冬のツバメ

今日、南区下溝の相模原沈殿池に行くと、上空をツバメが飛んでいました。

関東では春の使者とも言われるツバメですが、じつは県内でも沿岸部などでは結構な数のツバメが越冬します。相模原ではちょっと珍しい光景ですが、沈殿池のあたりは冬でもユスリカなどがかなり発生しているので、食べ物には困らないのでしょう。
近くの畑ではハクセキレイが地上で食べ物探し。

この鳥はこちらがじっとしていると、ずんずん近くまで寄ってきます。日当たりのよい場所に咲いているホトケノザをつついて何か食べていました。何を食べているのかはわかりませんでした。

ホトケノザは春に目立つので春の花のようにも思えますが、じつはほぼ一年中咲く花です。
季節感のない写真だけでもつまらないので、マグワの枝にぶら下がっていたクワコの繭の跡を。

カイコの原種と言われるクワコは、クワの葉裏などに繭を作ること多いのですが、なぜかこのように、葉がすっかり落ちた後に繭の殻がよく枝にぶら下がっています。
なんとなく、雲の多い寒空に似合う光景でした。
(生物担当学芸員 秋山)

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本日から通常開館

博物館は本日、1月5日から通常開館となっています。晴天の穏やかな仕事始めとなっております。

さて、今年は干支が申(さる)ということで、あちらこちらにニホンザルの画像が見られます。
あまのじゃくを自認する身としては、それならばということで植物の名前の中のサルで仕事始めを飾りたいと思います。
まずは、サルトリイバラ。晩秋に真っ赤な果実をつけます。別名サンキライ。東日本の柏餅は、西日本の一部ではさんきらい餅になり、この葉でお餅を巻きます。

続いて、山に実るキウイフルーツ、サルナシです。果実の写真が見当たらず、こちらは花です。

ちなみにサルナシのつるはこんなに太くなります。らせんに巻いた巨木のサルナシ、生命力を感じますね。

もうひとつ、地衣類のサルオガセ。

うーん、暗くてよくわかりませんね。山の木の枝に垂れ下がるとろろ昆布みたいなアレです。
しかしなんだか季節感も無く、今ひとつですね。やっぱり・・

ニホンザルさんにご登場いただきました。
本年もよろしくお願いいたします。
(生物担当学芸員 秋山)

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カキとピラカンサ

ご近所の庭木にとまるムクドリの嘴がなんだか太いな、と思いました。

よく見たら、熟れたまま枝に残っていたカキの果実をついばんでいたのでした。

これはごちそうだろうとしばらく見ていたのですが、ちょっと不思議なことに気付きました。
どちらかというと、5羽以上のムクドリが夢中になって食べていたのは、隣に実るピラカンサ(トキワサンザシ)だったのです。

ギャーギャー大騒ぎしながら争うように食べています。ピラカンサは中国原産の園芸木で、このブログでも「鳥にあまり好まれない果実」と紹介しています。事実、残る年は早春まで真っ赤な果実が枝に残ります。
ところが、あるとき突然この果実が食べ尽くされることがあります。
ピラカンサの果実は小さな種子がびっしり詰まっていて栄養価が低く、おまけに青酸配糖体を含むため有毒です。そんな果実を競って食べるというのがよくわかりません。食糧難の折ならともかく、すぐ隣に栄養価満点のカキが熟しているのにです。
ヒヨドリも、公園などに植栽されているユズリハの葉(有毒)をむさぼるように食べることが知られています。この葉はほとんど消化されずにフンとして出てしまうのですが、これを食べる理由はいまだ不明です。ムクドリがピラカンサを食べる「理由」があるのか、興味深いところです。
(生物担当学芸員 秋山)

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元日

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
博物館は1月4日まで休館となりますが、この職員ブログはいつもどおりです。
今日は相模湾で野鳥を観察しました。海に出る前にカワセミに出会いました。これはさい先よいですね。

港湾に行くと、昨年もカイツブリの当たり年だった続きか、カンムリカイツブリが5羽ほどいました。ふだんははるか遠くに見ることが多いのですが、さすが港湾、間近で見られます。

スマートな印象のカイツブリですが、顔を正面から見るとなかなかファンキーです。

ユリカモメがチャポンと飛び込んだと思ったら小さな魚を捕らえていました。

野生動物は通常営業。なんだかほっとしました。
(生物担当学芸員 秋山)

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大晦日

今年も大晦日となりました。博物館は28日から年末年始休に入っています。
お正月の食材のタラバガニを見ながら、先日ネット上に出ていた記事を思い出しました。

カニと呼んで食べているけれど、食べている部分の脚がハサミを含めて4本。ということはカニのなかまではなくて、じつはヤドカリのなかまだという記事でした。
生きもの屋の中ではあたりまえの常識が、じつは世間一般ではトリビア的な話題になるのかという生きもの屋の世間ズレを感じさせられました。
ほかにも、宮中晩餐会などでよくメニューに上がる「燕の巣のスープ」。日本でツバメの巣といえばふつうは泥で作られたアレです。泥水のスープ?いやいや、料理に使うツバメはアナツバメの巣で、唾液分泌物のタンパクでゼラチン状に固まったものです。日本の種類ではアマツバメに近いものです。ツバメとついていますが、アマツバメとツバメは系統分類的にはまったく異なる分類群に属します。
ほかにも、ひょろ長く異世界の生きもののようなコウガイビル。数十センチにもなるこんなヤツに血を吸われたら・・と恐怖におののく人もいますが、コウガイビルはプラナリアのなかまで、血は吸いません。
だんだん大晦日にふさわしくない方面に向かってしまうので、このへんでやめておきます。

昨日の朝、高速道路を走っていたらきれいな光芒が出ていました。
年末年始も自然観察のネタを探しながら過ごしたいと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

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今年の最終日は、冬芽

今日は相模原市立博物館の今年最後の開館日です。明日は月曜日なので休館、12月29日~1月3日は年末年始休、1月4日も月曜日なので休館となり、次の開館は1月5日(火)となります。本年もご利用ありがとうございました。
午後から冬らしい寒空になってきました。年内開館最終日なので、なんとなく博物館の木々の冬芽をご紹介します。まずはミズキです。

大きくて立派な冬芽らしい冬芽です。次は、コブシ。毛むくじゃらで厚手のコートをまとっているようです。花の冬芽はもっと大きくて見栄えがするのですが、手の届くところにありませんでした。

ついこの間まで紅葉していたイロハモミジ。仲良く二つ並んで、ちょっとオシャレな感じですね。

こちらはコナラ。小さな冬芽がごちゃっと枝先にかたまっています。

ヤマグワは葉痕の上におにぎり形の冬芽。来春、またカイコのエサとして大きな葉っぱをつけていただきます。

中庭のミヤマガマズミ。葉と花と両方詰まった冬芽です。

もうすぐ閉館時間となります。博物館は来年1月4日までお休みとなりますが、このブログはその間も時々更新するかもしれません。自然界には暮れも正月もありませんので!
(生物担当学芸員 秋山)

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生きもの大好きミニサロン 鳥の足下を見る植物!?

今日は今年最後の「生きもの大好きミニサロン」を実施しました。
先日のブログで予告したとおり、クリスマスの翌日ということで、クリスマスカラーで鳥たちを“だます”植物を観察しました。

いかにも熟して美味しそうなアオキの果実(上の写真)、マンリョウやヤブランも・・
実際の果実の中身はどうなんだろう?と、参加者のお子さんたちに採集してもらいました。

指先で果実をつぶして中身を出してみると・・

出てきたのは、果実とほぼ同じ大きさの種子が一つ・・

ヒヨドリなど多くの野鳥が種子は消化できず、フンとしてそのまま出してしまいます。ということは、野鳥にとってほとんど栄養になる部分が無いのが、これらの「派手な」果実だったのです。
それに対して、ヘクソカズラの果実は枯れ草色にまぎれてあまり目立ちませんし、何より強烈なニオイを持っています。

実際にかいでいただきました。

思わず笑ってしまうほど強いニオイです。
でも、栄養価の高い果汁が含まれていて、ヒヨドリなどは夢中になってこの果実を食べます。
短い時間の中でしたが、そんな植物と野鳥のかけひきを見ていただきました。
最後に、下見をしているときに見つけた、樹木プレートの裏で越冬中のヤモリも・・・

さらに調子に乗ってヨコズナサシガメ亜成体の集団越冬も見ていただいたら

「ぎょえぇ~!」
順番を逆にすればよかったと思いつつ、今日も楽しくミニサロンを終了しました!
(生物担当学芸員 秋山)

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締めくくりはやっぱりお片付け

今年の年末年始は曜日のめぐりの関係で、博物館のお休みが長くなります。仕事納めの28日が月曜日、仕事始めの1月4日も月曜日だから休館日に挟まれた年末年始休となるからです。そんなわけで、いつもよりちょっと早めに年末の片付けなどをいろいろと進めています。
今日は動物標本クラブの年内最後の作業日でした。冷凍庫に入っていた標本を整理しながらあれこれ眺めたり、

作成した標本の仮置き場のお掃除をしつつ、来年早々に行うくん蒸のために箱詰めして移動したり。
でもやっぱり、標本作製作業もやりました。この日も標本師のワザにかぶりつきです。

事故死した猛禽類の消化管内容物から、えさ動物の同定をしながら盛り上がり、最後にお茶を飲みながら情報交換をして終了。
来年もまた楽しく活発に活動していきたいと思います!
(生物担当学芸員 秋山)

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国定公園として半世紀

今日は横浜の県民センターで「丹沢大山国定公園50周年記念フォーラム」が行われました。
会場は200名の定員がほぼ満員!

関東大震災で大規模な崩落がたくさん起きて、戦後の拡大造林、並行して昭和30年代の丹沢登山ブーム以降、丹沢の自然環境はそれをとりまく社会情勢と無縁ではいられませんでした。
今、私たちが県民の財産として丹沢の自然にどう向き合うのか、改めて考える機会となりました。ボランティアや大学、NPOなどさまざまな形で丹沢を調べる人たちのポスター発表もあります。

パネルディスカッションでは、研究者、登山関係者、博物館学芸員などさまざまな立場のパネラーがそれぞれに丹沢の諸問題とこれからの課題、未来への展望を語りました。

丹沢の北半分が相模原市域です。博物館は丹沢の問題を市民の問題として受け止める地盤を作っていかなくてはいかなければと改めて思いました。
(生物担当学芸員 秋山)

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クリスマスカラー

今日は12月22日、今年の冬至です。
柚子湯のことは先日のブログで書いてしまったので、今日はこんな植物の色について・・

マンリョウです。博物館の前庭でいま、真っ赤な果実をたわわに実らせています。3日後にせまったクリスマスのイメージカラーですね。
常緑樹であるマンリョウの葉の下にぶら下がるように実るこの果実の色には、意味があります。緑色を背景にして一番目立つ色は、赤です。これは色相環の「補色」の関係になります(正確には、赤と青緑が補色関係にあります)。つまり、種子を遠くへ運んでくれる鳥などの動物に「食べ頃だよ」とお知らせしているわけです。庭木としてよく見かけ、信じがたいほど大量の果実を実らせるトキワサンザシ(ピラカンサス)もそんな果実の一つです。

同じく博物館前庭でたくさん実っているヤブランは、色こそ派手ではありませんが、林床を被う常緑の葉の上にニョッキリとたくさんの果実を突き出しています。

ところが・・一見大盤振る舞いしているように見えるこの果実の主張が、鳥にとっては信じるに足るものでもないことがあります。
そのあたりの動物と植物の興味深い関係について、今週土曜日の「生きもの大好きミニサロン」でご紹介する予定です。12時から30分程度の、お気軽だけどちょっと深い自然観察、いかがでしょうか。どなたでもご参加いただけます。
(生物担当学芸員 秋山)

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