ヒルガオ

博物館お隣の樹林地を囲っているフェンスに、アサガオのような花が咲いています。

ヒルガオの花

ヒルガオです。こんな色と形の花は、春からふつうに畑や街路の植込みなどで見てきたのですが、上の写真の花は少し大きめです。春からよく見ていた少し小さめの花は、だいたいコヒルガオという別の種類の花と思われます。こちらのヒルガオも珍しい花ではないのですが、じつは、典型的なヒルガオというのはなかなか見られません。花を支える苞葉(ほうよう)という部分の形やその付け根の茎の部分はこんな感じです。

ヒルガオの花の付け根

コヒルガオはこのように、苞葉が少し小さくて先が尖り、茎に縮れたヒダがあります。

コヒルガオのつぼみ

葉はこのようにやや細長くて上下の幅があまり変わらず、下(基部)が左右にあまり張り出さないのがヒルガオの特徴です。

ヒルガオの葉

こちらはコヒルガオの葉です。

コヒルガオの葉

今回ご紹介したヒルガオは比較的わかりやすい典型的な形なのですが、これがなかなか迷ってしまうような中間型の株が多く存在します。ヒルガオもコヒルガオも種子からよりも地下の茎から分かれて増える栄養繁殖で増殖するのですが、時に両者が交雑する場合があるようで、両種の特徴を持った株が珍しくありません。あまりにも身近な雑草ですが、識別が意外と難しい種類なのです。

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コガタコガネグモ

これは、今年の6月21日に撮影した写真です。

体長5mmほどの小さなクモが、きれいな「かくれ帯」をつけています。
コガネグモの仲間の幼体です。

次は、今日(7月11日)に、ほぼ同じ場所で撮影した写真です。

体長10mm程。コガタコガネグモのメス、たぶん成体です。
腹部に特徴的な模様があり、網にはきれいな「X」字型のかくれ帯をつけています。
図鑑に乗っているような典型的な姿ですので、間違えようがありません。
実はこの成体を見る前は、なんとなく「ナガコガネグモの幼体だろうな」と思っていたので、あやうく間違った情報をブログに書くところでした。
更に、数年前にもこのブログで「ナガコガネグモの幼体だと思い込んでいたら違いました」という記事を書いているのに気づきました。思い込みというのは恐ろしいものです。
毎日のように同じ場所で観察するというのは大切だな、とつくづく思いました。
因みに、コガネグモの仲間は、幼体の時には、皆似たような形のかくれ帯をつけるようです。網だけを見ても種の判別はできませんのでご注意を。

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ちょっとこわい居候


これはチリイソウロウグモのオスです。

「イソウロウ」という名前の通り、他のクモの網に侵入して、餌をかすめとって暮らしています(これを「盗み寄生」といいます)。
まれに宿主のクモを捕食してしまう事もあるそうですが、この網の主であるクサグモは、そろそろ成体になる時期です。


これが網の主。体格差がありすぎて、襲うことなど無理そうです。


これはジョロウグモの幼体の網ですが、上の方(○で囲んだところ)にチリイソウロウグモがちょこんとぶら下がっているのがわかるでしょうか。

網の主はいません。
今の時期、ジョロウグモの幼体はこのチリイソウロウグモより小柄です。
網の主は、たまたま引っ越した後なのでしょうか、それとも食べられてしまったのでしょうか。
真相は解りませんが、網がすでに少し壊れている事、このチリイソウロウグモがやせている事を考えると、引っ越しした後のようです。
ジョロウグモに特別な思い入れがある訳ではないのですが、食べられたのではないと思うと、なんとなくほっとします。

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アナグマ?!

博物館お隣の樹林地に、センサーカメラを仕掛けています。赤外線を検知してスイッチが入るしくみのもので、体温のある哺乳類や鳥がカメラの視野を通過すると写ります(記録は動画形式です)。これまでも、フクロウやイタチなど思わぬ生きものが写り、生息確認をすることができました。
そのカメラの映像をチェックしていたら、またまた驚きの動物が写りました!なんと、アナグマです。

アナグマ(7月2日撮影)

アナグマはイタチ科の動物で、相模川沿いの段丘崖では記録があり、丹沢方面などでは比較的普通に見られます。しかし、住宅地に囲まれた狭い平地林生息しているとは驚きです。これでこの樹林地で記録した哺乳類は、タヌキ、アナグマ、イタチ、アライグマ、ハクビシン、ネコということになります。センサーカメラの記録ではありませんが、アブラコウモリも空を飛んでいますし、アカネズミの記録もあります。意外と豊かな哺乳類相です。
さて、嬉しい発見と同時に、気になる映像もありました。タヌキですが、おしりのあたりが少しヘンです。

タヌキ おしりのあたりの毛が不自然に抜けています

不自然に毛が抜けています。いま、都市部に生息するタヌキに疥癬症が広がっています。幸いこの樹林地のタヌキでは見られなかったのですが、最近、いつも写る2頭のタヌキのほかに、どうやら疥癬症らしい別のタヌキが2頭写ることが多くなりました。
こちらは、同じ日に写った健康そうな2頭です。

2頭でいることが多い健康そうなタヌキ

もともと3頭以上いることがわかっていたのですが、疥癬症が進行したことで個体識別が可能になってしまったようです。今後、健康そうなタヌキにも広がるのかどうか、とても気になります。

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「博物館de星祭り!七夕でワッショイ!~星のストラップ作り」を実施しました

博物館では7月8日(日)まで「博物館de星祭り!七夕でワッショイ!」を実施しています。七夕飾りはすでに来館者のみなさんの願い事がたくさん!

願い事かなうかな?

さがぽんやさがみんも七夕バージョンです!

浴衣姿のさがぽん

七夕バージョンさがみんと記念写真も!

そして7月7日の七夕当日は、エントランスで星のストラップ作りワークショップを行いました。

星のストラップ作りワークショップのようす

学習指導員や市民学芸員さんたちがやさしく手ほどきしてくれて、かわいくて素敵なストラップが完成!

星のストラップ

一所懸命つくりました!

かわいく作れました!

ひとつずつきれいにできました!

用意した材料は午前中ですべて終了となりました。ご来場いただいたみなさま、大変ありがとうございました。
七夕飾りや、そのほかの「七夕でワッショイ!」イベントは明日まで行っています。引き続きご来館をお待ちしております。

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養蚕日誌(7/6)透明まぶしのつくりかた

博物館で飼育しているカイコは、7割くらいが熟蚕となり、蔟(まぶし)へ移動中です。昨日から作り始めたものの一部を相模原市立博物館特製の透明まぶしに入れて、展示しています。

繭づくりのようすを展示中

バックライトを当てて、幻想的な繭づくりのようすを見られるようにしています。繭が透明に見えるのは作り始めて1日目までなので、今日明日くらいしか見られない光景です!

幻想的です!

さて、この透明まぶしは、直径5センチ程度の小さめのフタ付き食品パックを用いています。

小さめのフタ付き食品パック

しかし、ただ熟蚕を入れるだけではちょっと失敗してしまいます。というのも、カイコは1生のうち2回だけ尿を出します。この1回目が、熟蚕になって繭を作り始めたところで出します。これが食品パックの中にたまると、繭に染みてしまいますし、場合によって尿に溺れてカイコが死んでしまいます。そこで、底に穴をあけるのですが・・

必ず内側から穴をあけます

上の写真のように、千枚通しなどで必ず容器の内側からあけます。そうしないと(外側からあけると)、穴に小さな土手のようなものができてしまうため、うまく尿が排出されないのです。
このようにして5、6個の穴をあけたら、熟蚕を入れてフタをしめ、吸水のよいキッチンペーパーなどの上に置きます。

キッチンペーパーの上に置いたところ

こうするときれいな繭づくりのようすを見ることができますし、穴が空気穴の役割をしてくれます。
そして、もう一つ大事なことがあります。繭を作り始めて3日くらい経ったところで、フタをあけて風通しのよいところへ置きます。容器の内部にまだ少し湿り気があるためです。
この方法は、容器表面がつるつるでカイコが足場をつくれないことがあり、そうすると中でうまく糸を吐けずにしんでしまう危険もあります。あくまでも展示や観察のためのものなので、安全な蔟はやはり、紙を筒状にまるめたものや、格子状に組んだものが無難でしょう。

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養蚕日誌(7/5)繭を作っています!

博物館で育てているカイコは今、熟蚕まっさかりです。熟蚕(じゅくさん)とは、5齢になって1週間食べ続けたカイコが、いよいよ繭をつくるために本格的に糸を吐きはじめた状態のことです。写真の下側が熟蚕で、上側はまだ熟蚕になっていない5齢のカイコです。

下のカイコが熟蚕です

やや体が縮み、黄色く透けたような色になります。さらに飼育容器の角などで頭を振っていたら、熟蚕のサインです。繭を作る部屋の蔟(まぶし)へ移します。ダンボールで作った蔟で、外側の糸を張っています。

ダンボール紙でつくった蔟

最初はなかなか蔟に入ってくれず、縁などをうろうろしているのですが、そのうち観念して(?)繭を作り始めます。
蔟は特別な工作は必要無くて、少数なら少し厚めの紙を丸く筒状にしてテープなどでとめればOKです。

筒状に丸めた紙の蔟

トイレットペーパーの芯を半分に切ったものがよく使われます。
こちらは、相模原市立博物館特製!小さめの食品パックの蔟です。

透明な食品パックの蔟

これは展示用で、繭のできるようすが見えるので好評です。ただ入れるだけでは失敗してしまうので、ちょっとした細工がしてあります。どのような細工かはまた改めて解説いたします。
カイコの飼育も、ラストスパートに入りました。

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クワの葉の上の虫 追加・・というより、真打ち登場!

前回のブログでクワの葉の上にいたアシナガキンバエとキマダラカメムシの幼虫をご紹介しました。今日はこれから降りそうな雨に備えて、多めに葉をとっていた時に見つけた虫のご紹介です。

左側が頭です

スケバハゴロモの幼虫です!この時期、クワだけではありませんが、木々の葉の上でちょこまか動き回る虫です。なんてすばらしい造形!密かに「ラインダンス虫」と呼んでいるのですが、近いなかまのクワキジラミやアオバハゴロモと同様に、おしりからロウ状の物質を出しています。正面から見るといっそう楽しい!

正面から見たスケバハゴロモの幼虫

容赦なく、真後ろから!

真後ろから見たスケバハゴロモ

成虫はなかなかカッコイイ虫です。

蛾ではなく、カメムシに近いなかまです

専用の桑畑があるわけではないので、カイコの5齢終期の今は条件の良いクワの葉を探し求めてあちこちさまようのが正直つらいところなのですが、こうした虫を見るとほっこりします。
クワの近くの木杭の上には、ニホンカナヘビがいました。

ニホンカナヘビ

妙にハンサムな顔で、写真を撮らせてくれるとちょっと嬉しい瞬間です。

おすましした顔がハンサムなニホンカナヘビ

カイコは今日明日のうちに熟蚕(じゅくさん:繭をつくりはじめるカイコ)が出始める見込みです。給桑は一段落ですが、まぶし(カイコが繭をつくる場所)へ移す作業が忙しくなりそうです。

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クワの葉の上の虫

カイコの飼育も終盤となり、あと数日のうちに上蔟(じょうぞく=カイコを、繭をつくる場所へ移動させる作業)です。博物館に植えられているクワの木も、そろそろ不要な古い葉や枝を落として、夏の養蚕に備えようと枝打ちを行いました。猛暑というのもありますが、つい手が止まってしまうのはこんな虫を見つけた時です。

アシナガキンバエ

アシナガキンバエです。明るい場所の木の葉によくとまっている普通に見られるハエですが、見事なまでのメタリックな鎧につい見とれてしまいます。

スマートでメタリックなハエです

名前が似ていますが、臭いものにすぐに飛んでくる、あのキンバエとは違うなかまのハエです。
さらに、こんな虫もいました。キマダラカメムシの幼虫です。

独特の質感を持つカメムシの幼虫

江戸時代に海外からやってきた外来種として知られ、近年、西から徐々に分布を広げているカメムシです。博物館駐車場の木々でも、ここ数年で見られるようになってきました。こちらも鎧兜をかぶったような顔つきをしています。

こちらは幼虫ですが、成虫は黒地に黄色のまだら模様が入った大型のカメムシです

お隣の樹林地では、この時期、林内の定番といえるアキノタムラソウがたくさん咲いています。

アキノタムラソウ

シソ科らしい花のつきかたです。

名前と違って、初夏から咲き始める花です

今年は早めに真夏がやってきたので、ニイニイゼミが季節に追いつけとばかりに、ようやく鳴き始めました。
汗が目にしみるのを感じながら、クワの木のまわりの草刈りもやって作業を終えました。

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カタハリウズグモの出のう

昨日紹介したカタハリウズグモ、ちらほらと卵のう(卵が入った袋)を見かけてはいたのですが、今日、子グモがわらわらと出てきているのに出くわしました。


茶色っぽいちょっとトゲトゲしたのが卵のう、白いのが子グモ。体長は1mmあるかないかです。
通常、クモは卵のう内で一度脱皮してから出てきますので、これでもたぶん2齢幼体という事になります。
既に親グモはおらず、網が壊れたのか、卵のうはクサグモの網にぶら下がっていました。子グモがあまりに小さいせいか、クサグモの捕食対象にはなっていないようです。
それでもほとんどの個体は大人になる前に死んでしまうに違いないと考えると、自然の不思議を感じます。
ところで、「出のう」というのは卵のうから出る事を指す言葉で、漢字では「出嚢」と書きます。パソコンで「しゅつのう」と打ったら「出納」という字が出てきました。やっぱり一般的な言葉ではないようですね。

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