東林中学校 職場体験 寄贈資料のカード作り&黒曜石矢じり作り

今日から東林中学校の2年生が職場体験に来ており、午後寄贈いただいた資料の資料カード作りと、黒曜石による矢じり作りを体験してもらいました。

前半1時間は、ワサビ栽培用の農具や京王線開業時の切符などのほか、戦時中の資料などにも触れてもらいました。これらの資料を通して、相模原の歴史を少しでも理解してもらえたら幸いです。

資料の大きさ、形状などを記録しています

また、後半1時間は黒曜石での矢じり作りを体験してもらいました。体験学習用にうすく割った黒曜石を矢じりの形に整えてもらったのですが、なかなか悪戦苦闘していました。私自身も素手で黒曜石を扱って少し出血してしまい、天然のガラス質である黒曜石の鋭さを身をもって伝えてしまいました(笑)黒曜石に触れ、縄文人の弓矢による狩猟生活などを実感してもらえたのではないでしょうか。

黒曜石に悪戦苦闘中!

何とか完成・・・成果を自ら撮影

今回は、博物館における資料収集・保存業務と、矢じり作りという教育普及活動の一例を体験してもらいました。職場体験を通して、博物館や相模原のことをもっと知ってもらい、郷土への愛着を深めてもらうきっかけになれば幸いです。

(歴史担当学芸員 木村弘樹)

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オンリーワンのホタルのはなし

今日は市内にある県立上溝南高校1年生に向けて、「生物多様性からみたホタルと相模川~田名望地のホタルはオンリーワン!」と題してお話をしてきました。当然ながら1人で行って話してきたのと、広い体育館の中で室内を暗くしていたため、写真はありません。
代わりに、講演で使った写真を。望地段丘崖です。

まずはじめに、「望地」の地名を読める人は?と質問をしました。数人手があがり、ちゃんと「もうち」と答えてくれました。望地から通ってきているそうです。そして次に「野生のホタルを見たことがある人は?」と尋ねると、1割もいませんでした。これはお話する甲斐があります。

ホタルの基礎的な生態や生息環境である相模原の河岸段丘などの内容を交え、さらに一番重要なこととして、生物多様性の観点で見ると望地のゲンジボタルがいかに重要なのかがわかる、というお話をしました。
40分の中に大学の基礎生物学レベルの内容も含んでいたので、ちょっと理解しきれない部分もあったと思います。しかし、上溝南高校で毎年実施しているという望地のホタル観察会に来年行った生徒さんが、「オンリーワンとか言ってたなあ・・」と思い出してくれればよいなと思います。

ところで余談ですが、この講義に向けて高校から出して頂いた派遣依頼文書という事務文書の差出人名である校長先生のお名前を見て驚きました。自分が高校時代に新任でいらした先生でした。直接受け持たれたわけではなかったのですが覚えていてくださり、昔話に花が咲きました。帰りがけに「秋山君、早口すぎるよ!」とピシッとご指導を受けたのも、先生の教育者としての愛情を感じて、なんだかとても嬉しい気持ちになりました。
(生物担当学芸員 秋山)

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類は友を呼ぶ

この週末は相模原近隣の大学の多くが大学祭でした。
JR橋本駅から最寄りの多摩美術大学も、「芸術祭」として大学祭を開催していました。芸術系の大学は、大学祭がガチンコの表現の場なので、隅々に至るまで真剣勝負です。私もそんな雰囲気が大好きで毎年訪れています。
そんな中でもちょっと静かな講義室棟の一室へと足を伸ばすと・・

骨骨展!
なんだか見覚えのある雰囲気です!
そう、ここは当館の相模原動物標本クラブにも参加してくれている美大生たちが主催するサークルの展示です。

芸術学を扱う中で、解剖学や骨格に関する素養は必須です。特にそうした分野に目覚めてしまった学生さんが活動するサークルなので、博物館と親和性が高いのは必然かもしれません。類は友を呼ぶのか、動物標本クラブもいつの間にかこうした学生さんたちともつながっていました。
さまざまな骨グッズも充実していて、小さいながらとても楽しい展示空間でした!
(生物担当学芸員 秋山)

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歴史講座②~旧市では唯一の確実な城 磯部城への探訪~

11月5日(土)に歴史講座の2回目として、室町時代の15世紀後半の「長尾景春の乱」に登場する磯部城への探訪を行いました。

下溝駅に全員集合!

磯部城は長尾景春の乱に際し、長尾方の城として史料に登場し、太田道灌の軍勢に攻められ落城したとあります。そして、城の本丸と伝えられる磯部の能徳寺や御嶽神社周辺には、ホリノウチ、キリドウシなど城郭関連地名が伝承として残っています。

ホリノウチ、キリドウシ、ハシバ・・・城っぽい地名がたくさん

本丸跡の伝承がある能徳寺

また、三段の滝広場近くにある上磯部の土塁は磯部城の土塁とされ、平成9年の発掘調査では箱堀も検出されています。このように、史料、伝承、そして発掘調査によって確認されている城は市内では津久井城しかなく、磯部城は旧市域では唯一の確実な城といえます。あまり知られていないのが残念です。(悲)

市登録史跡にもなってる上磯部の土塁の説明板

こちらも本丸伝承地 御嶽神社

午前9時に下溝駅出発し、相模川散策路沿いを歩き、上磯部の土塁、能徳寺、御嶽神社、常福寺、長松寺とめぐり、お昼前に無事に相武台下駅で解散しました。皆さんに、15世紀の中世城館跡を堪能していただけたなら幸いです。

長松寺で記念写真

次回は、歴史講座の最終日 愛川町の小沢城への探訪です。

(歴史担当学芸員 木村弘樹)

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アマチュアの力

今日はこのお天気の良さではあるのですが・・昨日まで連日のバンディング調査の見返りとして、たまったデスクワークに追われています。
さて、二日前になりますが、毎年11月3日は日本野鳥の会神奈川支部の研究報告集「BINOS(バイノス)」の発表会が横浜で開かれています。BINOS第23号となる今年も一昨日開催され、最新号のお披露目の場となりました。

BINOSには私もボランティアとして編集に携わっていますので、バンディングの現場を離れてお休みをいただき、参加してきました。
トップバッターの方は、普段の調査スタイルをまずご披露してくださいました。

定年1周年を記念した発表、との言葉にセカンドライフの充実を感じさせてくれる人生の先輩です。この方は毎月、6カ所の定線センサス調査を続けておられるツワモノです。
相模原動物標本クラブのメンバーであるSさんも、アオダイショウに食べられたムササビについて発表しました。

アオダイショウもムササビも鳥ではありませんが、BINOSは生きものであれば、鳥が登場しなくてもOKなのです。
発表後の休憩時間は、Sさんが持参したムササビの骨格標本にみなさん興味津々です!

私も3本の論文に関わったので、ダイジェストしながらBINOSの存在意義についてお話ししました。トップバッターの方の労力もすごいものがありますが、たとえば今回の筆頭論文の著者の方は、一昨年から昨年にかけて75日間にわたり、出勤前の夜明け前後にマイフィールドで野鳥の声の録音記録を取り、そこからヒヨドリの体内時計についての考察を発表されました。なんという努力量でしょうか。査読誌ではないBINOSですが、こうした著者のみなさんの血と汗、エネルギーの投下量といったら、国際的な査読誌にも引けを取らないはずです。
地域博物館もアマチュアリズムが発揮されるべき場所だと考えているので、改めてBINOSのアマチュアパワーに大きな刺激を受けることができました。
(生物担当学芸員 秋山)

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天使来たりてフィナーレ

10月30日から実施してきた鳥類標識調査は本日(11月4日)をもって終了となりました。
今日はその締めくくりにふさわしい鳥が捕まりました。森の天使、エナガです。

この鳥のかわいらしさは、もう言葉に表せません。
さらに嬉しいことは、今日捕獲したエナガの中に、リターン個体(以前付けた足環付きの個体)がいたことです!写真のエナガの足にリングがついているのがわかるでしょうか。

この個体は今年の4月に実施したバンディングで足環を付けたものでした。繁殖して家族でひきつづきこの森で生活しているようです。
リターンが入るとなんだか本当に感動します。こんな小さな鳥が生きていることを実感できるからでしょうか。
ほかにもこんな鳥が

特定外来生物に指定されているソウシチョウです。
ありがたくない属性ですが、美しさは格別ですね。
今年のバンディングは秋が深まりきらない中での調査になりましたが、個体数も種類も上々の結果となりました。

できれば真冬にも実施したいなと去年と同じことを考えつつ、6日間の調査を無事に終了しました。
(生物担当学芸員 秋山)

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ひっつく現場

今日も早朝から鳥類標識調査を実施しました。
アオジという鳥が捕獲されて計測していたら、風切羽になにやらついています。

よーく見てみると、イノコヅチの果実でした。植物としてはこんなようすで実ります。

このあたりの林床に生育する代表的なひっつき虫です。そして、林床を動き回って活動するアオジがこの植物に触れるのは必然と言えるでしょう。

こうして鳥の羽にひっついて運ばれる動物散布ということがよくわかります。羽づくろいを頻繁に行う野鳥は、その日のうちにこの果実を嘴でこそぎ落とすはずです。落とされたその場所が生育適地なら万々歳です!
まさにひっつき虫のひっつく現場を目の当たりにしたようで、ちょっとトクした気分になりました!
(生物担当学芸員 秋山)

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地質調査日誌11/3 相模原市緑区牧野

11月3日,木曜日.晴れ

秋晴れの中,2日連続の野外調査です.紅葉も始まっています.

相模原市緑区牧野の小さな沢で礫岩や砂岩の分布調査を行いました.

砂岩(上)と泥岩(下)の境目です.

砂岩と泥岩の互層です.縦に割れ目が入っていて厚い方が砂岩です.

こちらは礫岩(上)と砂岩(下)の境目です.

礫岩には下の地層の砂岩の破片が多く含まれている部分もありました.

日向は厚いくらいでしたが,沢の中は日陰で寒かったです.

(地質担当学芸員 河尻)

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地質調査日誌11/2 相模原市緑区名倉

11月2日、水曜日.曇り.

約2ヶ月ぶりの野外調査です.相模原市緑区名倉で富士相模川泥流の地層の剥ぎ取り標本を作製しました。
泥流というのは、泥や砂礫と水が混ざったものが谷や川を流れ下る現象のことです。
富士相模川泥流は、約2万2千年前に富士山麓から桂川・相模川を流れ下った泥流です。

まず,剥ぎ取る面を鎌などを使って削って平らにします.

地層に直接剥ぎ取り剤(水と反応すると硬くなる薬剤です)を塗ります.

剥ぎ取り剤を塗った上に寒冷紗を貼り,さらに寒冷紗の上から剥ぎ取り剤を塗ります.

剥ぎ取り剤が固まったら,鎌やタガネを使って地層を剥ぎ取ります.寒冷紗を破らないように慎重に作業します.地層がやわらかければ鎌だけで剥ぎ取ることができるのですが,今回の地層は固く締まっており,主にタガネとハンマーを使って剥ぎ取りました.

剥ぎ取った地層です.

剥ぎ取った標本は博物館に持って帰ってから,薬剤が染み込んでいない余分な部分を洗い流します.

今回剥ぎ取った地層は,5年前にも挑戦したのですが,うまく剥ぎ取ることができませんでした.その時は地層に寒冷紗をピンで止めて,その上から剥ぎ取り剤を塗る方法でやってみたのですが,剥ぎ取り剤が染み込まず,地層が剥ぎ取れませんでした.今回は薬剤を変え,また,地層に直接剥ぎ取り剤を塗る方法でうまく剥ぎ取ることができました.

(地質担当学芸員 河尻)

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去年と違う秋

鳥類標識調査は去年も同時期に実施していますが、当然ながら、捕獲される野鳥の種類も去年とは違ってきます。そして、その動向はさまざまな環境の要因によって左右されるのかな、と思うところもあります。
たとえば、周囲の木々の色です。昨年のブログを見ると、ミズキがかなり黄色みを帯びているのがわかります。今年の写真は・・今日が予報に反してずっと曇りだったのでうまく撮れませんでしたが、ぜんぜんまだ色づいていません。一方で、こんな鮮烈な色に実っているものも。

ガマズミの果実です。昨年はこんなによく実っていなかったか、調査の頃にはすでに鳥に食べられていたか・・。
さらに、昨年はミズキの果実がわんさか実っていて、調査中にいろいろな鳥から紫色のフンをずいぶんと浴びました。そして、ミズキの果実が食べ尽くされると、鳥の数もすっと減ってしまったのを思い出します。ところが今年はミズキがほとんど実っていません。春のキアシドクガの大発生が影響しているのか・・。
そんな中、今日の一番はこちらです。

キビタキのオスです。英名Narcissus Flycatcher、水仙の色をしたヒタキ、という意味でしょうか。まさしく喉の橙色から黄色へのグラデーションは見事です。
明日は朝だけ雨予報。少し遅めの開始になりそうです。
(生物担当学芸員 秋山)

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