アステロイドデースペシャルトーク2024を開催しました!

小惑星の地球衝突問題を世界中で考え、正しく知ってもらうための日であるアステロイドデー(6月30日)当日、アステロイドデー2024スペシャルトーク(第一弾)を開催しました。
まず、JAXAの吉川真博士による「SL9木星衝突から30年、アポフィス地球接近まであと5年」と題した講演で始まりました。

吉川博士による講演

シューメーカー・レヴィ第9彗星(SL9)が木星に衝突し、その観測から明らかになった衝撃的な事実や、近年世界中で進められているプラネタリーディフェンスの動きなどについてわかりやすくお話しいただきました。
続いて岡田達明博士(JAXA)から、「プラネタリーディフェンスミッションHera打ち上げへ」と題して、小惑星の軌道を変える国際的な実験の最新情報などについてお話しいただきました。

岡田博士による講演

かつてSF映画で描かれていたようなことが実際に行われ、成果をあげていることに会場のみなさんも大変興味を持たれていました。
最後は、三桝裕也博士(JAXA)による「はやぶさ2拡張ミッションの最新情報」では、小惑星探査機はやぶさ2の「その後」をお話しいただきました。

三桝博士による講演

はやぶさ2は、2020年に小惑星リュウグウのサンプルを搭載したカプセルを地球に届け、その後、さらに宇宙を旅して拡張ミッションに従事しています。地球とはやぶさ2の交信の様子や、これからどのような行程でミッションを続けるのかが紹介されました。
会場と、ネット中継で聴講されているみなさんから熱心な質問が続き、プラネタリーディフェンスや小惑星探査への関心の高さがうかがわれました。

左から岡田博士、吉川博士、三桝博士

このトークイベントでは、宇宙とつながるJAXAが、同時に世界中の研究機関や科学者たちとネットワークをつくり、人類のために英知を絞っている様子を、その最前線にいる科学者のみなさんから直接うかがうことができました。そんな贅沢で有意義な時間を共有できるのが、相模原の強みだと改めて感じることのできるイベントでした。

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6月30日 カイコ31日目 繭ができるまで

6月30日、給桑開始から31日目、ほぼすべてのカイコの上蔟(じょうぞく:カイコを繭をつくる場所である蔟(まぶし)へ移すこと)を終えました。昨日のブログでもその様子をお伝えしましたが、もう少し詳しく、蔟へ入ってからの様子を写真で紹介します。

カイコに限らず、多くの蛾の仲間は蛹(さなぎ)になる際に、蛹化の場所を求めて上へ上へと這っていく性質があります。そのため、カイコも最初のうち、蔟へ入れても、すぐにそこから出て蔟の枠の上を歩いたりして落ち着きません。しかしそのうち観念して(?)、蔟へ入って繭をつくりだします。外側から足場を確保するかのように糸を渡していきます。

蔟に落ち着いたばかりのカイコ

糸(繊維)は、カイコの体内では液状です。それが空気に触れて固まります。糸を吐くというよりも、たとえるなら、納豆の糸を引くように出して、それが出るそばから固まっていくイメージです。

糸(繊維)を吐くカイコ

蔟に落ち着いて半日ほどすると、だんだん内側の形が見えてきます。

作り始めて半日ほど 繭の形が見えてきたところ

朝作り始めて、その日の夜にはほぼ繭の形ができます。

作り始めて10時間ほど 繭の形がはっきりしてきました

翌日は若干透けて見るものの、昨日のブログにも掲載したこの写真のようになり、しっかり繭の形ができています。

作り始めて24時間ほど経った繭

しかしまだ工程は半分ほど。そこからさらに1日糸を吐き続けて、繭が完成します。下の写真は作り始めて丸2日経ったもので、すでに完成した繭です。

作り始めて丸2日の繭 これで完成です!

この後さらに2日経つと、中で蛹になります。
同じように育てて、しかも途中の脱皮の際などに成長が揃うように給桑のタイミングを調整したりしても、成長のスピードはやはり多少の幅が生じます。今回も、最初に繭を作り始めてから最後に作り始めたカイコには、2日ほどの差が出ました。カイコにも個性があるようで、それもまた生きものを飼育する面白さでもあります。
(生物担当学芸員)

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令和6年度地質学講座 4回目(最終回)

6月23日は地質学講座「神奈川県最古の地層」の第4回でした。今回で最終回です。

第2回と第3回に行った野外観察会のまとめと、神奈川県最古の地層の成り立ちについての講義です。

野外観察のまとめは、実際に訪れた場所の写真を見せながら解説をしました。改めて写真を見ながら解説を聞くことで理解を深めることができたようです。

講義終了後も多くの質問があり、今回の地質学講座のテーマについて興味を持っていただけたようです。ご自身でいろいろな場所から採集した岩石について質問された方も多く、皆さんの地質学に対する熱意を感じることができました。

野外観察会は雨に降られることもなく、今年度の地質学講座を無事終了することができました。今後も地質学の魅力を伝えられるような教育普及事業を企画できればと思います。

地質学講座にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。また、お手伝いいただきました相模原地質研究会の皆様、大変お世話になりました。どうもありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

(地質担当学芸員)

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6月29日 カイコ30日目 いよいよ繭!

6月29日、給桑開始から30日目です。気温の関係などあったのか、やや遅れましたが、ほぼすべてのカイコが熟蚕になり、盛んに繭を作っています。じつは昨日(28日)から作り始めていて、すでに24時間近く経った繭の状態です。

作り始めて24時間ほど経った繭

まだうっすら中が透けて見えますが、明日の朝までには真っ白になっています。繭は丸2日かけて完成し、さらに2日経つと蛹になります。この様子も、展示しています。

展示の様子

繭の中身が透けた状態は1日しか見られません。順次作り始めたものを、今日と明日、展示に出しますので、ご来館された方はぜひご覧ください。
熟蚕(繭を作り始める状態のカイコ)は、クワの葉を食べなくなり、葉の上に乗ってしまいます。

葉の上に並んで乗っている熟蚕のカイコ

そして、頭を真上に上げて振り始めたら、繭を作る状態になっている合図です。

頭を振る熟蚕

よく見ると、すでに糸を吐いているのがわかります。

口から糸が右下へ出ています

こうした熟蚕のカイコを蔟(まぶし:繭をつくる部屋)へ入れていきます。約1か月のカイコの飼育展示も、クライマックスを迎えました。
(生物担当学芸員)

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オオクチバスの狩り

先日の宮ケ瀬湖畔での調査の折、橋の欄干から湖面を覗くと何やら大きい魚が泳いでいるのを見つけました。
双眼鏡で見てみると、なんとオオクチバス(ブラックバス)だと分かりました。
それも、体長40cm以上はありそうな大型の個体です。

大きなオオクチバス

その視線の先には小魚(おそらくウグイの幼魚)の群れが泳いでいます。
どうやら餌として狙いを定めているようです。

小魚の群れ(中央)を狙っています

逃げる小魚の群れと追うオオクチバスの駆け引きは数分間続きました。

バスが近づくと小魚はザっと逃げます

しかし、追うオオクチバスの動きはずいぶんゆっくりです。
おそらく本気で採餌をしようとは思っていなかったのでしょう。
小魚の側は生きた心地がしなかったでしょうが…。
しばらくすると、追いかけっこに飽きたのか、オオクチバスは悠然と泳いでいきました。

左手側に去っていくオオクチバスと、一安心の小魚

オオクチバスは、魚類をはじめとした在来の生物の捕食等を通じ生態系に悪影響を与えることから 特定外来生物に指定されています。
その強い侵略性の一端を垣間見るような出来事でした。

(動物担当学芸員)

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行ってきました!市民学芸員視察研修@茅ヶ崎・寒川

関東地方が梅雨入りする前の6月19日(水)、本年度の市民学芸員視察研修を実施しました。
この研修は、当館のボランティア「市民学芸員」を対象に、他館園の運営や展示、ボランティア活動などを視察することで、個々の見識を深め、今後の活動に生かすことを目的としています。昨年度同様、本年も市外で研修を行いましたが、今回は茅ヶ崎市博物館寒川神社の豪華2本立てです。

まずは、令和4(2022)年に開館したばかりの茅ヶ崎市博物館です。館長から茅ヶ崎市や博物館の概要をお話しいただいた後、開催中の特別展とサマリー展示・基本展示について、同館学芸員から解説いただきました。

皆さん熱心に受講しています。

茅ヶ崎市博物館の一味違うところは、一般的な「常設展示」に当てはまる展示室ではなく、8個のユニット(=展示台)から成る「基本展示室」で、17のテーマを定期的に入れ替えながら茅ヶ崎の自然や文化を紹介している点です。
つまり、“常設”展示ではなく展示替えを想定した作りになっていて、訪れるたびに新たな発見や新鮮な驚きを感じられる魅力があります。

基本展示室で展示解説していただいています。

「頻繁に展示替えがあり、大変なのでは?」と運営目線で心配の声がありつつも、独自の工夫点の数々に皆さん感嘆していました。

また、ショーウィンドウに展示された資料を観覧する「サマリー展示」は、来館者が“主体的に観る”ことに主眼を置いているそうで、あえて通路側にはキャプションを設けていないとのこと。

サマリー展示について解説いただいてます。

サマリー展示の裏側(基本展示室)は、こうなっていたのか…!

このほか、茅ヶ崎市内のお寺から借用した市指定重要文化財を含む貴重な資料がズラリと並ぶ特別展「東海道中お寺めぐり」や、天気が良い日は富士山も見える(!)テラスからの美しい眺望、図書館併設の館内などをじっくりと見学しました。

木々の間からうっすらと富士山が見えています!

続いて寒川神社に移動し、権禰宜と学芸員のお二人から境内と方徳資料館についてご紹介いただきました。

まずは本殿でお参りをして…

本殿でお参りをした後、方徳資料館が存する山(かんたけやま)苑へ。ここは、御祈祷をした場合にのみ入苑することができる特別な場所で、寒川神社の起源に深く関わりがあると伝えられる「難波の小池」を中心とした池泉回遊式庭園を丁寧に解説いただきました。

いざ、

方徳資料館では、「八方除」に特化した珍しい展示資料や、神社の歴史、八方除信仰の歴史について学びました。資料館内で市民学芸員が自由に質問できるよう計らっていただき、帰路のひとこと感想タイムでも「とても丁寧な対応に大満足だった!」と振り返る参加者が多数でした。

方位に関する珍しい展示について解説いただいてます。

例年この時期に開催する視察研修では、雨に降られてしまうことも多々ありましたが、梅雨入りが遅れていた本年は晴天に恵まれた1日となりました。参加者一同、ここで学んだことをしっかりと今後のボランティア活動に生かしてくれることでしょう。

今回の視察研修でお世話になった茅ヶ崎市博物館と寒川神社の皆さま、このたびは誠にありがとうございました。

(歴史担当学芸員)

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カミキリムシ2種

長い触角(しょっかく)が特徴のカミキリムシのなかまは、種数が多く、とても多様な色や形をした種がいます。
ここでは、市内で撮影したカミキリムシ2種を紹介します。

まずは、ヒメヒゲナガカミキリ。
長い触角など、オーソドックスな(?)、ザ・カミキリムシといった形態をしています。

ヒメヒゲナガカミキリ

つぎは、水色が鮮やかなラミーカミキリ。

ラミーカミキリ

カラムシなどを食べる種で、その周りをぶんぶんと飛び回っています。

以前のブログで紹介したクビアカトラカミキリも、このカミキリムシのなかまです。
いろいろな形や模様の種がいて興味が尽きません。

(動物担当学芸員)

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常設展示室のメンテナンス

6月25日と26日は、館内設備などのメンテナンスのため、休館いたしました。実際、メンテナンスとはどのようなことをやったのか、そのごく一部を紹介します。
常設展示のメンテナンスは、展示ケース内の清掃作業と、照明の交換です。

電球の交換作業は、設備担当にやってもらいます

経年劣化で暗くなったり、一部には球切れしているところもありました。写真ではわかりにくいのですが、上が交換前、下が交換後です。

左隅の電球交換前

交換後

そして、ガラス面の清掃です。外側は毎日の清掃時に拭いていますが、内側はこうしたメンテナンス時にしか拭くことができません。資料をいったん出して作業するので、これは学芸員の仕事です。

資料をケースから出して拭き掃除をします

内側は指紋などの汚れが付かないかわりに、長い時間でうっすら曇るような汚れが全面につきます。これを力いっぱい拭いて落とすので、かなりの力作業です。でも、拭き終わって資料を戻すと、とてもクリアに展示物が見えるので、やりがいのある仕事です。
ほかにも、一部資料の展示替えや、プラネタリウム機器のメンテナンスなど、様々な作業をこのタイミングで行います。
6月27日からはちょっとだけクリアになった展示室で通常どおり開館していますので、ぜひご来館ください。
(生物担当学芸員)

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【新規収蔵資料展見どころ紹介-番外編-】市民学芸員への展示解説

少し前のことになりますが、6月12日(水)に行われた市民学芸員全体ミーティングの終会後、現在開催中のミニ企画展「相模原に生まれた偉人 尾崎行雄(咢堂)新規収蔵資料展」の担当学芸員による展示解説を実施しました。

本ミニ企画展では、郷土の偉人・尾崎行雄ゆかりの新規収蔵資料を展示しています。当日ご参加いただいた市民学芸員の皆さんには、展示の裏話なども交えながら見どころについて解説しました。
このブログでは【見どころ紹介番外編】として、特に市民学芸員からの反響が大きかった資料について紹介します。

たくさんの市民学芸員さんにご参加いただきました!

1つ目は、「尾崎行雄と池の平『楽山荘』」と題したコーナー。ここでは、尾崎が愛した池の平(新潟県妙高市)の旅館・楽山荘にゆかりがある扁額を展示しています。
夫の佐々木久二とともに夫妻で楽山荘を経営していた“女主人”=長女・清香に宛て慈愛をもって詠んだ歌や、尾崎が特に気に入って過ごした「思慕の家」という名のオンドル部屋を題材に詠んだ歌の2首をご覧いただきました。

楽山荘ゆかりの扁額

あわせて、尾崎が楽山荘で過ごすようになった際、80歳を超えて初めてスキーを練習し、乗馬の経験などで養った姿勢や膝の使い方によってみるみるうちに上達したというエピソードを紹介したところ、市民学芸員一同から驚きの声が上がりました。

平野 一男・画「池の平でのスキー」(提供:(一財)尾崎行雄記念財団)

次に、近藤日出造・画「尾崎先生像」の色紙です。この資料は、本年2月に実施した展示替えにより、普段は自然・歴史展示室内の尾崎咢堂コーナーに常設展示しているため、今回のミニ企画展で唯一初公開ではない資料となります。(会期中、自然・歴史展示室ではパネルを展示しています。)

近藤 日出造・画「尾崎先生像」

しかし、場所が変われば受ける印象も変わるのか、皆さん改めてじっくりと見入っていました。また、作者の近藤日出造氏は昭和22(1946)年に一度退社した読売新聞社に復職した後、約30年にわたり読売新聞で政治漫画を描いていたため、展示解説に参加した市民学芸員の中には、リアルタイムで連載をご覧になっていた方もいらっしゃったようです。

皆さん、興味深く解説を聴いてくださっています。

今回に限ったことではありませんが、市民学芸員全体ミーティングの終会後には、その時々で開催している企画展について、担当学芸員による展示解説を行っています。(直近の様子はこちらをご覧ください。)
このため、展示を見る目の肥えた皆さんに対する展示解説は少し緊張気味ではありましたが、終了後に「とても分かりやすかった!」、「又野の記念館にもぜひ行ってみたいと思った。」という嬉しい感想をいただくことができてホッと胸をなでおろしました。

全4回でお届けした【新規収蔵資料展見どころ紹介】は、この番外編をもって最終回となります。(はリンクからご覧いただけます。)
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。よろしければ、このブログとあわせて展示もお楽しみいただけますと幸いです。

(歴史担当学芸員)

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【新規収蔵資料見どころ紹介③】尾崎少年の手習い

【臨時休館のお知らせ】6月25日(火)と26日(水)は、館内設備等のメンテナンスを行うため休館となります。ご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。27日(木)からは通常どおり開館します。

6月30日(日)まで、ミニ企画展「相模原に生まれた偉人 尾崎行雄(咢堂)新規収蔵資料展」を当館特別展示室で開催中です。
このブログでは、ミニ企画展で展示している郷土の偉人・尾崎行雄ゆかりの新規収蔵資料の見どころを紹介しています。(第1弾第2弾はリンクからご覧いただけます。)
第3弾となる今回は、タイトルのとおり少年時代の尾崎が書いた手習草紙について紹介します。

尾崎行雄少年時代の手習草紙(明治2(1869)年)

尾崎行雄は、安政5(1858)年11月20日、相模国津久井県又野村(現在の相模原市緑区又野)に父・行正、母・貞の長男として生を受けます。幼名は彦太郎(ひこたろう)といい、大変病弱な子どもでした。尾崎は自著『人生の本舞台』(昭和21(1946)年発行)においても、「私は生来、病身であった。小さい頃から頭ががんがん痛み、皮膚にはヒキガエルのようにぶつぶつができていて醜く、胃は弱くて少し変わったものを食べるとすぐ吐くという状態であった。」と振り返っています。

そんな尾崎少年が又野の地で過ごしたのは明治2(1869)年までのこと。役人として明治政府に仕えていた父のもとへ上京するため、ふるさとを後にします。
この手習草紙は、尾崎が生まれ故郷で過ごした最後の年である同年、文字を書く練習のために使用したものです。

幼名で署名されています。

紙いっぱいに「奉納八幡」と書かれた「八」の字の右上には、字が重なって判読しづらい部分もありますが、「明治二年」とあります。また、左下には「尾㟢彦太郎」と尾崎の幼名の署名も。当時10歳の子どもが書いたことを考えると、かなり達筆です。

しかし、別の手習草紙を見てみると…

鎧武者の落書きが!

鎧(よろい)を身につけた武士や、役者絵風なタッチのものなど、様々な落書きが描かれています。

中央に人の顔が描かれています。

しっかりと文字を書く練習をする一方で、子どもらしく落書きをしていた場面がうかがえる、まさに尾崎の少年時代が垣間見える資料です。

さて、恒例の展示室の“咢堂桜”を見てみましょう。はじめは枝ばかりが目立っていた桜の木も、今や青空を埋め尽くすほどの花で満開となっています。

満開御礼❀

みんなで咲かせた咢堂桜、こちらも展示の楽しみの一つとしていただけると幸いです。

※満開に伴って新規のメッセージ募集は終了し、現在は観覧のみとなっております。ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

(歴史担当学芸員)

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