地質調査日誌3/21 三浦市城ヶ島

3月21日、月曜日。雨のち晴れ。

三浦半島先端の城ヶ島へ,相模原地質研究会のみなさんと一緒に地層の観察に出かけました.
城ヶ島には,いろいろな地層の“模様”が見られます.

城ヶ島のバス停近くに崖には,大きさも形も様々な穴が空いているのが見られます.これは海岸沿いの強い風に岩石がさらされて風化してできたものです.

城ヶ島の西側に見られる地層はほぼ垂直に立っています.もともと水平に堆積した地層が後の地殻変動で,垂直近くまで傾けられたものです.

上の写真の中央部分はよく見ると,縞模様が乱れてグニャグニャに曲がっています.この部分は写真の手前側にもつながっており,近づいてみるとこんな感じです.これは地滑りなどで地面が滑り動いた時にできます.

城ヶ島の南側の地層は緩やかに傾いています.

黒い地層には下の方ほど粒が大きく,上の方に向かって少しづつ粒が小さくなって堆積しているものもあります.

赤みをおびた二枚の地層は縞模様が乱れています.地層が固まる前に,地層の中に含まれている水が抜けたり動いたりしてできます.

中央の白い地層の上端部が燃え上がる炎のような形をしています.地層が固まる前に,重みで上の地層が下の地層に落ち込んでできます.ここではさらに,地層が固まった後で逆断層によって地層が断ち切られている様子も見ることができます.

地層の中には,昔の生き物の巣穴など,生活の痕跡の化石が見られることもあります.

他にもまだまだ,地層の模様や積みかさなり方,断層などを見ることができます.

このような模様などは,地層ができる時の様子やその後の地殻変動など,城ヶ島の地層ができる時から現在までの歴史を物語っています.

(地質担当学芸員 河尻)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 地質調査日誌3/21 三浦市城ヶ島 はコメントを受け付けていません

踊る新芽

博物館中庭には、いろいろな樹木が植えられています。
建設当初に紛れ込んでしまったのか、なぜか低地には無いはずのミヤマガマズミがあります。その冬芽がいま、崩芽して踊っています・・

かなりサイケデリックです。春のパワーから強烈なインスピレーションを受けているようです。
そんな雰囲気の新芽がほかにも。ニガイチゴです。

さらにカザグルマ。

イロハモミジも。

こちらは踊っているといより、土の精霊が頭をもたげて・・・

いえいえ、ヤブレガサの芽生えです。ちょうどいま、その名の由来そのものの姿が見られます。

あっという間に姿を変えてしまう新芽の姿を眺めるのが日課となっています。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 踊る新芽 はコメントを受け付けていません

充電観察会

昨日の休館日と今日はお休みをいただいて、八王子で行われた公益財団法人日本自然保護協会の自然観察指導員講習会のお手伝いをしてきました。

お天気にも恵まれた二日間、みっちりと実習と講義を組み合わせたプログラムに、北は北海道、南は沖縄県石垣市から60名以上の方が参加されました。

「自然観察から始まる自然保護」を合い言葉に、自然のしくみを理解したり、自然への愛着を持つための理念、そしてさまざまな手法を紹介してきました。今回私が提示した新ネタは「どんぐり問題」。

自然に関わる活動をしている私たちにとって深刻で重大な案件であるこの問題・・・といっても、このネーミングは今朝の下見で思いついたものですが・・。受講者のみなさんにとてもウケました。どんな問題かは、いつか博物館でもご披露いたします。

平日開催だったためかふだんからこうした活動をされているベテランの受講者も多く、受講の成果を発表するミニ観察会では私も参考になるような斬新なアイデアがたくさんありました。そしてなにより、自然観察会がこんなに楽しいんだ!ということを再発見できました。
講師なんていう役回りではありましたが、たっぷり充電できた2日間でした。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 充電観察会 はコメントを受け付けていません

白いタンポポ

さきほど、博物館おとなりの樹林地を巡視してきました。次々に咲く早春の花を見逃してはいけないので、地面に目を這わせるように探索しながら歩きます。
目立つようで意外と目立たない花がこれです。

タンポポみたいだけど、花弁が真っ白。じつは中国地方以西の方には“ごくふつうのタンポポ”である、シロバナタンポポです。この樹林地ではぽつりぽつりと毎年1~2株が咲きます。どこからか種子が飛んできたのでしょうが、増えることもなければ、絶えることも無く毎年咲いています。関東地方では国内移入種の扱いになりますが、まあ害もなさそうなので静かに見守っています。
満開なのは、オオアラセイトウ(別名ショカッサイ、あるいはハナダイコン)です。こちらも外来種です。

そして、4月に向けてこの樹林地のスターであるフデリンドウは・・まだ時期には早いのですが、つぼみの状況を確認します。
ありました!

まだ小さい!少し日当たりの良い場所では・・

こちらは今月末には咲きそうです。
樹木の方も、だいぶ動きが見えてきました。この樹林の優占種であるミズキは側枝がすでに崩芽して、展葉しかけています。

こちらはサンショウです。花芽も同時に出てきています。

こちらはサクラ。あれ?まだ東京の開花宣言も出ていないのに、葉っぱが!

これはヤマザクラなので、葉が少し先に開きます。
春が加速してきました!
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 白いタンポポ はコメントを受け付けていません

神奈川県植物誌2018に向けて

今日は神奈川県立生命の星・地球博物館で神奈川県植物誌の執筆者会議が行われました。

神奈川県植物誌とは、県内に生育する植物(維管束植物)をすべて扱い、その分布状況から分類上の位置づけに至るまで記載することを目的とした文献です。地域の植物戸籍簿と言えばよいでしょうか。相模原市立博物館は県北区域の拠点としてこの壮大な活動に参画してます。

神奈川県は伝統的に生物の生息・生育情報がしっかりと記録されてきた地域です。その伝統を引き継ぐ神奈川県植物誌も、1988年版、2001年版と作成され、一貫して標本主義に基づく調査が継続しています。この組織的な調査活動が30年以上にわたって継続しているのは、全国随一といえます。
2018年の刊行を目指して、本格的なデータとりまとめと解析、執筆・編集作業がこれから始まります。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 報告 | 神奈川県植物誌2018に向けて はコメントを受け付けていません

残念だけど、これも自然

先日からこのブログでもご紹介してきた営巣中のエナガのその後です。
昨日(3月17日)のお昼休みにようすを見にいくと、しんと静まりかえっていてちょっといやな予感がしました。巣のある木を双眼鏡で見ると・・ありません。心の中で「あーあ」と思いながら根元付近を探すと・・

ありました。崩れ落ちたというより、カラスかなにかにつつき落とされた感じです。小さな体の2羽で懸命に作っていた姿を思い出すとやるせないのですが、これも自然です。カラスだって、生きていくために必死です。
卵の殻などは落ちていなかったので、おそらくはまだ抱卵前だったと思いたいところです。エナガの労力を無駄にしないためにも、落ちた巣は資料として保存することにしました。

ブログでもお伝えしたふわふわ素材がいっぱい詰まっています。やはり、テイカカズラの冠毛をたくさん持ち込んでいます。

エナガの巣といえば、鳥の羽根。ちゃんと内装に使われていました。これはキジバトの雨覆羽のようです。

今年の初夏に、羽根にまつわる展示を企画中です。急遽、この巣を展示資料に加えることにしました。使われている羽根について、詳細に調べてみたいと思います。
エナガのつがいが、別の安全な場所で巣作りを再開していることを祈ります。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 残念だけど、これも自然 はコメントを受け付けていません

木の表情、木の歴史

昨日(3月16日)の植物相調査では、すでに咲き始めたいろいろな花に出会いました。
たとえば、タチツボスミレ。

博物館のまわりに咲くものよりもずいぶんと濃い色をしていますが、同じ種類です。
じつは、花以外にもいろいろなものを見て歩きました。その一つは季節的にもうすぐ見られなくなる冬芽です。
こちらはサンショウです。

なんだか木が自己主張しているかのような表情です。
もう崩芽しはじめていたサルトリイバラです。

子どもが飛び跳ねているような形は崩芽の途中に見られます。
冬芽と葉痕には木が一時見せる表情のようなものがあり、見ていてとても楽しいです。
こちらは冬芽では無く幹そのものの存在感があるクヌギです。

伐採されてひこばえになって伸びた二本の幹が、癒着しています。なぜ癒着したのかはわかりません。癒着部分に大きなこぶがあるので、なにか癒着しなくてはいけない要因があったのでしょう。
そこに、今度は癒着を阻止するかのようにフジのつるがのっかります。
木の歴史を体現していますね。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 木の表情、木の歴史 はコメントを受け付けていません

早春の山道

今日は相模原植物調査会のみなさんと緑区の山地へ植物相調査に行きました。
すでに咲き始めているアブラチャンに・・

まだつぼみのクロモジ。同じクスノキ科で枝を強くつまむと芳香がします。

ほかにも尾根沿いではダンコウバイが満開でした。
足下ではヒメウズも清楚で可憐な花を咲かせていました。

ありがたくないスギの花も。

ちょっと場所を移動して、この地区にしか見られない花を見に行きました。

あまりにも突飛な分布なので、国内移入種なのかちょっと迷うセリバオウレンです。

どっちにしても、とにかく記録しておくことが大切です。
早春の山はほかにもいろいろと見所があり、楽しい野外調査となりました。
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: 学芸員のひとりごと | 早春の山道 はコメントを受け付けていません

カイコの成果

今日夕方、大野台中央小学校3年生の先生が博物館を訪れて下さいました。
素敵な贈り物を届けに・・。

昨年、博物館から蚕種を提供し、授業にも行ってカイコの学習をお手伝いしました。1年間の学習の成果の一つとして、メッセージを書いてくれたのです。
先生に伺ったところ、カイコから発展して中庭の環境がどうしたら良くなるかなど、生きものの暮らす場所について考える学習に発展したそうです。
なんとすばらしいこと!メッセージにも、カイコと向き合った日々、命について考えたこと、一所懸命世話をして大きな繭になったことなどしっかり書いてくれてありました。
今年もカイコ、やるぞ-!と決意新たにしました!
(生物担当学芸員 秋山)

カテゴリー: オカイコサマ | カイコの成果 はコメントを受け付けていません

「かんじる学校」を感じました!

今日、3月13日は、(公)相模原市民文化財団との共催事業、「かんじる学校」を実施しました。

【お知らせ】かんじる学校 こどものための音楽ワークショップ へんてこ楽器で星の音をつくろう!



市民文化財団がシリーズで開催している事業「かんじる学校」のうちの1回を、今回は博物館との共催事業として実施したものです。
広報1月15日号に掲載したところ、文化財団に応募や問合わせが次々と入り、結果的に2倍以上の倍率となったとのこと!

博物館に集合していただきましたが、たくさんの楽器や、素敵な先生、スタッフのみなさんの醸し出す雰囲気で、大会議室はいつもとは全然違う様相です!

リズム遊びなどで雰囲気がほぐれたところでプラネタリム鑑賞。
11時からのこどもプラネタリウムをご覧いただきました。

番組紹介


その後、プラネタリウム番組の印象が薄れないうちにイメージ画を思い思いに描いていただきます。
そして、いろいろな楽器(炊飯釜も!)を選んで、星空をイメージした音楽を作り出していきます。

みなさん、あれこれ考えるのも、とっても楽しそう。

グループごとにテーマをみんなで考えたそうですが、さがぽんをイメージした作品を考えてくれたお友だちも!

発表会では、宇宙の映像をバックに、保護者のみなさんや一般の方にオリジナルのメロディーを披露しました。
講師の棚川先生、スタッフのみなさん、文化財団のみなさん、そしてもちろん参加者のみなさん、今日は本当にありがとうございました。
来年度もこのような事業を開催できるかどうかは未定ですが、みなさんに喜んでいただける、しかも、博物館ならではの事業を企画できるといいなと思っています。
(企画情報班 佐々木)

カテゴリー: 今日の博物館, 報告 | 「かんじる学校」を感じました! はコメントを受け付けていません