秋の丹沢

今日はひさしぶりに相模原植物調査会のみなさんと秋の丹沢の植物調査に出かけました。
出発地点の大平(おおだいら)登山口で、調査会の山尾姉さん(先日の生きものミニサロンでクモ観察の指導をしてくれましたが、今日は植物調査員です!)がいきなり捕まえたのは、ニホントカゲでした。

なんて凜々しい!そういえばこの登山口へ来る途中に山尾姉さんが「ヘビだ!」と叫んで車を止めさせて観察したのは・・ジムグリです。

さい先良く爬虫類を観察しつつ、ヤマビルだらけの登山道を上ると、ひたすら、シカが食べないテンニンソウの純群落です。やっと現れたのは、ヤマトリカブト。

それでもこの猛毒の植物の葉をシカが食べた痕跡がありました。大丈夫かな?シカ。
巨大なテングダケもありました。秋山の風景ですね。

セキヤノアキチョウジも、この季節の山を彩る花です。

サンショウの果実は赤と黒のコントラストが美しい。

この時期の山でよく出会うアサギマダラ。やっぱり美しい!

今日は特別暑かったのかもしれませんが、登山口から稜線に出るまで、ムンムンととても暑くつらい山登りでした。

稜線に出てからは標高1200mらしい涼しい風を受けて快適に歩けました。
ところで、昼食をとった黍殻山避難小屋の前の草原では消防関係のたくさんの人たちがいました。何が始まるのかと思っていたら、山岳救助訓練の真っ最中!救難ヘリが飛んできて、遭難者の救護訓練をしていました。

テレビなどでよく見る風景ながら、実際に目の当たりにするとヘリの高さや宙づりで救助するレスキュー隊員の無駄の無い動きに圧倒されました。山の安全をこういうふうに守ってくれている人たちがいることを改めて実感しました。
ところで今日は、ヤマビル多発地帯なのに、今回も誰も吸血されずに下山することができました。すごいですね!
(生物担当学芸員 秋山)

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タカの渡り 2016秋

野鳥は渡りという特異な季節移動をしますが、タカのなかまの中でも、サシバとハチクマは群で大規模な渡りをすることが知られています。
毎年、相模原市内の陣馬山(緑区)の山頂から渡りの観察をしてきましたが、今年はちょっと別の地域の渡りも見てみたいと思い、休館日を利用して南足柄市の矢倉沢に行ってきました。

矢倉岳を正面に見る観察ポイントは、タカの渡り観察のため。眺望を楽しむためにここを訪れる人には信じ難いことだと思いますが、富士山を背中にしてひたすら東側を凝視します。
このところの曇天雨天を経て、昨日から晴れているため、早速サシバが上昇気流に乗って渡りを始めます。旋回から、すっと西へまっすぐグライディングする瞬間は、タカの渡り観察の醍醐味の一つです。

私はこの瞬間、理屈ではなく心が揺さぶられるような感覚にとらわれます。数千キロにおよぶ旅の節目に立ち会った感動、とでも言いましょうか。
こちらは、改めて上昇気流をとらえて高空へ上がろうと頭上で旋回を始めた個体です。

そして、サシバ以外にも渡る猛禽類が見られます。今日はツミのメスも近い空を滑空していきました。

ほかにも遠すぎて写真には撮れなかったけど、クマタカの悠然とした飛翔も堪能しました。
細々した日常のあれこれを忘れさせてくれる一日でした。
(生物担当学芸員 秋山)

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有害生物調査−殺虫剤散布

今日は休館日ですが,通常の有害生物調査に加えて殺虫剤散布を行いました.
開館日にはできないので休館日に実施しました.

有害生物調査の結果,害虫が発生した部屋に殺虫剤を散布しました.大型収蔵庫,考古収蔵庫,実習実験室,整理作業室に殺虫剤を散布しました.

まずは出入り口のドアの隙間を目張りします.

ガラス面やパソコンなどは殺虫剤がかからないようにビニールで覆います.

殺虫剤を噴霧し部屋に充満させ,数時間放置します.

今回発生した害虫は博物館資料に直接ダメージを与えるものではありませんが,そのままにしておくと深刻な事態を引き起こす可能性もあります.そうならないよう,日頃から対策をしておく必要があります.

(地質担当学芸員 河尻)

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生きものミニサロン クモの不思議

今日(9/24)は毎月第4土曜日のお昼恒例の「生きものミニサロン」を実施しました。今回のテーマは、コレ!

クモです。博物館の建物のまわりには、たくさんのクモが住んでいます。生きものの中でも、圧倒的に「ニガテ」と言われてしまうことの多いなかまですが、よく見ると不思議と素敵がたくさん詰まった生きものです。
まずは、近くて遠い存在であるクモの絵を参加者のみなさんに描いていただきました。

足は何本だっけ?頭と胴体は・・・

しっかりと描いてくれました!

その絵を持って、雨のぱらついてきた野外へと出ます。外で見られる中でも一番大きなジョロウグモで、絵が正確に描けたかどうかの答え合わせをします。今回は、クモが大好きなサポートスタッフの山尾姉さんが観察のポイントを説明してくれました。

クモはなんと、頭部と腹部しかありません。そして、8本の足が出ているのは、すべて頭部から!山尾姉さんが直筆のイラストで解説してくれました。

さらに、お隣の樹林地で見つけたゴミグモのなかまを観察したり、

どこにゴミグモがいるかわかりますか?こうしてゴミを集めて自身をカムフラージュしているそうです。

クワの木の上にいたアリグモのなかまも観察しましたが・・みなさん「アリにしか見えない!!」と驚いていました。ご丁寧に、一番前の足を触覚に見せるような動きをして6本足で歩いているかのようにふるまいます。完璧な擬態です。下の写真は大きなあごを持つオスで、左側が頭部です。実際に観察したのはあごが目立たないメスだったので、さらにアリそっくりでした。

雨がだんだんと強くなってきましたが、お構いなしにアリグモの観察をしてくれたみなさんの興味シンシンのお顔を見て、こちらも嬉しい気持ちで終了しました。
(生物担当学芸員 秋山)

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黄色としましま

今飼育しているカイコは、ちょっと、というか、かなりの変わり種ばかりです。

何が変わっているかわかりますか?色がヘンですよね?これは写真の撮り方が悪くて色がヘンなのではありません。
体色が黄色い品種なのです。そしてこの品種「lem Nd-s」の出す糸は、繭を固める糊成分であるセリシンが無いそうです。なので、繭はオブラートのような半透明の薄い仕上がりだとか・・。熟蚕になるのが楽しみです!
そして、lem Nd-sと隣り合わせのシマシマ模様の蚕は、「青熟×Zey」。

こちらは細い横縞模様が出る品種です(繭色は黄色です)。
こうした遺伝系統の形質は、日本で発展し、世界をリードした蚕遺伝学において実験用に作出され、守られてきたものです。特徴的な(目視できる)形質を持つことによって、交配実験による結果がわかりやすく出るためです。
これらはたくさんある変異種のごくごく一部です。蚕遺伝学、奥深いです!
(生物担当学芸員 秋山)

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北の大地のかけら

昨日、札幌から帰ってきて、今日は休館日ということもあり、撮影した写真を整理しました。
ここまでアップしてきた写真以外にも、パッと見楽しい写真があったのでアップします。まずは、青いダンゴムシ!

私はよく知らなかったのですが、ある種の菌類に感染するとこんな色になってしまうとか!驚きです。
菌に感染といえば、これにはビックリしました。

ボーベリア菌に感染したハサミムシです。こうして菌に侵されて植物の茎の上の方で死に絶えている姿は、カミキリムシなどによく見られます。しかし、そもそも地上を徘徊して生活するハサミムシのこんな姿は初めて見ました。
こちらは初日に設定を間違えて真っ暗な写真を撮ってしまい、地団駄踏んだものですが、画像処理をしてなんとか写っているものを浮かび上がらせることができました。ウトナイ湖のノゴマです。

こちらは円山の立ち枯れた木のキツツキ穴ですが・・・

よく見ると、一つ一つにオニグルミがガッチリ挟み込まれています。

さがみはら動物標本クラブのメンバーに問い合わせしたら、すぐに「エゾリスのしわざでしょう」と返事がありました。これを貯食と言えるのかどうか・・。
最後にもう一つ。北大のすぐお隣で、珍しいヒルガオを見つけました。白花です。

これはもう北海道だからとか、ぜんぜん関係ないのですが、ヒルガオ科好きとしてはたまらない逸品です!
歩けばなにかおもしろい写真が撮れるのが、北海道でした。また違う季節にじっくり歩きたくなる、北の大地でした。
(生物担当学芸員 秋山)

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日本鳥学会札幌大会(最終日)

今日は16日から行われてきた日本鳥学会2016年度大会の最終日でした。学会賞受賞講演やシンポジウムが行われましたが、今日も早起きをして自然観察をしたようすから。

札幌市郊外にある野幌森林公園です。ある意味、北海道らしい光景。シラカバとセイタカアワダチソウの競演です。
林内に入ると、トチノキやカツラ、ハリギリなどの広葉樹の大木が目立ちます。

期待したクマゲラには出会えませんでした。後ろからお散歩に来ていた、おそらくご近所の方が「さっきいたよ」。ムムム!さっき通過した場所なのに!そんな簡単に見ることができてはいけない鳥ですね。
それでも、関東では少ない鳥であるオオアカゲラをじっくり見られました。すごい勢いで木を叩いていて、木屑が飛び散っています。

こちらは関東でもよく見られますが、ゴジュウカラです。木の幹をタテでも真横でも、逆さでも動けます!

同行したOさん(超雨女)のおかげで想定外の雨にも少し当たりましたが、気持ちのよい探鳥でした。
おっと、大会しめくくりのシンポジウムのようすも少し。

発表のディスカッションだけでなく、いろいろな研究者やフィールドワーカーたちと交流できてとても充実した大会でした。
明日からふたたび地道にフィールドワークにいそしみたいと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

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日本鳥学会札幌大会(3日目)

今日は日本鳥学会の3日目。今日も口頭発表とポスター発表とみっちりディスカッションが行われていますが、そのようすは絵的に毎日ほぼ変わらないので、朝早起きして出かけてきた札幌円山公園のようすを。

やっぱりエゾリスです。先日のウトナイ湖でのシマリスとはまた違ったかわいい姿を見せてくれました。
そして、本州では非常に限られた場所でしか見られない鳥、キバシリです。

シジュウカラやハシブトガラの混群に混じって幹を行ったり来たりしていました。
円山登山道沿いには八十八観音がまつられています。エゾトリカブトが文字通り、花を添えていました。

鳥学会はいよいよ明日、公開シンポジウムなどを行って閉幕となります。
(生物担当学芸員 秋山)

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博物館実習(歴史)&“ブラタイマ”展示解説

歴史分野の博物館実習6日目の最終日、9/17(土)から始まった博物館実習生による「学芸員のタマゴがつくった展示〜平成28年度博物館実習生展示〜」の歴史分野の展示解説を行いました。
展示テーマはずばり“ブラタ〇リ”ならぬ“ブラタイマ”で、原当麻周辺の史跡や関係資料などを紹介していまます。

たくさんの方が集まり緊張の中、縄文ピアスを説明

当麻市場天満宮の伝承と江戸時代の神仏混合を解説

展示解説は、緊張していたせいもあって少し時間オーバー気味でしたが、9/11(日)に行った「原当麻周辺ぶらり歴史さんぽ」で実際に現地解説を行った成果もあり、説明にはだいぶ慣れてきているようでした。また、お客さんからの質問や展示内容に関する話にも対応していました。

小さい子どもさんもいて、説明大変でした。

展示した貞心尼ご位牌の所有者も来館されさらに緊張!

今日で、9日間の博物館実習を終了しました。今回の実習では古文書の目録作成、探訪事業、古代アクセサリー作り体験、実習生展示とスケジュール的にはかなりきびしい状況での実習でしたが、みな頑張っていたと思います。雰囲気もたいへんよく、“ブラタイマ”が象徴するように、冗談の飛び交う楽しい実習でもありました。

「学芸員のタマゴがつくった展示〜平成28年度博物館実習生展示〜」は、10/16(日)まで開催しています。ぜひ、ご来館いただければ幸いです。

(博物館実習生 瀬野尾、田岡、中村、渡邊)

(歴史担当学芸員 木村弘樹)

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日本鳥学会札幌大会(2日目)

今日は札幌市の北海道大学札幌キャンパスで行われている日本鳥学会2016年大会二日目です。
今日からポスター発表も始まり、私も地域鳥類相の役割とそこから見えてくる興味深い解析結果について発表しました。

コアタイム(ポスターの前に発表者が立ち、発表とディスカッションをする時間帯)ではほぼしゃべりっぱなしで、意外と(?)関心を持っていただいことがとても嬉しかったです。そのため、発表のようすの写真はありません。
こちらは朝一番のプレナリー講演。満席で朝から熱気ムンムンでした。

日中は口頭発表会と前述のポスター発表コアタイム、夜はみっちり自由集会です。

よくもまあこんなに鳥づくしの時間が過ごせるものだと我ながら呆れます。
明日も鳥づくし。充実した毎日です。
(生物担当学芸員 秋山)

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