シャクチリソバ

今日は午前中、東京大学本郷キャンパスにある東大総合研究博物館で会議があり、出席してきました。
博物館の正面、道路側の植込みに、やたらと大きなタデ科の植物が旺盛に伸びています。シャクチリソバです。

妙な種名です。漢名の赤地利に由来するとか。12月も半ばを過ぎたのに、まだまだ開花しています。インドやヒマラヤ地方の高標高地に自生する外来種なので、寒さには強そうです。明治時代に薬用を目的に持ち込まれ、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)で栽培されたそうです。

残念ながらその後、薬用の目的も忘れ去られたまま野外へ逸出し、今では河川敷や畑などに広がってます。小石川と本郷は離れていますが、いつ頃からここで咲いているのでしょうか。

明治時代に小石川で育てられていた株の直系ではないかと、勝手に想像しながら古めかしい門を出て帰路につきました。
本郷の街路のイチョウの黄葉もそろそろ終わりそうです。
(生物担当学芸員 秋山)

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柚子

今日、相模原植物調査会会員の方から、ご自宅で実ったという柚子をいただきました。
机の上に置いてあるだけで、部屋中に柚子のさわやかな香りが広がります。

柚子といえば、冬至に柚子湯です。今年の冬至は12月22日なので、来週、忘れずに柚子湯に入れそうです。
冬至は、日中時間が短くなる「陰」から長くなる「陽」への転換日。でもじつは、日の入りだけ見れば、12月初旬を境に今すでに日没時間は遅くなりつつあります(そのかわり、日の出時間はこれから年始にかけてまだ遅くなりつつあります)。本格的な寒さもまだこれからですが、それでもなんとなく、気分が上向きますね。
(生物担当学芸員 秋山)

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林道の実り

今日は相模原植物調査会のみなさんと、今年最後の野外調査へ出かけました。場所は緑区のとある林道です。
植物は冬の装いですが、実りのようすもけっこう観察できました。こちらはクサボタンです。

近くに寄ってみると、なんだかアクティブな果実です。

スギの植林地の中にぼうっと光っていたのは、マメガキです。

渋い黒紫色に熟しているのは、スイカズラです。

こちらは実りではありませんが、ヤブデマリの季節外れの開花です。通常の5分の1くらいの大きさでした。

帰りがけ、地面に何か光るものが落ちているなと思ったら、ウラギンシジミでした。

葉裏などにつかまって成虫越冬する昆虫ですが、風かなにかで落ちてしまったのでしょうか。これも自然なので、写真だけ撮ってそのままにしておきました。
(生物担当学芸員 秋山)

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不当命名の植物

地面の上の草の多くがみずみずしさを失って枯れ草色になる中、妙に元気に花を咲かせている植物もあります。

花はかなり小さくて目立たないのですが、よく見ればかわいらしい花です。

この花の名前は・・ちょっとひどい名前なのですが、ハキダメギクと言います。
大正時代に日本に入ってきたとされる外来植物で、「ゴミ捨て場などによく見られるから」とその由来が紹介されています。だからってそれはないだろう・・というネーミングです。
この時期、西日に反射して黄金の輝きを見せるこの果実も、そんな植物の一つです。

ヘクソカズラです。あえて漢字で書くと屁糞葛・・さらにひどいですね。
この植物の強いにおいに由来するのですが、このにおいを悪臭と感じる人もいれば、わりといい匂いと感じる人もいます。良し悪しを一方的に決めつける不当なネーミングですが・・
一方で、この強烈な名前のおかげで記憶にとどまりやすいのも確かです。命名した人は確信犯とも言えるでしょう。ちなみに、別名はヤイトバナ。

上の写真は夏の開花のようすですが、この可憐な花を「灸(やいと)」、つまり、お灸をすえるようすに見立てたものです。
ところが今、生活の中でお灸(しかも「やいと」を使うやり方)を見ることがほとんどないため、「やいと」は死語になりつつあります。そうなると、意味が伝わりにくい名前より、ヘクソカズラはまんざらでもないのかもしれません。
ハキダメギクも、自然観察のネタとして重宝しています。
不当命名なんて、言えた義理ではないですね。
(生物担当学芸員 秋山)

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船上からの調査

今日は宮ヶ瀬湖で行われた水鳥の調査に参加してきました。ダム事務所に船を出していただき、船上から湖岸をたどって水鳥をカウントしていきます。

船に驚いて飛び立つオシドリの群れです。入り江状の湖岸で羽を休める水鳥にはちょっと申し訳ありませんが、湖内の水鳥全数を把握するにはとても効率のよい方法です。
毎年行われる調査で、ふだんはなかなか見られない位置からの観察なのでとてもエキサイティングなのですが、とにかく寒い!
・・はずでしたが、今日はとても穏やかな曇り空の日でした。水面もすっかり凪いでいます。

今年の特筆事項は、カイツブリのなかまが多かったこと。例年、いても1羽程度なのに、今日はこのハジロカイツブリが複数見られました。

カワガラスも湖岸に多く見られました。ふだんは渓流に多い鳥です。

猟期まっただ中のためか、ニホンジカの群れが安全を求めて湖岸に多く見られました。

こちらは昼食時にいったん上陸した公園で見られたハクセキレイ。

穏やかとはいえ、ずっと船上で湖面の風に当たっているとやっぱり冷えます。
今日は早めにお風呂で温まろうと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

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「ちゅうWALK!」ご当地キャラがお出迎え

今日は中央区区政施行5周年記念行事として行われた中央区魅力再発見ウオーキング大会「ちゅうWALK(ウオーク)!」に参加されたみなさんが、博物館へ立ち寄られました。そのお出迎えに、さがみん(相模原市マスコットキャラクター)と、こけ丸(中央商店街キャラクター)が登場!

みなさん、握手したり記念撮影したり。

時折小雨のぱらつく中、横山公園から道保川公園、淵野辺公園と歩き、博物館へ来られたのですが、博物館内もしっかりと歩いていただきました。自然・歴史展示室内では、銀河連邦ヒーローのサガミリオンが握手でパワーを注入!

このあとすぐに出発、JAXAで記念写真を撮影した後、鹿沼公園のゴールへと向かっていきました。
(生物担当学芸員 秋山)

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道端の紅葉

金曜日の嵐で、街路樹の黄葉のトリを勤めていたイチョウもだいぶ葉を落としました。

でも、嵐もお構いなしに、紅葉を続けているものもあります。たとえば、これ。

ものすごい色です。生け垣などに使われることが多いドウダンツツジです。枝にしっかりとついたまま紅葉して、ちょっとやそっとの風で落ちることはありません。

同じくツツジのなかまなのサツキの紅葉写真を撮ろうと近づいたら、季節外れの開花をしている株がありました。

文字通り5月から6月にかけて咲く花ですが、まあそんなこともあります。サツキなどツツジのなかまにしろ、サクラにしろ、真冬の開花はたまに見られる現象です。気味悪がられることがありますが、植物ホルモンがちょっと間違えたという程度のことで、それをもって異常気象などと早合点するほどのことではありません。
博物館お隣の樹林地の脇では、こんな黄葉も。

チガヤ(イネ科)の黄葉です。枯れ野の趣ですが、ちょっと渋くて好きな色合いです。
まだまだ色合いの変化が楽しめる季節が続きます。
(生物担当学芸員 秋山)

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冬の虹

今日は前線を伴った低気圧が西から進んだ影響で、早朝から土砂降りの雨、そして10時頃には急激にお天気が回復しました。あまりにも急に回復したので、雨も少し残ったまま晴れてお天気雨になりました。
この時期、こんな時は虹が出ます。日が射したのを合図に、博物館の屋上へ出てみました。

果たして太陽と反対方向に、低い虹が出ていました。虹は太陽が低い時間帯でないと見えません。夏だと10時すぎにはもう太陽が高すぎて虹は見えないのですが、冬至に近づくこの時期ならではの日中の虹です。太陽が高ければ低く(虹本体は円なので、円の上端が見えていることになります)、太陽が低ければ虹は高く出ます(円の下の方まで見えているという意味です)。近くの小学校のベランダにも生徒さんがたくさん出ていて、「きれいだねー」という声が聞こえてきました。粋な先生のいるクラスです。虹自体はちょっと薄めだったので、片側のアップを。

積雲の並雲がちぎれながらすごいスピードで動いています。虹も明滅するように濃くなったり薄くなったり、消えたり。そのうち、ほとんど見えないくらいに薄くなって消えていきました。虹が消えたので、角度を変えて見ると・・紅葉と、天体観測ドームと、青空、白い雲。

温暖前線に乗ってやってきた季節外れの暖かい風を受けながら、ちょっと清々しい気持ちになりました。
(生物担当学芸員 秋山)

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地層観察出前授業

今日は地層観察の出前授業を行いました.

市内の小学生に相模原市緑区名倉で見られる地層を観察してもらいました.ここでは,礫や泥,細かい軽石が降り積もってできた地層や礫岩がみられます.

細い急な山道を下り,途中からは小さな川を遡って,地層が見られる場所までたどり着きます.川沿いには道がついていないので,川の中を歩いたりします.

はじめに,礫層,泥層,軽石層を観察しました.これらの地層は約10万年前に形成されたもので,軽石は御嶽山が約10万年前に大噴火したときに,相模原まで飛んできたものです.この軽石層は今年の夏に博物館実習生と一緒に剥ぎ取り標本を作成した地層です.

交代で地層に近づいて観察しました.

実際に触ったり,

虫眼鏡を使ったり,

写真を撮ったり,

皆さん,楽しそうに一生懸命,観察していました.

試料の採集も行いました.

約10万年前の地層の次は,約500万年前の礫岩を観察しました.

天気は快晴で,気持ちよく観察することができました.

「500万年前の地層に出会えるなんて奇跡」との感想がありましたが,まさにその通りです.地球上のすべての時代の地層や岩石が残されているわけではなく,現在,私たちが見ることができるのは,そのわずか一部分だけです.野外で見られる地層や岩石は,地球の歴史を伝えてくれる貴重な証拠です.

(地質担当学芸員 河尻)

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発表の前の夕焼け空

金星探査機あかつきの軌道修正、あと少しで結果が発表される予定です。なんだかわくわくどきどきです。
そんなことを考えながら夕方、空を眺めていたら、だんだんと夕焼けが広がってきました。

今、金星はまさに暁の季節なので、宵には出ていません。このところ上空の雲はなんとなくはっきりと分類しにくい雲が多い毎日です。上の写真も、巻雲の房状雲とも、もつれ雲とも判断しがたいようなものが浮かんでいます。
西の空は、これまた高積雲の長く伸びたレンズ雲ともなんとも言いがたい雲が夕日に染まっています。

絶えず変化する雲を分類するのは至難の業です。分類名に迷っているうちに消えて無くなってしまうこともしばしば。そんなことより、目の前に広がる雲景を楽しみたいですね。
JAXAの発表、あと少しです!
(生物担当学芸員 秋山)

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