博物館実習 共通実習

8月1日から博物館実習が始まりました。大学からの依頼に基づき、学芸員資格取得を目指す学生を受け入れています。今年度の実習生は18名です。

8月1日〜3日の3日間は共通実習で、全員が同じ内容で実習を行います。

初日の8月1日は講義と施設見学です。

学芸業務についての講義

機械室の見学

天体観測室の見学

2日目の8月2日は資料の取り扱い実習です。自然系資料と人文系資料の取り扱い、土器の梱包実習を行いました。

自然系資料の取り扱いでは、ボランティアの方々のご指導を受けながら押葉標本の作成しました。

人文系資料の取り扱いは掛け軸や巻物を扱いました。

土器の梱包の様子です。

3日目の8月3日は展示解説の実践です。常設展示室から資料を1点選んで、3分間の展示解説をします。実習生や学芸員の前で解説します。午前中は解説をする資料の選定をして、解説のシナリオを作成します。

解説のシナリオを作成中

午後からは、一人ずつ常設展示室で展示解説を行いました。

自然歴史展示室入り口にあるマンモスを解説しています。

皆さん、かなり緊張していたようです。それでも、クイズを出したりしながら工夫を凝らして解説を行っていました。

共通実習の後は分野別の実習となります。日程は分野によって異なります。

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カイコ在来品種の繭

博物館で現在飼育中のカイコ在来品種の小石丸は、順調に繭をつくっています。夏蚕(なつご)は気温が高い中で飼育するせいか成長期間が短く、5齢でもちょっと小さめのまま熟蚕(繭をつくる状態のカイコ)になりました。

繭をつくりはじめた小石丸

一足先につくりはじめた品種「乞食」の繭はすっかり完成しています。鮮やかな黄色のくびれ繭で、思わず見とれてしまう美しさです。

品種「乞食」の繭

この黄色は、簡単に言ってしまうと、クワの葉に含まれるカロテノイド系色素が、絹タンパクにしみ出したものです。カイコの繭のもともとの色がこちらと言えます。

くびれ型で黄繭の「乞食」の繭

では、白い繭はナニモノかというと、色素がしみ出さない性質を持った突然変異を固定したものです。たとえるならニワトリの白色レグホンのようなものです(原種はセキショクヤケイ)。日本では白い繭が好まれてきたようで、日本で育てられるカイコの多くが白繭ですが、中国大陸や東南アジアのカイコの多くは黄繭です。

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最近の話題の生きもの(ヘビの写真あり)

このところ、報道でいくつかの動物が話題にのぼっています。中でも一番取り上げられる回数が多いのは、おそらくヒアリでしょう。相模原市内では確認されていませんが、海外との物資のやりとりは港湾部に限りませんから、市内でも見つかる可能性はあります。
それ以外では、このブログでもおなじみのマメコガネ。

博物館のお隣にいたマメコガネ

スイス南部で発見され、農業被害が危惧されているとのニュースでした。日本固有のコウチュウ類ですが、じつは、北米ではすでに侵入してジャパニーズ・ビートルと呼ばれ、農作物へ害を及ぼす外来種として認識されています。もちろん、日本国内では固有種ですから、在来の生態系を構成する大切な一員です(ただし、日本でも農作物への害は広く知られています)。
続いて、ヤマカガシです。

ヤマカガシ

兵庫県で小学生が噛まれ、一時、意識不明となったことが報道されました。ヤマカガシは相模原市内でもふつうに見られるヘビです。毒ヘビであることは生きものを扱う人間の中ではよく知られているのですが、咬傷被害がマムシなどに比べて非常に少ないため、一般的にはあまり知られていません。奥歯に毒腺があり、よほど深く噛まれなければ毒が注入されることはありませんが、特に子どもさんが指などを噛まれると危険です。また、ニュースなどで映されたヤマカガシと、関東近辺にいるヤマカガシはやや色が異なります。関東のものは赤味が強いので、すぐに見分けられます。

ヤマカガシの胴体(背中側)

顔のあたりに黄色味があり、胴体に強く赤色が混じるこのような色合いのヘビは、関東ではほかにいません。毒ヘビだからといってすぐに人間に害を及ぼすものではありませんから、見つけても距離をとりつつそっとしておいてください。
次に、先月報道されたセアカゴケグモです。こちらは市内で確認されました。

セアカゴケグモ

外来種が侵入して広まること自体が問題ではありますが、毒グモという側面が強調されすぎると、過剰な予防や駆除が行われてしまい、かえって在来生態系のバランスを崩して予期せぬ生物が増えてしまうというような弊害も起こります。セアカゴケグモは口の構造上、通常の接触によって人を噛むということはありませんので、見つけても慌てず冷静に対応することが重要です。ヒアリを含めて、こうした生きものの防除や駆除には専門的な技術と知識が必要となります。似た生きものを見つけた場合、博物館でも生物担当の学芸員が在館であればそうしたご相談に対応していますし、市役所や保健所を含めてまずは専門の機関へご相談ください。

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子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」1日目

7月30日に子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」1日目を開催しました。
7月30日と8月6日の2回の連続教室で、ミョウバン結晶の育成と鉱物の硬さ比べを行います。

1日目は、種結晶をミョウバンの飽和溶液に入れるところまでを行いました。
相模原地質研究会の皆さんにボランティアとしてお手伝いしていただきました。

まず、種結晶をエナメル線に結びつけます。

種結晶は小さいので結びつけるのが難しく、コツが必要です。

うまく結べました。

ミョウバンを熱湯で溶かし,飽和溶液を作ります.

なかなかミョウバンが溶けきらないので、ホットプレートで温めながら完全にミョウバンを溶かします。

ホットプレートで温めてミョウバンを溶かす作業は、相模原地質研究会の皆さんにお願いしました。

飽和溶液が適温まで冷めるまで待ってから、種結晶を入れます。
種結晶を入れてしばらくすると、ビーカの底や液面に小さな結晶ができ始めます。

2回目は8月6日です。成長した結晶の観察と、鉱物の硬さ比べを行います。どんな形の結晶ができているのか楽しみです。

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在来品種、小石丸

博物館ではカイコの夏の飼育展示として、在来品種である小石丸(こいしまる)を公開しています。現在すでに5齢となり、モリモリとクワの葉を食べています。

品種名「小石丸」の5齢幼虫

眼状紋(がんじょうもん=目のように見える模様)がとても濃いのが特徴で、大正期くらいまでは日本の養蚕の主力品種でした。
展示はしていませんが、もう1品種、飼育しています。それはこちらです。

品種名「乞食」の5齢幼虫

あれ!眼状紋が無い!
じつはこうした品種を総称して姫蚕(ひめこ)と呼びます。中国大陸で飼われているカイコの多くが姫蚕だそうです。家畜動物の外見は、それを育てる農家にとって「かわいらしい」ことが大きな要素になります。それが労働意欲につながり、ひいては産品の質も量も上がるからです。つまり、中国大陸では姫蚕をかわいいと感じ、日本では眼状紋の濃いものに愛着する傾向があるようです。とても興味深いですね。
さて、上の姫蚕の品種名は、「乞食(こじき)」と言います。ひどい品種名ですが、繭が黄色いことから金色(こんじき)→こじきとなってしまったそうです。なぜ繭が黄色いのかはまた改めてご説明しますが、どちらも同じクワの葉を食べます。

左)乞食の繭、右)小石丸の繭

上の写真の左が乞食の繭、右が小石丸の繭です。乞食は姫蚕ですが、日本の在来品種です。繭がくびれたピーナッツ型となっているのは日本の在来品種の特徴で、これがもともとの日本の繭形となります。養蚕が盛んな地域にはたいてい繭最中(もなか)などの、繭にちなんだ和菓子がありますが、形がくびれているのはそのためです。

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カブトムシのバトル!

昨晩(7月26日)、市内緑区の某所でムササビの調査を行いました。
ムササビの写真は本格的に準備していないと撮れないため今回は無いのですが、歩いている途中、ぷ~んと発酵臭が・・やっぱり!じゃんじゃか樹液を出しているクヌギがありました。

大賑わいのクヌギの木

カブトムシ、オオスズメバチ、カナブン、ノコギリクワガタ、コクワガタ、名前のわからない大きめの蛾・・みんな夢中で吸蜜しています。密集している中で、とにかく体が触れると「あっち行け」と小競り合いが絶えないのですが、カブトムシ同士はやはり、徹底的にやり合わなければいけないようです・・

対峙(たいじ)するカブトムシの雄同士

近づいてくるオス同士。上を取った個体が角を相手の下に差し込みます。

角を相手の下に差し込めば勝負あり!

あとはもう、テコの原理でヒョイッとうっちゃり!

うっちゃり!

時間が経つのを忘れてしまいそうでした。
ちなみにオオスズメバチは野外の危険生物の筆頭といえるものですが、こうして夢中で吸蜜している時は、よほどちょっかいを出さない限り攻撃してきません。一定の距離を取って見ているぶんには危険はありませんが、それでも安全とは言い切れませんので、こうした木を見つけたときはむやみに近づかないようにしましょう。

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「小中学生のための生物学教室」を行います!

8月23日(水)に、毎年恒例となりました「小中学生のための生物学教室」を開催します。
この教室では、小学4年生から中学生までを対象に、学校の授業よりも少し専門的な生物学の授業を行います。動物の体のつくりを、実際の標本(剥製や骨格標本)から学んだり、モデルを作ってみたり・・
そして何よりこの教室の人気の企画は、市内在住の生きものカメラマン、松橋利光さんとペットショップオーナーの後藤貴浩さんによる、松橋作品を使った授業や、本物の生きものでその持ち方や扱い方を学ぶ時間です。

イエアマガエルです!(昨年の写真)

カエル、ヘビ、大型昆虫、ウサギなどいろいろな生きものがやってきます!

ネズミ類やハムスターなどもやってきます!(昨年の写真)

定員は30名ですが、まだ間に合います。
しかし、締め切り(7月31日)が迫っています!生きもの好きのみなさんのお申し込みをお待ちしております!

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収蔵品展「江戸から昭和の津久井」開会&「市民学芸員」大活躍!

7/22から収蔵品展「江戸から昭和の津久井~さまざな資料で見る郷土の姿~」が開会しました。この収蔵品展は、旧津久井郷土資料室にあった絵はがき、古文書、雑誌、ポスター、すごろく、民具や、相模湖がカヌー会場であった昭和39年の東京オリンピック関係資料、博物館ボランティア「水曜会」が整理中の郷土史家鈴木重光氏の資料などを展示しています。

楽しい床面すごろくあります

7/23(日)は、さっそく関連事業として博物館ボランティアの市民学芸員さんによる「チャレンジ体験」が行われました。
チャレンジ体験は、来館者にブンブンゴマ、割り箸鉄砲などの昔の遊び道具や、石臼や薬研など昔の生活道具を楽しみながら体験してもらうものです。

夏休み最初の日曜で、ドラえもんの全天周映画の人気(この日も210名定員満席)の影響もあり、チャレンジ体験会場にも348人もの参加があり大盛況でした。市民学芸員のみなさんは少ない人数にもかかわらず大活躍していただき、多くの子どもたちの笑顔を見ることができました。

また、この日は市民学芸員基礎講座も開催しました。この講座は、今後新たに市民学芸員として活躍していただくため募集を行ったもので、24名の方に応募いただきました。はじめの各自の自己紹介では、好きな分野や趣味などもお話しいただきました。・・・やや無理強い気味でしたが(笑)
応募者のみなさんは、いろいろな関心、経歴、特技を持っているようですので、今後の様々な活躍を期待しています。

基礎講座では、当館学芸員のほか、現役の市民学芸員さんからの本音もまじえた活動の様子の説明と、開催中のチャレンジ体験の見学も行いました。残り2回の基礎講座とその後の実践参加を経て、皆さんが新たな市民学芸員の仲間に加わっていただけることを期待しています。

チャレンジ体験を見学

収蔵品展「江戸から昭和の津久井~さまざな資料で見る郷土の姿~」は9/3(日)まで、「チャレンジ体験」は8/27(日)にもう一度開催しますので、みなさまぜひご来館下さい。

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生きものミニサロン 身近な夏の虫を観察!

本日(7月22日)行われた「生きものミニサロン」は、予告どおり夏の虫を観察しました。虫とり網をお貸しして、ハチに気をつけながら虫さがしです。

暑さにまけず虫さがし!

定番のマメコガネは、全員で足上げポーズを見ることができました。

マメコガネの足あげポーズ!

写真は無いのですが、ベッコウハゴロモを見つけてくれた参加者がいました。ハゴロモのなかまはとにかくおもしろいので、近縁のスケバハゴロモの写真を用意していました。それをご覧いただきながらみなさんへ質問をしました。

スケバハゴロモ(成虫)

なんのなかまの虫?と尋ねると、「チョウ!」「ガ!」そして「カエル!!」とすばらしい声が!
ではではということで、向きを変えて拡大して見てもらうと・・

スケバハゴロモの頭部の拡大

「セミ!」とみごとに答えてくれました。
その後、樹林内に入って観察したのは・・

何をつついているのかな?

何をやっているのかというと、ジョロウグモの幼体を軽くつついています。
そうすると、ブルブルブル!と全身で網をふるわせるのです。

ジョロウグモの幼体(体をブルブル)

ちょっとしたことなのですが、これがなかなか見ていておもしろいので、ついやってしまいます。
そんな観察をしているうちに、あっという間に30分が経ってしまいました。
次回は8月19日(土)です。第四土曜日がJAXA特別公開と重なるため、8月のみ、第三土曜日の実施です。お間違えのないよう、ぜひお気軽にご参加ください。

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夏休み考古学教室「縄文土器づくり体験」募集!

さあ、夏休みも本格的に始まりました。これから夏祭りや花火大会など、行事も盛りだくさんだと思います。博物館でも夏休みに合わせたさまざまなイベントをご用意しています。今回はその中から「夏休み考古学教室」をご紹介させていただきます。

相模原市内には国指定史跡でもある勝坂遺跡をはじめ、縄文時代の遺跡が400か所以上で発見されています。その多くが5,000年前頃の遺跡で、さまざまな文様で装飾された縄文土器も発見されており、博物館の収蔵庫には常設展示室に展示しきれないたくさんの縄文土器を大切に保管しています。今回の考古学教室では、そうした縄文土器を実際に「見て・触って・作ってみよう!」と、全2回にかけて企画しました。

縄文土器づくり体験教室では、実際に縄文土器を手に取り、土器の細かな文様や肌触り、重さを実感することができます。その後、土器づくりの会の先生に教わりながら、粘土を使って思い思いに縄文土器を作っていきます。

縄文土器(淵野辺の山王平遺跡出土)

2回目は史跡勝坂遺跡公園で作った土器の野焼きをします。焼き上げることによって、かたく赤みをおびた土器へと作り上げます。焼き上がるまでの間は、竪穴住居がある勝坂遺跡を探検したり、火おこし体験や弓矢体験もする予定です。焼き上げた土器は、その日にお持ち帰りいただけます。

縄文土器(下溝の下原遺跡出土)

夏休みの工作として楽しく縄文土器づくりをしながら、いっしょに太古の歴史を学んでみませんか。

○1回目

日時 8月4日(金) 午前10時~午後12時30分

場所 相模原市立博物館 2階 実習実験室

○2回目

日時 8月20日(日) 午前9時30分~12時30分

場所 史跡勝坂遺跡公園 管理棟(相模原市南区磯部1822)

※公園下段部に駐車場あり

○費用 150円(材料費 8月4日)

○対象 市内在住の小学校4年生~中学生で2回とも参加できる方

定員20名(申込順) ※保護者の見学可

○申込 7月30日までに、博物館に直接か電話申込み(042-750-8030)

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