玄関から20歩の自然 その7 タンポポに似たもの②

道端でタンポポに似た植物というのは、結構あります。その中でもダントツでよく似ているのは、前の記事のブタナです。次によく間違われるのは、こちらです。

ノゲシの花

ノゲシと言います。全体を見るとタンポポとはずいぶんと違うのですが、この花だけを見たらタンポポかも、って思ってしまいます。
見分け方は、やはり複数の花が同じ茎から枝分かれして咲くことです。

ノゲシの花は茎にたくさんの花がつきます

タネもこんな風に綿帽子になるので、タンポポそっくりです。

ノゲシのタネの綿帽子

でも、背は高いし、茎にたくさんの葉がついているので、冷静に観察するとタンポポではないとわかります・・ただし、ノゲシにはもうひとつやっかいなことがあります。それは、ノゲシとオニノゲシという2種類が混在していることです。違いは葉にあります。ノゲシはこちらです。

ノゲシの葉

オニノゲシはこちらです。鬼と名に付くイメージどおり、トゲが荒々しいですね。

オニノゲシの葉

道端で観察していると、葉を見てもノゲシとオニノゲシのどちらか迷うような中間的なものもあり、迷います。実際、両種の雑種もあるので、識別は困難を極めます。雑種だとしたら識別は“お手上げ”なのですが、一つ大きな性質の違いがあります。それは、花の咲く時間帯が違うことです。ノゲシは午前中、オニノゲシは午後に咲きます。朝、花を開いているのはノゲシと考えてよいでしょう。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.6・養蚕②)

養蚕は一年に3~4回程度行われ(後にはさらに多くなります)、最初が5月上旬~6月上旬で、その後、7月下旬~8月中旬、8月下旬~9月下旬と続きました。このうち春の蚕の規模が一番大きく、現金収入の中心でした。

養蚕は、蚕の種(卵)を羽根で掃き下ろすハキタテの作業から始まります。春蚕は五月節供頃に「柿の葉が大きくなって、柿の木に止まったスズメが隠れて見えなくなるとハキタテの旬」と言ったりしました。写真では、前回も紹介したエガあるいはエビラという平らなカゴの上に紙を敷き、蚕の種を掃き下ろしています。この時の蚕は非常に小さく「ケゴ」と言います。

 こうしたケゴも桑葉を食べて次第に大きくなり、農家は桑を与えたり、蚕の糞を掃除したりで忙しくなっていきます。前の写真と比べると、桑の葉がずいぶん大きいのがわかります。ハキタテから約10日ほどたった時の様子です。

 部屋に作った棚の間で作業をしているところですが、棚にも多くの蚕が乗ったカゴが見えます。最初はわずかなカゴに掃き立てた蚕も、蚕の成長に応じて増やしていき、たくさんのカゴが必要となりました。
 

 蚕は成長の途中で桑を食べなくなる時が四回あり、その時に脱皮して大きくなります。そして、五回目に蚕は口から糸を吐き出して繭を作ります。写真は繭を作る直前の蚕で、上側を向くのが繭を作る合図です。

 蚕も生き物であり、繭を作りだす時期がそれぞれ違います。蚕の様子を見極めて先に繭を作る状態になった蚕を拾い、繭を作る場所に運びます。広い場所が必要で、住宅の一階で蚕を飼い、二階を繭を作らせる場所とすることがよくありました。

 蚕に繭を作らせる道具をマブシといい、より使いやすいものを求めて時代によって変化していきました。映画ではその移り変わりを追っており、古くはいろいろなものが見られたようですが、これはハガチマブシという、ムカデ(ハガチ)の形に似ているところから付けられたものです。

 昭和初め頃まで使われていたのがシマダマブシで、自家で藁を折って作りましたが一回しか使えず、また、蚕が繭を作る際に藁に押されて跡がついてしまうという欠点がありました。これだけカラー写真があったシマダマブシと、繭を取っているところです。


 シマダマブシの後に一般的になったのが改良マブシです。藁の跡が少ない上に、使い捨てではない利点があります。これも前回紹介したように、各家で冬場の藁仕事に作りました。このマブシも繭を一つずつ外していきます。


 その後、第二次世界大戦頃から普及したのがボール紙製の回転マブシで、ごく近年まで使われていました。繭を作る状態になった蚕は上に昇っていくため、一つ一つの空いた空間に一匹の蚕が入ります。また、何回も使えるとともに、折り畳みできるために繭を取り出すのも簡単になりました。
 
写真は、蚕を下に撒いて回転マブシに昇らせようとしている様子と、回転マブシからマユカキといって繭を取り外しているところ、併せて、平成22年(2010)に緑区上九沢で行われた養蚕での回転マブシで、たくさんの回転マブシが使われているのがわかります。
 ちなみに、平成22年は、神奈川県で最後まで養蚕を行っていた12軒(うち4軒は相模原市内)が養蚕を終了し、県内から産業としての養蚕がなくなった年です。



今回は、文化財記録映画の際に撮影した写真を中心に掲載しましたが、これまで撮影してきた写真には養蚕に関わるものも多くあり、今後もいろいろな内容を紹介していきたいと思います。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.5・養蚕①)

市内の農業は、畑での麦やサツマイモ作りなどとともに養蚕が重要であり、特に蚕が作った繭や生糸(絹)を売った収入は家計の中心と言えるものでした。

 これまで紹介してきた「文化財記録映画」でも養蚕や糸取り・機織りを扱っており、今回紹介するのは、昭和58年(1983)製作の第二作目「さがみはらの養蚕」の際に撮影されたものです(そのため今回もモノクロ写真が中心です)。

 当時はかなり少なくなっていたとはいえ、まだ自宅で養蚕を行っている家があり、映画はそうした一軒であった南区大沼の方にお願いして撮影されました。ただし、すでに実際には行われていない古い作業の様子も含まれています。

 養蚕は、春蚕(ハルゴ)という春の時期に蚕を飼うものが5月の節供頃から始まり、少し前の4月下旬には養蚕に使う道具を洗います。川で洗ったという話がよく聞かれますが、ここでは近くに川がないので屋敷で洗っています。
              

 蚕を飼う場所は、人間が普段生活する住まいを使うことが普通でした。そのため部屋の畳を上げ、蚕を竹などを平らに編んだエガあるいはエビラと呼ぶカゴに乗せて飼うため、そのカゴを入れる棚を作ります。棚は部屋一杯に立てるのではなく、一部屋に2か所にして間を通路や作業場所とします。
               

 養蚕は時代によっても異なり、年に数回、春から秋にかけて蚕を飼いましたが、冬の間には作業がなかったかというとそんなことはなく、蚕に繭を作らせるマブシという藁製の道具をたくさん作って翌年の養蚕に備えました。写真は改良マブシを作っているところです。
              

 蚕はどんどん桑の葉を食べ、特に蚕が成長すると桑葉を畑に取りに行くのが大変でした。春に飼う蚕と秋の蚕では葉の取り方が違い、春蚕では枝ごと伐ってもそこからすぐに次の枝が出てくるので枝ごと伐っても大丈夫で、家で枝から葉を取ります。
              

 これに対して、秋の養蚕では畑で一葉ずつ桑を摘み、首から下げた桑摘みビクに入れていきます。
              

 桑葉は、蚕が大きくなるとそのまま与えましたが、小さいうちは細かく切る必要があり、包丁で切ったりしましたが、のちには桑切り用の機械を使うようになりました。桑葉を取りに行くことと並んで、蚕に桑を与える作業も大変なものの一つでした。
              

 今回は養蚕の第一回目として、養蚕の諸準備や桑を取り上げました。「養蚕」と一口に言っても、さまざまな作業が必要であったことがわかります。映画では、蚕の成長に応じた作業の流れだけでなく、こうした関連する内容も撮影されています。

 ※文化財記録映画は、博物館でビデオテープの視聴が、また視聴覚ライブラリーでDVDでの視聴・貸し出しができます(現在、休館中)。

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玄関から20歩の自然 その6 タンポポに似たもの①

二十四節気の立夏、今年は5月5日でした。この季節は、春真っ盛り。道端ではタンポポが元気です。典型的なタンポポはこちら。

タンポポ(在来種と外来種の雑種)

上の写真は、最近道端に多い、在来種と外来種の雑種と言われるタンポポです。雑種についてはちょっと複雑なしくみなので、また機を改めて紹介します。とにかく今、道端に多いタンポポは圧倒的にこの雑種タイプです。
それに加えて今、タンポポ?でもちょっと背が高いなあ・・と感じる花が増えています。

やたら背の高いタンポポ?

タンポポは、日向では高さ15~20センチメートルくらいのものが多いのですが、上の写真の植物は50センチ以上あります。でも、花はタンポポそっくり。

上から見るとタンポポそっくり

この植物の名は、ブタナ。ヨーロッパ原産で、世界中の温帯に分布する外来種です。タンポポと同じくキク科の植物ですが、タンポポとの決定的な違いは、タンポポが花のつく茎に1つの花が付くのに対して、ブタナは茎が途中で二つ以上に分かれて、たいてい二、三個ずつ咲くことです。

地上茎から複数枝分かれして花が咲きます

正確に言うと、タンポポは地下茎から直接花柄(かへい)が出るので、地上部で見ると1本の茎に1つの花に見えるということになります。ブタナは地上茎(ちじょうけい)から花柄が分枝しています。
もちろん背の高さや、葉が少し毛深いなどの違いはありますが、並べて比べないとわかりにくいかもしれません。

ブタナの葉。出方はタンポポそっくり。

タンポポによく似たキク科の花はほかにもたくさんあり、その代表格はノゲシの仲間です。それはまた次回、紹介いたします。

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玄関から20歩の自然 その5 オオイヌとタチイヌ

道端の野草を代表する存在とも言えるのが、オオイヌノフグリです。真冬から日だまりで咲き始め、秋遅くまで咲き続ける花期の長い植物です。

オオイヌノフグリ

名前の由来は、これも有名な話ですが・・

オオイヌノフグリの果実

果実を犬のふぐり(陰嚢)に見立てて付けられていますが、自然観察会などで紹介すると、大ウケするか、ドン引きされるか賭けのようなネタです。
さて、オオイヌノフグリにも、近縁の植物が隣り合って咲いていたりします。タチイヌノフグリです。

タチイヌノフグリ

パーツはそれぞれ似ているけど、サイズ感が異なります。
花はルーペが無いとわからないくらい小さく、直径2ミリメートルあるかないか・・

タチイヌノフグリの花

花は小さいのですが、タチイヌノフグリの果実はオオイヌノフグリとあまり変わらない大きさで同じような形のものが実ります。
近くに咲いていたもう1種。こちらは園芸植物が逸出した外来種で、ユウゲショウです。

ユウゲショウ

春風にそよぐ姿が美しいですね。この20年ほどの間に、芝生の隅や道端で増えてきた植物です。

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玄関から20歩の自然 その4 蔦葉と松葉

今回は名前が似たもの同士です。
住宅の塀などにこんなふうに張り付いている植物を見かけました。ツタかな?

塀にはりつくように伸びています

いや、葉が小さいし、よく見るとかわいらしい花がついています。

ツタバウンランの花

これはその名もツタバウンランという外来植物です。蔦(つた)葉と言っても、ヘデラ(キヅタ)やツタとは葉の形もちょっと違いますが、むしろこうしてブロック塀などに張り付いて伸びる様子が似ているということなのでしょう
この外来種には、名前がよく似たマツバウンランという近縁種があって、同じように今、あちこちの道端で咲いています。

マツバウンラン

こちらはスッと細長い茎が立ち、下の方にだけある細く小さな葉を松葉に見立ててついた名です。

高さは20~30センチくらいになります

さて、この両種は、少し前の図鑑を見るとゴマノハグサ科という分類になっています。しかし、最新の図鑑を開くと、オオバコ科。オオバコ??あの踏まれてもへこたれない強い草ですが・・イメージが違いすぎますね。しかし、遺伝子配列の分析から進化の順番に沿った分類を行う系統分類学が発展し、世界中の植物分類学者たちが知恵を集めながら新しい分類系統を構築しています。そうした中で、オオバコ科は旧来のいろいろな科が合わさって大きなグループを形成しています。植物愛好家にすれば悩ましいところですが、受け入れざるを得ません。

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シロカネイソウロウグモ

先日ご紹介したズグロオニグモは夜行性ですが、昼間、その網にキラキラと銀色に光るものがついている事があります。

ズグロオニグモの網にいるシロカネイソウロウグモ


シロカネイソウロウグモです。体長3mm程度で腹部が独特の色と形をしています。主にジョロウグモやオニグモなどの網に侵入して、餌をこっそり盗み食いをして暮らしています。
ズグロオニグモは夜行性で、網を昼間も放置している事が多く、かつ、造網場所は小さな昆虫がたくさんかかる川縁である事が多いので、昼間の居候先として最適かも知れません。
せっかくなので捕獲して少しアップで。

シロカネイソウロウグモ(メス)


よく見ると、頭部は黒く、腹部も一面銀色ではなくて、模様があります。
この銀色は、表皮の下の細胞にある色素が見えているもので、メタリックな昆虫のように、表面が光っているわけではありません。種によっては、外部から刺激を受けると、その細胞が小さくなって体色を黒っぽく変化させるものもいるのですが、シロカネイソウロウグモはそのような事はないようです。
それにしても、こっそり居候するというのに、なんでこんなに光っているんでしょうね。

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玄関から20歩の自然 その3 似たもの同士

野草の中には違う種類なのに、やたらにそっくりなもの同士がいたりします。そういう難しい識別に喜んでチャレンジするのが野草マニアということになります。どの分野にも、他の人から見ればどうでも良さそうな違いを見つけて楽しむ愛好家がいて、それがマニアの世界と言えるでしょう。
さて、道端にもそんな植物が数え切れないくらいあります。まずはこちらの2枚の写真を見て下さい。

トキワハゼ

ムラサキサギゴケ

花はそっくりで、確かに近縁種ではあります。上はトキワハゼで下はムラサキサギゴケと言います。
何が違うかというと、見た目以上に生活史が異なります。トキワハゼは一年草、または越年草(おつねんそう)、ムラサキサギゴケは多年草なのです。越年草とは、前年の秋に発芽して冬を越し、春以降に開花、結実すると枯れてしまう植物のことです。トキワ(常葉)ハゼという名は、冬に葉を残して越冬し、花期も長いために一年中葉があるように見えるためについた名です。
一方、ムラサキサギゴケは多年草で、匍匐枝(ほふくし)と言って、翌年に根を張って株を形成するための茎が出るのが特徴です。

ムラサキサギゴケの匍匐枝

トキワハゼよりムラサキサギゴケの方が少し花が大きいという違いもありますが、この匍匐枝や、花茎も少し這うように伸びる点がムラサキサギゴケの特徴となります。
次はこちら。極小の花ですが、よく見るとワスレナグサに形も色もよく似たかわいい花です。キュウリグサと言って、今、あちらこちらの道端で咲いています。

キュウリグサ

ほんとうに似ているのはワスレナグサとではなく、下の写真の植物です。こちらはハナイバナ。

ハナイバナ

どちらも花は直径2ミリメートルほどの小さな植物ですが、キュウリグサは成長するとこんなふうに、花が咲きながら花茎を伸ばして10センチメートル以上になります。

キュウリグサの花茎

こうやって比べてみるとわかりやすいのですが、毎年春にこの二つの植物を見ると、どっちがどっちだったのか、頭の中で記憶を整理しなおしています。
ちなみにキュウリグサは、葉や茎を揉むとキュウリのようなにおいがするから、という名の由来なのですが・・今ひとつ首をかしげてしまいます。みなさんはどう感じるでしょうか。道端で見つけたらチャレンジしてみてください。

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玄関から20歩の自然 その2 街路樹の根元

玄関から20歩の自然のその2は引き続き街路樹の根元の話題です。今回も中央区のとある街路樹の根元です。
この数十年の間に急速に分布を広げ、今や住宅地の至る所に見られる外来雑草のアメリカフウロです。

アメリカフウロ

径1センチメートルあるかないかという大きさのピンクの花と、こちらの果実が特徴です。この特徴はフウロソウ科のもので、野草とも雑草とも薬草とも言えるような植物のゲンノショウコに近い仲間です。

アメリカフウロの果実

こちらは、見るからにアサガオの仲間ですが、花は径3センチメートルほどの小ささで、しかも地面を這っています。これは、このところ少しずつ分布を広げている外来植物で、コンボルブルス・サバティウスと言います。

コンボルブルス・サバティウス

なんだかいかめしい名前ですね。これは、グラウンドカバー・プランツ(芝生のように地面を覆う目的で植えられる園芸植物)として導入され、その流通名に学名が採用されたためです。コンボルブルスConvolvulusはセイヨウヒルガオ属で、サバティウスsabatiusは18世紀のイタリアの植物学者Liberatus Sabbati に献名されたものです。寒さにあまり強くない植物なのですが、このところの暖冬傾向のせいで広がっているのかもしれません。
そしてこちらはWANTED!まだ開花していませんが、見つけたらできるだけ小さいうちに駆除すべき外来植物、アメリカオニアザミです。

アメリカオニアザミ

すでにこの大きさになると駆除がむずかしくなります。その理由はこの凶悪な刺・・

アメリカオニアザミの刺 全草にある

この15年ほどの間に急激に分布を広げています。市内では当初、国道の中央分離帯などでポツポツと見られていました。それがどんどんと住宅地や市街地へと広がり、今では全域で見られます。初夏から咲く花はこちらで、大きめのアザミです。

アメリカオニアザミの花(2018年に撮影)

うっかり触ると刺でケガをします。見つけたら、革手袋などで手を保護するか、スコップなどを使って植物体を触らないように堀りとり、ゴミ袋へ入れて処分してください。

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ハイイロゴケグモ

ハイイロゴケグモ(メス成体)典型的な色彩の個体。斑紋がはっきりしない個体や灰色っぽいもの、ほとんど黒いものなど変異があります。

ゴケグモ属の一種。学名はLatrodectus geometrics。
体長10mm程度で不規則な網を張ります。コンクリートブロックの隙間、エアコン室外機の裏、ベンチや遊具の下、墓石の周囲等、人工物に好んで造網します。

コンペイトウ型の特徴的な卵のうと母グモ

「ゴケグモ」というと、1995年に関西を中心に発見が相次ぎ「毒グモ」としてテレビや新聞を賑わせたセアカゴケグモ(Latrodectus hasselti)を思い出す人もいると思います。セアカゴケグモは、今では関西などに定着し、他の地方でも散発的に確認されています。外国から輸入された貨物についていたものが物流に乗って各地に分散したと考えられています。幸いな事に、このクモに咬まれた事が原因で、深刻な健康被害を被ったという報告は今のところありません。
日本中がセアカゴケグモ探しに躍起になっていた同じ頃、横浜のコンテナ埠頭で発見されたのが、このハイイロゴケグモです。その後発見例も少なく、あまり話題になりませんでしたが、ここ数年、相模原市内での発見が相次いでいます。
気になる毒性ですが、セアカゴケグモより弱いというのが定説です。ただし、ゴケグモ属の毒は「神経毒」と呼ばれるもので、咬まれた場所以外にも症状が出るのが特徴です。全身症状に発展する可能性もあるので、咬まれない事が大切です。
まず、クモがいそうな場所には不用意に手を入れない事です。攻撃的な生き物ではないので、握ったり押さえつけたりしなければ、咬まれる事はまずありません。屋外で物陰を清掃する時や、物を拾い出す時には注意しましょう。履物に潜んでいた例もあるので、放置してあった靴等も要注意です。もし疑わしいクモを見つけたら市役所や博物館にご連絡ください。
万が一咬まれてしまった場合は患部を水ですすぎ、皮膚科や内科などの病院を受診しましょう。駆除には市販の殺虫剤が有効です。特定外来生物に指定されているので、生きた個体を移動したり、飼育することはできません。
と、色々書きましたが、相手の正体を知って、正しい対処ができれば、やたらに怖がる必要はありません(最近そんな話を良く聞きますね?)。
こうした外来生物は人間の活動と密接に関連して生息範囲を広げていきます。例えば物流に運ばれたり、他の生き物がいない人工環境へ進出するのはわかりやすい例です。博物館は、その記録を残す事で、私たちの暮らしや環境について考える事に貢献できるのではないかと思います。

腹部腹面の赤い「砂時計型」の斑紋がゴケグモ類の目印

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