マンリョウの花

春から初夏の花には自己主張の強いものが多いのですが、真夏の花はどういうわけか、ちょっと奥ゆかしく咲くものが多い気がします。博物館の前庭で咲いているこちらの花もその一つです。

灯火(ともしび)のように咲く花

わざわざ葉の下に隠れるように垂れ下がり、暗がりに浮かび上がる灯火のように咲きます。これは、マンリョウの花です。
マンリョウと言えば、お正月の風物としても欠かせないあの真っ赤な果実を思い浮かべます。

マンリョウの果実(真冬に撮影)

あの果実のもととなる花が、真夏に、しかもこんなにひっそりと咲くのは意外ですね。マンリョウの花と言われても、イメージできる人は少ないのではないかと思います。

小さいながらも美しいマンリョウの花

よく見れば、下向きがよく似合う美しい花です。
マンリョウの脇をふと見ると、ハエドクソウがやはりひっそりと咲いていました。

ハエドクソウの花 幅は5ミリメートルほどしかない

かつてこの植物の有毒成分を利用し、煮詰めてハエ取り紙を作っていたことからこの名があります。実用一本槍な名前ですが、小さいながら花は可憐です。
真夏の花が奥ゆかしいのは、木もれびによく映えるからかもしれません。

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今週末のミニサロンは、身近な虫!

毎月恒例の「生きものミニサロン」が今週末の土曜日に行われます。
梅雨も明けて、身近な生きものたち、特に虫たちの動きが活発になっているので観察してみようと思います。たとえば・・

マメコガネ

昆虫レストランであるヤブガラシの花についたマメコガネ。後ろ足上げのポーズでキメています!
おとなりの花には、カメムシのなかまの幼虫です。

すばらしい光沢をもつカメムシのなかまの幼虫

草の茎についている白いものは・・

謎のもじゃもじゃむし!

これはとってもおもしろいので、当日のお楽しみです!
さらにこちらは、ジョロウグモの幼体です。

ジョロウグモの幼体

これも実物を見ないとそのおもしろさがわかりません。何かというと、下の写真なのですが・・これは手ぶれをしているわけではありません。

なぜブレまくっているのかは、お楽しみ!

何をしているのかは、こちらも当日のお楽しみです!
7月の生きものミニサロンは、7月22日(土)12時から約30分の予定です。お申し込み不要なので、お気軽にご参加ください。

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準備着々、収蔵品展

特別展示室の中ではいま、今週土曜日からオープンの収蔵品展「江戸から昭和の津久井~さまざまな資料に見る郷土の姿~」の準備の真っ最中です。

着々と準備が進みます!

津久井郷土資料室の旧蔵資料から、川漁の漁具など生活資料、そして旧内郷村(現在の緑区若柳・寸沢嵐)の郷土史家、鈴木重光が集めたさまざまなコレクションなど多岐にわたる資料を展示します。中でも鈴木重光コレクションは、当館のボランティアグループである水曜会が日々、資料整理にあたっているものです。展示作業も水曜会のみなさんが来て下さっています。

水曜会のみなさんによる展示作業

鈴木重光コレクションは、地元や近隣のものを中心とした生活の中のありとあらゆるものが資料化されているのが特徴です。

鈴木重光コレクション

こちらは、紅茶の空き箱です。

鈴木重光コレクション

生活の中のありとあらゆるものを集め、保存していたことがわかります。

鈴木重光コレクション

ほかにも、津久井郷土資料室の目玉資料と言える古い雑紙類ももちろん、一挙に展示します!

津久井郷土資料室の目玉資料である古い雑紙類

『少年倶楽部』のほかにも『少女倶楽部』『幼年倶楽部』『キング』などなど・・・

雑紙の古典である『少年倶楽部』

展示は7月22日(土)から9月3日(日)までです。お楽しみに!

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見どころたくさんのつる雑草

毎年、夏になると博物館のフェンスにからみついて伸びるこの植物の色に注目してしまいます。

フェンスに巻き付くヤブカラシ

ヤブガラシの花です。花弁が無いとても小さな花なのですが、開花してしばらくすると、花盤(かばん=雄しべや雌しべを支える部分が肥大したもの)が濃いオレンジ色になります。これは「いま、蜜をいっぱい出していますよ」というタイムサービス中のサインです。めざとく見つけたアリが群がります。

アリ以外にもいろいろな昆虫が訪れます

蜜を出し切ると花盤はピンク色になり、これは閉店のサインです。
ところで、ヤブガラシは巻きひげでからみつくタイプのつる植物です。巻きひげは最初、茎からまっすぐに伸びます。

はじめ、まっすぐ伸びる巻きひげ

巻き付くものに触れると、触れた部分を中心に巻き付きます。しっかり巻き付いたところで、今度は伸びていた巻きひげの根元の方をらせん状に巻き、茎を引き寄せます。

茎を引き寄せる巻きひげ

茎で巻き付くつる植物は、巻く方向が決まっているものが多いのですが、ヤブガラシの巻きひげはどちらも有りで、1本の巻きひげが途中で2,3回逆回転しています。
厄介者扱いされることの多いつる植物の雑草ですが、よく見てみると観察ポイントの宝庫ですね。

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まぶしの工夫

博物館で育てていたカイコはすでに繭の乾燥も完了していますが、飼育協力していただいていた方からも繭が届きました。綺麗にボール紙で「まぶし(蔟=カイコがまゆをつくるように仕切られた場所)」を作って下さっています。

菓子箱にボール紙でつくった井桁(いげた)のまぶしが入れられています

しかし、博物館からお渡ししたカイコが想定以上に多かったそうで、クワの入手もご苦労をかけてしまったのですが、まぶしも当然足りなくなります。そこでこの方が緊急で作られたまぶしは・・

臨時で作られたまぶしです

ボール紙を井桁(いげた)に組み合わせる工作は、意外と手間がかかりますが、これなら帯状に切った画用紙をセロハンテープでとめるだけです!

コピー紙程度の薄い紙で作られたまぶし

柔らかすぎる紙だと繭が紙の面にくっついていびつな形になってしまうのですが、筒にした時の大きさや、ちょっとした止め方の工夫で、それほど厚い紙でなくても問題無くまぶしができています。これは使えます!これまで学校などへご紹介していたのはトイレットペーパーの芯です。

定番のトイレットペーパーの芯のまぶし

ただこれも、いつでもすぐにたくさん手に入るわけではありません。画用紙でも簡単に、あっと言う間に作れるまぶしのアイデアはこれから使わせていただこうと思います。ちょっとしたことなのですが、時々、こうして凝り固まったイメージを崩してくださる市民のみなさんのアイデアに救われることがあります。
ちなみに、博物館で展示している回転まぶしは一度に大量の繭を作らせることができる優れものですが、これをつるしておける蚕室(さんしつ=カイコの飼育専用の部屋)が必要です。

常設展示の回転まぶし

すべての工程を臨時の蚕室でやらなくてはいけない博物館のカイコの飼育に、また一つ、よいアイデアが加わりました!

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草の反応

5月にキアシドクガの大発生で打撃を受けた博物館のまわりのミズキも、すっかり何事もなかったかのように青葉を取り戻しています。

すっかり青葉を取り戻したミズキ

でも、林床(りんしょう=林の地面付近)を見ると、例年とはちょっと違った光景が見られます。

林内とは思えないくらい草むらの勢いが増しています

この写真ではわかりにくいのですが、林の中なのに、やたらに草が勢いよく伸びています。
本来ならこうした林内ではあまり伸びない草っぱらの植物が多いのが特徴です。キアシドクガがミズキの葉を食べ尽くしてしまい、直射日光が林床まで届いたことにより、こうした草が勢力を増したというわけです。今はもう日陰になってきていますし、草刈りが入る予定なのでこうした光景も間もなく見られなくなります。それにしても、植物のお日さまの光に対する反応が素直すぎて、生態学の教科書のようです。
さて、そんなことはお構いなしに、今年もこの花がたくさん咲いています。

アキノタムラソウの花

アキノタムラソウです。花期が長く、春の終わりから「秋まで咲く」タムラソウです。清々しい色の美しい花ですが、拡大するとちょっとワルそうな雰囲気があるのはなぜでしょう?
梅雨の晴れ間はどの植物も生き生きとして、表情も豊かです。

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カイコのオスとメス

カイコが繭になり、博物館で育てていたものは昨日から乾燥に入りました。
熱風乾燥機で乾燥し、すでに中身の蛹は乾いて振るとカラカラと音がしています。

まぶしに入れたまま乾燥してみました

このまま通気性のある入れ物に入れておけば、半永久的に保存できます。
ところで、乾燥したものとは別に、採卵するために乾燥させずに残している繭もあります。こうした繭は、雌雄を確認するためと、羽化した成虫が繭から出られない事故が起きないように、繭を切って蛹(さなぎ)を出しておきます。
よく質問を受ける、雌雄の見分け方ですが、腹部先端の腹側を見ます。こちらはオスです。

雄の蛹の腹部先端

こちらはメスです。

メスの蛹の腹部先端

幼虫時代は見分けられないわけではないのですが、非常に難しかったものが、蛹では一目瞭然です。といっても説明が難しい違いですね。
品種によって体型や大きさで見分けられる場合もあるのですが・・・今回の品種はあまりよくわかりません・・

左がオス、右がメスです

お腹に卵を持つメスの方がやや大きくてずんぐりしているのですが、こうして並べて初めてわかる程度です。個体差もあるので、やはり腹部先端を見るのが確実です。
成虫の羽化は、あと1週間くらい先となります。

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トゲのある話

博物館お隣の樹林地へ行くと、遠目にもいかめしい姿の植物が堂々と咲いていました。

大きな花、大きな葉、大きなトゲが目立ちます

アメリカオニアザミです。この10年ほどで急激に広まった外来植物の一つで、その特徴は全身にまとう鋭いトゲです。

植物体全体に鋭いトゲがついています

アザミのなかまはどれも多かれ少なかれトゲがあります。しかし、これほど大きくて鋭いトゲをつけたものはそうはありません。早めに駆除しないと爆発的に増えるのですが・・この場所は現在、花ごよみ調査を実施している場所なので、とりあえずそのままにしておきました。
まわりをふと見ると、もう一つトゲトゲ植物が。一見して、ナス科の花ですね。

ワルナスビの花

こちらはワルナスビです。外来植物には不遇な名前のものが多くありますが、ワルナスビも、いかにもという名前です。実際、葉の裏や茎にたくさんのトゲがあります。

パッと見ると目立ちませんが、葉裏にはトゲがびっしり

アメリカオニアザミもワルナスビも、幼植物のうちに抜いておかないと、花の頃にはもう、うっかり手出しできないような武器を身につけてしまっています。
こうしてみると外来植物の武器のように感じられるトゲですが、じつは植物のトゲは在来植物にもふつうにあるものです。近くで育っているモミジイチゴもバラ科なのでしっかりトゲを持っています。

モミジイチゴのトゲ

香辛料でおなじみのサンショウも近くにたくさん生えていますが・・

香り高いサンショウの葉

立派なトゲを持っています。

茎に2本ずつ並んで生えるのがサンショウのトゲの特徴です

植物にとっては防御はもちろん、ほかの植物にもたれかかったり巻き付いたりするときのひっかかりなど、トゲにはいろいろな機能があります。うっかり触ると痛い目に遭いますが、どうしてこの植物がトゲを持っているのか?と考えながら見ていくと、植物の戦略を垣間見ることができてちょっとおもしろいと思います。

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カイコの繭づくりを観察できる「まぶし」

カイコの飼育のクライマックスである繭づくりで、カイコが繭をつくる場所を「まぶし(蔟)」と言います。
近年はボール紙を格子状に組み合わせたものが一般的で、博物館でもダンボールで作ったものを容器にはめ込んで使っています。

まぶしの上を歩き回る熟蚕

ところが上の写真のように、もともとカイコは上へ上へと登りながら繭をつくる場所を探していきますから、まぶしへ入れただけでは、上を歩くばかりでなかなか入ってくれない個体もいます。近代養蚕では、日本で開発された「回転まぶし」という優れた道具が爆発的に普及したのですが、蚕室の無い博物館ではそんなに大がかりなことはできません。そこで・・

5センチ径くらいの食品パックを使います

前の記事でもご紹介した食品パック式のまぶしを使うことがあります。ちょっと強引ですが、このパックに入れてふたをしてしまえば、半日くらいで繭を作り始めてくれます。これなら中身が見えるので、展示用にも都合がよいのです。透明ということであれば、ネット上などでもよく紹介されている塩ビパイプが良いのですが、コストがかかり、しかも基本的には使い捨てになってしまうのでもったいないように感じます。そこで食品パックです。そして、もう一つのコツは、底に尿抜きの穴をあけることです。

底の穴は低くなった部分に5つほど開ければ十分です

カイコは一生のうち2回だけ尿をしますが、その1回目が熟蚕期です(2回目は羽化直後)。これが食品パックの底にたまると、繭がよごれてしまいますし、ニオイもきつくなります。その穴の開け方は、下の写真のように必ず容器の内側から下へ開けます。

千枚通しで容器の内側から開けます

逆に外側から開けてしまうと、内側に土手ができてしまって尿がうまく排出されません。
穴を開けてカイコを入れたら、容器をティッシュペーパーなどの上に置きます。そうすると、尿をしてもうまく吸い出してくれます。

展示中の熟蚕

博物館でも今、このように展示してカイコの繭づくりを観察していただいています。
一昨日(6月30日)容器に入れたものは、もうこんなふうに繭がほぼ完成しています。

すっかり不透明になった繭(6月30日から作っていたもの)

ちなみに、小学校などで飼育して数匹ずつ配られた場合は、トイレットペーパーの芯を半分に切ったこのようなまぶしで十分です。

トイレットペーパーの芯で作ったまぶし

カイコが一心不乱に糸を吐いて繭を作っているところを見ていると、なんだかカイコが神々しく見えてきます。食品パックを使った透明まぶしは当館オリジナルのアイデアです。カイコを飼育中の方はぜひ試してみて下さい。

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いよいよ熟蚕!

6月4日頃までにふ化、そして5日から給桑を開始してきたカイコがいよいよ熟蚕となりました。熟蚕とは、クワを食べきって繭を作り始める状態になったカイコのことを言います。それまで、どっさりクワをあげても数時間でぺったんこになるくらいに食べ尽くしてしまっていたのが、今日(6月30日)はお昼に給桑したのが夕方、まだ山のように残っています。

食べ残した山のようなクワのうえにのっかっています

なんとなく、体が黄色っぽいカイコが多いのがわかるでしょうか。そして、そんなカイコはだいたいのけぞって頭を振っています。

頭をぐるぐると振るのも熟蚕の特徴です

絵の具の白色のような色だったカイコの体が、少し黄色く汚れたようになり、サイズも少し小さくなっています。

左がまだ熟蚕になっていないカイコ、右が熟蚕です

右が熟蚕、左がまだ熟蚕になっていないカイコです。
博物館では、ダンボールを切って作ったまぶし(繭を作らせる部屋)へ移しますが、一部は展示用にこのようなまぶしへ入れます。

食品パックのまぶし(当館オリジナルの方法です!)

これは、小さめの食品パックです。こうすると、繭をつくるようすを観察することができます。
この方法、じつは当館のオリジナルです!ちょっとした工夫もあるのですが、それはまた後日詳しく説明いたします。
ところで、一足先に2週間ほど早く飼育していたものが今朝、羽化していました。

一足先に飼育していたカイコの成虫です!

カイコの成虫です。まるでぬいぐるみ!かわいいですね。
これから明日にかけて、熟蚕を見極めてはまぶしへ移す作業に追われますが、これでカイコの飼育もラストスパートとなります。

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