メジロのフライキャッチ

先週(2月11日)、博物館お隣の樹林地で野鳥の調査を行っていました。
そのとき、ふと上空を見ると、林のてっぺんあたりで小さな鳥が飛び上がっては枝に戻り、という行動を繰り返していました。シルエットからメジロだとすぐにわかったのですが・・

メジロは、枝先の葉の裏や果実をつつきながら採食する鳥で、特にこの時期はツバキの花に頭を突っ込んで蜜を舐めたりしています。それがなぜ林のてっぺんを飛んだりしているのか・・当てずっぽうで写真を撮ってみるとこんなものが写っていました。

ピントが甘くてボケ写真ですが、双翅目(ハエやカのなかま)の昆虫が飛んでいて、それを食べようと飛び上がっていたようです。
通常、こうした虫の捕り方(フライキャッチ)は、ヒタキのなかまの鳥がよくやっていますが、メジロでは初めて見ました。あまり上手に捕っている感じではなくて、しばらく見ていたらスギの枝先に潜り込んでもともとの食べ方に戻っていました。気温が上がって羽化してきたハエのなかまをめざとく見つけてチャレンジしていたのでしょう。
ふと足下のサンショウの枝を見たら、にっこりした顔がありました。

葉が落ちた痕である葉痕に残る、維管束痕です。専門用語にすると味気ないですね。

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「繭うさぎづくり」開催しました!

2月5日(日)、朝から大会議室では市民学芸員さんたちが忙しそうに会場設営しています。

カイコが育っていくようすの写真や模型も並べて、準備万端です。

今日は1年に1回の恒例となった「繭うさぎづくり」の日。スタートの11時前から並んでいる方もいて、大盛況です。

小さなお子さんも、ご年配の方も、楽しそうに作っています。

市民学芸員さんから作り方のアドバイスや、カイコの説明をきいたりしながらの作業です。お母さんも夢中!

かわいい作品を見せてくれました。繭の切れはしで作ったニンジンつき!

こちらもバッチリできました!

今回、繭うさぎづくりに使った繭は、昨年の初夏に博物館で育てたり、市民学芸員さんが育ててくれたカイコの繭です。苦労して育てた繭がこうしてみなさんの手でかわいいお人形に生まれ変わって、大事そうに持ち帰ってくれるのを見ると、育てたかいがあったな、と思います。今年もまた、クワの葉の広がる頃からカイコを育てたいと思います。

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歴史講演会「相模原と近代神奈川」 155人もの幕末・維新ファン集合!

1/29(日)の午後2時から歴史講演会「相模原と近代神奈川」を開催しました。
今回の歴史講演会は、横浜開港、戊辰戦争、近代国家の形成など、日本の近代の幕開けに関する講演で、2017年最初の博物館講演会の幕開けにふさわしい内容でした。

  

幕末・維新期はまさに激動の時代で、歴史ファンの中でも人気のある時代のひとつです。
そのため、今回の講演会にも155人もの幕末・維新ファンが集まりました。予想を上回る来場者で、当初並べていた席を数列追加したほどです。

会場が参加者でいっぱいになりました! 

講師は、明治維新、廃藩置県の研究などが専門の中央大学文学部教授の松尾正人先生で、特に今回は横浜開港や神奈川県の成立などについて詳しくお話していただきました。

今年は江戸時代最後の年 慶応3年(1867)からちょうど150年になります。相模原市域でも横浜開港後に警護のために農民が駆り出されたり、八王子千人同心であった岡本氏が長州征伐に従軍したり、近藤勇が甲州道中を通って勝沼での戦いに赴いたりしています。相模原市域でも、近代の幕開けにむけて様々な影響がありました。

講演後には、熱心な参加者から質問もありました。今後もアンケートなどを参考に歴史講演会の内容を検討していきたいと思いますので、ご期待ください。

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職場体験(1月27日)

今週は前の記事にもあるように、さがみはら若者ステーションの職場体験もありますが、中学生も4名が体験に来ていました。
市内の新町中学校と相模原中等教育学校から2年生がそれぞれ2名ずつ、さまざまな博物館の仕事を体験しました。今日はその最終日で、植物標本のマウント(台紙貼り)作業です。

いつものように博物館の専門ボランティアグループである相模原植物調査会のみなさんから直接指導を受けます。標本を扱う際のきめ細やかな配慮がそこかしこにあって、みなさん興味津々です。
実際の作業でもマンツーマンで指導してくれるので、扱っている植物にまつわるお話など楽しくおしゃべりしながらの作業になります。

その後、標本を作成して保存する意義について動植物資料収蔵庫で解説しました。50年後、100年後、もっと未来の人たちに向けて保存しておくのが博物館資料です。スケールの大きな話を真剣にきいてくれました。
おまけで、こんな昆虫標本をお見せしました。大きさ約2ミリの甲虫です。

肉眼では昆虫かどうかもわからないような標本ですが、しっかりと標本ラベルが添付され、堂々たる学術資料です。珍しいものや美しいもの、希少なものを扱うのが博物館資料という印象が強いのですが、「これも資料?!」という素直な驚きを感じたようです。
ふだんあまり触れることのない博物館の裏側の、印象的な体験をしていただきました。

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生きものミニサロン センサーカメラがとらえた動物たち

1月28日(土)毎月第四土曜日恒例の「生きものミニサロン」を実施しました。
生きもの観察はいつでも、どこでもできます。ただ、やはり真冬の1月下旬は、小さなお子さんたちと一緒に観察できるテーマを考えるのはとても苦労します。なかなかこの時期の日中は生きものが見づらいな・・・そうだ!それを逆手に取ればいいのか!
ということで、エントランスでセンサーカメラという道具を使ったミニレクチャーを行いました。

森の中でひっそりと暮らす動物たちの姿をとらえるため、博物館お隣の樹林地にしかけておいたセンサーカメラに写った動物たちを、大きな画面のテレビで見ていただきました。保護色でわかりにくい鳥も、参加したお子さんたちが「ここだよ!」とみなさんに教えてくれています。

そのうちの1枚は、こんな画像です。見事なまでに落ち葉の模様に同化しているヤマシギです。

あまりにもわかりにくいので、剥製の写真をご紹介します。

この鳥は主に夜行性(この映像では午後の明るい時間帯に写っていました!)で、森の中の地面でおとなしく生活しているため、バードウォッチャーにとってもなかなかお目にかかる機会の無い鳥です。それが、センサーカメラではしっかりと写り、博物館お隣の樹林に生息していることがわかりました。
たくさん写っていたタヌキやヤマシギ、トラツグミなどの剥製と見比べながら映像を見ていただきました。

今回ご紹介した画像では、動物たちの生態や特徴的な行動も見ることができて、映像が持つ情報量の多さを実感していただけたと思います。
そしてオマケです。こんなカメラですよ、と紹介するためにセンサーカメラを実際に持ってきていたのですが、ミニサロンの間、ずっとスイッチを入れておきました。

これもセンサーカメラの画像です(ご本人とご家族の承諾を得て公開しています)。
デジタル技術と赤外線センサーが発達して、長時間にわたる鮮明な画像が残せるようになったことで、野生生物の調査効率も格段に上がっています。ふだんあまり見ることの無いこうした映像を通して、生々しい野生動物たちの生活のようすを垣間見ていただくことができたと思います。

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地上に咲くバラ

毎年この時期になると、博物館のお隣の樹林地の地面に、バラの花が咲きます。
いや、正確には、落ちています。
1月28日(土)12時からの「生きものミニサロン」の下見のために歩いていたら、今年も落ちていました。

これはもちろん、バラではありません。ヒマラヤスギの球果(松ぼっくり)です。ほんとうはもっと細長くて大きいのですが、下3分の2くらいが木の上で熟し切ってはがれ落ちてしまい、先端だけがこうしてまとまって地面に落ちると、バラのように見えるのです。ドライフラワーでは人気の素材です。
さて、この球果を分解してみました。下の写真は、種子2つと種鱗(しゅりん)が重なった1セットです。これがお行儀よく重なりあって球果を作っています。

種鱗は、種子が熟すまで支える棚のようなもので、熟すとこれが開いて種子を落とします。種子には膜状の大きな翼(よく)があります。

長径が1センチもある大きな種子なので、翼も大きいですね。
ところで、こんなふうに分解していて気付いたことがあります。種鱗を1枚ずつはがしていくと、2個セットの種子のうち、片側しか実っていないものばかりでした。しかも、向かって右側だけ実っています。

おや?そんな法則があったかな?と思って図鑑を調べてみましたが、当然、通常は2つとも実るようです。さらに種鱗をはがしていくと、そのうち両側とも実っていないものばかりになりました。結局、まとまって落ちた先端3分の1は、親木がじゅうぶん種子を落としたから残りは「もういいか」という感じで落としたもののようです。
なぜ先端がバラのようにまとまって落ちるのか不思議でしたが、どうやらそんなことのようです。それにしても、その境目あたりの実り方が右側に偏る理由はよくわかりませんね。

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ドキドキ!?土器洗い

さて、何を干しているところでしょう?

ぐわかるかも?

これはタイトルのとおり「土器」なのです。

一つ一つは数センチ四方ほど。

これを・・・

一つ一つコツコツと、専用のブラシを使って洗います。

今回、この作業にはさがみはら若者ステーション(http://parasute.jp/)から職場体験のみなさんにも参加してもらっています。

土器の量はかなりたくさんあるので、相当、根気が求められる作業です。

職場体験の数日間で終わる作業ではありませんが、ありがたい助っ人として作業をしていただきました!

なお、この土器片は、3月18日から開催予定の企画展「相模原市の遺跡2017」で披露する予定です。どうぞお楽しみに。

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1月26日は文化財保護デー!

数日前のことですが、博物館の大型バス用駐車場に消防車が・・・。

博物館で火事!?それとも何か事件が!?

いえいえ、ご安心ください。

1月26日の文化財保護デーを前に、市の文化財を多く収蔵している博物館の状況について、消防署の立ち入り検査があったのです。

消火器や・・・

 

設備の確認など。

写真にはありませんが、特別収蔵庫での保管状況や、地下の機械室なども確認していただきました。

立ち入り検査の結果は、「問題なし」。

博物館では、後世に残すべき収蔵品を、これからも大切に守っていきます!

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落とし物(その2)

1月22日、博物館の専門ボランティアグループのひとつである相模原動物標本クラブの活動日でした。この日は標本資料を保管している冷凍庫の整理を行い、作業途中のものや、しばらく冷凍になったままの動物遺体などの状態をチェックしました。
その後、メンバーの数人がお昼休みにお隣の樹林地を歩いていて、落とし物を見つけて持ち帰ってきました!早速整理します。

先日(1月19日)の記事で、市内中心部で拾われた猛禽類の落とし物であるハイタカの羽根について紹介しました。今回もやはり猛禽類の落とし物ですが、羽根はキジバトのものでした。一カ所にまとまって落ちていたということなので、オオタカなどの猛禽類がキジバトを捕らえてその場で羽根をむしり、食べやすい状態にして食事場へ運んだのでしょう。

1枚ずつ部位を確かめながら、そして、風切羽や尾羽は順番を推定しながら並べていきます。飛ぶための機能に特化した羽根や、保温や色合いを出すことに重点が置かれている羽根など・・。野外観察や図鑑で全体像だけ見ていても気付かないさまざまなことが、こうした標本を作りながら見えてきます。

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落とし物

野生生物のなかでも、もともと生息数が少ないもの、夜行性のものなど、ふだん私たちが出会う確率が低い生きものたちがいます。猛禽類と呼ばれる鳥たちの多くも、そうした生きものの一つです。それが、思わぬ形で生息の証拠を得ることがあります。これは、その一つ。

ハイタカという小型のタカの、風切羽(かざきりばね)の一部です。このような落とし物を、フィールドサインと呼びます。

ハイタカ

1月17日に、博物館のボランティアさんのお一人が市役所に近い場所で拾われて、博物館へ持ってきて下さいました。じつは、この標本のおもしろいのは、羽根の付け根に骨がついている点です(生々しいので写真には入れていません)。いわゆる手羽の部分が丸ごとと、上腕骨までついていました。そもそもハイタカを襲って食べるというと、このあたりではより大きなオオタカか、ハヤブサくらいでしょう。

オオタカ

そして、それをまたこんなにきれいに肉をそぎ落とすとしたら、食べ残しを別の鳥がついばんだか?と推測できます。猫など獣類の場合は歯形が残りますし、噛みちぎってしまうのでこのような食べ痕になりません。
一つの自然の落とし物から、市街地での大小のタカの生息と生活のようすが垣間見えてきます。

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