養蚕日誌(6/17)10日で10倍!

博物館で飼育中のカイコは現在、3齢の4日目に入り、そろそろ3回目の眠に入った個体が多く見られます。

3眠に入ったカイコ

週明けの19日までには4齢が出そろっているものと思われます。
体長は約2.5センチメートル、つまり、ふ化直後は2.5ミリメートルくらいなので、給桑開始の6月7日から10日で10倍の長さに成長したことになります。
今日(6月17日)は、神奈川大学理学部の学芸員課程を学んでいるみなさんが見学実習に来館されました。生物科学科の学生さんが多いということで、カイコにも興味津々でした。
実習は、まず生物多様性と博物館資料のつながりについてお話ししてから、バックヤードの見学です。

バックヤードの廊下で解説

がらんとしたバックヤードの廊下で、博物館の「裏側」の機能について考えてもらいます。
さらに、動植物資料収蔵庫などを見学して、標本収蔵の意義や収蔵環境などを説明しました。

動物の剥製の収蔵状況を解説

大学2年生ということで、まだ博物館や学芸員の仕事について実感がわいていないと思いますが、こうした実習をとおして博物館の機能と役割を立体的にとらえていただければと思います。

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養蚕日誌(6/15)3齢になりました!

6月12日の夜くらいから眠に入りはじめ、14日、概ね3齢に脱皮しました。下の写真は、眠(みん)の2齢のカイコです。黒い頭部が先に乗っかっているだけのような状態です。新しい頭部が何倍もの大きさになっているのがわかります。

眠のカイコ(2齢)

別の個体ですが、靴下をぬぐように脱皮しています。

脱皮中のカイコ(3齢)

左が2齢の眠、右が3齢に脱皮したカイコです。頭の色がベージュ色になっているのがわかります。

2齢(左)と3齢(右)のカイコ 頭の大きさと色が違います

今朝はすでにモリモリと食べていて、昨日よりもだいぶ大きくなっています。
そして本日6月15日、今年のカイコの授業の締めくくりとして、清新小学校の4年生に向けて授業を行いました。

1学年5クラスでしたが、とても集中して話を聴いてくれました

とても熱心に聴いてくれました。カイコを育てることは農業であることや、蛾まで育てるのはクラスで数個にしましょう、という投げかけに、児童のみなさんの頭の上にはたくさんのハテナマークが立っていました。これをクラスで話合ったり、先生と相談したりしながら解決していくのが、カイコを教材とした学習のクライマックスです。たくさん考えて、たくさん意見を出し合って、カイコの命に向き合っていただきたいと思います。

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浜辺で採集調査

6月13日、博物館で動物標本の作製などを行っているボランティアグループの動物標本クラブのみなさんと、茨城県南部の鹿島灘の浜辺へ標本採集に出かけました。

巨大な風車が林立する風衝地帯です

見慣れた相模湾や東京湾の浜辺とはスケールが異なり、広大な砂浜は外洋に面していることが実感できます。
ストランディング(イルカなどが陸地に打ち上げられ、身動きがとれなくなること)して息絶えてしまったのか、スナメリの遺体があり、みんなで観察しました。

スナメリの遺体を観察

これも、相模原では決して見ることのできない風景です。白波をバックに、シロチドリとトウネンのランデブーです。

トウネン(左)とシロチドリ(右)

胸ビレを広げると驚くようなエメラルドグリーンが広がる、ホウボウも打ち上げられていました。

ホウボウの胸ビレ

ふだん、見ることのできないさまざまな漂着物を観察しました。
動物標本クラブでは、こうした漂着物などからも標本を作製して、博物館の教材や資料にする活動を行っています。

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学芸員講話 第2回「石老山の成り立ち」

6月10日(日)に今年度の学芸員講話の第2回「石老山の成り立ち」を開催しました。

雨の中、多くの方にお越しいただきました。

石老山をつくっている岩石は、おもに礫岩(れきがん)と凝灰岩(ぎょうかいがん)です。

礫岩

凝灰岩

これらの岩石の特徴と形成過程、石老山がどのようにして山をになったのかをプレートテクトニクスの観点からお話ししました。身近にある山の成り立ちが、地球のダイナミックな動きに関係があることに、興味を持たれた様子でした。

次回の学芸員講話は7月8日(日)、民俗担当の加藤学芸員による「道祖神のまつりかた」を予定しています。お誘い合わせの上、ぜひご来場ください!お楽しみに!

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吉野宿ふじや企画展「吾が心の山ー山岳写真家 三宅 修の踏み跡ー」最終日イベントも大盛況!

緑区吉野にある博物館の所管施設「吉野宿ふじや」で開催されていた企画展「吾が心の山ー山岳写真家 三宅 修の踏み跡ー」が6月10日に終了しました。

企画展「吾が心の山-山岳写真家 三宅 修の踏み跡-」

三宅修氏は86歳になりますが、今なお山岳写真家として活躍されています。
6月10日の最終日には、緑区藤野地区在住の山岳写真家である三宅修氏ご本人による展示解説・ギャラリートークが行われ、50人ものお客様で会場内は満員状態でした。

今回の展示解説・ギャラリートークでは、三宅修氏が山岳写真家になるまでのエピソードなどを交えながら、今回展示した40点の数々の山々や藤野の里山の風景などについてお話いただきました。特に、三宅氏が中学生だった昭和20年8月の終戦直前に目の当たりにした高尾山付近の湯ノ花トンネルでの米軍機による機銃掃射の惨劇のお話は、非常に印象的でした。

今回のイベントの質疑応答にも参加者からも熱心な質問があり、最後には三宅氏のお孫さんから花束が贈られイベントは無事終了しました。

また、今回の展示の開催期間中、三宅氏はほぼ毎日のように吉野宿ふじやに来ていただき、自ら見学者に丁寧に対応してくださいました。「来ていただけるだけでありがたいので・・・」と、山岳写真家として著名な方にもかかわらず、とても謙虚におっしゃっていました。

今回の企画展には、三宅氏のお知り合いの方など遠方からも多く来場があり、合計880人もの方が訪れました。 三宅氏、そして企画・運営した地元のNPO法人「ふじの里山くらぶ」のみなさん 誠にありがとうございました。

次回の吉野宿ふじや企画展は、7月14日から「藤野の昔の産業」展&博物館との連携「宇宙」展を開催予定です。
ぜひ、またご来場下さい。

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養蚕日誌(6/12)2齢に脱皮

掃立て(給桑開始)から6日目(6月12日)となりました。昨日の昼頃、概ね2齢への脱皮が完了したのを確認したので、給桑を再開しました。下の写真は、6月11日のようすです。下側はまだ1齢で、眠(脱皮前の休息期)の状態です。頭部の殻(黒い部分)がすでにはずれかかっています。頭部の大きさの違いがよくわかりますね。

上が2齢に脱皮後、下が1齢で脱皮直前のカイコ

脱皮直後の頭部はベージュ色ですが、時間が経つと黒くなります。
脱皮したての2齢のカイコです。脱皮殻が後ろに残っています。

脱皮直後のカイコ 後ろの黒いのは脱皮殻

脱皮してしばらくすると、モリモリとクワを食べ始めます。

2齢までは脱皮から少し時間が経つと頭部は黒くなります

頭部が黒くなるのは2齢までで、3齢からは時間が経ってもベージュ色のままです。
さて、2齢になったところで、恒例の飼育展示を開始しました。

飼育展示のようす(1階エントランス)

これから20日ほどですが、カイコの成長のようすを来館者のみなさまにご覧いただきます。

まだ小さくて、虫めがねがないと見えにくいかもしれません

カイコの状態や担当者の都合により展示を休止する期間もありますのでご了承ください。

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なぜか後翅(うしろばね)が出ています

通勤途中で、木の幹に鮮やかな色があるのが目につきました。
シタバという、後翅が美しい事で人気のある仲間です。


これはコガタキシタバのようです。
本当はこうなっていると木の幹によく擬態できるのに…と思って、ちょっと指先で後翅を見えなくしてみました。


素晴らしい擬態です。


でも、すぐに元に戻そうとします。
翅に故障でもあるのでしょうか。
目立ってしまわないか、ちょっと心配になります。

※後日「このガの種名は『フシキキシタバ』ではないか」というご意見をいただきました。

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植物学教室「花の観察と植物画」終了

先週6月2日と本日9日の2回にわたり実施した植物学教室「花の観察と植物画」が無事に終了しました。
午前10時から午後4時まで、みっちりと濃密な時間を過ごされたみなさん。

実物を前に集中して描いています

こちらが「筆を置いて休みましょう!」とお声かけしないといけないくらい、集中されていました。
でも、休憩時には講師の豊田路子さんやほかの受講生のみなさんが、なごやかに植物談議に花を咲かせました。

基本的に、みなさん植物好きの方ばかりです

きめ細かな指導もあり、みなさんしっかりと植物画を描かれました。

手元を凝視

客観的に見て、それが何の植物であるかはっきりわかることが植物画の一つの条件のようなものですが、全員の作品がその条件をクリアしていました。

今日の課題は樹木

時間の関係で、どうしても「完成」とはいきませんが、簡易のマット(枠紙)を置くことで、作品として成立します。

ヤマボウシ

ヤマモモ

植物画のはじめの一歩を体験する二日間でした。帰り際のみなさんの笑顔が、充実した時間だったことを感じさせてくれました。

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養蚕日誌(6/9)掃立てから3日目

掃立て(給桑開始)から3日目の朝、カイコはすでに毛蚕(けご)と呼ばれる毛虫のような状態から、いっぱしのカイコの姿になっています。

1齢3日目に突入のカイコ

大きさも、二日前とは1.5倍ほどになっています。1齢とは言え、食べる量もなかなかのものです。食べ痕の葉は、まるで葉脈標本のようです。

カイコが食べたあとのクワの葉

あと丸1日くらい食べ続けて、最初の眠に入る見込みです。さらに1日半ほどで脱皮して、来週月曜日から火曜日には2齢となるでしょう。

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二度目の春

博物館のまわりのミズキやクマノミズキはいま、二度目の春を謳歌しています。

“今ごろ”瑞々しい新緑のミズキ

なぜ今ごろ春なのかというと、新緑瑞々しいはずの4月には、キアシドクガの幼虫に食べられてこんな状態だったからです。

4月下旬のミズキ(左)

葉脈の主脈(中央の一番太い葉脈)だけを残して食べ尽くされた葉は、下の写真のように休眠芽を揺り起こして成長させ、ふたたび展葉しました。

中央から休眠芽が成長して新しい葉を伸ばしつつあります(5月)

とはいえ、キアシドクガの大発生が5年も続き、木自体には相当ダメージを受けています。すでに枯れてしまった株もあります。
そんな中、異様なほど緑が復活している株が駐車場にあります。
一見、何事もなかったかのような復活のしかたですが、よく見ると通常のミズキの樹形ではありません。
なんと、枝がすべて枝垂れ(しだれ)状になっているのです。

異様に緑の濃いミズキ

枝垂れがなぜ起こるのかはよくわかっていません。ただ、通常の枝は全体として太陽光を効率よく受け取るために枝が上向きに伸びるよう、枝の付け根では上側の組織が強く太く成長します(上側の組織が下側を引っ張り上げることになります)。実際、年輪を見ると上側が広くなっています。それに比べて枝垂れの場合、年輪が上側も下側も同じ幅で、上側の組織が引っ張り上げる強度が無いために枝垂れることがわかっています。さらに、枝垂れの性質がある株に植物ホルモンの一種であるジベレリンを処置すると、枝垂れなくなることがわかっています。

“シダレ”ミズキ?

どうやら、度重なる食害によってホルモンバランスが崩れたために、枝垂れてしまったのではないかと考えられます。ちょっと興味深い現象ですね。

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