縄文ムラの地形観察

6月16日に相模原市の文化財保護課の主催事業「縄文ムラの地形観察〜谷戸(やと)を歩いて湧き水をたどろう〜」が開催され、相模原市南区の勝坂遺跡公園周辺の地形や地層を案内しました。

最初に30分くらい、相模野台地の地形や地質について概要をお話ししてから野外に出かけました。

勝坂遺跡公園のある中津原面上の端を歩いて、湧き水の出る段丘崖(だんきゅうがい)に向かいます。段丘崖とは段と段の間の急な崖のことです。

中津原段丘は上段と中段の間にある段で、相模川の右岸側、相模川と中津川に挟まれたところに広く発達しています。しかし、相模川の左岸では、勝坂遺跡公園のあたりから南へ相模川に沿った狭い範囲に細長く分布しているだけです。なお、勝坂遺跡公園がある段丘面は田名原面であるとする説もあります。

勝坂遺跡公園の段丘崖の下の方では、何ヶ所かで湧き水が見られます。そのうちの一つ、有鹿(あるか)神社の湧き水を観察しました。

勝坂遺跡公園の下にある段丘面は陽原(みなはら)面(下段)です。段丘崖からの湧き水のため、段丘崖と鳩川の間の平坦面は湿地になっています。

鳩川の河床(かしょう)を観察しました。鳩川の河床にある礫(れき)は、約2万年前に相模川が運んできたものです。

勝坂遺跡公園のある段丘面に再び上り、相模原面(上段)との間にある段丘崖で相模原段丘をつくる地層を観察しました。ここでは、関東ローム層やそこに含まれる約2万5千年前の富士山の噴火により噴出された溶岩の破片の層や、約3万年前の姶良(あいら)カルデラの超巨大噴火により噴出された火山灰が含まれる部分を観察しました。姶良カルデラは今の鹿児島県の桜島あたりにあった火山です。相模原では姶良カルデラからの火山灰は肉眼で見ることはできませんが、顕微鏡観察で確認することができます。

最後に、もう一度、下段まで下りて、小さな川がつくった谷の地形を観察しました。この小さな川は、相模原段丘の段丘崖からの湧き水が水源です。下の写真の崖は相模原段丘の段丘崖です。

対岸には田名原面(中段)が見えています。

勝坂遺跡公園のあたりでは、狭い範囲に相模野台地をつくるほとんどの段丘を見ることができます。また、湧き水やそれらが侵食してできた谷地形も見ることができます。それだけ地形が複雑であるとも言えます。

参加者はメモを取ったり、写真を撮ったりして、熱心に観察していました。縄文時代の人たちがどのような場所で生活していたのかを感じることができたのではないかと思います。

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カイコは5齢5日目、大きさマックス!

博物館で飼育しているカイコは、6 月18日、すでに5齢になって5日目となりました。今くらいが大きさとしても最大となります。

体長約7センチ!

約7センチ!孵化直後が2.5ミリくらいなので、30倍近くの大きさになりました!
食べる量も今がマックス。クワの葉をあげてもあげても、すぐに食べきってしまいます。

食べる音もよく聞こえます

でも、給桑もあと2、3日でほぼ終了です。熟蚕(じゅくさん=繭をつくり始めるカイコ)となり、体が少し縮んで黄色っぽくなるのです。

手乗りカイコ

今のうちにモリモリ食べて、大きな繭をつくってほしいですね!

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「ちょっと怖い!絵本の読み聞かせ会」を実施しました!

6月15日、企画展「闇に生きる 相模原にすむ夜行性の生きもの」の関連イベントとして「ちょっと怖い!絵本の読み聞かせ会」を実施しました。
読み手は、光明学園相模原高等学校演劇部のみなさんです。

光明学園相模原高等学校演劇部のみなさん(照明の演出でちょっと怖い感じになってます!)

第1部は午後1時からの『モチモチの木』。切り絵の世界が闇と月の光の対比を見事に表現しています。

素朴で美しい絵本の世界が、読み聞かせによって再現されています

第2部は午後3時からの『おしいれのぼうけん』。児童文学の名作です。ちょっと長いお話ですが、参加した子どもたちの、ぐいぐいと前に出てくるような集中力がすごかったです。

『おしいれのぼうけん』に食い入る子どもたち

これも、演劇部のみなさんの発声や間の取り方など、日頃の鍛錬の成果なのでしょう。

『おいいれのぼうけん』は児童文学の名作です

改めて人の声で聴く物語は、言葉の美しさとともに情景が浮かび上がり、とても感動的でした。たくさんの方にご来場いただき、読み手の演劇部のみなさんも感激していました。
終演後、図書館勤務の経験のある当館館長らから、技術的なアドバイスも。

奥深い読み聞かせの技術に聴き入る演劇部員のみなさん

この経験を本業の演劇にも生かしていただきたいですね。
この読み聞かせ会は、同じ演目、時間で、6月23日(日)も行います。申込み不要ですので、ぜひお気軽にご参加ください。

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明日は読み聞かせ会!

明日(6月15日)は、企画展「闇に生きる 相模原にすむ夜行性の生きもの」の関連イベント「ちょっと怖い!絵本の読み聞かせ会」を行います。
何を読み聞かせするかというのはお楽しみなのですが、こちらの企画展の絵本コーナーの中から選びます。

企画展の1コーナー

多くの方に読み継がれている本がたくさん!

闇を扱った絵本や読み物を並べています

このコーナーは、闇を怖れる人間の心を表現した作品を集めて、闇について考えていただくコーナーです。
明日は市内南区の光明学園相模原高等学校演劇部のみなさんが、地階大会議室のちょっと暗い部屋の中で読み聞かせをしてくれます。
練習にも熱が入っています!

光明学園相模原高校演劇部のみなさん

あ!ネタバレ!?

13時からと、15時からの2回、いずれも、次のプラネタリウム上映に間に合う程度の時間で行いますので、小さなお子様から大人の方も楽しめます。ぜひお気軽にご来場ください!

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地質学講座 第3回 原当麻〜当麻山公園

6月8日に地質学講座の3回目を開催しました。
5月25日に実施した2回目の続きで、今回は相模原市南区のJR原当麻駅から当麻山公園まで歩きました。

最初に、田名原面(中段)の端で段丘地形を観察しました。この場所では急な段丘崖(だんきゅうがい)や沖積(ちゅうせき)低地などが見られます。沖積低地は今の河原の領域になります。

田名原面(中段)と陽原(みなはら)面(下段)の間の急な段丘崖の坂道の途中で、関東ローム層と田名原段丘の礫層(れきそう)が見られます。この坂道は「あずま坂」と呼ばれています。

陽原面まで下りて、左手に田名原段丘の段丘崖を見ながら陽原面上を歩きました。木が茂っている部分が段丘崖です。写真左下端のガードレールの左側(写真に写っていない部分)は陽原段丘を刻む谷になります。

陽原段丘を刻む谷の谷底は当麻山公園になっています。公園を整備する時に人の手が加えられていますが、はっきりと谷地形が残っています。右側の崖の上に一つ前の写真に写っている道が通っています。左側の崖の上が無量光寺です。

この谷の崖の下の方では、数カ所から水が湧いています。一番湧水(ゆうすい)量の多い湧き水を観察しました。一つ一つの湧き水の水量は多くはありませんが、集まると相当な水量になるようです。公園の下が暗渠のようになっていて、マンホールからはゴウゴウと水が流れる音が聞こえてきます。

無量光寺の山門付近で陽原段丘をつくっている礫層を観察しました。

心配されていた雨も全く降らず、無事野外観察を終えることができました。2回に分けて、相模野台地の上段から下段、さらにその下の沖積低地まで地形と地層を観察しながら歩きました。

地質学講座は次回、6月22日が最終回です。博物館で野外観察のまとめと相模野台地のでき方などを解説します。

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マイマイガも発生数が多いようで・・

このところ、博物館の駐車場付近が鳥の声でちょっと騒がしいことがあります。それは、ムクドリが家族で来てお食事をしているからです。

マイマイガの幼虫を食べようとするムクドリ

前庭や駐車場で大騒ぎしてつかまえているのは、マイマイガの幼虫です。親鳥が巣立ったヒナを連れてくるので、結構な数になります。

マイマイガの幼虫

マイマイガはいろいろな植物の葉を食べる種類で、今年は大発生というほどではないものの、よく目立ちます。先日のライトトラップ見学会や、生きものミニサロンの時にも登場して注目を集めました。
ムクドリの嘴(くちばし)には、マイマイガのトレードマークである頭部の「ハの字」模様がしっかりと見えています。

嘴にはマイマイガの頭がガッチリくわえられています

今年はいろいろなムシの発生量が多いので、鳥たちの子育ても少し楽なのかな?と考えたりしています。

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お見事!クワコの忍術

6月12日、カイコに与えるクワの葉を取っていると、葉の上にクワコがいました。

クワコ(おそらく4齢幼虫)

クワコは、カイコに最も近いとされる野生の蛾で、祖先は同じ種類と考えられています。緑の葉の上にいるとさすがに目立ちますね。このクワコはまだ4齢くらいなので、5齢幼虫の見事な忍術(擬態)がまだうまくないのかもしれません。近くにいた5齢のクワコは・・どこにいるのかわかりますか?

この写真の中にクワコがいます

答えは、赤い丸の中です。実際に見ても、かなり顔を近づけて見ないとわからないほど、クワの枝に同化しています。

クワの枝にそっくりなクワコ

こちらにもいるのですが、さらにわかりにくいと思います。

こちらにもクワコがいます!

答えはこちらです。

赤い丸の中にクワコがいます!

おもしろいのは、こうして擬態しているクワコの頭をちょっとつつくと、頭をぐっと下げて、胸部の背面にある眼状紋(がんじょうもん=眼に似せた模様)を突き出します。

眼状紋を見せるクワコ

これで外敵の攻撃をどれだけ防げるのか不明ですが、それなりに効果があるので進化してきたはずです。一度、これに驚く鳥の姿を見てみたいものです。
博物館に、カイコについて質問に来られた親子連れの方とクワコを観察していたら、お母さんが繭を見つけてくれました。黄色っぽくて小さな繭です。

クワコの繭

クワコはとてもおとなしく、きれいな蛾なので、クワを食べるという点でカイコのライバルなのに、つい楽しみにして見守ってしまいます。

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ライトトラップ見学会やりました!

6月8日、企画展「闇に生きる 相模原にすむ夜行性の生きもの」の関連イベントとして、ライトトラップ見学会を行いました。ライトトラップとは、光に集まる虫の性質を利用してつかまえる採集調査の方法です。講師の小野広樹さん(うみねこ博物堂店主)が、まだ明るいうちから駐車場にライトトラップを設置しています。

ライトトラップの準備中

開始は午後6時、やはりまだ明るいので、トラップの説明や、なぜ虫が光に集まるのかといった説明をしていただきました。

トラップのしくみを説明する講師の小野さん

実はこの日、サプライズゲストとして阪本優介さんが来てくれました。阪本さんは、最近出されたテントウムシの図鑑の著者で、蛾にも詳しい方です。開始前にハラグロオオテントウを見つけてきて、参加者に見せてくれました。その大きさに歓声が上がりました。

最近分布を広げてきたテントウムシです

さらに、マイマイガの幼虫(毛虫)を手に乗せて見せてくれてみなさんビックリ!蛾を好きな人には毛虫もかわいい存在のようです。

手の上に毛虫が!

暗くなってからが本番のライトトラップ。曇っていて湿度が高く、条件は良かったのですが虫は少なめでした。それでも、小さな蛾や甲虫にもいちいち種名を言ってくれる講師のお二人の知識にも驚きました。

専門家の解説に興味津々の参加者たち

たくさんの虫好きのお子さんたちが来てくれたので、またライトトラップ見学会をやってみたいと考えています。

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カイコの授業

博物館で飼育しているカイコは6月8日現在、多くが3齢から眠(みん=脱皮前の休眠期間)に入りました。明日までには多くのカイコが4齢になっているでしょう。

3齢の眠に入っているカイコ

でも、これくらいになってくると少し成長もばらついていて、すでに4齢に脱皮しているカイコもいます。

4齢に脱皮したばかりのカイコ

頭が大きいですね。これは相対的なもので、2日もすると頭が小さく見えるくらいに体(胸部と腹部)が大きく成長します。
下の写真は左が4齢に脱皮直後、右が3齢の眠のカイコで、もう頭部は抜けかかり、新しい頭が見えています。

左が4齢、右が3齢(眠)のカイコ

さて、博物館では希望する学校へ蚕種(さんしゅ=カイコの卵)を配布していますが、学芸員が出張授業へ行くことを配布の条件にしています。それは、ペットのようなつもりで飼ってしまうと、繭を収穫するという農業としての目的を忘れがちになってしまうためです。それをしっかり理解してもらうための授業をします。今週は5校の3年生に対して授業を行いました。

カイコの授業の様子

はじめ、普段と違う先生が前に立っているので落ち着かない児童のみなさんも、カイコを飼うのは、人間が生きていくための「衣食住」に関わる農業であることや、繭の中身の蛹(さなぎ)の命について考える話題になると、目が真剣になってきます。
これからカイコを飼いながら、たくさんの発見やハテナを感じていって欲しいですね。
そして、6月7日は上溝南高校でホタル観察会(同校地域連携委員会主催)のお手伝いをしてきました。
学校で、生物多様性から考えるホタルについての講義をして、そのあと、田名の相模川沿いの水田地帯でゲンジボタルを観察しました。

ゲンジボタル(田名で撮影)

計数カウンターを持ってもらい、数をかぞえながらの観察です。この日はちょっと少なめだったものの、だいたい80頭前後のホタルが光っていました。若い人たちが見守ってくれるだけでも、ホタルの保全には大きな力になります。夜の校外活動に尽力いただいている先生方にも頭が下がります。これからもこうした活動が続いてほしいと心から思いました。

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地質学講座 第2回 麻溝公園〜原当麻

5月25日に地質学講座の2回目を開催しました。
相模原市南区の麻溝公園からJR原当麻駅付近まで、地形や地層を見ながら歩きました。

まずは麻溝公園で相模原面(上段)上にある谷状の地形の観察です。谷ではなく、実際は細長い凹地(おうち)です。一番低い部分で地形を観察している様子です。写真右手に見える高まりは人工的に埋め立てたられた部分です。

凹地の東側から一番へこんでいるところを見るとこんな感じです。中央に見える橋のあたりが一番低い部分です。

段丘をつくっている地層が見られる大正坂です。相模原面(上段)と田名原面(中段)の間の急な崖で、関東ローム層が見られます。

大正坂を下りきって、道保川を渡ったあたりには中世の豪族館の堀跡が残っています。この堀は道保川の旧河道を利用したと言われています。ちょうど堀跡を歩いているところです。

最後に姥川の河床(かしょう)を観察しました。姥川の河床にある礫(れき)は姥川が上流から運んできたものではなく、約3万年前に当時の相模川が運んできた礫です。約3万年前の相模川の川原が姥川によって洗い出されて顔を見せています。

当日は、よく晴れて暑いくらいでしたが、風は爽やかで、気持ちよく観察をすることができました。3回目は6月8日、JR原当麻駅から当麻山公園までを歩きます。

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