪れた際に、たまたま発見しました。

 

そして、祠などではなく、普通の住宅にも杓文字が見られることもありました。写真は昭和59年(1984)5月に南区下溝の個人宅の玄関の上に打ち付けられていたもので、昭和5年(1930)に、この家の長男の百日咳(ひゃくにちぜき。子どもの急性伝染病で、特有の咳発作がある)避けのまじないとして付けたということです。

 

オシャモジサマと呼ばれる神をまつり、あるいは杓文字を供えたりそれを使ったりする風習は各地にあり、その学問的な理由もいろいろな説があります。いずれにしても、こうしたさまざまな伝承は興味深く、地域の歴史や文化を考える上でも重要なものと言えるでしょう。

 

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玄関から20歩の自然 その12 あの野菜に近い仲間

道端でこんな花が咲き始めました。

アメリカイヌホオズキ

アメリカイヌホオズキという外来種です。小さくて白い星形の花は、中央の雄しべの黄色い葯(やく)が飛び出ていて、ある野菜の花を思い出します。

ナスの花

ナスです。ナス科の野菜は、トマトをはじめ、たくさんあります。トマトの花は黄色ですが、形はやはり星形で葯が飛び出ています。

トマトの花

ほかにもやっぱり、あるいは意外な!というナス科の野菜がありますが、それはまた機会を改めてご紹介します。
道端の植物に話を戻しましょう。もう1種、ナス科の雑草(外来種)です。その名もワルナスビ。

ワルナスビ

花色は白と紫と違いがありますが、まさしくナス!名前も悪茄子(わるなすび)とは・・その名の由来はこちらのトゲにあります。

ワルナスビの葉裏のトゲ

葉裏や茎にびっしりとトゲがあり、抜こうとつかむと怪我をします。
このシリーズの「その2」でご紹介したアメリカオニアザミと並ぶやっかいな雑草です。実はこの植物、花だけでなく果実が実るとそれがまたナス科らしい姿なので、それはせっかくなのでまた改めてご紹介します。

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玄関から20歩の自然 その11 ハルジオンが満開だけど・・

雑草の中の雑草、と言うとちょっと植物には可哀想な呼び方かもしれませんが、ハルジオンは思わずそう言いたくなるくらい、雑草のイメージが強い植物です。

ハルジオン

花をよく見ればかわいらしくて繊細です。でも、本当に「どこにでも」生えています。
そして、もう少し季節が進むと、ハルジオンから別のそっくりな植物へ入れ替わることを意識している人は少ないでしょう。
その交替選手は、ヒメジョオンです。花だけ見るとそっくり!

ヒメジョオン

名前も似ていて、「ハルジオン」と「ヒメジョオン」と微妙に違います。これは漢字をあてるとわかりやすいでしょう。「春紫菀」と「姫女菀」となります。さて、花はよく似ていますが、識別は慣れれば簡単です。葉の付き方が違います。ハルジオンの葉の付け根は茎に巻き付くように見えます。このような葉の付き方を図鑑などでは「葉の付け根は茎を抱く」と表現します。

ハルジオン 葉の付け根が茎を取り巻くように付いています

ヒメジョオンの葉は茎を抱きません。

ヒメジョオンの葉の付け根は茎を抱かない

他には、ハルジオンはつぼみがお辞儀をするように下を向くことや、白い花弁が少しヒメジョオンの方が幅広いといった違いもあります。

ハルジオンの花の拡大 花弁が細い

ヒメジョオンの花の拡大 花弁が少し幅広い

ヒメジョオンは夏草だけに、真夏に咲く株は茎も太くがっしりしています。識別ははじめちょっとわかりにくいかもしれませんが、どこでも見られる2種類の草なので、ぜひチャレンジしてみてください。

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カベアナタカラダニ(2020)

毎年この時期になると、コンクリートの壁や手すりの上をちょこまかと走り回る赤い奴。

カベアナタカラダニ

体長0.5mm程なのに、とにかく早い。カメラに収めるのに苦労します。名前はカベアナタカラダニ。
大量に発生するのと、その体色のせいでかなり嫌われがちな生き物ですが、主な食べ物は花粉。現代人の天敵を食べてくれるので、もしかしたら益虫かもしれません。ただし、うっかり潰したりすると赤い色が服についたり、アレルギー反応を起こす事もあるようなので、指先で愛でたりしない方が良いでしょう。いずれにしても吸血をするダニとは全く別の種類で、昆虫などに寄生するタカラダニの仲間とも違う食性です。
さて、なぜこのダニがこの時期に目立つのかというと、春に卵がかえり、梅雨頃には産卵して死んでしまうからです。その卵は来年の春までふ化しないので、必然的に姿を見ることはありません。
すごい勢いで走り回るのは、繁殖に向けて食べ物を探して栄養を蓄えているのでしょう。因みに、この種にオスはまだ発見されていないそうです。こんなに小さいのに、色々と興味が尽きません。安易に嫌ってはもったいないですね。

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玄関から20歩の自然 その10 花粉症に注意!

ゴールデンウィークが過ぎた頃、道端でこんな植物がいつの間にか大きく育っていて、気がつくと花がムズムズ・・、眼がグシュグシュ・・ということがありませんか?

カモガヤ

カモガヤという牧草由来の雑草です。これで立派に花が咲いていて、雄しべの葯(やく)がプラプラしていて、風に花粉を飛ばしています。

カモガヤの花 黄色い葯(やく)から花粉が飛びます

さらにこちらは、ネズミムギです。5月に入ると道端や駐車場脇などあちこちで咲き始めます。

ネズミムギ

これも黄色い葯が見えている時は開花状態です。指でトントンやると煙のように花粉が飛びます。花粉症の人は気軽にやらない方がよいでしょう。

ネズミムギの花

スギやヒノキの花粉の季節が過ぎて、爽やかな季節なのになぜかアレルギー症状が出る人は、これらのイネ科植物の花粉症である可能性があります。イネ科の植物はあまり目立ちませんが、ほかにも道端にたくさん生えています。一番身近なアレルゲンかもしれません。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.7・一番古い写真は?)

これまで今の時期の春先の行事や農作業などを紹介してきましたが、もちろん撮影された写真はそうした内容に限りません。

 博物館の建設準備が本格的に始まったのは、今から39年前の昭和56年(1981)です。それでは写真がいつから残されているかというと、翌年の昭和57年(1982)1月6日の中央区・田名八幡宮での的祭(まとまち)がもっとも古いものです。

 この祭りは、境内に作られた大きな的に四名の男の子が矢を射て、その当たり具合で吉凶を占うもので、起源は鎌倉時代とか元禄時代に始まったとする説もあります。相模原市を代表する民俗行事として、市指定無形民俗文化財に指定されています。
 後には行事全体の準備から実施に至る調査も行われましたが、この時は当日の的や子どもが矢を射る様子が撮影されています。

 次に古いのは、中央区上溝の田尻地区で行われた初午(はつうま)の稲荷講で、昭和57年(1982)2月10日の撮影です。市内では各地で稲荷社が祀られており、その祭りとして2月初めの午(うま)の日に、稲荷にお供え物をするほか、近所や親戚同士が集まり、稲荷講をすることが広く行われました。当時は、まだ各地で初午の行事や稲荷講が見られ、別の地区の写真も残っています。

 写真は、竹筒に入れたお神酒のほか、赤飯やメザシ・油揚げなどが稲荷にお供えされています。撮影の際には何が供えられているかにも注意します。

 職員ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」の第1回目として、中央区淵野辺本町での醤油搾り(昭和58年3月5日)を紹介しましたが、写真の入力作業も継続中です。大量の写真のうち、古い時期のカラースライドから始めており、現在はモノクロ(白黒)写真に取り掛かっています。
 
 この醤油搾りは、昭和58年(1983)4月6日に南区下溝で行われたもので、やはり古い時期の撮影の一つです。先の初午のように、同じ行事や作業でも地区によって違いがあるため、なるべく多くの写真を撮影するようにしてきました。
 もしかすると、さらに古い時の写真が見つかるかもしれません。

 今後ともいろいろな話題に基づきながら、さまざま写真を紹介していきたいと思います。

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玄関から20歩の自然 その9 咲き始めたつる植物

つる植物というのは、自分自身の茎や幹を太くすることなく、ほかの支えを利用して高い所へ伸びて太陽の光を受ける生存戦略をとっています。
街路樹の植え込みにもさまざまなつる植物が見られ、その一つのヤブカラシを前回のブログでご紹介しました。今回は、コヒルガオです。
低い位置でも、日向で遮る物が無い場所ではもう咲き始めています。

コヒルガオ

アサガオと同じ仲間で、花も葉もよく似ていますが、コヒルガオの葉は頂角(葉先)が鋭角な三角形で、底角はあまり目立ちません。

コヒルガオの葉

コヒルガオというからには、ヒルガオもあるのでしょうか・・。あります!こちらがヒルガオです。コヒルガオよりも遅く、初夏に咲き始めるものが多いようです。

ヒルガオ

写真では見分けがつきません。たしかに「コ(小)」が抜ける分、花が少し大きめなのですが、生育条件や季節によって花の大きさは変わるので識別点にはなりません。どこで区別するかというと、決定打はこちらです。花を支える苞葉(ほうよう)の下の花の柄が平坦ですっきりしています。

ヒルガオの苞葉と花の柄の部分

コヒルガオは、この部分にちぢれた感じのヒダがあります。

コヒルガオ

また、ヒルガオの葉はこんなふうに細長くて葉先が丸いのが特徴です。

ヒルガオの葉

ただし、葉も変異が激しくて、コヒルガオのような三角形のものもあります。
花の下にヒダがあればコヒルガオと判断し、無ければ葉など他の識別点を見て総合的に判断するしかありません。
ありふれた路傍の雑草なのに、実は識別困難な植物なのです。

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玄関から20歩の自然 その8 伸長中のつる植物

街路樹の植え込みや、垣根などにスルスルとつるを伸ばしつつある植物があります。

ツツジの垣根の上につる植物が・・

この植物は、ヤブカラシといいます。こんな風に、ツツジなどの低く刈り込まれた植込みだと、つる植物であるにもかかわらず、結構立ち上がっています。と思ってよく見ると、上の写真はネズミムギというイネ科の植物に巻き付いて立ち上がっていたのでした。おそらく、もう少し伸びると重みで倒れてしまうでしょう。
でも、陽当たりさえあれば、倒れようがまだまだ伸びます。そして、真夏になるとこんな花を咲かせます。

ヤブカラシの花

金平糖(こんぺいとう)のような色合いで、小さくて花弁は目立たないものの、咲き始めはオレンジ色、少し時間が経つとピンク色になるかわいらしい花です。特徴はこの葉っぱです。

5枚の葉(小葉)で構成されるヤブカラシの葉

5枚の小葉(しょうよう)が手のひら状にきれいに並んで、1組の葉を構成しています。庭などでは垣根から雨樋(あまどい)などをつたっていつのまにか屋根まで登ってしまう、やっかいな雑草です。さらに、上の写真のような花が咲くと甘い蜜を出すために、ハチも呼び込んでしまったりします。でも、道端であまり管理されていない植込みなどではハチだけでなく、いろいろな昆虫が集まる虫のレストランになります。虫の好きな人は、この植物の開花を楽しみにしていてください。

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