北八ツ再訪 その3 青空と紅葉

北八ヶ岳の秋、これで最後の写真アップとします。のんびりと静かな山歩きを演出してくれたのは、なんといっても穏やかなお天気でした。
ミドリ池から中山峠までの道すがら、一点の曇りも無い青空と天狗岳東斜面です。ダケカンバの黄葉が青空に映えます。

どこを歩いても真っ赤に染まっていた葉と果実、ナナカマドはやっぱり紅葉の女王だと思います。

こちらはナナカマドの赤を下から押し上げるように、コシアブラのレモン色の黄葉、そして背景にはシラビソの濃緑が縁取り、なんとも豪華な色合いを見せています。

葉形ではこちらも目立ちます。オオカメノキ(ムシカリ)のまん丸い葉の黄色と赤の入り交じった紅葉です。

ちなみに、オオカメノキの花芽(冬芽)はなんだかかわいい!

葉形としてはもう一つ、オオイタヤメイゲツの黄葉も見事でした。モミジ型と言えばそれまでですが、なんとなくまるっこいモミジ型の独特の葉形は、黄葉するとなんだかこんぺいとうを空に蒔いたようです。

今回はガツガツとピークハンティングはしませんでしたが、帰りに立ち寄った「にゅう」山頂(2352m)は、その名(乳)と標高のわりに鋭い岩が突き出て高山気分が味わえるピークです。眺望も絶景でした。手前にシラビソ林、奥には硫黄岳の爆裂火口。

そのにゅうからしゃくなげ尾根を下ると多く見られたのが、サラダドウダンの紅葉です。

「紅葉しそびれた」葉がほぼ一枚も無い、完璧な紅葉を見せてくれるのはツツジ科の得意技です。

さて、紅葉と言えばモミジです。やっぱり、この赤は強烈です。コミネカエデの紅葉は、燃えたぎる炎のような紅葉でした。

三日目午後、二日前に入った登り口まで下りてきて、パーティーの全員がうすうす気付いていたことをお互い口にしました。

一昨日より、明らかに紅葉が進んでいる・・。
もちろん、西に傾きかけた太陽がいっそう色を際立たせているということもあるでしょう。それにしても、私たちは自らのフィールド感覚を疑うことはできませんでした。この秋は晴天が少なく、気温が高めで紅葉はよくない・・そんな情報が天気予報などからちらちらと聞こえてきましたが、季節は進んでみなければわかりません。

ここにきて一気に進んだ山の紅葉を堪能できた今回の山行でした。
「来て良かった!!」
信頼できる仲間たちと共有できたこのシンプルな気持ちこそが、山登りの一番の幸せだと信じています。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 北八ツ再訪 その3 青空と紅葉 はコメントを受け付けていません

北八ツ再訪 その2 雲と幻日

今回は登る日(10/17)の午前中まで大雨だったのですが、昼過ぎに登り口に着いたらいつの間にか雨が上がり、どんどんと雲が切れていきました。
今回もいつもの登山パーティーで、行くところどこも雨というOさん、そして気分が乗っていれば間違いなくお日様とお友達というYさんというメンバーだったのですが、Oさんはちょっと風邪気味で本調子ではなかったためか、お日様の勝利となりました。すばらしいお天気の中、一度も雨具を使わずに済んでしまいました。午前中の気持ちの良い雲海です。

標高2400mから雲を見下ろすのは、ほんとうに気持ちがよい!
そして、2日目の午後は巻雲の見本市。一番高い空にできる雲である巻雲も、高山から眺めるとちょっと近くに感じられます。

上の写真をよく見ると、幻日が出ています。幻日とは太陽の両側、ハロ(主に内がさ)と同じくらいの位置にできる光の塊です。古くは小日(こび)とも言いました。

そういえば昨日(一つ前)のブログでご紹介したモルゲンロートも、もやっとした雲がいっそう色を濃くしてくれていました。

私たち黒百合ヒュッテの常連が「がま岩」と呼ぶ岩のシルエットは、黒百合平の一日の終わりを告げる風景です。

いよいよ次は、青空と紅葉の写真をアップします。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 北八ツ再訪 その2 雲と幻日 はコメントを受け付けていません

北八ツ再訪 モルゲンロートと山の鳥

休日と振替休日を利用して、北八ヶ岳を再訪してきました。個人的な山行なので細かいことはすっとばし、出会った風景や動物などをポンポンと挙げていきます。北八ヶ岳の中でも特異な空気に包まれた空間のミドリ池です。

こちらは二日目の朝、朝日が天狗岳東斜面に当たってモルゲンロート(朝日を浴びて山が赤く染まるようす)を見せてくれているところです。

ちょっと写真が小さくて見づらいと思いますが、ミドリ池の水面には、月が映り込んでいます。
そのミドリ池のほとりに立つしらびそ小屋に来ていたニホンリスです。

ゴジュウカラも忙しく枝を移動していました。

二日目に黒百合平へ上がると、美しいルリビタキのオスが出迎えてくれました。

ホシガラスは間近で見られたのですが、カメラの設定をいじる間もなく飛び去ってしまい、ちょっと白飛びした写真です。

何種類かの冬鳥にも出会いました。アトリが群れでナナカマドの果実を食べていました。こちらはメスです。

頭の黒ずきんがハッキリしているオスも。

さて、このところ「うえぇ」な写真でまわりの職員からも賛否両論をいただいていますが、今回もひとつ。
キシャヤスデです。

概ね8年ごとに大発生することが知られているヤスデで、かつてはそのたびに線路を覆い、勾配のきつい小海線をストップさせたことからこの名がついたそうです。今年は大発生の年のようで、麓から標高2000メートル以下の林内のいたるところで姿を見ました。
とにかく嫌われ者の生きものですが、ヤスデは森の生態系の中でとても重要な役割を果たしています・・・が、話しが長くなるのでここでは省略します。
次は風景と紅葉の写真をアップします。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 北八ツ再訪 モルゲンロートと山の鳥 はコメントを受け付けていません

相模原では味わえない!弥生時代の環濠集落 綾瀬市の国指定史跡「神崎遺跡」資料館見学

今日は博物館ボランティア「相模原縄文研究会」の研修として、この5月にオープンした綾瀬市の神崎遺跡資料館の見学を行いました。

資料館の外観・・・外壁に高杯土器のワンポイント発見!

神崎遺跡は約1800年前の弥生時代の遺跡で、周囲を溝で囲んだ環濠集落です。さらに出土した土器は、その95%が東海地方(浜松付近)の土器の形態と同じで、炉の位置など住居の形状も同じくその影響が見られます。これらのことから、東海地方の人が集団でこの地に移住したことを示す遺跡で、かつ環濠集落全体がほぼ完全な形で残っている点が評価され国指定史跡となり、現在綾瀬市による史跡整備が行われています。

東海地方からの移住を示す床面展示

実はこの綾瀬市の史跡整備には、陰ながら相模原市も協力しており、同じ国指定史跡の史跡田名向原遺跡公園、史跡勝坂遺跡公園の整備にかかわる資料などを提供したり、何度となく電話をいただきやりとりをしました。今日資料館を拝見し、多少なりとも参考になった所があったのではと感じましたので、大変うれしく思いました。

環濠集落の1/50模型

これから整備予定の野外部分

縄文研究会のみなさんも熱心に説明を聞き、次々と質問するなど非常に関心を持って見学していました。相模原ではほぼ確認されていない弥生時代の遺跡だけに、新鮮な思いで聞き入っていたようです。綾瀬市も以前は弥生の遺跡はほとんど確認されていなかったとのことで、今後相模原でも弥生遺跡発見の可能性はあるとの説明もあり、期待に夢をふくらませたりもしていました。

相模原でも弥生遺跡の発見が今後あるかも!?との説明

神崎遺跡の整備は、まだ完了ではなく、今後野外の整備を行うとのことです。竪穴住居の復元まではしないようですが、集落のようすがわかる住居跡の表示や、環濠の定期的な実物展示を行っていくとのことで、非常に楽しみです。時代は違いますが同じ史跡公園のある市として、今後連携事業などができればおもしろいと感じました。
みなさまも相模原では見られない弥生時代を体感しに、訪れてみてはいかがでしょう。

(歴史担当学芸員 木村弘樹)
(考古担当学芸員 中川真人)

カテゴリー: 報告, 学芸員のひとりごと | 相模原では味わえない!弥生時代の環濠集落 綾瀬市の国指定史跡「神崎遺跡」資料館見学 はコメントを受け付けていません

歴史講座 愛川町小沢城への下見

今日は10/29(土)から始まる歴史講座-長尾景春の乱とその関連城めぐり-の第3回目に探訪する高田橋の対岸にある愛川町の小沢城に下見に行ってきました。
今日にかぎって夏の暑さが戻ってきたようで、もう大丈夫かなと油断して対策を怠った蚊から手の甲にかなりの被害を受けました。(泣)

奥に見えるのが小沢城(左:新城 右:古城)

長尾景春の乱とは15世紀後半に相模原周辺が戦いの舞台として登場するもので、相模原の戦国時代の幕開けとも言える戦乱です。今回の講座では、初回に座学を行い、2回目に磯部城探訪、そして3回目に今日の小沢城の戦いの舞台となった地を巡ります。

小沢城(新城)の入口

今日の下見では当日講師をお願いしている愛川町郷土資料館の学芸員である山口さんに小沢城周辺を案内いただき、また地元の方のお話や中世石造物なども拝見させていただきました。

中世石造物と小沢城(古城)

小沢城の詳しいお話などは探訪の当日あらためて紹介したいと思います。
歴史講座はまだ定員に余裕がありますので、興味のある方は博物館ホームパージなどをご覧いただき、ぜひ申し込みください。

カテゴリー: おしらせ, 報告, 学芸員のひとりごと | 歴史講座 愛川町小沢城への下見 はコメントを受け付けていません

たそがれ

窓際の机でカタカタと事務仕事をしていると、視界の隅でゆっくり動くものがあります。
なんだかおもしろい写真が撮れそうだったので、ふだんはまず出入りすることのないテラスへ、窓を乗り越えて出てみました。

たそがれ時になにをたそがれているのか・・・ハラビロカマキリです。
いや、ただ下をのぞき込んで、進むべきかどうか考えているのでしょう。おもしろがって写真を撮っていたら・・

んだオラァ!と睨まれました。
そういえば最近、県内でもムネアカハラビロカマキリという外来種が侵入してきたとのことです。この個体はどうなのかなと下から見上げてみました。

相変わらず睨まれ続けていますが、外来種ではないハラビロカマキリでした。
しばらくじっとしていましたが、ゆっくり歩き始めるとどこかへ去っていきました。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | たそがれ はコメントを受け付けていません

白が目立つ庭

博物館の前庭ではいま、ホトトギスが満開です。
なぜか、博物館に植えられているのはみんな園芸用の白花品です。

以前はたしか、通常の花色のものもあったように記憶しているのですが、いつの間にか白花ばかりに・・。ホトトギスも年齢を重ねると頭が白くなるのかな?・・・・そんなわけありませんね。

真上から見るとなんだかよくわかりませんが、お行儀良く並んでいておもしろいですね。
ふと見ると、ダンドボロギクがきれいな白い綿帽子を作っていました。

この植物の花は、綿帽子よりもずっと地味です。

これで、開花しています。なんとも奥ゆかしいというのか、省エネというのか・・。
さて、またしても、うえぇ・・な写真を最後に一枚。

8センチくらいあったでしょうか。巨大なイモムシ!この色はなんだ??こんなヤツ見たことないぞ!と思ってよくよく見ると、この大ざっぱな排水ホースのような体つきと、オバQみたいな毛がポツポツと生えている特徴は、オオミズアオです。ふつうは黄緑色の体色をしています。残念ながら写真は無いのですが、成虫の蛾は青みがかった妖しげな白色の巨大な翅を持つ、美しい夜の妖精です(うまく白でつながりました!)。
蛹化前のイモムシはこのように体色が大きく変化することがあり、騙されますね。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 白が目立つ庭 はコメントを受け付けていません

巻雲 放射状雲

今日(10月14日)の夕方は、巻雲の見本市のような空が見られました。

一番高い空にできる雲である巻雲は上空の強い風の影響でめまぐるしく形を変えます。広い空に帯状に広がって、放射状雲となっています。
中央の下層には、高積雲の不透明雲がやはり放射状雲となっています。そのさらに左側は・・

巻雲のもつれ雲や、消えかけの肋骨雲などが見られます。
西の空は丹沢山塊への落日へ収束するような形の放射状雲ですが、反対の東側は、天体観測ドームに収束!

しばらく雲を眺めて写真を撮っていたら、夕日と交替に、月が姿を現してきました。

今日は気分良く夕闇を迎えられました!
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 巻雲 放射状雲 はコメントを受け付けていません

忍者に食べられる

博物館ではいくつかの種類の絶滅危惧植物を、系統保存のために栽培しています。そのうちの一つ、カワラノギクに水をやろうと近づいて見ると・・

葉にいくつも穴があいています。花芽を伸ばした先の柔らかい新しい葉もきれいに食べられた痕が!!
早速丹念に捜索をはじめると・・・見つけました!

どこにいるかわかりますか?種類まではわかりませんが、蛾のなかまの幼虫(イモムシ)ですが、彼らはまさしく忍者です。相当しっかり目を凝らして探さないと見つかりません。

ふだんはこうして葉の裏でじっとしています。まさに「隠遁の術」です。
お見事ではありますが、このままでは花芽まで食べられてしまうので、駆除させていただきました。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 忍者に食べられる はコメントを受け付けていません

昨日の貯金で 秋の丹沢主脈その2

このところ、観察会や野外調査など動き回る仕事が多く、それはとても充実しているし、写真もたまります。
でも、デスクワークもたっぷりたまります・・ということで今日は会議とデスクワークに明け暮れた一日。どんより曇り空ということもあってめずらしく写真を1枚も撮りませんでした。そこで、昨日(10月12日)の秋の丹沢の写真をもう少し。

登り口にたった一輪咲いていたホトトギスです。いつもながらこの花の不思議な造形にうなります。
こちらも秋の山を代表するキク科の植物、コウヤボウキです。自分と同じ名前のついた花は、あてるべき漢字がどうあれ、親近感がわきます

ちなみにコウヤボウキは荒野ではなく、高野です。ほかにはコウヤマキとかコウヤコケシノブとか・・
スギ植林地の林床にあったフタバアオイ。脳内に「じゃーーーん!カッカッカッカ」とBGMが鳴り響きます。

そう、「葵の御紋」のアオイです。あの紋章の名称は三つ葉葵ですが、ミツバアオイという植物はありません。
さて、なにか「うぇえ・・」という写真を入れないと気が済まない悪い癖があり、今回はこちら。スケールを入れた写真がぶれてしまって大きさがわかりにくいのですが、ゆうに20センチ以上はあるクガビルです。

ミミズを主食とする環形動物のなかまです。
じゃばらな全身を伸ばしたり縮めたり・・・
うぇえ・・
(生物担当学芸員 秋山幸也)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 昨日の貯金で 秋の丹沢主脈その2 はコメントを受け付けていません