ラインダンスむし?

カイコのお世話をしていたら、飼育容器の縁をなにか白いものが動いていました。
よーく見てみると・・

おしりのふわふわをピンと立てて歩いています

クワなどにつく虫、スケバハゴロモの幼虫です!ぜんぜん珍しくない虫ですが、先日のコミミズクなどと同様に、いるとつい写真を撮りたくなる、不思議な形をしています。おしりの先に綿毛(ろう物質だそうですが)を付けています。

ちょっと立ち止まってポーズ!

いったい何のためにこんなものを付けているのか?おそらくは天敵からの防御なのでしょうが、かえって目立ってしまうのではないかとこちらが心配になります。ちょっと古い話ですが、どう見てもラインダンスショーの踊り子さんが付けていた飾りです。顔をアップにすると・・

顔のアップ

さて、成虫はこちらです。

名前のとおり、翅が透けているスケバハゴロモ

一見すると蛾のようですが、違います。顔つきから、セミやカメムシのなかまであることがわかります。
1センチほどの透明な翅がなかなかオシャレです。ハゴロモやミミズク、ツノゼミなどこのなかまの不思議な形は、いつ見ても楽しい気持ちになります。

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カイコの授業、ラストスパート

午後、梅雨らしくない積乱雲から雷鳴がとどろいてきました。

積乱雲は、雷を起こす危険な雲です

今日(6月16日)で今年度春のカイコの授業がラストスパートとなりました。

体育館で授業

10校目となった中央区の清新小学校4年生のみなさんは、これまでで一番多い5クラス!でも、いま育てているカイコのことをいろいろと知りたくて、前のめりになってしっかりと聴いてくれました。

質問もたくさんしてくれました

農作業としてカイコを育てることと、命の扱い方など、1校時の中にたくさんのことを詰め込んでいる授業なので、どの学校でも授業の最後、児童のみなさんは複雑な表情をしています。でも、クラスやグループの中でいろいろな議論をして答え出していって欲しいという気持ちで取り組んでいます。

加速度的に食べる量が増えていきます

さて、博物館で育てているカイコは3齢の3日目。間もなく3眠(みん)に入ります。

もうすぐ3眠に入ります

日に日に大きく育つカイコの不思議を、小学生のみなさんとともに味わっています。

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カルガモの親子

今日(6月15日)は市内緑区で野鳥の調査を行いました。梅雨を忘れるくらいの好天でしたが、鳥の出現状況の方はいまひとつ。でも、昼食後にこんなご家族に遭遇しました。

ひとかたまりになって休息中のカルガモの親子

カルガモの親子です。ヒナはふ化して1週間ほどでしょうか。

基本的に全員が同じ動きをします。

しっかり歩き、泳いでいますが、いかんせん無防備です。見ていてヒヤヒヤしますが、実際、この時期は外敵による危険に最もさらされます。

やおら勝手に泳ぎだした4羽のヒナ

9羽のうちの4羽が、別のつがいのカルガモが食事をしているところへ近づきます。
恐れを知らないヒナは、お余所の大人(成鳥)にちょっかいを出して反撃され、それを見た母親がさらに攻撃をしかけたりと、成鳥の方はかなり神経質になっているのがわかります。
すぐに疲れてしまい、上陸して休憩。

すぐに疲れて休憩します

このうち、成鳥の大きさまで育つのは何羽でしょうか。あまりにもかわいらしい姿を見ていたら、かえって冷徹な自然の厳しさを思い出してしまいました。

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カワラノギク保全圃場の草抜き

梅雨の晴れ間の6月14日、緑区大島の相模川河原にあるカワラノギクの保全圃場(ほぜんほじょう)へ行きました。
目的は、草抜きです。カワラノギクは生育に強い日照を必要とするため、ほかの植物が繁ってしまうと絶えてしまいます。絶滅危惧1B類で、地球上に相模川水系のほか、多摩川と鬼怒川にしかないという植物のためにほかの植物をできるだけ排除します。beforeは・・

草抜きを始めた直後の保全地

そして相模原植物調査会のメンバーと汗を流した結果は

周りの樹木や去年の立ち枯れなどを除去

草抜きと言っても、今回はまだ強敵のコセンダングサが芽生えで小さかったため、周りから押し寄せるネムノキ、アカメガシワなどの樹木やイタドリ、テリハノイバラといった手強い植物を排除しました。カワラノギクも清々しそうです。

カワラノギクの今年咲く株

風は涼しげとはいえ、河原の炎天下の作業なので1時間ほどで切り上げて河原の植物を散策しました。
ちょうど、ヒメコウゾの果実が実っていました。

ヒメコウゾ(クワ科)の果実

美しい果実ですが、近縁のクワのように美味しくはありません。
植物ではないのですが、マメコガネのおきまりポーズ、後ろ足上げ!

交尾中のマメコガネ

風が吹いたり、人が近づくとなぜかこのポーズをとります。交尾中だったのでオスメス仲良く!
シジュウカラが葉先にこだわってなにかをつついていました。

器用に枝先にぶら下がるシジュウカラ

お昼ご飯を食べにちょっと場所を移動して、段丘崖の崖下へ。目的はこのイワタバコです。

見ごろを迎えたイワタバコ

ちょうど見ごろの不思議な形の花を堪能しました。
コセンダングサが繁ってきたころ、もう一回草抜きをしなくちゃと、気合いを入れ直しました。

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企画展「砂展」の展示解説を行いました

6月11日(日)に現在開催中の企画展「砂展~日本の砂・海外の砂~」の展示解説を行いました。

各コーナーの見どころやポイントなどを解説しました。

同じ相模川・桂川流域の砂でもよく見ると違いがあることに納得していただけました。

相模川・桂川流域の砂の解説

日本各地の砂・海外の砂は今回の企画展で最も人気の高いコーナーです。

日本各地の砂・海外の砂の解説

星砂など砂の中の微生物を紹介したコーナーも人気があります。微生物は小さすぎて肉眼では見えないので、顕微鏡写真を使って解説しました。

砂の中の小さな生き物の解説

砂岩を紹介するコーナーは他と比べて地味ですが、日本では珍しい5〜4億年前の砂岩も展示してありますので、この機会にぜひご覧ください。

砂岩の解説

砂岩のコーナーでは日本では珍しい5〜4億年前の砂岩も展示してあります

展示内容の詳細はこちらをご覧下さい。

展示解説は、6月25日(日)にも開催いたします。
また、6月18日(日)には砂を顕微鏡で観察するイベント「いろいろな砂を顕微鏡で見てみよう」を開催いたします。こちらも、ぜひご参加ください。

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5/31 多摩川源流部地質調査

5月31日に多摩川源流部の地質調査を行いました。

山梨県甲州市から富士川水系の笛吹川の支流、重川に沿って遡り、柳沢峠を越えて、多摩川源流部に入りました。

柳沢峠付近には閃緑岩(せんりょくがん)が分布しています。
下の写真は柳沢峠南方の林道沿いの露頭(ろとう)です。
薄茶色の基質部分に白黒の閃緑岩の岩塊が礫(れき)として取り込まれているように見えます。まるで、閃緑岩の礫を含んだ礫層のように見えます。

薄茶色の基質に閃緑岩が取り込まれているように見えます。

閃緑岩の礫を含んだ礫層のように見えます。

これは礫層ではなく、露頭全体が閃緑岩だったものが風化により形成されたものです。閃緑岩の割れ目に沿って風化が進み、その部分が土壌化したものです。薄茶色の部分は風化が進行して土壌化した部分で、礫のように見える閃緑岩は土壌化を免れた部分です。
土壌化を免れた閃緑岩も風化しており、手で触るとボロボロ崩れてきます。

土壌化を免れた閃緑岩。

甲州市にある柳沢峠は富士川水系と多摩川水系の分水嶺となっています。

柳沢峠から見た富士山。手前の谷は富士川水系の重川。

柳沢峠の北側の谷は、多摩川の源流です。
多摩川源流部は閃緑岩しか分布していないので、川原の砂も閃緑岩を造っている鉱物の破片ばかりです。

多摩川源流部。

多摩川源流部の川原の砂。

高橋川が多摩川に合流するあたりには約1億2千万年前の砂岩や泥岩が分布しています。この砂岩や泥岩は熱による変性作用を受けてホルンフェルスと呼ばれる変成岩になっています。熱源は地下深くから上昇してきたマグマです。このマグマが冷えて固まってできたのが柳沢峠付近に分布する閃緑岩です。

ホルンフェルス化した砂岩泥岩互層。

多摩川と高橋川の合流点付近では、露出する岩石はホルンフェルスですが、川原の砂は閃緑岩を造る鉱物の破片ばかりです。閃緑岩は風化しやすく、大量の砂を供給します。一方で、ホルンフェルスは硬く緻密なため、閃緑岩に比べると砂の供給量は多くはありません。この辺りは閃緑岩が近くに分布するのでその影響が強く、川原の砂にホルンフェルスの破片はほとんど含まれていません。

多摩川との合流点付近の高橋川。

多摩川との合流点付近の高橋川の川原の砂。

ホルンフェルスは熱源に近づくほど変性作用の程度が強くなっていきます。今回はホルンフェルスを1カ所でしか観察できませんでしたが、機会があれば変性作用の程度が異なる場所で調査を行ってみたいと思います。

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え?ゴマ?

博物館に入るとまず目につくのが、壁面ガラス越しに見える林でしょうか。相模原の台地に広がる雑木林をイメージした中庭の植栽です。6月8日、この中庭の一角にエゴマの苗を植えてみました。エゴマよりも「エゴマ油」と言った方が、最近ではピンとくる方も多いかもしれませんね。美肌効果やがん予防、高血圧予防などなど、健康食材として度々テレビにも紹介されている、あのエゴマです。

博物館中庭に植えたエゴマの苗

エゴマといっても植物学的にはゴマの仲間ではなく、お刺身や天ぷらなどでもお馴染みのシソの仲間になります。高さが1mくらいまで成長する1年草で、葉や実などはシソと非常によく似ています。苗は5~6月頃に植えて、9~10月頃にはかわいらしい小さな白い花を咲かせ、油をたくさん含んだゴマ粒状の実(種子)を実らせます。

秩父みやげのエゴマふりかけからより分けたエゴマの実(100粒)

エゴマの民俗はどうでしょう。郷土の利用植物として馴染みが深いのは、主に東日本の山村のようです。名称も様々で、例えば福島方面では「ジュウネン」、新潟・長野方面では「エクサ」、石川方面では「エイ」と呼ばれています。エゴマを炒ってすり潰し、味噌に混ぜてお餅につけて食べる「ジュウネン餅」は、福島の伝統的な郷土料理です。エゴマは食だけではありません。有名な会津塗や春慶塗といった漆塗りでも、透明度の高い透漆(すきうるし)を精製するのにエゴマ油は欠かせない存在です。防水効果から、雨傘などにエゴマ油が利用されることも古くからある伝統工芸技術です

歴史の中のエゴマを紐解けば、古代の「東大寺正倉院文書」や「延喜式」にも度々登場しますが、古の名は「荏」・「荏子」や「荏油」で、「エゴマ」と呼ばれるようになったのは、江戸時代頃とみられています。平安時代の相模国でも栽培されており、朝廷へ貢納する薬として「荏子」が「延喜式」に記されています。9世紀にはエゴマから油を搾り取る搾油機も考案され、社寺や公家の燈油用にエゴマ油が大量に作られていったようです。戦国時代の津久井城跡の発掘調査で出土した灯明皿(かわらけ)にも、科学的な分析データからエゴマ油が燈油として使われていたとみられています。

元をたどってエゴマの原産地はインドや中国といわれています。ではいつごろ日本に伝わってきたのかというと、古代よりさらに古い縄文時代まで遡ります。「えっ?」と思われるかもしれませんが、縄文人もエゴマを食していたんですね。特に5,000年前頃にはかなりの量を収穫していたとみられ、炭化したエゴマ種子の塊などが長野県を中心に発見されています。最新の考古学の研究成果では、土器づくりの際の粘土にエゴマが多量に混入して作られた縄文土器が確認されるようになってきました。ここ2~3年のお話です。

博物館にもたくさんの縄文土器が保管されていますが、今年の2月、収蔵庫の中からエゴマとみられる種子が練り込まれた縄文土器を見つけました。現在、詳しい調査分析を進めているところなので、中庭に植えたエゴマの成長と合わせて、結果が楽しみです。

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カイコの飼育展示始めました

飼育中のカイコが2齢になり、毎年恒例の飼育展示をすることにしました。今日(6月10日)がスタートです。

1階総合案内の横で展示しています

肉眼でも見えるのですが、さらにじっくり見ていただくためにルーペも置いてあります。

ルーペで見ると、模様や形もはっきり見ることができます

カイコは2齢まで、頭が真っ黒です。これが、おそらく来週初めにはもう一回脱皮をして3齢になりますが、そうするとベージュ色の頭になります。

2齢になったカイコ

一般的に、3齢になると大きさも2センチを超えて安定し、病気などによる大量死のリスクも減ります。かつて、養蚕農家が一年に4回以上カイコを育てていた頃は、2齢まで組合などで人工飼料による一括飼育をして、3齢から各養蚕農家へ配って繭まで育てていたそうです。
さて、そんな今朝がた、博物館の駐車場に神様がおわしました。

【ヘビの写真注意!】

かつて養蚕が盛んだった頃、カイコの病気を媒介する、あるいは大切に貯蔵している穀類を食い荒らす家ネズミを食べてくれるということで、アオダイショウは農家の守り神として崇められていました。

アオダイショウの若い個体

ヘビが嫌いな人は昔からたくさんいたはずですが、神様として距離をとりつつ、共に暮らしてきたのでしょう。

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カイコは2齢に、そしてシャクトリ虫の擬態(写真あり)

今日(6月9日)夕方、博物館で飼育中のカイコが1回目の脱皮をして2齢になりました。

こちらは脱皮前の眠(みん)の状態の1齢幼虫

明日あたりから、飼育展示を開始したいと思っています。
そして、蚕種(さんしゅ:カイコの卵)の提供先9校の小学校への出張授業も一通り終了しました。ここから、カイコの飼育に専念です。
さて、カイコではないのですが、昨日、博物館の職員がヘンなイモムシを見つけた、と教えてくれました。

植木の幹にまいたテープの縁に乗っています

結構大きくて、7センチくらいあります。おもしろいのは、頭の方です。

頭部を見上げたところ 休眠芽(きゅうみんが)に擬態してます!

なんと、休眠芽(きゅうみんが=木の芽)に擬態しています!これがまるで枝のようにつかまっているところを撮りたかったのですが、残念ながらそう都合良く姿勢はとってくれませんでしたが・・見事ですね。どうやらこのイモムシは、トビモンオオエダシャクというシャクガの幼虫のようです。サクラなどの葉を食べるとのことで、こんどサクラの枝をよく探して、擬態シーンの写真を撮りたいと思っています。

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初夏のコミミズク!?

おかしなタイトルです。コミミズクは冬鳥で、しかも神奈川県では珍しい野鳥です。
カイコのためのクワの葉をとっていたら、剪定バサミの上をとことこと歩いているものがいます。

剪定バサミの刃の上をとことこ・・

見た瞬間、やった!と思いました。おそらくこれは、春から初夏に出会えるコミミズク!
え?でもコミミズクって、こんな、いかめしい鳥のはず・・

こちらは野鳥のコミミズクで、冬鳥です

いえいえ、じつは昆虫のヨコバイのなかまには、ミミズクと名のつく、いくつかの虫がいるのです。
拡大してみると・・

左側が頭です

摩訶不思議な形です。
ウンカやヨコバイ、ハゴロモなどのカメムシ目(もく)はセミなども含まれる大きなグループですが、不思議な形をしたものが多く、世界的にも有名なツノゼミも、同じなかまです。
コミミズクは決して珍しい虫ではありませんが、見つけるとなんだか嬉しくて、つい写真をたくさん撮ってしまいます。o

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