養蚕日誌(6/7)掃立て=給桑開始!

昨日、続々とカイコの孵化が進みました。写真は昨日のようすです。

卵から頭を出したカイコ

頭が見えてしばらくじっとしているかと思うと、モゾモゾ動き出して、体をくねらせながら数分で殻から出てきます。

8割くらい出ました!

カイコの孵化が概ね出そろったので、本日(6月7日)、掃立て(はきたて)ました。掃立てとは、孵化したカイコを蚕座へ移して給桑を開始することです。なぜ掃立てと言うのかというと、たくさんの毛蚕(けご)と呼ばれる小さな蚕を移動させるのに、羽箒(はねぼうき)を使って掃き落としたからです。博物館ではそれほどの量ではないので、いきなり、刻んだクワの葉をそばに置いていきます。すると・・

クワの葉を置いた直後 置いた瞬間に小さなカイコの頭が葉の方へ振られます

何もしなくても、自然とカイコが寄ってきます。においを感知しているのでしょうか。ものの5分としないうちに、クワを食べ始めます。

あっというまに、カイコだらけになります

20分後、もう葉は穴だらけです。食欲旺盛ですね。

20分ほどで、食べ痕の穴がたくさんあいています

今は黒い頭ばかりが目立ちますが、夕方にはもう体の大きさが二回りくらい大きくなっているはずです。

孵化直後のカイコは毛蚕(けご)と呼ばれます

これから3日ほど食べ続けて、最初の眠(みん)に入り、脱皮の準備に入ります。約25日間の養蚕の始まりです!

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地上の星

博物館お隣の樹林地の一画では、今年も地上に星が降り注いでいます。

地上に降り注いだ星

地上に瞬く星の正体は、アカメガシワ(トウダイグサ科)の雄花です。
ほかの花々と同じく、例年よりも10日ほど早めの降臨です。

拡大すると、こんな感じです

アカメガシワは雌雄異株(雄木と雌木が別々の植物)で、雄木の花はこんなふうに咲きます。

アカメガシワの雄花

拡大すると、星がついています。

アカメガシワの雄花

雌木の花はこんな形をしています。柱頭の紅色がオシャレです。

アカメガシワの雌花

河原など、攪乱(かくらん)の激しい場所に真っ先に育つ先駆植物の一つです。この樹林地でも、ミズキと競うように大きく育っています。ただし、このところミズキがキアシドクガの食害で痛めつけられているせいか、アカメガシワがいっそう勢いを増していると感じるのは気のせいでしょうか・・。

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毒グモではありません

先日、カバキコマチグモという、ススキの葉を巻いて中に潜んでいるクモを「外来種ではないが、毒性がある種」としてご紹介しましたが、今日はこちら。

ちょっとわかりにくいですね。ススキの葉を2枚合わせてあります。

中を覗くと、何かいます。

正体はこれ。ヤハズハエトリというクモのメスです。
ヤハズハエトリは、ススキの葉の上でよく見られるクモで、網は張らずに徘徊して獲物を狩ります。人間を咬む事はありませんし、そのための毒もありません。
因みに、この隠れ家は、夜間身を守るためのテントのようなものです。
ところでこのクモ、ちょっと細長い形をしています。ハエトリグモの仲間でも、ススキの上で見られる何種かは同じような体型なので、ススキ=細長い、と、なんとなく納得してしまうのですが、よく考えると根拠がありません。本当のところ何故なんだろうと、時々不思議に思います。

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今年のカイコ、始まります!

今年も初夏のカイコの飼育が始まります。今日(6月5日)、蚕種(カイコの卵)が届きました。

蚕種(3000粒くらいあります!)

ぼやけた写真のように見えますが、ハトロン紙に包まれているためです。すでに少数が孵化していますが、おそらく、明後日にかけて全数が孵化するものと思われます。それまでは、紙に包んだままにしておき、出そろったところで給桑を開始します。
市内の小学校での出張授業も今日から始まりました。1校目は作の口小学校です。

作の口小3年生のみなさんへ、カイコの授業中

これからカイコを育てる期待と不安が入り交じる中、カイコを育てるのは農業であるということをみっちりとお話ししてきました。

真剣にきいてくれました!

博物館では、カイコの成長が安定する来週あたりから、飼育展示を開始する予定です。
これからしばらく、天気予報とにらめっこしながらクワの調達にいそしむ毎日になります。

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植物学教室「花の観察と植物画」第1回

強い夏の日差しが降り注いだ6月2日(土)、植物学教室「花の観察と植物画」の第1回目を実施しました。この講座は2週連続で、植物画家の豊田路子さんを講師にお招きしています。

はじめはみなさん、少し緊張気味です

こちらはお手本の、豊田さんの描かれた植物画です。実物大、背景を描かない、透明水彩で着色といった基本的な技術が解説されます。

お手本の植物画

学芸員の植物の話も途中に織り交ぜながら、1日で1枚の植物画を描く初心者向けの教室です。ほとんどの受講者のみなさんが、久しぶりに絵筆を持ったという方ばかりです。それでも、10時から16時までみっちりと集中して、しっかりと植物画を形にしてくれました。

描き始めると、みなさんでおしゃべりしながらなごやかに進みました

今回は草本(草)、第2回の来週は木本(木)を題材にします。どんな作品に仕上がったかは、来週またご紹介します。
※この教室は事前申込み制です。受付けは終了しています。

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ススキのちまきに注意!

このところ、毒を持った外来生物が話題になることが多く、ヒアリやセアカゴケグモなどのニュースが毎週のように流れています。しかし、当然ながら毒を持つのは外来生物の専売特許ではありません。在来の野生動物にも有毒のものがたくさんいます。
その一つの巣がこちらです。

カバキコマチグモの巣

ススキの葉がきれいに折り曲げられてちまき状になっているのをよく見ます。これを注意深く開くと、中にいるのはこんなクモです。

カバキコマチグモ(メス)

カバキコマチグモは気性が荒く、特に産卵期は、うかつにこのちまきを開くと噛みついてきます。クモのなかまのほとんどは、捕食する昆虫などを麻痺させるために多かれ少なかれ、毒を持っています。その中で、人間にも効く毒を持ち、攻撃性があり、さらに言えば牙が大きくて人間の皮膚を通るものが「毒グモ」ということになります。
カバキコマチグモの毒はかなり強くて、噛まれると激痛が走り、症状が数日続きます。稀にショック症状を起こすことがあります。
外来毒グモとして知られるようになったゴケグモのなかまよりも、身近に広く分布している点で危険性は高いと言えます。咬傷被害は夏に集中するので、これからの時期は注意が必要です。

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宮ヶ瀬湖で調査

今日(5月31日)は市内緑区と愛川町などにまたがる宮ヶ瀬湖で、毎年恒例の鳥類調査を実施しました。
ダム事務所のご協力で船上からの調査です。ふだんあまり見ない、虹の大橋を見上げる景色です。

下から見上げた虹の大橋

今回は、ヤマセミが何度も出現しました。

ヤマセミ

途中、水際の斜面で木の葉を食べていたシカです。メスの若い個体のようです。

ホンシュウジカ

船を下りてから歩いた湖畔園地では、ムクドリの巣立ちヒナが親鳥から餌をねだっていました。

ムクドリの親子

帰りがけの道路脇、こちらも若いサルがクズの若芽をむしゃむしゃと食べていました。

ニホンザル

いろいろな動物たちでにぎやかな、初夏の風景でした。

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軍都さがみはら探訪 オダサガ~相模大野&八王子浅川地下壕

昨年度に引き続き今年度も軍都さがみはら探訪を開催しました。今年は5/20、5/27の2回シリーズで、1回目が小田急相模原~相模大野周辺の旧日本陸軍施設の痕跡や現存文化財を、2回目が同じく陸軍が戦争終末期に造った八王子の浅川地下壕を見学しました。

通信学校将校集会所とフランス庭園(相模女子大学内)

1回目は小田急相模原を出発し、電信第一連隊跡(現米軍相模原住宅)、臨時東京第三陸軍病院跡(現国立病院機構相模原病院周辺)、通信学校跡(相模女子大学、谷口台小学校周辺)、相模原陸軍病院(相模大野中央公園、相模原中等教育学校周辺)を案内し、解説しました。

国立病院機構相模原病院内の天皇陛下の行幸碑

駅周辺や住宅街のあいだを抜けるコースで、歩道の幅が狭いような場所もありましたが、博物館ボランティアの市民学芸員さんの安全誘導もあり、無事に見学することができました。

歩道の狭い難所を越え、無事相模女子大に到着(この正門も現存する通信学校時代のもの)

また、相模女子大学内に多くの通信学校時代の文化財があることに皆さん感動していました。これまで貴重な遺産を大切に保存していただいた相模女子大学さんには感謝申し上げます。

現存する通信学校将校集会所内

陸軍の星のマークがある当時のマンホール

 

2回目の浅川地下壕は高尾駅南口に集合後、「浅川地下壕の保存をすすめる会」の中田氏に案内・解説をしていただきました。浅川地下壕は陸軍の中島飛行機武蔵製作所の地下工場として使用された場所です。(武蔵製作所の空襲により浅川地下壕に移転)

途中地下壕の戦時中の写真や八王子空襲などの説明があり、いよいよ地下壕に入ります。地下壕の入口はなんと一般的な戸建て住宅敷地内の裏にあり(所有者の方が快く了解して入らせてくださるそうです)、そこからは懐中電灯がなければ歩けない完全な暗闇で、気温も約15度ほどです。(コウモリにも迎えられました〔笑〕)

いいいよ地下壕に入る最終説明

民家の脇を抜けて地下壕内へ

地下壕での中田氏の解説。気温15度上着必須!

地下壕の全長は4キロ以上で、碁盤の目状に掘られているとのことですが、そのような工事をわずか半年ほどで行ったそうです。現在見学できるのはその入口部周辺ですが、それでも、説明を受けながらまわると約1時間ほどで、終わるころには体が冷え冷えでした。

この先も碁盤の目状に坑道が続く

地下壕から出て、最後にまとめを行いました。相模原市内では大規模な空襲はありませんでしたが、もし相模陸軍造兵廠(現相模総合補給廠)などに大規模空襲があったら、同じような地下壕が近くに造られたかもしれません。

無事に地下壕から脱出し、最後のまとめ

今回の軍都さがみはら探訪にも定員を超えるたくさんの応募があり、落選された方にも自由参加でオ小田急相模原~相模大野間の探訪だけ開催しました。市民の皆さんのこの時代への関心の高さが窺えました。今後も現在の相模原の発展の礎となっている軍都相模原にかかわる歴史を普及していきたいと思います。

 

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ドイツの職人技を目の当たりに

5月29日(火)、相模原動物標本クラブの活動日でした。この日は、メンバーの一人の友人で、ドイツ人の標本士が来館されました。ドイツでは、標本技術者のポストを置いている自然史博物館が多く、この方はシュトゥットガルトの自然史博物館の標本士です。早速、そのワザを見せていただきました。

ドイツの標本士のワザにかぶりつきです

ほかのメンバーもかぶりつきで見ています。手さばきに無駄が無く、力を入れるところ、慎重に扱うところのメリハリがあります。そして、何度もしっかり洗浄して、資料を永久保存するための手間を省きません。言葉の通じない若いメンバーにも丁寧に惜しみなく技術を伝授してくれました。職人の持つ雰囲気には国境を感じません。
この方は、欧州の剥製のコンテストで何度もチャンピオンになっています。後から、韓国の動物園からわざわざ彼に会いに来た標本士も加わり、この日の実習実験室は国際色豊かでした。

ドイツ人の標本士(右から2番目)と韓国人の標本士(左から2番目)と記念写真

道具の一つ一つにも工夫が加えられていて、大きな刺激をいただきました。お礼に、ヨーロッパには分布していない野鳥の標本をプレゼントしました。

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地質学講座第2回 石老山の岩石の観察

5月27日に地質学講座第2回目を実施しました。
石老山山麓で石老山をつくっている岩石を観察しました。

まずは顕鏡寺で岩石を観察しました。

顕鏡寺の境内には巨大な礫岩(れきがん)の転石(てんせき)があります。含まれている礫の大きさや配列の違いを観察しました。これらの違いは礫を運んだ水流の性質等が異なっていたことを示しています。

次に顕鏡寺の近くの林道で礫岩の露頭を観察しました。ここでは、礫岩と砂岩の積み重なり方や地層の傾き、礫岩に含まれている礫の種類や運搬方向などを観察しました。

礫岩を注意深く観察することで、礫が堆積した当時の状況がわかることに参加された方は興味を惹かれたようです。

3回目の講座は6月10日、相模原市立博物館大会議室で学芸員講話「石老山の成り立ち」を行います。講座は申し込み制ですが、この学芸員講話はどなたでも聞いていただくことができます。ご興味をお持ちの方は、お誘い合わせの上、ぜひご参加ください。

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