引き出しをつくる植物観察

今日は午前中、神奈川県西部、大井町の農業体験施設「四季の里」で植物観察法の講習を行ってきました。事前に室内で、植物の生物学的特徴や分類、形態のお話をしました。

と書くとたいへん専門的なカタイ話をしたように聞こえますが、そうではありません。むしろ、名前から入るよりも、まずはよく観察をして、特徴を見つけて、その特徴の「引き出し」を作っていきましょう、という提案をしました。
外へ出て、さっそくじっくりと観察をしました。まずは花には大きく分けて左右対称のものと、放射状のものがあることを観察します。それぞれが花の特徴の引き出しです。

シロツメクサ、コメツブツメクサ、カラスノエンドウといったマメ科の植物を観察して、花が左右対称の引き出しに入ることを観察。オオイヌノフグリも、一見すると放射状ですが、じつは左右対称です。
さらに、ニワゼキショウの花を観察。こちらは放射状ですが、葉を見ると葉脈が平行です。これはユリやイネのなかまの単子葉類に共通の特徴です。これも平行脈という引き出しです。

クリの木の下でタンポポを分解して小花のつくりを観察。5枚の花弁が合わさってひとつの舌状花を作っていることを確認しました。これは複雑な構造でかなり難しいのですが、その難しさこそがキク科という巨大な引き出しの特色でもあります。
最後に、植物の分類の引き出しにキノコが入っていないことについてお話しました。植物でも動物でもない菌類、それがキノコの位置づけです。

短い時間でしたが、すばらしい好天に恵まれてみっちりと植物観察ができました。
(生物担当学芸員 秋山)

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鳥の羽根展にむけて5/7 大きな羽根

今日は動物標本クラブのメンバーと市内田名のとある牧場、「スマイルオーストリッチ」を訪問しました。鳥の羽根展に向けた重要なミッションを遂行するためです。
黒豚のカリーナちゃんがお出迎えしてくれました。

動物との触れあいを楽しんでいるわけでは決してありません。重要なミッションです。

カイロトゲネズミのかわいらしさのあまり感動の歓声をあげたりはしていません!重要なミッションです。

そしてそのミッションとは・・

この牧場の主役であるダチョウの羽根を、鳥の羽根展のためにいただくことでした!

美しい羽根です。鳥の羽根ということを忘れてしまいそうな造形です。
脇役のエミューの卵もありました。

ニワトリの卵と比べると大きさが歴然ですね。でも羽根ではないので、これは写真を撮っただけです。
時間を忘れてしまいそうなひとときを過ごし・・いやいや、重要なミッションが完了しました。
(生物担当学芸員 秋山)

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鳥の羽根展にむけて5/6 休館日にいろいろと

今日は祝日の翌平日ということで、博物館は休館です。
5/21にオープンする企画展「鳥の羽根 温かく、美しくまとうもの」の準備作業をじっくりやろうと出勤しています。先日、全面的にご協力いただいている羽根はかせのFさんと撮影した写真です。

身近なある野鳥の羽根です。
こんな美しいものも。

これも日本を代表する野鳥です。
さらには

これは、水辺で見られる野鳥です。
これらの写真は、展示コーナーのひとつ「この羽根、だれの羽根?」というクイズパネルのために撮影しました。ちょっと意地悪なのですが、答えは展示室にて!
さらに、部位ごとの羽根の名称を解説するパネルを作っているのですが・・

展示資料の一つであるトラツグミの翼を参考にしているのですが、羽根の重なり方はとても複雑です。

たとえば、小雨覆羽と中雨覆羽の重なり方の向きは逆になります。うっかり同じにして作図してしまい、Fさんから「違います!」ときっぱり指摘されました。
静かな館内でみっちり作業しています。
(生物担当学芸員 秋山)

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縄文ワークショップ 縄文服の試着体験に来てくれた児童に感謝感激!

今日は考古企画展関連事業のワークショップを博物館ボランティア「相模原縄文研究会」の皆さんの協力により開催しました。
多くの来館者に土器の塗り絵、土器のジグソーパズル、縄文服の試着などを体験していただきました。

その中で、特に感謝感激の嬉しかったことがありました。実は、4/22に歴史の授業の一環で当館近隣の弥栄小学校の児童さんたちが見学に来ました。

その際、「5/5には縄文服が着られるイベントがあるから来てね!」と宣伝したのですが、今日「縄文服を着たくて来ました!」という児童さんが来館してくれました。
かわいらしい模様の縄文服をまとい、勾玉などの首飾りをつけ、石斧を持って“ハイチーズ!”と記念写真を撮りました。ゴールデンウィークの想い出の一枚になってくれれば幸いです。

考古企画展は残りわずか5/8(日)まで開催です。
5/8の最終日には午後2時から各時代の担当学芸員による展示解説を行いますので、ぜひご参加ください。

(歴史担当 木村弘樹)

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5月の憂鬱

一昨日から、博物館に咲く白い花をいろいろとご紹介しました。
個人的なことなのですが、私は5月になると、ある白い花にどうしても憂鬱な気分にさせられます。
その原因は、ハゴロモジャスミンです。

以前にもちょっと書いたことがありますが、私はこの花の強く甘い香りがとても苦手です。最近普及して垣根などに植えられているため、徒歩通勤の私はどう道を変えても、どこかしらにこの花が咲いています。息を止めて歩くのですが限界もあり、悩ましいところです。
ちなみに、沖縄のさんぴん茶(ジャスミン茶)は大好きで、毎日のように飲んでいるのですが・・・我ながらこのちぐはぐな嗜好は意味がわかりません。
さて、カザグルマが今年はお客様の見えるところに咲いてなくて・・と書いたら・・

早速「相模原のカザグルマを守る会」の会長さんが開花している株を持ってきてくださいました。中庭に移植しました。株も増えて、来年はたくさんの花が咲くことでしょう。
そんな土いじりをやっていたら、カナヘビが

なにやってるの?という表情で(勝手な思い込みですが)顔を覗かせました。

ハゴロモジャスミンのせいで憂鬱な気分でしたが、カナヘビのおかげで気分は五月晴れになりました。
(生物担当学芸員 秋山)

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白い花、さらに三つ

昨夜の嵐が過ぎ去って、今朝は青葉が朝日を浴びて瑞々しく輝いていました。

博物館お隣の樹林地には、まるで妖精の舞台であるかのような空間がありました。

さて昨日、博物館で咲いている白い花を二つ、カザグルマとシロバナタンポポの写真をアップしました。
今日はさらに3種類、ご紹介します。ミズキは新緑がとっくに進んで、もう花をつけています。

昨日ご紹介したカザグルマよりも、こちらの方が正真正銘、風車の形をしています。テイカカズラの花ですが、まさか風を受けてクルクル回転するわけでもないのに、回りそうな形をしています。

駐車場のハリエンジュも花房が垂れ下がっています。つぼみは天ぷらなどにすると甘みが際立つ山菜です(私はあまり好みの味ではありませんが)。

お天気にまかせて外を歩き回りたい衝動にかられますが・・・企画展の準備があるのと、連休でお客様がたくさん来られている中でぐっとこらえています。
(生物担当学芸員 秋山)

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博物館に咲いている白い花ふたつ

今年もカザグルマが咲きました。

といっても、いつものように中庭には咲いていません。写真の花は一般の方が入れない場所に置いてあるプランターで咲いたものです。昨年、中庭の植栽木の選定をちょっと強めにした関係で、カザグルマのつるも切りました。カザグルマは前年までに延びたつるに花芽を付けるので、いま、青々とした新しいつるを伸ばしている中庭の株は来年に花は持ち越しです。
もう一つ白い花を。

シロバナタンポポです。春先にもお隣の樹林地に咲いている花をご紹介しましたが、今はもっと見やすい場所で、博物館の駐輪場と建物の間の通路脇に咲いています。「タブノキ」と樹木プレートがかけられている木の右下です。
次々といろいろな花が咲き、虫なども出現してきています。
(生物担当学芸員 秋山)

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スズメとカラスの間のはずでは・・

春の河原や畑のまわりなどで並んで咲いていることがある、マメ科の野草。
花が1センチほどで大きめのカラスノエンドウ(別名ヤハズエンドウ)と、

3,4ミリメートルほどのスズメノエンドウ(下)です。

そしてこの2種の中間の大きさなのが、カスマグサ(カラスとスズメの間という意味の洒落た和名)です。色合いも中間くらいの濃さですね。

カラスノエンドウとスズメノエンドウの雑種起源ではないかとさえ言われてきたカスマグサですが、最近、植物の情報交換を行っているメーリングリストに、ちょっと驚きの話題提供がありました。この仲間のDNA分析から系統解析を行った海外の論文によると、スズメとカラスに比べて、カスマグサはちょっと遠い類縁関係にあり、どちらかというと、さやえんどうなどに近いという結果が出ているそうです。
もちろん、この論文の結果のみで系統が確定するわけではないのですが、私も種分化の例として観察会や講座などのネタにしていたのが、少し考え直さないといけないかなと思っています。
中間的な形質と思い込んでいたのですが、そう言われてじっくり写真を見ると、花の形態や構造が確かにちょっと異なるようにも見えます。思い込みというのはやっぱり科学的ではないですね。
(生物担当学芸員 秋山)

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地質調査日誌4/24 山梨県山中湖村〜大月市

4月24日、日曜日。曇り時々雨。

山中湖と桂川の上流へ調査に出かけました.相模原地質研究会と首都大学東京の学生さんと一緒です.

山中湖は相模川・桂川の源流です.

山中湖の砂はほとんどが富士山の溶岩の破片でできているため,湖岸の砂浜は焦げ茶色をしています.

午前中は山中湖畔の砂の調査をして,午後からは今から約1万5千年前に桂川・相模川を流れ下った泥流の調査をしました.
この泥流は富士相模川泥流と呼ばれていて,相模原市まで流れ下ったことが確認できます.

都留市夏狩の柄杓流川で富士相模川泥流堆積物が見られます.
柄杓流川右岸の太郎・次郎滝がかかる崖はほとんど全て富士相模川泥流堆積物でできています.

次の目的は大月市富浜町鳥沢の富士相模川泥流堆積物です.
行ってみたら,法面補強されていて全く露頭を見ることができなくなっていました.
工事が始まっているとの情報は得ていましたが,少しでも見ることができればと思って行ったのですが,残念!

下の写真は2004年12月の同じ場所です.この時はしっかりと富士相模川泥流堆積物を観察することができました.

また一つ露頭がなくなってしまいました.少しでも見られる場所がないかと周辺をうろつきましたが,見つからず,残念な気持ちのまま帰路につきました.

(地質担当学芸員 河尻)

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丹沢の麓

今日は相模原植物調査会のみなさんと、緑区の丹沢山麓へ絶滅危惧種の現況調査に行きました。沢沿いに山へ入ると、砂防堰堤の堆砂地に見事なカツラの木がありました。

スギの植林地を登り、目的の絶滅危惧種を探して急斜面をくまなく歩き回ります。

途中、アカシデの新緑に見とれました。

いつもながら、その絶滅危惧植物が何かというのは公開できず、申し訳ありません。県内で現在自生が確認できているのはこの場所だけ、というレベルのものなのです。
そのかわり・・タチキランソウの濃厚な藍色に出会いました。

帰りに寄った滝の脇をおそるおそる登ると・・

滝をバックにハルユキノシタが咲いていました。

絶滅危惧植物も順調に株数を増やしているようで、ちょっと安心しました。
(生物担当学芸員 秋山)

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