脱皮殻の観察(クモ)

節足動物は、体の外側を骨格で覆っているので、大きくなるためにはその骨格=殻を脱ぐ必要があります。それが脱皮です。

イオウイロハシリグモ(幼体)の脱皮殻


これはイオウイロハシリグモ(オス幼体)の脱皮殻。
とてもきれいに形が残っていたので、思わず拾ってきてしまいました。

上顎


上顎。使っていた時のままです。

足先には爪があります


足先には爪もあります。

触肢


先端が膨らんだ形をしている肢は触肢で、この形はオスです。まだ幼体なので複雑な構造はありません。

各部のつながり


クモが脱皮をする時には、頭胸部の前端が蓋のようにはずれて、そこから全身を引っ張り出します。これを見ると、まるで服を脱いだように全体がつながっているのがわかります。ただし、腹部は硬い殻がないので、皮のようなものがくっついています。

頭胸部正面


最後に頭胸部を正面から。
この種が属するグループ(キシダグモ科)に特徴的な目の並び方をしているのがわかります。

こんなふうに、状態が良い脱皮殻ではいろいろな事が観察できます。

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貴重な昆虫標本

6月29日、昆虫の研究者が標本の閲覧に来られました。当館の動植物資料の中で一際古く、充実した標本群である「桐生亮コレクション」の中の標本が目的です。

このような標本箱が、桐生亮コレクションだけで何十箱もあります

この中から、現在は非常に希少な昆虫であるオオアオホソゴミムシの記録を確認するための標本調査でした。

オオアオホソゴミムシの標本

神奈川県からの近年の正式な記録は皆無で、現存する古い時代の標本はきわめて貴重とのことです。
桐生亮コレクションは、1930年代から60年代を中心に採集されており、当時の相模原市の動植物相を語るうえで重要な資料です。この標本も、1940年代と60年代に現在の緑区と中央区で採集されたものです。
同じ標本箱にはこんな標本も納められています。

ゲンゴロウ

ゲンゴロウです。神奈川県内では絶滅種となっています。それが、1937年に中央区上溝で採集されているのですから、驚きです。
さらに、しっかり認識はしていなかったのですが、こちらのオオヒラタトックリゴミムシという昆虫も、今では非常に珍しいということを閲覧に来られた方から伺いました。

オオヒラタトックリゴミムシ

桐生亮コレクションは植物標本も充実していて、やはり現在では県内で絶滅してしまったものや、極めて希少な植物が含まれています。
私たちは過去に遡って資料を採集することができません。せめて、今あるものをしっかり標本や記録に残し、後世へ伝えることが重要だと改めて感じました。

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初夏の水鳥調査

6月27日、市内緑区のダム湖で行われた水鳥の調査に参加しました。
雨が心配されましたが、穏やかな天候に恵まれて、カワウやアオサギなど、大型の水鳥の生息状況を中心に調査できました。冬と違ってカモ類はほとんどいなかったのですが、カワセミの仲間のヤマセミに出会いました。

ヤマセミ

止まり木がガードレールの残骸と、ダム湖ならではのシチュエーションでちょっと荒々しいですね。
湖畔では、巣立ちから間もないと思われるキビタキの幼鳥が静かに動き回っていました。

キビタキの幼鳥

この日は哺乳類の動きも活発で、何カ所かでシカを見て、さらにサルも群れていました。

メスのシカ

水鳥と呼ぶのはちょっと微妙ですが、巣立ちビナを連れたハクセキレイの家族が水面付近を慌ただしく飛び回っていました。

ハクセキレイの家族群

湖畔の草地に飛んでいたウラギンシジミです。翅(はね)の裏面が銀白色で、顔つきもお面を付けたような不思議な模様のチョウです。

ウラギンシジミ

その近くでは、カルガモの親子が水辺へ下りるところでした。

カルガモの親子

かわいいな、と写真を撮ったのですが、この後親子で一心不乱にこちらへ泳いできて、餌付けされてしまっていることがわかりちょっと悲しい気分になりました。
梅雨独特の湿度もあって最後はちょっと重たい気分になりましたが、野生の生きものの活発な様子を存分に味わえる調査となりました。

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地質学講座 最終回

6月22日は地質学講座の第4回でした。最終回でもある今回は、博物館での講義です。
第2回と第3回に行った野外観察会の振り返りと、相模野台地の成り立ちについて解説しました。

今回も多くの質問があり、参加者の熱意が伝わってきました。来年度以降も多くの方々の好奇心を満たすことができるような講座を企画していきたいと思います。

今年度の地質学講座も無事終了することができました。初めてご参加いただいた方は、これを機会に地質学に興味を持っていただければと思います。毎回ご参加いただいている方は、奥深い地質学の魅力をさらに感じていただければと思います。

ご参加いただいた皆様、また、手厚くサポートしていただいた相模原地質研究会の皆様、ありがとうございました。

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たくさんの方にご来場いただきました!読み聞かせ会 そして来週火曜、水曜日は臨時休館です!

6月23日、企画展「闇に生きる 相模原にすむ夜行性の生きもの」の関連イベントとして、「ちょっと怖い!絵本の読み聞かせ会」を実施しました。
先週6月15日に引き続き2回目となり、今週もたくさんのみなさまにご来場いただきました。

読み手のみなさんもびっくりするくらい、たくさんの方にご来場いただきました

第1部(13時から)は『モチモチの木』(斎藤隆介作、滝平二郎絵)。じさまの急病を知らせに、闇の山道を駆け下りてイシャサマを呼びに行った臆病な豆太は、戻った家の前で、モチモチの木に灯がともるのを見ます。それは、霜月(しもつき=11月)二十日の晩の特別な光景・・。絵本が描く美しい光と影の世界を、情感豊かに読んでくれました。

モチモチの木

続いて第2部(15時から)は、『おしいれのぼうけん』(ふるたたるひ・たばたせいいち作)。さくら保育園の怖いもの、それは・・あきらとさとしのケンカをきっかけに始まった押し入れの冒険。立ちはだかるねずみばあさんに二人は・・。

おしいれのぼうけん

読んだことがあるのに、読み聞かせてもらうと改めて物語が立体的に浮かび上がります。お子さんたちはもちろん、大人のみなさんも聴き入っていました。

前のめりで聴き入る子どもたち

終演後、読み手がお見送りをしていると、お子さんたちから自然にハイタッチの手が伸びました。嬉しいシーンですね。

「楽しかったよ!」の合図のハイタッチ!

今日は朝からぐずついた梅雨らしいお天気でしたが、多くのみなさんにご来館いただきました。企画展の絵本のコーナーは、終日こんなふうに読み聞かせているご家族連れで賑わいました。

企画展会場内の絵本コーナー

企画展は7月7日まで、会期はあと2週間となります。ただし、明日月曜日から26日水曜日まで、メンテナンス作業に伴う休館となりますので、ご了承ください。27日木曜日から通常どおりの開館となります。

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天使のらせん階段

博物館の駐車場には今、天使が軽やかに登りそうな、らせん階段があります。

らせん状に咲く小さな花です

ネジバナです。れっきとした野生ランですが、ほかの野生ランが軒並み希少種扱いなのと比べて、こちらはごく普通種です。公園の芝生や植込みなどに大量に咲いていることもあります。
拡大すると、まさしくランの仲間らしいゴージャスさ!

ネジバナの花

きっと、身近なところにも咲いているはずなので、探してみて下さい!
さて、今日(6月23日)は企画展「闇に生きる 相模原にすむ夜行性の生きもの」の関連イベント「ちょっと怖い!絵本の読み聞かせ会」を実施します。
写真は先週のようすです。

読み聞かせ会のようす

今日も、光明学園相模原高等学校演劇部のみなさんが、じっくりと名作絵本を読み聞かせてくれます。
13時の回は『モチモチの木』、15時の回は『おしいれのぼうけん』です。
お申し込み不要なので、ぜひお気軽にご参加ください!

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生きものミニサロン カイコと触れあっていただきました!

6月22日、毎月第4土曜日恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは「カイコの繭の不思議」です。
博物館で飼育中のカイコがちょうど繭を作り始めているところだったので、いろいろな形や色の繭を紹介しました。

たくさんの人にご参加いただきました!

でもやっぱり、生きているカイコを前にすると、子どもたちはそちらに夢中です。

触れるカイコに夢中です

もう5齢なので、手に持っても問題ありません。カイコと触れあっていただく時間をたっぷり取りました。
初めて触る子や、「学校で飼ったことある!なつかしい」と慣れた手つきで手に取る子もいました。

初めてのカイコ!

手に持つと、しっかりと足でつかまってくる感触を味わえます。そこで質問してみました。
「カイコは昆虫の仲間なんだけど、昆虫の足って何本だっけ?」
「6本!」
「じゃあ、カイコの足の数をかぞえてみて」
「あれ!?16本ある!」

食べる時に葉をつかむ胸の足と、体を支える腹の足があります

教科書どおりに憶えていても、目の前の真実に戸惑うことがよくあるのが生きものの世界です。
成虫は6本ですが、幼虫には胸の足に加えて、腹部にも足があるため、数えてみるとずっと多くなるのです。ちょっと意地悪な質問でしたが、そこから観察の大切さを感じていただけたのではないかと思います。
次回は7月27日(土)12時からです。お楽しみに!

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お団子状に連なるのは(クモ)

マルゴミグモと卵のう

植え込みの上に丸いゴミのようなものが連なって浮いています。

マルゴミグモ

よく見ると、ゴミのようなものはクモの網にぶら下がるようについていて、その先頭には、丸っこいクモがいます。
その名もマルゴミグモ。体調5mm程度。ここ10年くらいで博物館周辺でも目につくようになったクモで、生垣や植え込みでよく見かけます。
ゴミのように見えるのはこのクモの卵のう。一本の縦糸の上に並べて付着しています。
このクモの特徴は「網の上に乗る」事。水平に網を張る事が多い種ですが、他のクモが網にぶら下がって体を支えるのに対し、この種は上側に乗ります。不安定ではないのか心配になりますが、観ている限り、そんな事はなさそうです。

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この週末は、生きものミニサロンに読み聞かせ会!

今週土曜日(6月22日)は毎月恒例の生きものミニサロンを実施します。今回のテーマは、「カイコの繭の不思議」です。
ちょうど博物館で飼育中のカイコが繭を作っている真っ最中となる見込みです。こんな姿をお見せできるはずです!

繭を作り始めたカイコ(過去の写真です)

また、いろいろな繭の形や色はどうしてできるの?繭からどれくらいの繊維がとれるの?など、さまざまな疑問にお答えします!

どちらもカイコの繭です!

透明な容器に作っている繭の様子などもご覧いただける予定です。

透明な容器に作られた繭

生きものミニサロンは6月22日土曜日12時から、博物館エントランスで実施します。お申し込み不要ですので、お気軽にご参加ください。
そして23日日曜日には、企画展「闇に生きる 相模原にすむ夜行性の生きもの」の関連イベント「ちょっと怖い!絵本の読み聞かせ会」を実施します。先週土曜日に実施したものと同じ内容で、闇を扱った名作絵本を、光明学園相模原高等学校演劇部のみなさんが読み聞かせを実演します。

6月15日に行われた読み聞かせ会の様子

ちょっと怖いけど楽しい絵本の世界を味わえます。13時からと15時からの2回、こちらもお申し込み不要です。小さなお子様から大人まで楽しめますので、お気軽にご参加ください。

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縄文ムラの地形観察

6月16日に相模原市の文化財保護課の主催事業「縄文ムラの地形観察〜谷戸(やと)を歩いて湧き水をたどろう〜」が開催され、相模原市南区の勝坂遺跡公園周辺の地形や地層を案内しました。

最初に30分くらい、相模野台地の地形や地質について概要をお話ししてから野外に出かけました。

勝坂遺跡公園のある中津原面上の端を歩いて、湧き水の出る段丘崖(だんきゅうがい)に向かいます。段丘崖とは段と段の間の急な崖のことです。

中津原段丘は上段と中段の間にある段で、相模川の右岸側、相模川と中津川に挟まれたところに広く発達しています。しかし、相模川の左岸では、勝坂遺跡公園のあたりから南へ相模川に沿った狭い範囲に細長く分布しているだけです。なお、勝坂遺跡公園がある段丘面は田名原面であるとする説もあります。

勝坂遺跡公園の段丘崖の下の方では、何ヶ所かで湧き水が見られます。そのうちの一つ、有鹿(あるか)神社の湧き水を観察しました。

勝坂遺跡公園の下にある段丘面は陽原(みなはら)面(下段)です。段丘崖からの湧き水のため、段丘崖と鳩川の間の平坦面は湿地になっています。

鳩川の河床(かしょう)を観察しました。鳩川の河床にある礫(れき)は、約2万年前に相模川が運んできたものです。

勝坂遺跡公園のある段丘面に再び上り、相模原面(上段)との間にある段丘崖で相模原段丘をつくる地層を観察しました。ここでは、関東ローム層やそこに含まれる約2万5千年前の富士山の噴火により噴出された溶岩の破片の層や、約3万年前の姶良(あいら)カルデラの超巨大噴火により噴出された火山灰が含まれる部分を観察しました。姶良カルデラは今の鹿児島県の桜島あたりにあった火山です。相模原では姶良カルデラからの火山灰は肉眼で見ることはできませんが、顕微鏡観察で確認することができます。

最後に、もう一度、下段まで下りて、小さな川がつくった谷の地形を観察しました。この小さな川は、相模原段丘の段丘崖からの湧き水が水源です。下の写真の崖は相模原段丘の段丘崖です。

対岸には田名原面(中段)が見えています。

勝坂遺跡公園のあたりでは、狭い範囲に相模野台地をつくるほとんどの段丘を見ることができます。また、湧き水やそれらが侵食してできた谷地形も見ることができます。それだけ地形が複雑であるとも言えます。

参加者はメモを取ったり、写真を撮ったりして、熱心に観察していました。縄文時代の人たちがどのような場所で生活していたのかを感じることができたのではないかと思います。

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