立冬の風景

11月7日は二十四節気の立冬です。
とは言え、まだ冬の足音は遠くの方にあるように思える穏やかな一日でした。
それでも、博物館の駐車場のサクラは期待どおりに美しい紅葉の落ち葉で地面を埋めてくれています。

サクラの木の下に広がる落葉の紅葉

今年は台風のせいなのか、気温の加減なのか、枝についている葉のようすを見ると、カエデやケヤキの紅葉はあまり期待できなさそうです。黄色くなるよりも先に、茶色っぽく枯れてきているからです。
秋の話題をもう一つ、ヤマノイモのつるの途中についているコブのようなものは・・

ヤマノイモの茎の途中にコブのようなものが・・

ムカゴ(珠芽)です。ムカゴとは、栄養繁殖器官の一つです。ここから芽が出て新たな株に育つもので、ヤマノイモやユリのなかまなどに知られています。中身は食用にする山芋と同じようなものなので、食べられます。むかしから塩ゆでにしたり、お米と炊き込んでムカゴ飯にしたりしました。

ヤマノイモのむかご

割ってみると、種子や果実ではないので胚や子房もなく、まさにミニチュアのおイモです。

割ると糸をひく粘りけがあります

晩秋の風物であるヤマノイモのムカゴは、どの株にもつくわけではないのですが、つく株にはたくさんなります。ちょっと触っただけでぽろりと落ちるので、その気になればすぐにポケットいっぱいになるくらい、収穫できます。

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「まなべる くらべる 学習資料展」関連事業「チャレンジ体験」を開催!

毎年恒例の学習資料展が11/1から始まりました。学習資料展は、主には小学校中学年の学習に役立ててもらうため秋から冬にかけて開催しているもので、今年のテーマは「まなべる くらべる 学習資料展-便利になった道具とふるさといろはかるたで見る移り変わり-」です。

資料展A4チラシおもて

資料展A4チラシうら

今回の展示の見どころは、博物館ボランティア「市民学芸員」による電話ボックスとつるべ井戸のジオラマです。昭和30年代頃の電話ボックスジオラマのクオリティの高さは一見の価値ありです!

また、もう一つの見どころは、同じく市民学芸員のみなさんが苦心の末に作り上げた「相模原ふるさといろはかるた」です。今回は、かるたの実物はもちろん、紹介場所のマップ、日本語だけでなく英文もある解説文、そして絵札の原画47点を展示しています。

なお、「相模原ふるさといろはかるた」は学校や団体への貸出しも可能ですので、ご希望の方は当館までご相談下さい。

相模原ふるさといろはかるた(貸出も可能です!)

11/4には昔のあそびや、道具が体験できる「チャレンジ体験」を開催しました。多くの親子連れに参加いただき、大変盛況でした。

ブンブンごま、おりがみ、わりばし鉄砲などいろいろ体験

特に今回は、普段はケース内に展示している、平野ノラさんでおなじみの「ショルダーホン」(レプリカ)を体験用として直に持ってもらい、その重さを体感していただきました。

また、紙芝居やかるた大会も行い、多くの参加者で盛り上がりました。

白熱のかるた大会

チャレンジ体験は、11月から2月までの第1、第3日曜の午前10時から午後4時まで開催していますので、ぜひご来館ください。

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森の変化と生きもの

この5 年ほど続く博物館周辺の樹林でのキアシドクガの大発生は、森にいろいろな変化と影響をもたらしています。
5月から6月に開花するミズキは、キアシドクガの幼虫によって花芽ごと食べ尽くされてしまうため、ここ数年、秋に実る果実もほとんど実っていません。そのため、この時期に果実を目当てに渡ってくる冬鳥が樹林でほとんど見られない状況です。
冬鳥の渡来が遅れているわけではなく、その証拠に代表的な冬鳥のジョウビタキはもうやってきています。

ジョウビタキ(メス)

とてもかわいらしい鳥です。地面に降りたり、低い枝にとまったりを繰り返しているので何をしているのかとよく見ると・・

なにかの幼虫をくわえています!

どんぐり虫を食べていました!どんぐり虫とは、どんぐりの中身を食べて成長する昆虫の総称で、シギゾウムシのなかまや、一部の蛾のなかまが知られています。上の写真で食べているのは、シギゾウムシの幼虫です。

どんぐり虫(シギゾウムシのなかまの幼虫)

この時期、地面に落ちたどんぐりから出てきて、地中で蛹になるために地表を歩く、一瞬の隙にジョウビタキに捕らえられてしまったというわけです。
下の写真は、コナラのどんぐりの中に入っていた蛾の幼虫です。

コナラの中に潜入している蛾のなかまの幼虫

ミズキの果実をアテにしていない冬鳥がこれから増えてにぎやかになるとよいのですが・・。
それからもう一つ、この樹林には大きな変化があります。キアシドクガに葉を食べられ続けたミズキは、さすがに樹勢が弱っているものが多く、枯れてしまった木も多く見られます。それが夏から秋にかけての度重なる台風で倒れ、さらに連鎖するように隣接していた木が倒れるなどして、樹林内にはギャップと呼ばれる空間がいくつもできています。

木が倒れた真上は、ぽっかり空が見えています

去年まではこんなぽっかりと空が見えていませんでした。ここはミズキとコナラ、そしてクヌギの大木が連鎖的に倒れた場所です。
こうしたギャップは、林内に太陽の光が差し込むためにこれまで育たなかった植物が芽吹いたりします。樹林が更新していく端緒となるのです。
これから樹林がどんな変化を見せてくれるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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【採用情報】相模原市では学芸員(民俗)を募集しています【申し込みは11/26まで】

11月1日号の広報さがみはらで情報が公開されました。

受付期間は、平成30年11月1日(木曜日)から平成30年11月26日(月曜日)まで。当日消印有効です。

詳しくは相模原市のホームページをご覧ください。

職員採用選考案内(平成30年度 学芸員(民俗) 社会人経験者)

※このブログをご覧になった方で、身の回りでこの情報を必要としている方がおいでの方は、ぜひその方にこの情報をお知らせください!よろしくお願いします。

広報さがみはら11/1号に掲載されています!

 

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火山灰を顕微鏡で見てみよう

10月28日に「火山灰を顕微鏡で見てみよう」を開催しました。

参加された皆さんは熱心に、顕微鏡で火山灰を観察していました。

また、火山灰中の鉱物の洗い出し作業も体験しました。

この茶色の土が地層中から採集した火山灰です。

この中から鉱物を洗い出すと下の写真のようになります。手触りも粘土をこねていたような感じから、砂つぶを触っているような感じになります。この火山灰は箱根東京軽石と呼ばれているもので、黒や白い鉱物が目立ちます。

洗い出した鉱物は、カードと一緒にお土産として、お持ち帰りできます。

今年も、相模原地質研究会はじめ、ボランティアの方々にご協力いただきました。ありがとうございました。

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チームワークでリュウグウを目指せ!~小学生対象プログラミング教室を開催しました~

広報さがみはら10/1号に募集のお知らせを掲載したところ、まさに「瞬殺」、これが「秒で」という形容がぴったりくる状況と言えるでしょうか。あっという間に満席になったイベント、それがこの小学生対象のプログラミング教室です。

募集案内チラシを見ているだけでワクワク・・・

午前は低学年の部、午後は高学年の部を開催しました。

会場は大会議室です

事前申し込みのみなさんが集合~!出席率も高く、参加者のみなさんの期待の大きさを感じます。

床に出現したのは・・・

すでにセッティング済みの大会議室にはリュウグウが!

ロボ団のスタッフの皆さんの軽妙(!)な進行で、JAXA教育センター所長さんのお話、

ご挨拶をいただきました

そして事前に予習してきた「はやぶさ2」についての映像が流れ・・・

IES兄さん!!!

なんとここで午前の部では

ご本人登場!

サプライズゲストも!
おりしも当日は「みお」の打ち上げ直後。会場では細田先生による「みお」解説のオマケつき!なんというぜいたくで特別な時間でしょうか・・・!

さて肝心のプログラミング教室は一組4名のチーム(当日初対面のチーム編成!)で、指揮官とプログラミング担当を入れ替えつつ担当し、先ほどの魔法陣風のコーナー角から中央のリュウグウを目指して悪戦苦闘?それとも楽々操作?

チームによってそれぞれの結果となった第1回目のチャレンジの後で、IES兄から「チームワークの大切さ」を改めて教えていただいて、再度チャレンジ!

目的地に到着できるかな?

最終的に各チームともミッション成功!

大歓声、大満足の1日となりました。

実際の「はやぶさ2」の活躍も気になる今日この頃、この日の教室に参加した未来の科学者たちの活躍も楽しみです。

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江戸時代にタイムスリップしませんか?~吉野宿ふじや企画展のお誘い~

博物館所管施設の吉野宿ふじやでは10/20から12/2まで企画展「甲州道中(相模湖・藤野・上野原)の見どころ」展を開催しています。(期間中の月曜日は休館します)

吉野宿ふじや外観

今回のテーマはずばり甲州道中。
甲州道中の宿場である小原・与瀬・吉野・関野宿のほか、県境を超えた上野原も含めた街道沿いの見どころを写真や資料で紹介します。

館内展示

見どころ満載ですよ。

山梨県の上野原までをご紹介!

ぜひご覧くださいね!

ご案内チラシ

そして、二つの関連事業にもぜひご参加ください。みなさまのご来館、ご参加をお待ちしております!

【関連事業その1】「甲州道中を歩くー藤野駅から小原宿まで」

日 時:11月10日(土)9:00~15:00

参加方法:NPOふじの里山くらぶ(042-686-6750)へ直接お問合せください。

【関連事業その2】「ギャラリートーク」

日 時:11月24日(土)13:00~14:30

講 師:上野原市文化財保護委員長の長谷川 孟さん

 

 

※吉野宿ふじやは平成29年4月以降、原則として「土日祝日のみ開館」としていますが、当該イベント実施中は火曜~金曜も開館しています。

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生きものミニサロン ドングリいっぱい!

朝の雨模様から一転、秋晴れが広がった10月27日(土)、生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは「ドングリいっぱい!」。まずは駐車場に出てドングリをしっかり観察。

ドングリを拾って中身を観察

そして、駐車場にたくさん落ちているコナラのドングリの渋味を味わってもらいました。

渋いと言われれば・・渋いかな?

うーん、そんなに渋くない・・あれ?今年のコナラはあまり渋味が無いのかも・・
それでも、次に味わってもらったスダジイの、渋味の無さとの違いは感じ取っていただけました。
続いて、ドングリクラフト。事前に拾ってきてあったマテバシイも使って、ドングリコマや、ドングリやじろべえを作りました。

コマを作って回しています

うまくバランスもとれています。

傾きはないかな?

顔を描いて、バランスもとれて、かなりイイ感じ!

ドヤッ!ドングリやじろべえ!

穏やかな晴天の下で、ドングリを楽しんでいただきました!
次回は11月24日(土)12時から、お申し込み不要ですのでお気軽にご参加ください!

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ネコハグモ


葉の上に張られた、小さな天幕のようなシート。この裏に潜んでいるのはネコハグモです。
体長3-5mmの小さなクモで、ハグモ属というグループの1種です。
このクモの名前について、「ハグモ」というのは葉の上に網を張るから(人工物にも好んで造網しますが)なのですが、なぜ「ネコ」なのでしょうか。
私は「毛並みが猫っぽい感じがする」から、となんとなく思っています。

拡大してみると、腹部や頭胸部が長めの毛で覆われています。
因みにこのクモの学名は Dictyna felis (ディクティナ・フェリス)です。「Dictyna」は「網」を意味する言葉でハグモ属共通の名前。「felis」は「猫」を意味します。
この学名がつけられたのは1906年。もしかして百年以上前の人が「おお、猫っぽい」と思っていたとしたら面白いな、と思います。

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縄文人の絵心は?

日頃、博物館の考古分野では、遺跡の発掘調査報告書が刊行された出土品の再整理作業を行っています。
現在は、平成12年に発掘調査された国指定史跡川尻石器時代遺跡(緑区谷ヶ原)の出土品を、いつでも活用できるように分類・整理し、収蔵庫に保管する作業を進めています。たくさんの縄文土器を整理していると、報告書にも載っていなかった興味深い資料がありました。それは、赤色顔料を使った「彩文(さいもん)土器」です。

写真アングルの下側に朱色で描かれている

小さな破片資料で彩色もやや薄いので、写真ではわかりにくいかもしれませんが、よく見ると土器の外面に朱色で交差する線や三角形状の線など、幾何学的な図形が描かれています。土器の内面を見てみると、彩文ではなく、彩色されて全体が塗られています。

内面は全体的に塗られている

朱色に塗られた縄文土器自体は、他の遺跡でも時折出土しますので、それほど珍しくはありません。同じ川尻遺跡でも、これまでの調査で赤彩された土器は出土しています。

赤彩された縄文土器【川尻遺跡平成19年調査出土品】

赤色顔料の原料には、ベンガラと朱(水銀朱)が縄文時代に利用されています。川尻遺跡の資料は成分分析されていないので、どちらかはわかりませんが、原料であるベンガラの鉱石などを磨り潰した石器も出土していますので、顔料の製造も川尻遺跡で行われていたようです。

赤色顔料が付着した磨石(すりいし)【川尻遺跡平成19年調査出土品】

縄文時代晩期の技巧的な土製耳飾りの破片資料には、色鮮やかな顔料が塗り込まれています。縄文人にとって「赤」は特別な色だったのでしょう。

縄文時代晩期の濃い赤色で彩る土製耳飾【川尻遺跡平成19年調査出土品】

今回改めて確認された、顔料を使って文様を描く資料は、市内ではほとんど知られていません。残念ながら限られた破片資料では、どのような文様だったのかはわかりませんが、土器をキャンパスにした縄文人の絵心を垣間見させてくれる興味深い資料でしたので、ご紹介させていただきました。また“掘り出し物”がありましたら、紹介していきたいと思います。

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