技術の共有

心なしか、キアシドクガの乱舞が日曜日よりも数が少ないように感じられます。風が強いだけなのかもしれませんが・・
やはり、幼虫の数が多すぎて自滅してしまった個体が多いのかどうか。まだ1週間くらいは推移を見守る必要がありそうです。
今日(5月23日)はキアシドクガから少し離れ、気分を変えて、駐車場をさささっと歩いていたハンサムなカナヘビの写真をアップします。

カナヘビ

この時期、草むらなどで頻繁に見られますが、館内にもよく入っていてしまい、受付業務の人たちを困らせています。
さて、カナヘビの写真を撮りつつ葉っぱ素材を調達に外へ出ていたのですが、そのわけは、こちらです。

シュロやシャガ、ススキの葉が材料です

葉っぱ工作のいくつかを、麻布大学の先生へ伝授させていただきました。緑区青根の里山を学生さんたちと共に元気にしようという活動をされている「あざおね社中」のワークショップで使いたいということで博物館を訪ねて来られたのです。
折り紙と違って、形がそれぞれ違う葉っぱを扱うのはちょっと難しく、悪戦苦闘されています。

手でおぼえるのが大切です!

それでも、いくつかの工作をマスターされていきました。明日、学生さんたちにも伝授するとのことです。
ちなみに、こちらの草ヘビは、複雑な工程のため、断念されました。

草ヘビは、難易度4(5段階)くらい?

博物館では今年も、雨の日の「生きものミニサロン」などで葉っぱ工作のワークショップを行っていきたいと考えています。

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キアシドクガの大乱舞とムクドリの楽園

真夏のような暑さで迎えた日曜日(5月21日)、キアシドクガの成虫が博物館の駐車場や、お隣の樹林地で大乱舞しています。

写真ではなかなか表現できませんが、ものすごい数がとんでいます

やはり、昨年と比べて成虫のサイズが全体的に小さく、フェンスなどについている蛹を見ても、かなりの比率で中で死んでいるものがいます。栄養不良は明らかですね。

昨年よりもサイズが小さな成虫

さて、駐車場の脇に1本のエゴノキがあります。キアシドクガの幼虫はエゴノキも食べると図鑑などに書かれていることがありますが、ここのエゴノキは少なくとも食べられていません。そのため今ちょうど、満開を迎えています。エゴノキに集まるキアシドクガを見ていると・・

それは違うよ!と言いたくなるくらいよく似ています

相手を間違えているようにも見えます。エゴノキの花は、ご丁寧におしべの葯(やく)が黄色いのでいっそう、キアシドクガに似ています。
キアシドクガの成虫は口が無く、何も食べません。飛び回っているのは、交尾の相手を探すためです。ただ、サクラなど食草とは無関係の木にも集まっていて、葉の裏にとまって休めればよいようなので、相手を間違えているのかどうか本当のところはわかりません。
さて、これだけいる昆虫を、鳥が見逃すはずはありません。ムクドリが力尽きて地上に落ちている成虫を次から次へと拾い上げ、口いっぱいにほおばっていました。

キアシドクガを口いっぱいにくわえたムクドリ

毛虫の時から食べまくっていたので、ムクドリにとって今の博物館駐車場は楽園です。日向で翼を広げて日向ぼっこなんぞしていました。

気持ちよさそうですが、寄生虫退治をしているところです

余裕しゃくしゃくですね。

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チョウと蛾(写真有)

連日、昆虫の話題となりお好きでない方には申し訳ないのですが・・
緑区のある場所で採られた(正確には荷物に紛れ込んでしまっていた)チョウ(蝶)が持ち込まれました。

ウツバシロチョウ 腹部の先に受胎嚢が付けられている

アゲハチョウのなかまのウスバシロチョウといいます。腹部の先に受胎嚢(じゅたいのう)があるので、メスということがわかります。受胎嚢とは、交尾をしたオスが、メスが他のオスと交尾できないようにつけるもので、ウスバシロチョウの場合はとても目立ちます。
ウスバシロチョウはその名のとおり、翅(はね)が半透明です。

名前のとおり、翅(はね)が透けています

顔をアップにすると、口吻(こうふん)がくるりと巻いています。

ストロー状の口吻(こうふん)

ところで、今博物館のまわりをたくさん飛び始めたキアシドクガの顔に、このような口吻はありません。

キアシドクガには口吻が無い

チョウや蛾のなかまは花の蜜や樹液などを、口吻を伸ばして吸うイメージがあります。しかしじつは、蛾のなかまの多くはこのように口吻を持ちません。つまり、成虫になると何も食べることなく、繁殖活動だけして1週間から10日くらいで衰弱して死んでしまうのです。
チョウと蛾は違うように見えて、じつは明確な区別点はありません。ワシとタカ、クジラとイルカなども、やはり分類学上の区別はなくて、だいたいのイメージで分かれているだけです。しかし、あえてチョウと蛾の違いをあげるとするなら、その一つがこの口吻です。チョウのほとんどに口吻があり、昼間、力強く飛び回って栄養をとりますが、蛾の多くには口吻が無く、弱々しく飛びまわるに過ぎません。ただしこれも例外がたくさんあって、明確な定義というわけではありません。

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キアシドクガ 成虫の出現(写真有)とミズキの再生

このところ、ムクドリが博物館のまわりを活発に動きまわっています。よく観察してみると、大発生しているキアシドクガの幼虫を大量に食べています。地面やミズキの枝で、食料が無くなりさまよっている幼虫をつかまえて、ムシャムシャとやっているようです。おそらく今年はムクドリの繁殖率が良くなり、今度は毎年夏に見られるムクドリの若鳥の大群が例年以上にたくさん見られそうです。
さてそんな中、まだ数は少ないのですが、キアシドクガの成虫が飛び回り始めました。

キアシドクガの成虫(5月18日)

名の由来となっている前脚のオレンジ色が目立ちます。
そして、ミズキの下には今、こんなふうに食べられた跡の葉柄(ようへい)がぽろぽろと地面に落ちています。

地面に落ちたミズキの葉柄部分

これはミズキが力尽きて茎を落としているのかというと・・・
そうではありません。その逆です。葉柄の落ちた後の枝をよく見てみると、休眠芽が発達してきているのがわかります。

発達し始めたミズキの休眠芽(中央)

こちらはすでに、葉の形を作りかけています。

だいぶ伸びてきたミズキの休眠芽

下の写真は4月の初めのものですが、こんな風に新緑を謳歌したのもつかの間・・・

4月初め、葉を開いたばかりのミズキの葉

あっという間にキアシドクガに丸坊主にされました。

5月初め、キアシドクガに食べ尽くされたミズキの葉

でも、再び瑞々しい葉を展開する日もそう遠くはなさそうです。

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花ごよみ&タンポポ調査結果の解析

今日(5月16日)は午前中、相模原市立環境情報センターの自然環境観察員のみなさんと博物館のボランティアグループである相模原植物調査会のみなさんと合同で、花ごよみ調査を行いました。

博物館隣の樹林地が調査コースです

キアシドクガの幼虫の動きも落ち着いて(今朝は羽化した成虫を1頭見つけましたが)、調査も順調に進みます。
花には見えませんが、こちらはカヤツリグサ科のヒゴクサで、これでもりっぱに開花しています。

ヒゴクサの花と若い果実

そんな調査をやっていたら、宝石を見つけました。アカスジキンカメムシです。

雑木林の宝石、アカスジキンカメムシ

雑木林では一般的なカメムシですが、いつ見ても美しい昆虫です。ちなみに幼虫はこんな模様で、これはこれでおもしろいですね。

アカスジキンカメムシの幼虫

午後は、昨年自然環境観察員のみなさんが行ったタンポポ調査の総括を行いました。

タンポポの分布について、真剣な議論が交わされました

在来種、外来種、雑種の確認地点をそれぞれ地図に落としていき、気付いたことをまとめていきました。5年ごとに実施しているタンポポ調査はこれで3回目、博物館で実施した調査から数えると4回目となり、この調査の歴史を物語る調査テーマです。みなさんから出たご意見も大変科学的で客観的な見方をされたものが多く、私も勉強になり、刺激の多い一日でした。

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最近よく見かけるもの

キアシドクガの大発生は、蛹化期に入り毛虫の動きがだいぶ落ち着いてきました。やはり、ミズキの葉を食べ尽くして餓死している幼虫も多く、蛹も小さめです。かなりの過飽和状態と考えられます。
さて、せっかく植物がいろいろと咲いている季節なので、こちらの花を・・

すっかり春の花として定着したナガミヒナゲシ

ナガミヒナゲシです。
10年くらい前は、最近道端で目立つけど、いったい何の花?とよく尋ねられました。でも今では小中学校の理科の教科書にも載るくらいメジャーな存在です。
そしてこちら。タンポポ?にしては、やけに背が高いです。

おばけタンポポ?

増え始めた頃は、庭におばけみたいなタンポポが生えてきました!と博物館にお問い合わせをいただいたこともあります。これはタンポポではなく、ブタナという外来植物です。花はタンポポとそっくりですが、決定的な違いがあります。それはこちら。

花柄が二股に枝分かれします

花柄(かへい:花がついている茎)が枝分かれします。タンポポは決して枝分かれしないので、ここで見分けられます。
そして、最近よく道端で見かけるのは・・

庭先でも大きな株を見かけます

外来植物の先達であるハルジョオンにちょっと似ていますが、這って生えているところが違います。この花は、ペラペラヨメナと言います。ヘンな名前ですね。花は咲き始めは白ですが、だんだんと桃色になり花期も長いことから、園芸植物としても流通しています。園芸用には「源平小菊」や、学名の一部から「エリゲロン」と名付けられています。

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ヤマビル出ています(写真あり)

5月10日、緑区の山林へ植物相調査へ行きました。その目的の一つは、菌従属栄養植物であるサカネランの開花状況の確認です。なかなか見る機会の少ない野生ランなのですが、ちょっと薄暗い林内を進むと、1株だけしっかりと咲いていました。

サカネラン

菌従属栄養植物とは、樹木などの根に寄生する菌類にさらに寄生して栄養を横取りする植物で、腐生植物とも言われています。植物なのに光合成をしないため、葉緑素も持ちません。緑色の部分がないのはそのためなのですが、薄暗い林内で見ると、黄金色のろうそくでも立っているように見えます。花をアップで見ると、やはりランですね。

サカネランの花のアップ

その近くには、ユウシュンランという別のランも咲いていました。こちらは独立栄養植物で、緑色の葉があります。背丈が10センチにも満たない小さなランですが、こちらも花はしっかりとランの形をしています。

ユウシュンランの花

と、野生ランを中心としたすばらしい植物調査だったのですが・・やっぱりコイツが足下から這い上がってきました。

服の上を這い回るヤマビル

ヤマビルです。今回は背丈の低い植物を、地面に肘をついたりして撮影していたため、あろうことかのど元に吸い付かれてしまいました。
さらに車に戻ってヤマビルがついていないかチェックをしていたら、靴底にこんなものまで!

マダニの一種

マダニです。病原菌などを媒介しないヤマビルと比べると、こちらはかなり深刻な病気を媒介するため、なかなか恐ろしい相手です。幸い食いつかれてはいませんでしたが、ランを撮影できて高揚した気分も、この姿を見た瞬間にずーんと急降下しました。
気を取り直してさらに下って集落に入ると、キセキレイが地上を歩いていました。

キセキレイ

ふわっと飛び上がったかと思うと、設置されている箱に飛び乗りました。

もの言いたげなキセキレイ

それは、ヒル避け剤が置かれた箱でした。「ヤマビル注意!」
もうやられちゃったよ、とつぶやきながら、帰路につきました。

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5/13・14は「博物館の魅力発見!常設展展示解説ツアー(国際博物館の日記念事業)」

5/13・14は、さらに標記のイベントも!

日ごろは団体利用のお客様のみに実施している「展示解説」ですが、この二日間に限り、午前午後に1回ずつ、各回20名様まで限定で、展示解説ツアーを行います。

時間は両日とも10時30分から11時までと14時から14時30分まで。

当日の午前9時30分から博物館1階エントランスにて整理券を配布します。

常設展の魅力を発見!

参加された方には博物館オリジナル缶バッジのプレゼントもありますので、こちらもあわせてお楽しみに♪

常設展を楽しんでくださいね!

5/13・14が、みなさんにとって、博物館を堪能できる1日になりますように。

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ミズキの恩恵が・・

博物館周辺の樹林で大発生しているキアシドクガは、蛹(さなぎ)になる場所を求めて激しく移動していたため、先週末の5月7日あたりは樹林に近づくと幼虫が枝から落ちる音と、フンの落ちる音で「ざーっ」と雨音のようでした。この数年の大発生でも、こんな現象は初めてのことです。
そんな移動も落ち着きつつあり、博物館駐車場のフェンスなどには大量の蛹がつき始めました。

キアシドクガの蛹(さなぎ)

5月20日前後には成虫になり、今度は真っ白な蛾が乱舞することでしょう。
さて、過去最大規模の発生で、ミズキが多い樹林内では葉が食べ尽くされ、木枯らしの季節に逆戻りしたように明るくなってしまいました。枝に残っているのは葉柄(ようへい)だけです。

葉が食べられて葉柄(ようへい)だけになったミズキの枝

ただ、これでミズキが枯れてしまうかというとそんなことはありません。この状態が何年も続くと樹勢が弱まって枯れてしまうこともあるでしょうが、おそらく、これだけの大発生は今年がピークになるはずです。幼虫が明らかに過飽和状態で、食料が足りているとは思えませんし、昨年よりも蛹のサイズがかなり小さめです。ミズキの葉も、こういうときのために休眠芽(きゅうみんが=虫害などで葉が失われたときのために準備されている芽)が控えていますし、キアシドクガは年1回だけの発生です。夏までにはまた緑の葉を回復するでしょう。

ミズキの休眠芽(写真中央の突起)

ただ、これだけ葉が食べ尽くされると、まわりの環境を含めていろいろな影響が及びます。まず、林内に光が届くため、林床(りんしょう=樹林の地上付近)の草が大きく育つはずです。いつになく林内が背の高い草で覆われるでしょう。そしてもう一つ気がかりなのが、ミズキの果実です。本来なら今ごろミズキはこんな花をつけていたはずです(昨年の写真)。

ミズキの花(昨年の写真)

5月中旬には近縁のクマノミズキも少し遅れて同様の花を咲かせるのですが、キアシドクガが花芽もろとも食べてしまったり、つぼみを食いちぎって落としてしまったため、今年はどの木にもまったく花がついていません。例年なら、花を咲かせたミズキやクマノミズキは、秋の終わり頃に黒紫色の果実をたくさんつけます(こちらも昨年の写真)。

ミズキの果実(昨年の写真)

この果実は、秋に北から渡ってきてお腹を空かせた冬鳥たちの貴重な食料になっています。実際、この時期に博物館周辺で野鳥の捕獲調査を行うと、ツグミ類などは紫色のフンをするので、ミズキの果実をたくさん食べていることがわかります。
今年の秋は、おそらくミズキの結実は期待できません。これをあてにして渡ってきた冬鳥たちがどうなるのか、今からちょっと心配です。
さらに、驚くべき行動を観察しました。キアシドクガの幼虫が、クワの葉を食べていたのです。

クワの葉にくらいつくキアシドクガ

あまりの食糧難で、本来はミズキとクマノミズキ以外の葉は食べないはずなのに、近くのクワを思わずたべてしまっているのでしょう。クワと言えば、カイコの食料です。このままキアシドクガがクワを食べ尽くすとは思えませんが、来月から始まるカイコの飼育にも影響が出るのではないかと、こちらもちょっと心配です。

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5/13・14は昼間の星の観望会♪(5月のさがみはら宇宙の日・国際博物館の日記念事業)

5/13・14は、「プラネタリウムこども無料デー」だけではありません!

標記のイベントも開催します。日ごろ、月2回程度夜間に実施している「星空観望会」以外ではなかなか入るチャンスがない「天体観測室」へご案内します。

天体観測室の天体望遠鏡

もちろん参加費無料!申し込みも不要ですが、スペースの関係上、希望者多数の場合は多少お待ちいただくかもしれませんのでご注意くださいね。

ご覧になりたい方は、両日とも10時から11時までと、14時から15時までの時間帯で実施しますので、天文研究室前あたりにお集まりくださいね。係りの者が誘導します。午前は金星、午後はオリオン座などを観望する予定です。

当日、もし天気の関係で星が見られないときには、天体観測室の見学とさせていただきます。それはそれでお楽しみかも?

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